建設業の退職金共済手帳とは?制度の詳細や更新時期・手続き、退職金の受け取り方を紹介

目次
建設業における退職金共済制度は、労働者の生活を支え、業界全体の健全な成長を促すために欠かせない仕組みです。
退職金共済手帳は制度を運用するうえでの核であり、事業主と労働者の双方が正確に理解する必要があります。
ただし、手帳の更新時期や手続き、退職金の受け取りまでのプロセスなど、確認すべき事項が多いため、戸惑う方も少なくないでしょう。
この記事では、建設業における退職金共済手帳について、次のポイントに沿って詳しく解説します。
- 退職金共済手帳の概要や更新について
- 退職金共済の詳細
- 建設業退職金共済制度で退職金をもらう方法
また最後には、建設業の退職金共済手帳に関する質問にも回答しているので、ぜひ最後までご覧ください。
建設業の退職金共済手帳とは

建設業に従事する労働者には、退職金共済手帳が交付されます。
退職金共済手帳には、建設業退職金共済制度における掛金納付の履歴が記録されます。
全国共通であるため、転職後も同じ手帳を継続して利用可能です。
事業主は賃金を支払う際に共済証紙を購入し、労働日数分の証紙を手帳に貼付し、消印しなければなりません。
手帳には最大250日分の共済証紙を貼りつけられ、満了時には更新手続きが求められます。
新たに建設業で働き始めた労働者には、掛金の一部が免除される制度があり、初回交付の手帳には「掛金助成欄」が設けられています。
掛金助成欄には証紙を貼る必要はないものの、勤務日には消印が必要です。
参照
更新時期・手続きについて
共済手帳の表紙左下には、次回の更新時期が記載されています。
250日分の共済証紙を貼り終わっていなくても、更新時期が来たら新しい手帳への更新が必要です。
更新する際は、「更新申請書」に必要事項を記入し、手帳と一緒に都道府県支部へ提出します。
初回交付の掛金助成手帳は、証紙貼付欄に200日分の証紙を貼り、掛金助成欄に50日分の消印を行った後に「掛金助成手帳更新申請書」を提出し、新しい手帳を受け取ります。
2冊目以降の手帳には、250日分の証紙を貼り終えた後で「共済手帳更新申請書」を提出しましょう。
なお、更新時期を過ぎても掛金納付の実績が失効することはありません。しかし、できるだけ速やかに手続きを進めることが望ましいでしょう。
従業員が退職し、共済手帳を返却する必要があるにもかかわらず所在不明で渡せない場合は「共済手帳返納届」または「掛金助成手帳返納届」を作成し、手帳と共に支部で返納手続きを行います。
そもそも「退職金共済」とは

従業員が安心して働くためには、退職金共済制度の理解が重要です。
退職金共済制度の概要や種類、メリット・デメリットや「退職金」との違い、そして企業型確定拠出年金について詳しく解説します。
参照
制度としての概要
退職金共済は、従業員が退職する際に一定の金額を支給するための制度です。
建設業では「建設業退職金共済制度(建退共)」が存在し、中小企業退職金共済法に基づいて運用されています。
事業主が掛金を納め、労働者の退職時に共済機構が退職金を支払う仕組みです。
建設現場で働く労働者であれば、国籍や職種に関わらず加入可能です。
ただし、役員報酬を受け取っている者や、本社勤務の事務職員は対象外になるため注意しましょう。
退職金共済の種類
退職金共済には、主に3つの種類があります。
種類 | 概要 |
中小企業退職金共済 (中退共) |
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特定退職金共済 (特退共) |
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特定業種退職金共済 |
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制度としての概要とあわせて、それぞれの種類についての内容も覚えておきましょう。
退職金共済のメリット・デメリット

退職金共済には、いくつかのメリットがあります。
まず、国から助成金が支給される点です。
さらに、掛金は全額損金算入が可能なため、節税効果が期待できます。
また、制度の運営にかかる手間が少ない点もメリットと言えるでしょう。
一方で、掛金が原則として減額が認められていないというデメリットも存在します。
すべての従業員を対象とする必要があるため、選択的な加入ができない点も注意が必要です。
さらに、加入期間が短い場合、支給される金額が掛金を下回るリスクも考慮しなければなりません。
建設業退職金共済制度で退職金をもらうのに必要な条件

