建設業の週休2日はいつから義務化されるのか?週休2日に向けてやるべき5つのこと

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目次

結論、建設業における週休2日制は義務ではありません。しかし、義務化に向けての取り組みが進んでいます。

国土交通省は、公共工事・民間工事どちらに対しても週休2日制を推奨しています。

とはいえ、週休2日制に向けて何から対応すべきか悩んでいる人もいることでしょう。

そこでこの記事では、週休2日制のメリット・デメリットや対応すべきことを解説していきます。

建設業界の働き方改革が気になる方はぜひこの記事をご覧ください。

また、週休2日制に加えて、2024年は残業規制強化への対応が必須です。

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建設業における週休2日は義務化されていない

建設業における週休2日制は義務化されておらず、2023年10月時点では推奨段階です。

そのため、週休2日制を導入しなくても法律違反にはなりません。

ただし、国土交通省や日本建設業連合会(日建連)は、建設業の週休2日制に向けて取り組みを進めています。

これからの建設業の流れを理解するために、取り組み内容を把握しておきましょう。

建設業の週休2日に向けた取り組み

国土交通省の「建設業の働き方改革の推進」によると、2024年4月から施行される「残業上限規制」を踏まえて、建設業での週休2日制を推進しています。

具体的な取り組み例は、以下のとおりです。

公共工事

民間工事

・直轄工事では週休2日工事や、週休2日交代制モデル工事を順次拡大していく

・適正な工期設定や週休2日の確保について働きかけを実施

また、2017年に日建連の「日建連の取組み | 建設業週休二日」において、週休2日を実現するための基本方針である「週休二日実現行動計画」が策定されました。

「土曜日および日曜日の閉所」や「2024年3月までに全建設現場における週休2日(4週8閉所)の実現」を目指すことが述べられています。

【2024年4月施行】残業上限規制に違反すると罰則がある

2024年4月1日より、建設業で「改正労働基準法」が適用されます。

改正前後で変化する点は以下の表のとおりです。

改正前

改正後(2024年4月から適用)

