円安による建設業への影響とは?業界の今後や円安対策まで解説!
目次
近年の円安は、建設業界にも大きな影響を及ぼしています。
特に多くの資材を輸入に頼る日本の建築業では、資材価格の高騰が深刻化しています。
また、外国人労働者の採用にも影響が出る可能性があり、人材不足が叫ばれる建設業にとって、円安が大きな足枷になっているのは確かです。
この記事では、
- 円安による建設業への4つの影響
- いま円安になっている3つの原因
- 円安と建設業の今後
- 建設業において原価を下げて利益を増やすための方法
などを詳しく解説します。
円安による建設業への影響とは
円安による建設業への影響として挙げられるのは、以下の4つです。
- 建築資材や建設機器の高騰
- 公共工事設計労務単価の高騰
- ガソリンや電気料金の高騰
- 外国人労働者の減少
それぞれ詳しく解説します。
建築資材や建設機器の高騰
円安が進むことでまず影響を受けるのは、建築資材や建設機器の高騰です。
日本の建築物に使用している木材や鉄、半導体などの大半は輸入に頼っており、円安になることで、輸入資材の多くが高騰してしまいます。
参考:建設資材高騰・労務費の上昇等の現状|一般社団法人 日本建設業連合会
建築資材や建築機器が高騰すると、建設プロジェクトの全体コストが増加し、予算オーバーや工期延長といった問題につながります。
また、中小企業にとっては、建設資材や重機の調達が困難になってしまい、競争力低下のリスクも考えられます。
公共工事設計労務単価の高騰
円安が進行すると、国が公共工事の積算に用いる単価である公共工事設計労務単価に影響します。
国土交通省 九州地方整備局が発表している「公共工事の発注者の皆様へ」によると、公共工事設計労務単価は、平成25年から11年連続で上昇しており、上昇率は65%です。
出典:公共工事の発注者の皆様へ|国土交通省 九州地方整備局 建政部
円の価値を2005年まで遡って確認したところ、2011年10月をピークに下がっており、概ね円安に合わせて公共工事設計労務単価が上昇していることがわかります。
ガソリン代の高騰
建設業は円安の進行によって起こる、ガソリン代の高騰の影響も受けます。
日本において重要なエネルギー資源の一つであるガソリンは、当然、円安が進むことで価格が高騰します。
建設業では、資材や機材の運搬で工事車両を動かすため、ガソリンが高騰すれば、工事全体にかかる費用も上昇してしまうのです。
外国人労働者の減少
人材不足の解消として外国人労働者の積極雇用を進めている日本ですが、円安によって外国人労働者の流出につながる可能性があります。
外国人労働者が日本で働くのは、自国の通貨よりも日本の通貨で稼いだほうが多く収入を得られるからです。
ただし、近年の円安の進行と他国の経済成長を考えると、わざわざ日本に来て働くメリットが薄れていると考えられます。
また、外国人労働者が収入を自国に送金した場合、円安のため送金額が減少してしまいます。
このように、円安は外国人労働者にとって、大きなデメリットと言えるのです。
いま円安になっている3つの原因
いま円安になっている3つの原因は、以下の3つです。
- 日米の金利差
- 日本の貿易赤字
- ロシアへの経済制裁
それぞれ詳しく解説します。
日米の金利差
円安になっている大きな原因の一つが、日本とアメリカの金利差だと言われています。
金利差が生じている理由は、アメリカの物価高と金利上昇が影響しています。
アメリカでは、2021年ごろからあらゆる物価が大きく上昇しはじめました。
人々の生活を圧迫するインフレを止めるために、アメリカの中央銀行は金利を上げる金融政策を実行しました。
アメリカの金利上昇によりインフレ対策を進めるなか、日本は金利を上げずに超低金利政策を継続したのです。
そのため、アメリカと日本において、大きな金利差が生じました。
より大きなリターンを求める投資家にとって、高金利の国の通貨を買おうとするのは当然のことです。
結果的に金利の低い円を売却して、高金利のアメリカドルを購入する人が増え、円の需要が減少し円安につながっています。
日本の貿易赤字
円安を加速させる原因として、貿易赤字も挙げられます。
貿易赤字とは、国が輸出する商品やサービスの総額よりも、他国からの輸入総額が多い状態を指します。
輸入総額が多いと、当然、日本円がたくさん流出するわけですが、円安という状況がより多くのお金を支払う状況を作っているのです。
財務省によると、2023年度の貿易赤字は約6兆230億円とのことです。
