【2024年】建設業界の今後の動向|現状の課題と対策について解説
目次
2024年4月から本格的に始動した建設業界における働き方改革。
加えて、コロナ禍からの影響が今もなお続き、資材の高騰や円安が建設業界に追い打ちをかけているのが現状です。
将来の見通しが難しい建設業界ですが、今後は技能者・職人の高齢化が進む一方で、建設・土木の需要はより高まると考えられます。
建設業界が今抱える問題には国をあげて対策に乗り出しているなかで、一企業としても今後を生き残っていくために、現状の把握と対策への着手が求められているのです。
この記事では、
- 建設業界の現状
- 建設業界の今後
- 建設業界が抱える問題
- 建設業界の今後に向けて取り組むべきこと
などを詳しく解説します。
建設業界の現状
建設業界でも大きな影響を受けたのが2020年に大流行した新型コロナウイルス。
およそ4年が経った今でも、建設業界への影響は大きく残っているといえます。
2024年の建設業界の現状に関して、2つの視点で詳しく解説します。
建設業者の倒産が増加
2024年1月に公表された帝国データバンクの「建設業」倒産動向調査によると、2023年に発生した建設業者の倒産件数は1,671件で、前年比プラス38.8%と急増しています。
倒産件数が1,600件を超えるのは、およそ8年ぶりです。
倒産の背景にあるのは、人手不足によって仕事が回らなくなったり、コロナ禍の政策で一時的に倒産が抑制されていたりが考えられます。
資材高騰と円安の影響
建設業界の現状において、資材高騰と円安の影響は深刻な問題です。
2021年以降、世界的に原材料の品薄と高騰が起こり、木材の価格が高騰するウッドショックという言葉が飛び交いました。
今もなお、資材の高騰および資材の納期遅れが問題となっており、公共投資への影響も懸念されているのです。
また、円安の影響も大きく受けており、建設工事の資材価格や労務費の高騰に繋がっています。
一般社団法人 日本建設業連合会の「建設工事を発注する民間事業者・施主の皆様に対するお願い」によると、2021年から2024年までの3年間で、資材価格が30%以上高騰しているとのことです。
資材だけではなく、労務費も2021年からの3年間で16%以上高騰しています。
円安による建設業界への影響に関しては、以下の記事も確認してみてください。
>>>円安による建設業への影響とは?業界の今後や円安対策まで解説!
建設業界の今後
建設業者の倒産や資材高騰などが問題とされている現状ですが、建設業界の需要の高さは今後も維持されると予測されます。
ただし、現場で働く職人の高齢化も将来的な大きな問題として認識されています。
職人の高齢化が進行する
建設業界で働く職人の年齢層は、以下のように二極化しています。
令和2年には、55歳以上の就業者が全体の約36%を締め、29歳以下は約11%にとどまっています。
2000年ごろから全産業においても高齢化が徐々に進んでいますが、建設業と全産業では、55歳以上の割合と29歳以下の割合に大きな開きが生まれているのです。
今後は若手従業者の数が変わらず不足する状況に加えて、世代交代によって30代40代の中堅世代も少なくなることがグラフから読み取れます。
このまま建設業者の高齢化が進むことで、現場で活躍する人材の体力が衰えたり、デジタル技術の導入に難色を示したりすることも考えられるでしょう。
建設業界で働く高齢者が注意する点などについては、以下の記事も参考にしてみてください。
>>>建設業における高齢者の禁止作業を法令・企業の事例に基づきながら解説
建設業界の需要の高さは維持される
建設業界の需要の高さは、以下の理由から今後も維持・拡大されると予測できます。
- 老朽化した建物の対策が必要になる
- 被災した建物の復旧が必要になる
- マンションやビルなどの大型プロジェクトは継続している
- インフラ等の土木工事が増加している
国土交通省の「令和5年度(2023年度)建設投資見通し 概要」によると2012年度ごろから建設投資額は右肩上がりに成長し続けています。
2023年度には、70兆3,200億円の建設投資額になる見通しで、前年度からおよそ1兆5,000億円ほどプラスになった結果です。
内訳として、政府投資と民間の建築補修(改装・改修)投資が、前年比プラス4.5%以上となっており、とくに需要が大きいことがわかります。
