建設業にはクラウド化が必要?クラウドサービスの詳細とあわせて解説
目次
建設業界ではここ数年、DX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せています。紙ベースで行われてきたさまざまな業務を、デジタル化・システム化することで、業務効率の向上や生産性の改善を図る動きが活発化しているのです。
中でも特に注目を集めているのが、「クラウド化」への対応です。従来の自社サーバーやパソコンに情報を保存・管理するのではなく、クラウド(インターネット上)のサービスを利用することで、情報の共有や活用がよりスムーズになると期待されています。
本記事では、建設業におけるクラウド化について、以下の視点から解説します。
- 建設業におけるクラウド化の概要
- 建設業にクラウド化が必要な理由
- 建設業でのクラウド化によるメリット・デメリット
- 建設業のクラウド化におすすめな「クラウドサービス」について
建設DXを推進するうえで、クラウド化は欠かせない要素です。本記事を通して、建設業のクラウド活用についての理解を深めていただければ幸いです。
建設業におけるクラウド化とは?
建設業におけるクラウド化とは、従来の自社サーバーやパソコンでデータを保存・管理するのではなく、インターネット上のクラウドストレージやクラウドサービスを利用することを指します。
具体的には、次のようなことが典型的なクラウド化の例となります。
- 重要書類や資料をクラウドストレージに保存する
- 工程管理やスケジュール管理をクラウドサービスで行う
- 従業員の労務管理をクラウドサービスで一元化する
- 経費精算や受発注業務をクラウドサービスで処理する
つまり、業務でデータを扱う際に、インターネット接続さえあればどこからでもアクセスできるようにすることがクラウド化なのです。
クラウド化を進めることで、いつでもどこでも最新のデータにアクセスできるようになります。場所を選ばずに業務が行えるため、働き方改革の観点からも注目が集まっています。
なぜ建設業にクラウド化が必要なのか
各種資料などを時間・場所問わず確認するために、建設業にクラウド化が必要とされています。
建設業務の多くは移動が伴うものです。現場と事務所を頻繁に行き来しながら業務を行う必要があり、その際の情報の行き来が重要になります。
しかし従来は、現場での資料作成後に一旦事務所に戻り、サーバーやパソコンにデータをアップロードしていく手順が必要でした。現場とデータの往復に手間と時間がかかっていたのです。
この課題を解決するためにクラウド化が必要不可欠なのです。資料をクラウド上に保管しておけば、現場でも事務所でも最新の資料を閲覧・編集できます。場所を選ばず円滑に情報をやり取りできるようになるため、大幅な業務効率化が期待できます。
また、建設業務ではモバイル端末の利用機会が多いことも、クラウド化を後押ししています。現場でタブレットやスマホを使いこなすには、データをクラウド上に置いておく必要があるためです。
建設業におけるクラウド化の必要性は、このようにデータの利活用と生産性向上の両面から高まっているのが実情です。
建設業でのクラウド化によるメリット
建設業においてクラウド化を進めることで、以下3つのメリットが期待できます。
- 資料を管理しやすい
- 業務効率化につながる
- 情報共有が容易になる
ここからは、建設業でのクラウド化によるメリットについて詳しく解説します。
資料を管理しやすい
建設業務では、図面や仕様書、工程表、安全管理資料など、さまざまな資料を扱う必要があります。これらの資料を適切に管理・共有するのは重要な課題です。
クラウド化を進めれば、全ての資料をクラウドストレージに一元的に保管できます。現場やサテライトオフィス、自宅などからアクセスが可能になるため、資料の閲覧・編集がスムーズになります。
また、クラウドストレージには履歴管理機能が備わっているので、資料の改訂履歴を残しやすくなります。誰がいつ何を変更したかが分かるので、ミスが発生しても原因の特定が容易になる点も大きなメリットです。
業務効率化につながる
建設業務では、現場と本社を頻繁に行き来する必要があります。そのため、両者間での情報のやり取りが極めて重要になってきます。
クラウド化を進めれば、現場で作成したデータをリアルタイムでクラウドに保存でき、本社側からも最新のデータを確認できます。データの行き来にかかる手間が格段に少なくなり、業務が円滑に進められるようになります。
さらに、受発注業務や経費精算業務などを、クラウド上のサービスを活用することで効率化も可能です。従来は紙ベースで行われていた業務がデジタル化され、生産性の大幅な向上が期待できるのです。
情報共有が容易になる
建設プロジェクトでは多数の関係者が関与するため、情報共有は極めて重要です。施工会社、発注者、設計事務所など、さまざまな立場の関係者で情報を共有し、円滑なコミュニケーションを取る必要があります。
クラウドを活用すれば、関係者全員が同じ情報を常に閲覧できるようになり、スムーズな情報共有が実現できるでしょう。例えば、発注者が図面を修正した際に、関係者全員がその修正点を確認できるようになります。
情報の見落としや齟齬を防げるだけでなく、関係者間のコミュニケーションコストも削減できます。結果として円滑なプロジェクト運営が可能になるため、クラウド化のメリットは大きいと言えるでしょう。
建設業のクラウド化にはデメリットも?