貿易赤字が約21兆7284億円を記録した2022年に比べると、赤字金額は少なくなっているものの、貿易赤字の状態は変わらず続いています。
日本はエネルギー資源や食材などの多くを、他国からの輸入に頼ります。
円安状態では輸入品の支払いに多くの日本円が必要となり、結果的に日本円が市場に出回り、さらに円安が進むのです。
貿易赤字を改善する方法として輸出の増加が見込まれますが、難しいのが現状です。
日本企業の多くは、生産コストや輸入にかかるコストの削減を考えて、海外に工場を製作・移転しています。
海外での生産が可能になったため、円安になっても輸出量が伸び悩んでいる状態です。
ロシアへの経済制裁
日本の貿易赤字が円安の大きな要因になっていると解説しましたが、日本の貿易赤字が増えた原因の一つに、ロシアへの経済制裁があります。
2022年2月にロシアはウクライナに対して侵攻し、1年以上にわたり軍事攻撃を行いました。
このロシアの行動を重くみた欧米諸国は、経済制裁として、ロシアへの輸出入に制限をかけ経済的に孤立させました。
これにより、ロシアの主要な輸出品目である石油や天然ガス、石炭、小麦などの価格が世界的に高騰しはじめたのです。
日本は、天然ガスや石油といったエネルギー資源や食料品の多くを輸入に頼っているため、すぐに輸入をストップする措置が取れず輸入が増えました。
以上の背景が、日本の貿易赤字拡大に大きく影響しているのです。
円安と建設業の今後
円安と建設業の今後の課題として、以下の2つが挙げられます。
- 円安はいつまで続くのか
- 建築資材の価格動向
それぞれ詳しく解説します。
円安はいつまで続くのか
建設業界における円安の影響がいつまで続くのか、多くの人が気になっているでしょう。
円の動きに関して確かなことは言えませんが、2024年から徐々に円安から円高への変化があると考えられます。
その理由として、2024年3月19日に行われた金融政策決定会合にて、17年ぶりにマイナス金利政策が解除されたことが挙げられます。
円安原因の一つが他国との金利差でした。
金利の低い日本円は売られ、金利の高い他国の通貨のほうが買われていましたが、マイナス金利政策の解除によって、日本円の需要が高まると考えられます。
また、米国や欧州においては、インフレの状況によって、利下げを検討するとのことです。
日本の利上げと他国の利下げが進み金利差が縮まることで、今後、円高に向かう可能性は十分に考えられます。
建築資材の価格動向
以下のグラフは、国土交通省が調査した、建設資材の価格・需給動向を表したものです。
出典:主要建設資材需給・価格動向調査結果(令和6年5月1日〜5日現在)|国土交通省
現在の価格動向においては、アスファルト合材(新材・再生材)が少し上昇しており、そのほかの資材は横ばいです。
また、現在の需給動向では、アスファルト合材(新材)が少し緩和しており、そのほかの資材は均衡を保っています。
円安の影響を受けて価格が大きく上昇している時期もありましたが、令和6年に入り動きが緩やかになり落ち着いていると受け取れます。
建設業において原価を下げて利益を増やすための方法
円安という不確定な要素に対して対策するよりも、日頃から円安や物価高に対応できるように、原価を下げたり利益を増やしたりするアクションを取るのが大切です。
具体的なアクションは、以下の4つです。
- 事務作業の効率化
- 技能者の正しい評価と育成の実施
- 建設DXの導入
- 助成金や支援の活用
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。
事務作業の効率化
事務作業を効率化することで、労働時間や残業時間を短縮でき、コスト削減につながります。
建設業では、現場作業を終えて事務所に帰社したあとで、事務作業を始めるケースも少なくありません。
ただし、事務作業に時間をかけすぎると、残業の長時間化になりますし、働きにくい職場と思われて離職されるリスクも上がってしまいます。
事務作業を効率化するだけでも、残業代の削減と働きやすい職場環境の提供を実現可能です。
事務作業を効率化するには、使用頻度の高い申請書や管理表などを管理できるツールを活用するのがおすすめです。
なお、弊社クラフトバンクでは、事務作業の課題を払拭できる「クラフトバンクオフィス」を提供しております。
見積もりや日報、業務連絡、案件管理など、各業務を一元管理でき、事務作業の時間削減につながります。
業務改善で悩んでいる方は、以下のリンクからクラフトバンクオフィスの導入を検討してみてください。
