建設業法改正で何が変わる?時間外労働の上限規制や2024年問題を解説

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目次

建設業では作業員の高齢化・人手不足が問題となっており、建設業法改正が進められています。

建設業法改正に対応しなければ、罰則が科せられる恐れがあります。

2024年4月からは建設業にて時間外労働の上限規制が適用されるので、労働環境の整備が必要です。

この記事では、建設業法改正で何が変わるのかを解説します。

時間外労働の上限規制や、2024年問題についても紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。

建設業法改正の背景|建設業の2024年問題

建設業の2024年問題とは、時間外労働の上限規制が建設業に適用されることを受け、労働環境の改善が求められる状況を指します

働き方改革が進められる背景としては、建設業が抱える次のような問題が挙げられます。

  • 作業員の高齢化
  • 人手不足
  • 長時間労働

上記はどの業界でも問題となっていますが、建設業では特に深刻な状態です。

2022年における建設業就業者は「29歳以下が約12%で55歳以上が約36%」でした。

建設業就業者は1997年時点で685万人でしたが、2022年になると479万人にまで減少しています。

さらに、日建連の調査によると「建設業の労働時間は全産業の平均と比較して年間約320時間も長い」状態です。

このような建設業の状況を改善すべく、国は法改正を進めています

参考URL:4. 建設労働 | 建設業の現状

参考URL:建設業の働き方改革の推進

参考URL:建設業のいま | 建設業週休二日

【2024年の建設業法改正】時間外労働の上限規制

2019年4月1日(中小企業は2020年4月1日)より労働基準法が改正され、時間外労働の上限規制が施行されています

なお、建設業では労働環境の整備に時間がかかることから、上限規制について5年間の猶予が設けられていました。

2024年4月1日より猶予期間が終了し、建設業でも時間外労働の上限規制が適用されます

法律で定められた手続きをとらずに、上限を超える労働を作業員にさせた場合、罰則対象となるので注意が必要です。

労働時間の上限は、原則として1日8時間および週当たり40時間です。

この上限を超えるには、36協定を締結して、書類を届け出なければいけません。

時間外労働の上限規制で何が変わる?新旧対照表

時間外労働の上限規制で変化する点を、以下の表にまとめました。

改正前

改正後(2024年4月から適用)

36協定を結んでいれば、残業時間の上限なし

【36協定を結んだ場合】
・月45時間以内
・年360時間以内

【特別条項付き36協定を結んだ場合】
・年720時間以内
・月100時間以内
・月45時間を超えてよいのは年6回まで
・2ヶ月~6ヶ月の平均が、すべて80時間以内

法改正が適用される前は、36協定を結んでいれば残業の上限規制はありませんでした。

しかし、適用後において次のような行為は違反とみなされます

  • 36協定を締結後、月45時間以上の時間外労働をさせる
  • 特別条項付き36協定を締結後、年720時間以上の時間外労働をさせる

変化する点をおさえた上で、作業員の労働時間を管理しましょう。


参考URL:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

時間外労働に当たる場合・当たらない場合

時間外労働を管理するには、労働時間に当たる作業・当たらない作業を把握しなければいけません

参考として、厚生労働省が掲げる「労働時間の考え方」を紹介します。

【労働時間の考え方】

労働時間とは使用者の指揮命令下に置かれている時間であり、使用者の明示または黙示の指示により労働者が業務に従事する時間は労働時間に当たること。

たとえば、参加することが業務上義務づけられている研修・教育訓練の受講や、使用者の指示により業務に必要な学習等を行っていた時間は労働時間に該当すること。

建設業の場合、時間外労働といえる業務は次のとおりです。

時間外労働に当たる場合

時間外労働に当たらない場合

・手待時間(労働から離れることが保障されていない状態で待機等している時間)
・着替え、作業準備、清掃等(朝礼の時間、準備体操、掃除)
・安全教育

・移動時間(移動中に業務の指示を受けず、自由な利用が保障されている場合)