建設業でのクラウド化には大きなメリットがある一方で、以下のようないくつかのデメリットも指摘されています。
- システムの操作に慣れないことがある
- 複雑なセキュリティ設定が必要になる
- 情報漏えいの危険性がある
ここでは、建設業におけるクラウド化に関する、主なデメリットについて解説します。
システムの操作に慣れないことがある
クラウドサービスを活用するには、そのシステムの操作方法を習得する必要があります。特にベテラン従業員の中には、新しいITシステムに不慣れな人が多く、操作に戸惑いを感じる人も多いでしょう。
システム操作方法の研修を徹底するなどして対策は可能ですが、一時的にシステム導入後の業務効率が低下するリスクがあります。
複雑なセキュリティ設定が必要になる
クラウドサービスを利用する際は、情報漏えいリスクに対するセキュリティ対策が欠かせません。ユーザーIDの管理や二段階認証の設定、アクセス制限の設定など、セキュリティ設定は複雑になりがちであるためです。
十分なセキュリティ対策を施さないと、外部からの不正アクセスによる情報漏えいリスクが高くなってしまいます。一方で、過度のセキュリティ設定は利便性を低下させかねないため、適切なバランスを見極める必要があります。
情報漏えいの危険性がある
セキュリティ設定を怠れば、クラウド上のデータが外部に漏れるリスクがあります。クラウド事業者の管理体制が不十分だったり、マルウェア対策が甘かったりすると、データが流出する可能性があります。
また、社内からの情報漏えいリスクも存在します。アクセス権限の設定を誤れば、許可されていない者がデータにアクセスできてしまう恐れがあるためです。
建設業のクラウド化には「クラウドサービス」がおすすめ?
ここからは、クラウドサービスについて、以下の視点から詳しく解説します。
- 建設業におけるクラウドサービスの種類
- クラウドサービスの「受発注サービス」について
- クラウドサービスを利用するメリット
- クラウドサービスを導入すべき建設事業者の特徴
- クラウドサービスの選び方
建設業でのクラウド化を進めるうえで、クラウドサービスの活用は有力な選択肢となるでしょう。
建設業におけるクラウドサービスの種類
建設業向けのクラウドサービスには主に以下のような種類があり、それぞれ役割が異なります。
- 資料管理サービス
- 工程管理サービス
- 労務管理サービス
- 経費精算サービス
例えば資料管理サービスでは、図面や仕様書などの重要資料をクラウドうえで一元管理できます。工程管理サービスでは、工程表の作成・共有ができます。労務管理サービスでは、従業員の出退勤や休暇管理を行えます。
このように、建設業のさまざまな業務でクラウドサービスを活用できます。自社の課題に合わせて、複数のサービスを組み合わせて利用するのが一般的です。
クラウドサービスには「受発注サービス」がある?
