建設業の平均年齢は44.2歳|65歳以上の割合や業界全体の人口推移も解説
目次
建設業の平均年齢は44.2歳で、全産業の平均年齢よりも高い傾向にあります。※平成28年と少し古い情報。
ただし、若手人材の不足は顕著で、建設業の就業者数も年々減っているのが実情です。
建設業に携わる上で、業界の平均年齢や人口推移、若者離れの原因にはしっかり向き合う必要があります。
そこでこの記事では、
- 建設業の平均年齢と推移
- 建設業の人口推移
- 建設業で若者離れが進んでいる理由
- 建設業で若手人材や女性職員を採用するためにできること
などを詳しく解説します。
建設業の平均年齢は44.2歳
国土交通省が公表しているデータによると、建設業の平均年齢は44.2歳です。ただし平成28年と古い情報になっています。
令和5年の情報を探しましたが、平均年齢が分かる情報がありませんでした…。
そこで、令和3年に国土交通省から発表されている「最近の建設業を巡る状況について」を参考にし、独自に平均年齢を計算してみます。
上記の情報を活用した平均年齢の計算方法は以下の手順になります。
- 各年齢階層の中央値を出す
- 中央値を各年齢階層の人数を掛け合わせる
- 各年齢階層の掛け合わせた数値を合計する
- 全体の人数で割る
この計算方法で算出した、令和3年の建設業の平均年齢は「約47.9歳」でした。
平成28年の「42.2歳」と比べると、約5.7歳も平均年齢が上がったことになります。
ただし、この計算方法は正確なものではないので、あくまでも目安になります。
この計算方法の精度が低い理由としては以下のとおりです。
- 各年齢階層の中央値を代表値として使用しているが、年齢階層内の年齢分布が均一であるとは限らない
- 年齢階層が「65歳以上」のため、この層の実際の平均年齢はわからない※今回は67歳を中央値として計算
あくまでも参考値であることはご了承ください。
次の章からは、建設業全体の働き手の年齢構成や、専門工事業種別の年齢構成などを踏まえて、詳しく解説します。
働き手の年齢構成と平均年齢の推移
建設業で働く人の年齢構成は、以下のように平成10年あたりを境に29歳以下の若手が減少しはじめ、55歳以上の層が増えはじめています。
令和4年には、55歳以上の割合が3割を超えており、29歳以下の若手が1割しかいない状態です。
全産業と比較すると、あきらかに若手人材の不足と就業者の高齢化が顕著なことがわかります。
また、建設業界における平均年齢の推移は以下の通りです。
年度 | 建設業就業者の平均年齢 | 全産業の就業者の平均年齢 |
平成23年 | 43.9 | 41.5 |
平成24年 | 43.8 | 41.7 |
平成25年 | 44.4 | 42.0 |
平成26年 | 44.4 | 42.1 |
平成27年 | 44.0 | 42.3 |
平成28年 | 44.2 | 42.2 |
建設業だけではなく全産業もですが、平成23年から徐々に平均年齢が上がってきています。
また、建設業と全産業を比較すると、概ね2歳以上の差があるのがわかります。
専門工事業種別の平均年齢
建設業と一口で言ってもさまざまな職種に分類されるため、それぞれの平均年齢を確認してみましょう。
職種 | 平均年齢 | 最も割合の多い年齢層 |
型枠大工 | 46.3 | 55〜59歳 |
とび職 | 38.8 | 30〜34歳 |
鉄筋作業 | 43.9 | 35〜39歳 |
大工 | 50.4 | 55〜59歳 |
左官 | 53.6 | 60〜64歳 |
配管工事 | 45.8 | 35〜39歳 |
電気工事 | 45.2 | 35〜39歳 |
とび職のように動く範囲が広く体力を使う仕事であれば、10代から30代が多くなりますし、左官の仕事では丁寧な技術が要求されるため、技術を積んできた50代から60代が多くなっています。
65歳以上と20歳以下の就業者の割合
55歳以上の割合が3割を超えており、29歳以下の若手人材が1割しかいないと解説しましたが、年齢別の割合でみると65歳が最も多く、52万人以上いるのがわかります。
続いて、45〜49歳以上で44万人以上となっています。
24歳以下は全年齢のなかでも割合が少なく、25〜29歳が約21万人、20〜24歳が約14万人、15〜19歳が最も少なく約2万人です。
現在20代で活躍している人が少ないため、今後は30代・40代も徐々に少なくなると考えられます。
建設業の人口推移
建設業の人口推移を建設業全体・外国人人材・女性に分けて解説します。
建設業全体の就業者数