このように、建設・土木業界の需要は今後もさらに拡大すると考えられます。
建設業界が抱える問題
建設業界が抱える問題は、以下の2つです。
- 労働環境
- 人手不足
それぞれ詳しく解説します。
労働環境
建設業界では、労働環境の悪さや、長時間労働・休日の少なさといった労務面が問題となっています。
労働環境においては、衛生面の整備が追いついていなかったり女性職員が働きやすい環境が整っていなかったりする会社も少なくありません。
現場作業員や現場監督などにおいては、事務所から現場までの移動時間や退勤後の帰宅時間なども出勤とする必要があります。
しかし、勤怠管理がずさんになりやすく、出退勤の記録が曖昧になっている会社もあるのが実情です。
作業員の高齢化によって、若手人材を育成できる人が少なくなっているのも労働環境悪化の要因の一つです。
長時間労働や休日の少なさも、建設業における問題として挙げられます。
国土交通省が発表した「建設業における働き方改革」のなかで、以下のように建設業の年間出勤数と年間実労働時間の推移が掲載されているのです。
出典:国土交通省|建設業における働き方改革 中部地方整備局 建政部
グラフを見るとわかるように、建設業は全産業と比べて年間の出勤日数が12日以上多く、労働時間も68時間以上多い結果が出ています。
また、建設業における平均的な休日取得状況では、4週間のうち6日しか休日が取れていない人が最多という結果が出ており、週休2日の確保ができていないのが現状です。
このような調査結果からもわかるように、建設業界では長時間労働が常態化しています。
休日の少なさに関しては、建設業ならではの理由があります。
建設業で多いのは、4週4閉所や4週6閉所といった、平日5日間に加えて土曜日も出勤する勤務形態です。
建設の仕事は数ヶ月・数年と長期間にわたるのが当たり前です。
長期間を考慮して工程を組みますが、天候やトラブルなどによって必ずしも工程通りに進められるわけではありません。
先の見通しができないなかで作業を進めるため、なるべく土曜日や休日出勤してでも作業を進めようとするのです。
建設業における残業時間の現状に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。
>>>建設業における残業時間の現状は?残業を削減する取り組みを紹介
人手不足
「職人の高齢化が進行する」でも解説した通り、建設業界の若手人材の不足が進行しています。
少子高齢化の影響もあり日本の労働人口は年々減少傾向にありますが、以下のように建設業における若手人材の不足はとくに深刻化しています。
全産業の29歳以下の割合 | 16.6% |
建設業の29歳以下の割合 | 11.8% |
建設業界の労働環境や長時間労働といったイメージが、若手人材の不足に拍車をかけていると考えられるでしょう。
そのため、人材の確保と経験や知識の継承・育成が早急に求められています。
職人不足により一般住宅の建築にも影響が出ている問題に関して、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
建設業界の今後に向けて取り組むべきこと
建設業界の今後に向けて取り組むべきことは、以下の4つです。
- 労働環境の改善
- 労働者の待遇改善
- 職場におけるDX化・IT化の推進
- 外国人労働者の採用
それぞれ詳しく解説します。
労働環境の改善
建設業界の今後に向けて、労働環境の改善に取り組むことは非常に大切です。
労働環境を改善する方法には、具体的に以下のようなことが挙げられます。
- 社員や作業員の職場環境を整える
- 勤怠ルールを明確化する
- 発注者との対等な関係の構築
- 長時間労働の是正案の立案と実行
- 週休2日の確保 など
国が働き方改革を主導し、2024年4月からは建設業においても本格的に導入されました。
そのため建設関係企業は、週休2日制度の導入や女性職人の雇用・活躍を推進するなど、働き方改革を積極的におこなう必要があります。
労働環境が改善し、働きやすさとやりがいの感じられる仕事になることで、若手人材の確保や元職人の育成も進むでしょう。
建設業界の働き方改革や36協定の現状に関しては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