技能者の正しい評価と育成の実施
建設業におけるコスト削減と利益のアップには、現場で活躍する技能者への評価と育成が欠かせません。
適切な評価や育成ができていない場合、技能者の離職につながる可能性があります。
離職率が高く人員が定着しない場合、常に多くの人材採用コストがかかってしまいます。
また、正しい評価と育成ができることで、技能者のモチベーションも高まりますし、紹介により人材が増える可能性も高くなるでしょう。
技能者の正しい評価と育成でおすすめするのが、国土交通省と建設業復興基金が運営主体となり2019年4月より本格的に運用開始した「建設業のキャリアアップシステム」です。
建設業のキャリアアップシステムは、建設業に従事する技能者の所有資格や現場での職業履歴などを登録し、技能者の客観的な評価と処遇につなげる仕組みです。
技能者の経験やスキルを客観的に伝えられるようになり、正当な評価を受けられる機会を得られます。
建設キャリアアップシステムの概要は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。
>>> 建設業のキャリアアップシステムとは?運用目的やメリットなどを解説
建設DXの導入
人材不足が深刻化する建設業において、なるべく人材を確保したいと思う企業がほとんどです。
そのため、人件費をカットするのは現実的ではなく、技能者をいかに確保しながら、効率よく業務をこなせるかが重要です。
建設のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の導入は、現場作業の効率化を実現できます。
具体的には、以下のようなデジタル技術・IT技術を活用して、作業を効率化します。
AI(人工知能) | AI技術を活用して、建設現場の画像や映像を分析したり、データを基に工事の進捗状況を可視化したりできる |
クラウドサービス | クラウドサービスを活用することで、現場にいながら図面や資料を共有したりバックオフィス系の手続きをしたりできる |
ドローン | ドローンは主に土地の測量に活用でき、人力でやると膨大な日数がかかる広大な土地や高所や斜面といった危険地帯でも、効率的に安全に測量できる |
ICT建機 | 情報通信技術を取り入れた重機のこと。重機のコントロールはデータを基に行うため、属人化が解消され品質保持や工事の効率化につながる |
i-Construction | 国土交通省が主導するプロジェクトで、「ICTの全面的な活用」「規格の標準化」「施工時期の標準化」の3つの施策を打ち出している |
建設業におけるクラウドサービスに関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
>>>建設業にはクラウド化が必要?クラウドサービスの詳細とあわせて解説
助成金や支援の活用
会社内でのコスト削減や業務効率の改善だけでは限界があるため、国や地方自治体が実施する助成金制度や支援制度の活用もおすすめです。
例えば、中小企業や中堅企業の製造業者に対して提供している「ものづくり補助金」やIT技術を導入する際に活用できる「IT導入補助金」などがあります。
また、経済産業者が運営する「ミラサポplus」には、中小企業向けの補助・支援情報がまとめられています。
円安や物価高で困った際には、国の補助金や支援なども活用してみましょう。
建設業のおすすめ補助金に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
まとめ
多くの資材を輸入に頼っている建設業において、円安は大敵です。
実際に、円安による建設業への影響として、以下の4つを解説しました。
- 建築資材や建設機器の高騰
- 公共工事設計労務単価の高騰
- ガソリンや電気料金の高騰
- 外国人労働者の減少
円安により必要経費やコストが上昇し、必要不可欠な外国人労働者の流出につながる可能性が高いのです。
しかし、不確定要素である円の価値に振り回されるのではなく、変化の激しい時代に対応できるように、作業の効率化や技能者の正しい評価制度の確立、DX化などを進めることが大切です。
弊社クラフトバンクでは、事務作業の課題を払拭できる「クラフトバンクオフィス」を提供しております。
見積もりや日報、業務連絡、案件管理など、各業務を一元管理でき、事務作業の時間削減につながります。
業務改善で悩んでいる方は、以下のリンクからクラフトバンクオフィスの導入を検討してみてください。