建設業における残業代と割増率の計算方法|残業の実態も解説

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目次

建設業における残業代の計算は、【基礎賃金 × 残業時間 × 割増率】で算出します。

まずは基礎賃金の把握が必要ですし、深夜労働や時間外労働における割増率の理解も欠かせません。

そこでこの記事では、

  • 建設業における残業代の計算方法
  • 割増率の計算方法
  • 建設業界における残業の実態
  • 2024年4月から始まった時間外労働の上限規制と罰則
  • 建設業で残業時間を削減する方法

などを詳しく解説します。

建設業における残業代の計算方法

建設業における残業代の計算方法は、以下の通りです。

残業代 = 基礎賃金 × 残業時間 × 割増率

各項目の内容は、以下の通りです。

基礎賃金

残業代を算出する際のベースとなる賃金のこと。基礎賃金には通勤手当や住宅手当、家族手当などは含まれないため、月給からこれらの手当を引いた金額。

1時間あたりの基礎賃金は、1ヶ月の基礎賃金を1ヶ月の所定労働時間(1日の労働時間 × 1ヶ月の労働日数)で割って算出。

残業時間

1日8時間、週40時間を超えて働いた際の時間を残業時間としてカウントする。

割増率

残業時間に該当する賃金は、基礎賃金に割増率をかけた割増賃金が適用される。割増率は、以下の通り労働基準法で決められている。

・法定時間外労働:25%
・深夜労働:25%
・休日労働:35%

残業代を計算する際は、まずは1時間あたりの基礎賃金を算出しましょう。

例えば、【月給30万円・1日8時間労働・年間休日120日】の場合を参考に計算してみます。

・STEP1:年間の労働日数を算出

365日 - 年間休日120日 = 年間労働日数245日

・STEP2:年間の労働時間を算出

8時間労働 × 245日 = 年間の所定労働時間1,960時間

・STEP3:月間の所定労働時間を算出

1,960時間 ÷ 12ヶ月 = 月間の所定労働時間163時間

・STEP4:1時間あたりの基礎賃金を算出

30万円 ÷ 163時間 = 1時間あたりの基礎賃金1,840円

このようにまずは基礎賃金を算出し、その後、残業時間と該当する割増率をかけて残業代を出しましょう。

割増率には、一部特殊なケースもあるため次章で詳しく解説します。

残業代の割増率の計算方法

残業代の割増率は、労働基準法で最低基準が決められています。

深夜残業と時間外労働が重複した場合や、月間60時間を超えて残業した場合の割増率に関して解説します。

一般的な時間外労働の割増率

一般的な時間外労働の割増率は、以下の通りです

時間外労働

割増率

法定時間外労働(1日8時間・週40時間を超えた場合の労働)

25%

深夜労働(22時〜5時)

25%

休日労働(週1日または4週を通して与えられる4日の休日労働)

35%

労働基準法で決められている割増率は最低基準ですので、会社ごとに決められます。

その場合は、就業規則に記載する必要があり、就業規則に準じた割合で計算する必要があります。

深夜労働と時間外労働が重複した際の割増率

もしも、時間外労働かつ深夜労働や休日労働に及び重複した場合は、割増率を合算します。

例えば、以下の重複が考えられます。

  • 時間外労働(25%)+ 深夜労働(25%)= 50%
  • 深夜労働(25%)+ 休日労働(35%)= 60%

時間外労働と休日労働の場合は、合算されないため、休日労働分のみの割増率35%が適用されます。

月60時間以上の時間外労働をした際の割増率

月間の残業時間が60時間を超える場合には、割増率が50%になるので注意が必要です。

月間60時間を超えた時間外労働かつ深夜労働の場合は、割増率が75%になります。

建設業界の残業の実態

残業に悩む建設業者も多く見受けられますが、建設業界全体ではどうなのでしょう?

建設業界が抱える残業の実態として、以下の3つが挙げられます。

  • 残業時間が100時間を超えることも珍しくない
  • そもそも把握できていない残業も多い
  • 残業に対する認識のズレが起きている

それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。

残業時間が100時間超えも珍しくない

労働安全衛生総合研究所の「令和3年度 過労死等に関する実態把握のための労働・社会面の調査研究 p.280」によると、建設業における時間外労働において、100時間超えが1.5%いることがわかりました。

また、同調査によると、建設業の時間外労働が生じる理由は、単純な業務量の多さが43%超えで一番多い結果になっています。

このような調査からも、業務量の多さが原因で残業につながっており、100時間を超える残業をしている人も珍しくないことがわかります。

>>>建設業における残業時間の現状は?残業を削減する取り組みを紹介

そもそも把握できていない残業も多い

建設業の職種によっては、そもそも残業が把握できていないケースもあります。

例えば、現場作業が主な職人や施工管理者の場合、以下のような理由から労働時間の把握が困難です。

  • 出勤時間が現場への入り時間になっている
  • 日によって現場が分散したり変わったり
  • 1日に2箇所以上の現場を移動するケースもある
  • 自宅から現場へ直行することがある など