建設業全体の就業者数の推移は、以下の通りです。
参考資料:2023年 労働力調査 基本集計|総務省
建設業の就業者数は右肩下がりで減少しており、20年前の2003年と比較するとおよそ120万人以上が労働力が失われています。
職人の高齢化や若手人材の不足は今にはじまったことではなく、10年・20年前から労働人口の減少とともに徐々に問題化していたのです。
外国人人材の就業者数
建設業における外国人人材の就業者数は、2023年10月時点の調査では約11.6万人で、全産業の約6.4%に該当します。
外国人就業者数の近年の推移は、以下の通りです。
建設業全体の就業者数は減少していますが、外国人就業者の数は10年でおよそ10倍になっています。
女性の就業者数
総務省の「2023年労働力調査」によると、建設業における女性の就業者数は2023年時点でおよそ88万人であり、2017年からの推移が以下の通りです。
年 | 女性の就業者数(万人) | 就業者の中で女性が占める割合(%) |
2013 | 71 | 14.2 |
2014 | 75 | 14.8 |
2015 | 75 | 14.9 |
2016 | 74 | 14.9 |
2017 | 76 | 15.2 |
2018 | 82 | 16.2 |
2019 | 84 | 16.8 |
2020 | 82 | 16.6 |
2021 | 83 | 17.1 |
2022 | 85 | 17.7 |
2023 | 88 | 18.2 |
参考資料:2023年労働力調査|総務省
2013年からの10年で15万人以上の女性就業者が増えており、建設業に対する認識や業界内の働き方に変化が起きていると推測できます。
建設業で若者離れが進んでいる理由
建設業で若者離れが進んでいる理由は、以下の3つです。
- 長時間労働の常態化と休日の少なさ
- 働き方の不安定さ
- キャリア形成や成長した姿を思い描けない
それぞれの理由を詳しく解説します。
長時間労働の常態化と休日の少なさ
建設業は、ほかの産業に比べると労働時間の長い傾向にあります。
建設業の年間出勤数と年間実労働時間の推移がわかるデータとして、以下の内容を国土交通省が発表しています。
出典:国土交通省|建設業における働き方改革 中部地方整備局 建政部
グラフから、建設業は全産業と比べて年間の出勤日数が12日以上多く、労働時間も68時間以上多いことがわかるでしょう。
建設業界では、完全週休2日制を導入している企業はまだ少ないのが実情です。
特に、二次請け・三次請けの企業は、なるべく工期を短くして利益を残したいと考えるため、休みが少なくなる傾向にあります。
時間労働の常態化や休日の少なさといった働き手への負担が、若手人材を遠ざけている原因の一つといえます。
働き方の不安定さ
建設業に従事する人のなかには、月額固定給ではなく「日給×出勤日」という働き方をする人も少なくありません。
この場合、仕事をすればするほど稼げるわけですが、天候に左右されやすい建設業では、急遽仕事が無くなるケースもあります。
例えば、工事を予定していた日に雨や雪が降ると危険を伴うため、工事を中止する必要があります。
そのため、時期によっては出勤できる日が少なく、収入が少なくなることも珍しくありません。
また、納期が決まっている建設工事において、天候を理由に簡単に後期をずらすわけにはいかないため、当初の休みが突然出勤日に変わることもあります。
このように、建設業界の不安定な働き方を避けようと考える人も少なくありません。
キャリア形成や成長した姿を思い描けない
建設業に対してよいイメージを持てず、成長した姿を思い描けないことで、職業の選択肢に挙げない人もいます。
国土交通省の「建設現場で働く人々の誇り・魅力・やりがい検討委員会提言」には、建設業のイメージ調査を行った結果として、以下の回答が記載されています。
- 危険を伴いそう
- ハラスメントが横行してそう
- 世間の評判やイメージがよくない
- 業界に将来性がなさそう など
実際に建設業界では、昔ながらの考え方や働き方をする人も少なくありません。
具体的なキャリア形成のイメージができなかったり、成長できる環境に感じられなかったりすることから、建設業を避ける人もいるのです。
建設業の若者離れに関しては、以下の記事も参考にしてみてください。
>>>「建設業の若者離れは当たり前」と言われる理由と今後の対策案
建設業界の若手人材や女性職員を採用するためには
建設業界の若手人材や女性職員を採用するためには、昔ながらのやり方にこだわらずに、以下のようなやり方を取り入れることが大切です。