>>>建設業における36協定の現状とは?働き方改革を促進する方法も解説
労働者の待遇改善
建設業界の今後に向けて、労働者の待遇改善にも注目が集まっています。
建設業界で活躍する作業員・職人のなかには、適切な処遇・待遇を受けられていない人もいます。
人材を正しく評価できる役割が不足していたり、そもそも過去の経験や資格などが確認されていなかったりするのです。
労働者の待遇が改善されることで、人材流出の軽減と人材確保の促進につながり、安定した雇用の実現が期待できます。
作業員や職人の待遇・処遇を改善する方法の一つが、国土交通省が推進する「建設キャリアアップシステム」の導入です。
建設キャリアアップシステムを導入することで、職人の経験やスキル、資格などを登録でき、個人の経験やスキルに見合った客観的な評価を受けられるようになります。
また、社会保険の加入状況や現場の就業履歴などの登録も可能で、将来的なキャリアパスを含む処遇改善への活用が期待されています。
建設キャリアアップシステムのより詳しい内容は、以下の記事を参考にしてください。
>>>建設業のキャリアアップシステムとは?運用目的やメリットを解説
職場におけるDX化・IT化の推進
職場や現場のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化やIT化への取り組みを進めている企業も多く見受けられます。
例えば、3次元モデルによる建設生産システムの導入やクラウドサービスの活用により、建設事務や営業の効率化を行います。
クラウドサービスにより、場所や時間帯にかかわらずデータのやりとりができることで、現場作業員の業務効率改善にもつながるでしょう。
専門性の高いDX化やIT化を進めなくても、普段作成する書類やデータ入力などを簡易化するだけでも、労働環境は改善されます。
また、国としてもi-Constructionを中心としたICT(情報通信技術)の導入を積極的に行っています。
i-Constructionとは、国土交通省が打ち出す生産性向上プロジェクトの1つで、ICTを導入して測量や設計、施工、検査などの全業務の生産性を上げる取り組みです。
IT技術の導入により、建設業許可などの手続き負担軽減や工事書類の作成や管理の効率化につながるのです。
人手不足によって一人当たりの業務負担が大きくなるなかで、DX化やIT化による業務効率の改善は大きな助けになります
弊社クラフトバンクでも、建設業における各業務を一元管理できる機能を持つ「クラフトバンクオフィス」を提供してしています。
業務改善で悩んでいる方は、以下のリンクからクラフトバンクオフィスの導入を検討してみてください。
外国人労働者の採用
2024年時点で建設分野における外国人材の数は約11万人で、全産業の約6.4%が建設業に従事しています。(参考:建設分野における外国人材の受入れ)
水際措置の緩和や制度の周知拡大に伴い、2019年からは特定技能外国人が徐々に増えています。
また、令和4年8月30日に閣議決定された「建設分野の業務区分の統合」において、業務区分を19区分から3区分に統合し、在留資格上従事できる業務範囲が拡大されました。
また、特定技能外国人の安全性確保等の観点から、建設工事に関する訓練や各種研修を充実することになったのです。
外国人材の建設業界への受入体制が整ってきており、今後の業界発展が期待できます。
より詳しい内容は、国土交通省の「建設分野における外国人材の受入れ」をご確認ください。
まとめ:建設業界で生き残るためにも社内の業務改善を積極的に進めよう
この記事では、建設業界の今後について現状と現在業界が抱える課題を踏まえて解説しました。
建設業界の今後は、技能者・職人の高齢化が進む一方で、建設・土木の需要はより高まると考えられます。
ただし、人材不足の解消や労働環境の改革、業務効率の改善など、建設業界が今抱えるさまざまな問題をクリアしていくことが業界全体を通して求められています。
国としてもさまざまな取り組みをしていますが、建設業界で生き残るためには、一つひとつの企業が社内の業務効率改善に積極的に取り組むことが大切です。
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