建設業で特に注目されているクラウドサービスの一つが、「受発注サービス」です。発注者と受注者がクラウド上で直接やり取りできるサービスで、建設DXの肝と言えるものです。
従来の受発注業務は、FAXや電話、対面での打ち合わせが中心で、非常に非効率的でした。受発注サービスでは、クラウド上でやり取りできるため、大幅な効率化が期待できます。
具体的には、発注者が図面や仕様書をクラウドにアップロードし、受注者があれらの資料を閲覧しながら見積作成や施工計画の立案を行えます。双方でクラウドうえで確認しながらすり合わせができるため、スムーズな受発注が可能になるのです。
建設業のDXを実現するうえで、受発注サービスはカギを握る重要なクラウドサービスと言えるでしょう。
クラウドサービスを利用するメリット
クラウドサービスを利用することで、以下のようなメリットが期待できます。
- システム導入が容易で、初期費用を抑えられる
- 専用のハードウェアが不要で、環境構築が簡単
- クラウド事業者によるシステム保守・運用が受けられる
- 場所を選ばずどこからでもアクセス可能
- 必要な機能だけを選んで導入できる
クラウドサービスはすぐに利用できるため、自社でシステムを構築する手間が省けます。また、パッケージ化された機能だけを利用するので、必要最低限の費用でシステムを手に入れられます。
さらに、クラウドサービスならハードウェアの用意が不要です。パソコンやモバイル端末さえあれば、すぐに利用開始できます。場所による制約もないため、移動が多い建設業にピッタリです。
ただし、重要なデータを預けるクラウドサービスの選定は慎重に行う必要があります。事業者の実績や信頼性、セキュリティ対策などを入念にチェックすべきです。
クラウドサービスを導入すべき建設事業者の特徴
クラウドサービスの導入は、建設事業者にとって大きなメリットがある反面、一定のコストや労力もかかります。そのため、クラウドサービスの導入は、以下のような特徴を持つ建設事業者が検討すべきでしょう。
<規模が大きい企業>
従業員数が多く、プロジェクトの規模も大きい建設会社ほど、クラウドサービスのメリットを実感しやすくなります。情報共有の効率化やペーパーレス化による業務効率の向上が、大規模な企業ほど顕著に表れるためです。
<情報システムへの投資余力がある企業>
クラウドサービスへの導入には一定の初期費用がかかります。サービス利用料金にプラスして、システム導入時の研修費用なども見込んでおく必要があります。情報システムへの投資余力がある企業でないと、導入は難しくなるでしょう。
<ITリテラシーが高い人材を抱える企業>
新しいシステムへのリテラシーが高い従業員が多数在籍していれば、クラウドサービスの導入もスムーズに進められます。ITリテラシーが低い場合は、研修などのコストがかさむ可能性があります。
<業務プロセスが標準化されている企業>
各種業務のプロセスが標準化されていれば、クラウドサービスに合わせて移行しやすくなります。プロセスが統一されていない場合は、移行が難航しがちです。
クラウドサービスの選び方
クラウドサービスを導入する際は、どのサービスを選ぶかが大きなポイントとなります。主に以下の4点を総合的に判断し、自社に最適なサービスを選ぶ必要があります。
<機能の充実度>
必要となる機能が全て盛り込まれているかどうかをチェックします。資料管理、工程管理、労務管理などの機能があるかどうか、機能の詳細を確認しましょう。
<利用料金の妥当性>
利用料金が高額すぎてもメリットが薄れてしまいます。また、安すぎるサービスでは機能面で不安が残ります。自社の規模に見合った適正水準の料金か、見極める必要があります。
<操作性の良さ>
使い勝手の悪いサービスでは、従業員が活用を渋るなどのデメリットが出る可能性があります。実際に操作をしてみるなどして、わかりやすいUIか確認しましょう。
<信頼性とセキュリティ>
クラウド事業者の実績や安全性、セキュリティ対策については入念にチェックする必要があります。サービス停止や情報漏洩リスクがあれば、クラウド化の意味がなくなってしまいます。
まとめ
建設業でのクラウド化を進めることで、場所を選ばず最新のデータにアクセスできるようになり、資料の共有や情報のやり取りが容易になります。結果として業務効率が大幅に向上し、生産性の改善が期待できるのです。
一方で、クラウド化にはセキュリティ対策の課題や、システム操作への不慣れなどのデメリットもあるため、十分な準備と対策が必要不可欠です。
建設業でのクラウド化を進める有力な手段として、クラウドサービスの活用が注目されています。資料管理、工程管理、労務管理など、さまざまな建設業務でクラウドサービスを利用できます。
特に受発注業務でのクラウドサービス利用は、建設DXの要と言えるでしょう。発注者と受注者が同じクラウド上で直接やり取りできるため、受発注プロセス自体が革新的に効率化されるためです。
ただし、クラウドサービスを導入する際は、機能・価格・操作性・信頼性など、さまざまな観点から最適なサービスを選定する必要があります。自社の特性を踏まえたうえで、慎重に検討を重ねましょう。
建設業のDXを実現するには、クラウド化は必須の取り組みと言えます。本記事を参考に、自社のクラウド化に向けた具体的な計画を立ててみてはいかがでしょうか。