- 職場・現場の環境整備をおこなう
- 職場体験学習を導入する
- 人材育成のできる仕組みを導入する
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてください。
職場・現場の環境整備をおこなう
国土交通省の「建設現場で働く人々の誇り・魅力・やりがい検討委員会提言」に記載されているように、建設業は「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く残っています。
イメージの悪さを払拭するためにも、職場・現場の環境整備は重要です。
例えば、仮設トイレや更衣室、休憩所の不衛生さは、多くの現場で問題に挙げられます。
不衛生さの解消をするためにも、女性用の仮設トイレの設置や更衣室や休憩所に空気清浄機を設置するなどが必要です。
衛生環境を改善し、女性が使いやすい空間を用意するようになるだけで、人材採用にとっての利点になるでしょう。
また、外注先を管理したり建設業許可証を作成したりと、現場以外にも多くの業務がある建設業において、業務効率の改善も重要です。
弊社クラフトバンクでは、業務効率改善の無料エクセルテンプレートを用意していますので、ぜひ以下のリンクからダウンロードしてみてください。
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職場体験学習を導入する
建設業界に進む人で多いのが、工業高校や専門学校を卒業した学生です。
しかし、そのような学生でも建設業の3Kを危惧して、別の業界に就職しているのが現実です。
多くの学生は、イメージだけで建設業を避けているため、実際の仕事内容ややりがいまで興味を持てていません。
そこで、工業高校や専門学校の学生に対して、職場体験学習の導入をおすすめします。
実際に奈良県の松塚建設株式会社では、2004年から中学生への職場体験学習を実施しているそうです。(建設業における若手人材の確保と育成|松塚建設株式会社)
職場体験を通して、実際の職場や現場、仕事内容を知ってもらうことで、興味を持ってもらうことにつながるでしょう。
人材育成のできる仕組みを導入する
人材育成のできる仕組みを導入し整えておくことも、若手人材や女性を採用する上で大切です。
就業者の高齢化が進むことで、技術をただしく継承できなかったりそもそも教える・マネジメントできる人がいなくなったりします。
また、「見て覚えろ」のように昔ながらの教え方をすることが、人材の定着を遠ざける要因になるのです。
育成する環境や仕組みが整うことで、成長する姿やキャリアの明確化につながるでしょう。
人材育成の仕組みを導入する手段の一つとしておすすめなのが、2019年4月から国土交通省と建設復興基金が主体となり運用を開始している「建設キャリアアップシステム」です。
建設業の人手不足や職人の高齢化・若手人材の育成といった問題への対策として導入されているので、ぜひ検討してみてください。
>>>建設業のキャリアアップシステムとは?運用目的やメリットなどを解説
建設業の労働環境は改善されつつある
建設業界の労働人口の減少や若手人材の不足は、建設業の働き方や労働環境に大きな原因があると解説しました。
ただし、このような問題はこれから徐々に改善されると考えられます。
その理由の一つが、労働基準法36条(サブロク協定)の導入です。
2019年4月に適用開始した労働基準法に関する法律で、建設業は2024年4月まで適用を免れていました。
時間外労働(残業)に対して上限が設けられたことで、会社は無理に残業をさせられなくなりました。
もしも、時間外労働に関するルールを破った場合は、労働基準法違反として罰則の対象になります。
このように働き方改革が進んでいることで、建設業界の長時間労働の常態化や休日の少なさといった問題は改善されるのではないでしょうか。
まとめ:建設業界は転換期を迎えているところ
この記事では、建設業の平均年齢や人口推移、若手人材や女性職員の採用などについて詳しく解説しました。
建設業の平均年齢は44.2歳であり、全産業と比較して高い傾向にあります。
その理由が、若手人材の不足や現在活躍している就業者の高齢化です。
人材確保や育成を進めるためにも、建設業界の魅力を伝えたり働きやすい環境を整えたりすることが大切です。
業務効率の改善で悩んでいる人は、クラフトバンクが提供する建設業の業務効率改善に活用できる工程表や勤務表などの無料エクセルテンプレートをダウンロードしてみてください。