36協定を結んでいれば、残業時間の上限なし

36協定を結んだ場合

「36協定を結ばずに時間外労働をさせる」や「36協定で定めた時間を超えて時間外労働をさせる」といった行為は、残業の上限規制に違反します。

違反した場合は「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」が課せられるので注意してください。

このように、建設業界でも働き方改革の推進が進んでいます。

週休2日と完全週休2日との違い

週休2日制を目指す前に、完全週休2日制との違いを理解しておきましょう。

完全週休2日制とは、1年を通して「毎週2日の休日がある」ことです。

対して「月に1回以上2日休みの週がある」場合は、週休2日制といいます。

たとえば「基本的に土曜日、日曜日と休みで、4週目のみ水曜日も出社する」この場合は、週休2日制となります。

1週だけでも2日休みでない週があれば、完全週休2日制とはいえないので気を付けましょう。

テキスト

なぜ週休2日が導入できないのか?建設業の現状

国土交通省の「週休2日対象工事の実施状況」によると、2021年度における「直轄工事の週休2日制実施率は97.4%」です。

2016年度の実施率20.0%と比較すると、週休2日工事が増えていることが分かります。

ただし、国土交通省が調査した「建設業の働き方改革の現状と課題」によると、建設工事全体では「技術者の約4割が4週4休以下で就業」している状態です。

4週8休で就業している技術者は「2割程度」という結果になりました。

週休2日制の導入は進んでいますが、まだまだ週休1日の現場が多いのが建設業の現状です。

週休2日制の導入が難しいのは

・人手が不足している

・工期を守らないといけない

などが要因として挙げられます。

作業員の高齢化により人手不足が加速するなか、工期を厳守するために週休1日で工事を進めなければならない場合があります。

建設業が週休2日を導入するメリット

建設業が週休2日を導入するメリットを2つ紹介します。

  • 若手人材を確保できる
  • 従業員のモチベーションが向上する

1つずつ解説していきます。

若手人材を確保できる

2022年において、建設業就業者は「29歳以下が約12%で55歳以上が約36%」でした。

他の産業でも高齢化や人手不足が問題となっていますが、建設業は特に深刻な状況です。

参考URL:4. 建設労働 | 建設業の現状

人手不足を解消するためには、若手人材を確保しなければいけません。

働き方改革が進んでいる現代において、週休1日制では若手人材が他の産業・企業に流れてしまう可能性があります。

労働環境を改善し若者が働きやすい環境をつくることが、人手不足を解決するポイントです。

従業員のモチベーションが向上する

日建連の調査「建設業のいま | 建設業週休二日」を見てわかるように、建設業の労働時間は「全産業の平均と比較して年間約320時間も長い」状態です。

また、「ワークスモバイルジャパン」のデータによると、20・30代の施工管理者の54%が残業時間の長さに「ストレスを感じる」と答えました。加えて「転職を検討している」と回答した割合は44%です。