現場仕事の場合、出退勤時に日報の作成やチャットアプリでの連絡を導入して、勤怠管理している企業もあります。

しかし、出退勤を個人に任せてマネジメント層がきちんと労務管理できていない会社も少なくありません。

残業に対する認識のズレが起きている

建設業者のなかには、労働時間・残業に関して、認識がズレている会社もあります。

以下のようなケースは労働時間に該当します。

  • 始業時刻前の現場入り
  • 終業時刻後の顧客対応
  • 終業時刻後の事務作業

例えば、現場入りの時刻が8時の場合、7時に営業所に出社して現場に移動するとします。

この場合は、営業所に出社した7時が出勤時刻ですので、8時に現場入りさせるのであれば、7時出社からの8時間労働と考えなければなりません。

また、終業後に突発的な顧客対応が入ったりクレーム対応をしたりした場合も、勤務時間になるため、残業としてカウントする必要があります。

2024年4月から始まった時間外労働の上限規制と罰則

建設業では、労働基準法の改正により、2024年4月から時間外労働の上限規制が適用されています。

労働基準法の改正により、残業する場合には、労働者と使用人の合意に基づく手続きである36(ザブロク)協定の締結を届け出なければなりません。

労働基準法による労働時間の定めは、以下の通りです。

出典:建設業 時間外労働の上限規制わかりやすい解説|厚生労働省

また、36協定の締結と届出を行っても、月間45時間・年間360時間という時間外労働の上限が設定されました。

繁忙期のような人手が必要な場合は、36協定のなかの特別条項に該当し、以下の内容まで上限が緩和されます。

  • 時間外労働は年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
  • 時間外労働と休日労働の合計について、2〜6ヵ月の平均時間が80時間以内
  • 時間外労働が月45時間を超えられるのは、年6回まで

ただし、法定労働時間を超過して従業員を働かせた場合には、罰則の対象となるため、多くの業者が対応に追われているのが実情です。

建設業の時間外労働に関しては、以下の記事も合わせて確認してみてください。

>>>建設業における36協定の現状とは?働き方改革を促進する方法も解説

建設業で残業時間を削減する方法

建設業で残業時間を削減する方法として、以下の4つが挙げられます。

  • 事務作業の効率化
  • 建設DXの導入
  • 工期の見直しと適切な人員の配置
  • 作業員のマネジメントの徹底

それぞれ詳しく解説します。

事務作業の効率化

建設業における残業時間の削減として、書類作成やデータ整理などの事務作業を効率化することが大切です。

現場監督や職人のような普段は現場で活躍する人たちは、現場から営業所に戻ったあとに、事務作業することも少なくありません。

毎回同じような内容を記入する管理表や届出などは、フォーマットを作成しておけば、数項目入力するだけで短時間で作成できますし、社員同士でフォーマットの共有も容易にできます。

事務作業を効率化する場合は、弊社クラフトバンクが提供する「クラフトバンクオフィス」がおすすめです。

各業務を一元管理できるクラフトバンクオフィスを活用することで、事務作業の時間削減につながります。

会社ごとのフルカスタマイズや安心サポート体制も充実しているので、作業効率化ツールを初めて導入する会社でも安心です。

業務改善で悩んでいる方は、以下のリンクからツールの導入を検討してみてください。

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建設DXの導入

建設業の残業を削減するためには、事務作業の効率化に合わせて、建設のDX(デジタル・トランスフォーメーション)化も検討しましょう。

具体的には、以下のようなデジタル技術を活用して、作業を効率化します。

AI(人工知能)

AI技術を活用して、建設現場の画像や映像を分析したり、データを基に工事の進捗状況を可視化したりできる

クラウドサービス

クラウドサービスを活用することで、現場にいながら図面や資料を共有したりバックオフィス系の手続きをしたりできる

ドローン

ドローンは主に土地の測量に活用でき、人力でやると膨大な日数がかかる広大な土地や高所や斜面といった危険地帯でも、効率的に安全に測量できる

ICT建機

情報通信技術を取り入れた重機のこと。重機のコントロールはデータを基に行うため、属人化が解消され品質保持や工事の効率化につながる

i-Construction

国土交通省が主導するプロジェクトで、「ICTの全面的な活用」「規格の標準化」「施工時期の標準化」の3つの施策を打ち出している

建設DXの導入によって、業務の効率化だけではなく建設中の人災や事故、トラブルも防げるため、より安全かつ正確な作業ができるようになるでしょう。

>>>建設業にはクラウド化が必要?クラウドサービスの詳細とあわせて解説

>>>【2024年版】施工管理アプリ5選|アプリ導入が必要な事業所の特徴

工期の見直しと適切な人員の配置

建設業の残業の原因として、無理な工期設定や作業員不足が挙げられます。

そのため、発注者との協議で工期を見直したり、適切に人員配置したりすることが大切です。

働き方改革によって労働時間や勤務日数の見直しが必要なっているため、労働基準法に沿った働き方を考慮して余裕を持った工期設定を提案するようにしましょう。

作業員のマネジメントの徹底

マネジメント層が作業員の正しい勤務実態を把握することも、残業時間削減につながります。

そのためには、出勤時間・退勤時間・休憩時間の認識を統一し、営業所から現場までと現場から営業所までの移動時間も勤務時間としてカウントしましょう。

また、土曜日・日曜日は現場を完全閉鎖するといったように、出勤できない仕組みを整えるのも大切です。

まとめ:正しい残業代の計算と事務作業の効率化で働きやすい会社作りを目指そう

あらためて、建設業における残業時間の計算方法を確認してみてください。

残業代 = 基礎賃金 × 残業時間 × 割増率

残業代を計算する上で大切なのは、時間外労働の実態と正しい残業時間の把握です。

そのためには、業務効率改善に取り組みながら、労務管理の徹底や適正人員の配置などにも力を入れていきましょう。

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