ここでは、建設業退職金共済制度を利用して退職金を受け取るための条件を3つ紹介します。
なお、建設業における退職金の詳細は以下の記事でも詳しく解説しています。
建設業の退職金はいくら?退職金の導入状況や建退共・中退共制度の概要も解説
退職の理由
退職金を受け取るには、共済手帳に記載された退職理由に該当する必要があります。
具体的には、建設業の廃業や死亡、業務上のけがや病気、自己都合による退職などが対象です。
手続きの進め方
退職金を請求するには、所定の申請手続きが求められます。
必要書類や手続き内容は退職理由や加入している共済組合によって異なるため、事前に確認しておくことが重要です。
退職金の計算方法
退職金の金額は、以下を基に算出されます。
- 共済手帳に記録された掛金納付日数
- 加入していた共済制度の種類
- 退職時の年齢
退職金に関する詳細や手続きについて知りたい場合は、建設業退職金共済機構または所属している共済組合に問い合わせましょう。
建設業の退職金共済手帳に関するよくある質問

最後に、退職金共済手帳についてよくある質問と回答をまとめました。
従業員から質問があった際に、スムーズに対応できるよう理解を深めておきましょう。
Q.記載の氏名や住所などに誤りがあったら?
A. 退職金共済手帳の氏名や住所に誤りがある場合、速やかに修正手続きが必要です。
まず「被共済者氏名等変更届」(様式第018号)に必要事項を記入し、変更内容を証明する書類(戸籍抄本・住民票・運転免許証のコピーなど)を用意してください。
書類が用意できたら、共済手帳を都道府県支部へ提出します。情報に誤りがあると退職金の手続きや給付に支障が出るため、早めの修正が重要です。
Q.1人2冊以上の手帳を持っていると?
A. 冊以上の退職金共済手帳を所持していると、証紙の貼付実績が分散し、正確な退職金額が算出されない恐れがあります。
解決するためには「共済手帳重複届(兼更新申請書)」(様式第019号)に必要事項を記入し、すべての手帳を都道府県支部に提出しなければなりません。
手続きには被共済者番号や証紙貼付日数の記入も必要です。早急に重複を解消し、退職金を適切に管理しましょう。
Q.退職金共済手帳はいつ届く?
A. 中小企業退職金共済(中退共)に加入した場合、退職金共済手帳は申し込みからおおよそ1ヶ月で届きます。
ただし、4月から7月の繁忙期には、手帳が届くまでに2ヶ月ほどかかることもあります。
1ヶ月経過しても手帳が届かない場合は、中退共本部契約課へ問い合わせましょう。
Q.建設業退職金共済がもらえるのはいつ?
A. 退職後、所定の手続きを行って申請することで建設業退職金共済を受け取れます。
受給資格や必要書類、申請手順は建設業退職金共済機構へ問い合わせるか、公式ホームページで確認してください。
Q.企業型確定拠出年金とは?
A.近年注目されている企業型確定拠出年金(企業型DC)は、企業と従業員が掛金を積み立て、運用益を加算した金額が退職時に支給される仕組みです。
従業員だけでなく役員も加入可能なため、経営者自身の退職後の資金計画にも活用できます。
Q.「退職金」との違いは?
退職金は、企業が従業員に退職時に支給する金銭のことです。
一方、退職金共済は退職金の支給に備えて準備するための制度です。
退職金共済に加入すれば、企業は計画的に退職金の積立ができます。
まとめ
建設業における退職金共済手帳は、労働者の将来を支える役割のあるツールです。
事業主には、制度としての仕組みを理解し、更新時期や手続きをしっかり管理することが求められます。
退職金共済手帳を適切に運用することで、従業員の福利厚生が充実し、信頼関係の強化にもつながるでしょう。
また、退職金の受け取り方法に関する正確な知識を持つことで、従業員への説明もスムーズになります。
この記事を参考に、退職金共済制度の運用を見直し、労務管理の質を高める取り組みを進めてみてください。