週休2日制を導入することで、従業員のストレスを軽減でき、安定したメンタルによってモチベーションの向上が期待できます。

モチベーションが向上することで、業務効率、質のよい作業につながるでしょう。

給料が減る?建設業が週休2日を導入するデメリット

建設業が週休2日を導入するデメリットは、以下のとおりです。

  • 日給制の場合は給料が減る
  • 工期がタイトになると激務になる
  • 工期が長くなるとコストがかかる

1つずつ解説します。

日給制の場合は給料が減る

日給制とは、働いた日数によって月の給与が決まる形態です。対して、固定額を支給する形態を月給制といいます。

建設業では日給制が定着しており、休日が増えると従業員の収入が減少してしまいます。「収入が減るくらいならば週休は1日でも仕方ない」と考える方も多いでしょう。

週休2日制によって給与が減る場合、従業員のモチベーション維持が課題となります。

工期がタイトになると激務になる

週休1日制と同じ工期設定のまま週休2日制に移行すると、工期がタイトになる点がデメリットです。

建設業では天候不良や災害といった予期せぬトラブルで、工事の進捗が思うように進まないケースもあります。

週休2日制になり休みが多くなったとしても、作業時間の減少によって激務を強いられれば、従業員は心身ともに疲弊してしまうでしょう。

工期が長くなるとコストがかかる

週休2日制に応じて工期を長く設定した場合、その分だけコストがかさみます。上昇するコストとしては、主に人件費と機器のレンタル代です。

決められた工期の中で週休2日制を導入するためには、業務の無駄を改善して生産性アップを図ることが重要です。

改正労働基準法について解説している資料がありますので、より詳しく知りたいという方はこちらをご確認ください。

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週休2日に向けてやるべきこと5つ

週休2日制に向けてやるべきことを5つピックアップしました。

  • 適切な工期を設定する
  • 給与形態を見直す
  • ITツールを活用して業務改善を図る
  • 他社の導入事例を参考にする
  • 発注者の理解を得る

どのように週休2日制を導入すべきか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

適切な工期を設定する

週休2日制を導入すると作業時間が減少するため、適切な工期を設定する必要があります。

休みが増えたからといって、業務が激務化すれば従業員のワークライフバランスを保てません。

発注者・元請けの理解は必要になりますが、さまざまなトラブルも想定したうえで、余裕をもった工期を設定しましょう。

給与形態を見直す

働いた日数によって給与が変化する日給制のまま週休2日制に移行すると、従業員の給与が減少してしまいます。

「月給制への移行」または「時給制の導入」など、給与形態の見直しが必要です。

また、月給制で安定した収入が得られるという点は、他社との差別化になり若者の関心を高められます。

ただし、従業員によっては「働いただけ給料に結びつくほうがよい」などの意見もあるでしょう。

現場の意見を聞きながら、自社にとって最適な給与形態を検討してみてください。

ITツールを活用して業務改善を図る

ITツールを活用して生産性が向上すれば、週休2日制を導入しやすいです。

たとえば、建設業では以下のようなIT技術が利用されています。

  • AI(人工知能)
  • ICT(情報通信技術)
  • SaaS(クラウドサービス)
  • BIM/CIM
  • ドローン

AIのデータ処理・画像分析機能の応用により、資材管理を自動化したり図面を自動で作成したりできます。

SaaSの代表的なサービスとしては、ビジネスチャットやWeb会議が挙げられるでしょう。

「いつでも・どこでも」現場の状況を確認できるため、時間とコストを削減可能です。

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他社の導入事例を参考にする

建設業で週休2日制へと移行している企業を紹介します。

企業名

従業員数

労働環境改善への取り組み内容

取り組みによる効果

株式会社吉川造園

10人未満

・1年単位の変形労働時間制を廃止

・年間休日が大幅に増加

有限会社スタプランニング

10~29人

・有給奨励日を月に3日設けて休みを促す

・残業時間を月平均4時間まで削減

大津建設株式会社

30~49人

・4週8休へ移行

・ワークライフバランスの向上

他社の導入事例を参考にして、自社に合った方法を考えましょう。

発注者の理解を得る

週休2日制になると工期が長引き、これまでよりも費用がかかるので、発注者の理解を得ることが大切です。

「国土交通省が週休2日制を推進していること」や「残業上限規制の適用により労働環境を改善する必要があること」を説明しましょう。

ちなみに、2020年10月に施行された「改正建設業法」では、著しく短い工期で依頼した場合は「発注者も国土交通省によって勧告・公表される」と定められました。

建設業が週休2日を導入するときに活用できる助成金

建設業が週休2日を導入するときに活用できる助成金「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)」を紹介します。

「働き方改革推進支援助成金(適用猶予業種等対応コース)」は2023年から新設された助成金です。

労働環境の整備に取り組む中小企業事業主の支援を目的としており、週休2日制の導入は助成対象となります。

実施期間や助成額は以下のとおりです。

  • 交付申請書の提出締め切り……2023年11月30日(木)
  • 取り組み実施……2024年1月31日(水)まで

月の休日数

助成額

4週4休から4週8休まで

1日増加ごとに25万円

たとえば、以下のような場合

  • 4週4休から4週6休とする……50万円
  • 4週4休から4週8休とする……100万円

といった助成金が受け取れます。

クラフトバンク総研所長のコメント

建設会社にとって週休2日は人材を引き留める上でも重要です。

建設業の人手不足は「建設投資が伸びているのに建設業就業者がこの10年で20万人も減っているからだ」と言われます。それも確かに原因ではあるのですが、この10年で建設業では累計186万人が転職していることはあまり知られていません。

減少20万人と転職186万人。「人が採れない」ことよりも「人が辞めて、特定の会社に人材が集中している」ことの方が影響が大きいのです。

よく「少子化で若い人が入ってこない」と言われますが、建設業に新卒で入ってくる若者は少子化の中で微増傾向にあります。若者が増えてもほとんどが都市部の大手企業に集まっていること、高齢一人親方の引退のスピードに追い付いていないこと、そして多くの人材が業界内外に転職してしまっていることが問題です。

転職の要因は給与だけでなく労働環境です。賃上げだけで解決するほど建設業の人手不足問題は単純ではありません。人を辞めさせないための第一歩が週休2日制です。

民間工事で週休2日の定着は無理?

民間工事がメインで設備施工管理に従事している筆者が思うのは「民間工事で週休2日の定着は難しい」です。

かなり無理な工程を求められることも現実としてあり、土日に作業しなければ間に合わないことも多々あります。

また、民間工事の場合、施主さんも法改正などの知識が少ないため、建設業の働き方改革が2024年から始まることなど知りません。

となると、少しでも早く工事を終わらせてほしいという思いから、施工業者に無理な要求をしてくるケースもあるでしょう。

「そんな要求飲まなければいいだけだ」といった意見もあるでしょうが、その場合「土日も作業して早く終わらせます」という業者に仕事を取られてしまうリスクもあります。

法改正したとしても、ブラックボックスになっている民間工事で全業者が週休2日を定着させることはないでしょう。

まとめ:建設業における週休2日の義務化に向けて取り組みは進んでいる

今回の記事は、建設業における週休2日制について解説しました。

従業員が働きやすい環境を実現することで、若手人材の確保が見込めます。

週休2日制を導入するためには

  • 適切な工期を設定する
  • 給与形態を見直す
  • ITツールを活用して業務改善を図る
  • 他社の導入事例を参考にする
  • 発注者の理解を得る

といったことに取り組む必要があります。

生産性向上・従業員満足度アップのためにも、週休2日制に向けた活動に取り組んでいきましょう。

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