簡単にまとめると、作業員の自由がなく、業務遂行のために義務づけられた行動は「時間外労働」とみなされます

参考URL:時間外労働の上限規制

参考URL:使用者が講ずべき措置に関するガイドライン

時間外労働の上限規制で必要となる対応

時間外労働の上限規制で必要となる対応をまとめました。

  • 36協定を締結する
  • 労働環境を整える
  • 勤怠時間を正確に把握する

残業の上限規制の適用後、労働時間を超えて業務を行うには36協定を結ぶ必要があります

なお、36協定に関しては以下の記事も、ぜひご参照ください。

>>>建設業における36協定の現状とは?働き方改革を促進する方法も解説

加えて、法律に違反しないために、労働環境を整備して残業時間を減らしましょう

環境改善には時間がかかるので、長期的な取り組みが求められます。

作業員の勤怠時間を把握できていなければ、意図せず法律に違反する危険性があります

「あと〇時間で労働時間の上限に達する」や「残業時間が増えているので36協定を結ぶ必要がある」など、作業員の状況を知ることが大切です。

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建設業法改正で4週8休は義務化される?

建設業にて4週8休は義務化されておらず、2024年5月時点で推奨段階です

4週8休を導入しなくても法律違反ではなく、罰則も科せられません

ただし、国土交通省では建設業での4週8休(週休2日制)を推進しており、次のような取り組みを行っています。

公共工事

民間工事

・直轄工事では週休2日工事や、週休2日交代制モデル工事を順次拡大していく
・地方公共団体に対して「週休2日の確保を考慮した適正な工期の設定」に努めるように要請

・適正な工期設定や週休2日の確保について働きかけを実施
・⺠間工事における工期設定の状況や、週休2日の確保の状況等について実態調査を実施

建設業の週休2日制については、こちらの記事でも解説しています。

>>>建設業の週休2日はいつから義務化されるのか?週休2日に向けてやるべき5つのこと

参考URL:建設業の働き方改革の推進

建設業法改正に対応するメリット

建設業法改正に対応するメリットは、主に3つあります。

  • 企業の信頼性が向上する
  • 人材確保が有利になる
  • 作業員のモチベーションアップにつながる

1つずつ見ていきましょう。

企業の信頼性が向上する

建設業法改正に対応することで、企業の信頼性アップが期待できます

法律を遵守して活動できる企業は、顧客や取引先から「現場管理が徹底できているので質の高い工事を施工できるだろう」とポジティブな印象を与えるでしょう。

また、労働環境改善に取り組む姿勢を示せば、企業の先進性をアピールできます。

人材確保が有利になる

人材確保は建設業において重大な課題です。

若手人材が建設業を離職した理由について、国土交通省の調査結果を見てみましょう。

【建設業離職者(離職時若年層)が仕事を辞めた一番の理由】

順位

理由

回答率(%)

1

雇用が不安定である

9.6

2

遠方の作業場が多い

9.0

3

休みが取りづらい

8.4

4

労働に対して賃金が低い

7.9

5

作業に危険が伴う

6.7

「休暇が取れない」や「雇用が不安定」などが、離職の理由として挙げられています。

働き方改革に向けて制度を整える企業も多く、労働環境が改善されなければ、他の産業・企業に人材が流れる恐れも。

人材確保を有利に進めるには、残業を減らす・休日を増やすといった、適切な労働管理が求められるのです


参考URL:建設業の働き方として目指していくべき方向性

作業員のモチベーションアップにつながる

建設業法改正への対応で労働環境が整えば、作業員のモチベーションアップが見込めます

「ワークスモバイルジャパン」の調査では、20・30代の施工管理者の54%が残業時間の長さに「ストレスを感じる」と回答しました。

作業員のモチベーション維持は、離職を防止するのはもちろん、高品質な施工にもつながります。


参考URL:【建設業対象:建設現場の実態・意識に関する調査】建設業で2024年4月から施行される残業規制について建設現場で働く人の8割が未対応と回答|ワークスモバイルジャパンのプレスリリース

建設業法改正に対応しないと罰則が科せられる

時間外労働の上限規制に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられる恐れがあります

その他、建設業法に違反した際の罰則は、以下のとおりです。

違反内容

罰則

無許可で建設業を営む

3年以下の懲役または300万円以下の罰金

書類に虚偽の記載をして提出する

6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金

主任技術者または監理技術者を置かない

100万円以下の罰金

法律の内容を理解し、ペナルティを受けるリスクを避けましょう。

参考URL:時間外労働の上限規制 わかりやすい解説

参考URL:建設業法 | e-Gov法令検索

残業を減らすための5つの取り組み

残業を減らすための取り組みを、5つピックアップしました。

  • 週休2日制を導入する
  • ITツールを活用する
  • 働き方や工期を見直す
  • 発注者の理解を得る
  • 助成金を活用する

労働環境の改善に興味がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

週休2日制を導入する

残業を減らすための取り組みとして、週休2日制の導入が挙げられます

適度に休日を設けることで、作業員の意欲向上と生産性アップが期待できるでしょう。

なお、建設業での週休2日制は義務化されていません。

しかし、国によって週休2日制は推奨されており、今後義務化される可能性があります。

建設業の週休2日制に向けて、何から取り組むべきか悩んでいる方は、以下の記事を参考にしてみてください。

>>>建設業の週休2日はいつから義務化されるのか?週休2日に向けてやるべき5つのこと

ITツールを活用する

ITツールを活用して業務を効率化すれば、労働時間を減らせます

建設業で導入が進められているITツールの例を、いくつか紹介します。

  • AI(人工知能)
  • 勤怠管理ツール
  • ICT(情報通信技術)
  • SaaS(クラウドサービス)
  • BIM/CIM
  • ドローン

たとえば、AIのデータ処理・画像分析機能は、資材管理の自動化や図面の自動作成に役立つでしょう。

他にも、足場が悪い場所・転落の恐れがある場所の点検作業をドローンが行うことで、現場の危険性を取り除くことが可能です。

働き方や工期を見直す

働き方や工期を見直すことも、残業を減らすための取り組みのひとつです。

柔軟な働き方を取り入れれば、作業員のワークライフバランスを維持でき、効率よく業務を進められます

事務員のテレワーク化、ノー残業デーの実施、ローテーション勤務体制などが具体例として挙げられます。

また、「工期を守るために残業しなければいけない」というケースは少なくありません。

残業時間を減らすには、適切な工期を設定することがポイントです

発注者の理解を得る

残業を減らすと「工期が長引く」や「工事費用がかさむ」などの問題が発生するため、発注者の理解を得る必要があります

残業上限規制の適用により労働環境の改善が求められる旨を、取引先に説明しておきましょう。

なお、2020年10月に施行された「改正建設業法」の中で、著しく短い工期で依頼した場合は「発注者も国土交通省によって勧告・公表される」と定められています。

参考URL:改正建設業法について

助成金を活用する

建設業にて働き方改革を進める際は、次の助成金を活用してみてください。

助成金

特徴

参考URL

働き方改革推進支援助成金

時間外労働の上限規制に円滑に対応するため、生産性を高めながら、労働時間の短縮等に取り組む中小企業・小規模事業者を支援する

令和6年度「働き方改革推進支援助成金」

業務改善助成金

事業場内の最低賃金を引き上げるとともに、生産性向上に資する設備・機器の導入等を行った中小企業・小規模事業者を支援する

業務改善助成金|厚生労働省

人材確保等支援助成金

人材の確保・定着を目的として、魅力ある職場づくりのために労働環境の向上等を図る企業を支援する

人材確保等支援助成金|厚生労働省

人材開発支援助成金

雇用する労働者を対象に、職務に関連した専門的な知識や技能を習得させるための訓練等を計画に沿って実施する事業者を支援する

人材開発支援助成金|厚生労働省

以下の記事では、建設業におすすめの補助金をピックアップしています。

補助金を活用するメリットも解説しているので、ぜひご覧ください。

>>>建設業におすすめの補助金5選!活用するメリットを解説

参考URL:時間外労働の上限規制

まとめ:建設業法改正に対応して人材確保を有利に進めましょう

今回の記事は、建設業法改正で変化する点や、時間外労働の上限規制について紹介しました。

残業を減らすための取り組みとしては、次の5つが挙げられます。

  • 週休2日制を導入する
  • ITツールを活用する
  • 働き方や工期を見直す
  • 発注者の理解を得る
  • 助成金を活用する

作業員の労働時間を正確に把握するには、ITツールの活用がおすすめです。

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