建設業法のガイドラインとは?建設業者が守るべきルールをわかりやすく解説

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目次

建設業法のガイドラインとは、国土交通省が策定している「建設業法令遵守ガイドライン」のことです。

元請負人と下請負人との関係において、どのような行為が建設業法に違反するのかを示しており、知らず知らずのうちに違反行為を犯さないように違反事例などが記載されています。

本記事では、建設業法のガイドラインについて概要と13項目の内容を詳しく解説します。

建設業法のガイドラインとは?

建設業法のガイドラインとは、正式名称を建設業法令遵守ガイドラインと言います。

建設業法のポイントをわかりやすく解説するために国土交通省が策定した資料です。

具体的には、元請負人と下請負人との関係において、どのような行為が建設業法に違反するのかを示しています。

理解するのが難しい法律において、故意ではなくても、知らず知らずのうちに違反行為をしている可能性があります。

不知による法令違反行為を防ぎ、元請負人と下請負人との対等な関係の構築およびクリーンな取引の実現が本ガイドラインの目的です。

建設業法の具体的な違反事例を以下の記事で詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

>>>建設業法の具体的な違反事例とは?処分の種類や処分内容についても解説

元請負人と下請負人の関係に係る建設業法令遵守ガイドライン

本ガイドラインの内容として、主に下請取引における取引の流れや見積もり条件の提示、契約締結などの以下の13項目で構成されています。

  • 見積条件の提示等
  • 書面による契約締結
  • 工期
  • 不当に低い請負代金
  • 原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保
  • 指値発注
  • 不当な使用資材等の購入強制
  • やり直し工事
  • 赤伝処理
  • 下請代金の支払
  • 長期手形
  • 不利益取扱いの禁止
  • 帳簿の備付け

各法律の留意すべきポイントと建設業法に抵触する可能性のある行為事例を解説しています。

※詳しい内容は、国土交通省が公表している「建設業法令遵守ガイドライン(第9版)」をご覧ください。

見積条件の提示等

見積条件の提示等は、「建設業法 第二十条第4項、第二十条の二」に該当します。

請負契約を締結する際に、見積もり作成に必要な項目を提示する必要があるという内容です。

工事見積もりの作成に必要な項目には、以下のものが挙げられます。

  • 工事の種別ごとの材料費
  • 労務費
  • 法定福利費 
  • 各工程ごとの作業とその準備に必要な日数 など

これらの条件で見積もりを作成することで、トラブル防止や適切な請負価格の設定につながるのです。

不明確な工事内容で見積り作成を行わせた場合は、建設業法違反になる可能性があります。

また、適切な見積期間の設定をしなかったり、見積条件に関する質問を受けた際に未回答だったりした場合も違反に該当します。

見積期間は、以下のように、工事の予定価格の額によって変わるので注意が必要です。

  • 工事1件の予定金額が500万円未満…1日以上
  • 工事1件の予定金額が500万円以上5,000万円未満…10日以上
  • 工事1件の予定金額が5,000万円以上…15日以上

適切な見積書の書き方については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にしてみてください。

>>>建設業での見積書の書き方をテンプレートをもとに解説!記載すべき内容から作成方法まで

建設業法で規定されている見積期間については、以下の記事で詳しく解説しているので、合わせて参考にしてみてください。

>>>建設業法で規定されている見積期間とは?具体的な日数や数え方についても解説

書面による契約締結

書面による契約締結は、「建設業法 第十八条、第十九条第一項、第十九条の三、第二十条第一項、第十九条第二項」に該当します。

元請負人と下請負人の間で交わされる業務締結は、書面契約が基本という内容です。

以下の内容が守られていないと違反に該当する可能性があります。

  • 請負契約にあたり必ず書面を作成し、工事着工前に交付する
  • 建設業法第十九条第1項の必要記載事項を満たした契約書面を作成する
  • 追加工事を行う前は着工前に書面による契約変更が必要になる
  • 追加工事の費用を下請負人に負担させることは建設業法違反にあたるおそれがある

下請負人との契約や契約内容そのものの変更、追加工事などは、契約書面の作成や変更が必要です。

工事請負契約書の内容や記載すべき項目などに関しては、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてみてください。

>>>工事請負契約書とは?記載すべき項目や印紙税、無料テンプレートも紹介

工期

工期は、「建設業法 第十九条の五、第十九条第二項、第十九条の三」に記載されています。

建設業法に抵触する可能性のある行為として、以下の内容が挙げられます。

  • 著しく短い工期の禁止
  • 工期変更に伴う変更契約
  • 工期変更に伴う増加費用

下請負人の責めに帰すべき理由がない場合に、当初の契約で定めた工期から変更がかかるケースは珍しくありません。

そのような工期変更に伴って下請工事費用が増加してしまったにもかかわらず、元請負人が協議に応じなかったり契約書面の変更を行わなかったりした場合には、違反になる可能性があるのです。

工期が変更になる場合は、対象の工事着工前に、必ず書面による契約変更が必要になります。

不当に低い請負代金

不当に低い請負代金は、「建設業法 第十九条の三」に該当します。

元請負人は、自己の立場を利用して、通常必要である原価に満たない金額で請負契約を締結することを禁止されています。

建設業法に抵触する可能性のある行為として、以下の内容が挙げられます。

  • 下請負人との協議なしに、下請負人による見積金額を下回る金額で契約を締結した場合
  • 今後の取引が不利になると下請負人に示唆して契約を締結した場合
  • 金額の増額に応じることなく、下請負人に追加工事を施工させた場合
  • 契約締結後に、元請負人が契約金額を一方的に減額した場合

建設工事において取引上優越的な地位にある元請負人が、自己の立場を利用して、下請負人に金銭的な不利益を強いる行為は違法に該当すると覚えておきましょう。

原材料費等の高騰・納期遅延等の状況における適正な請負代金の設定及び適正な工期の確保

本内容は、「建設業法 第十九条第二項、第十九条の三、第十九条の五」に該当します。

原材料費や労務費、エネルギーコストなどの高騰や資材不足によって、施工費用が上昇したり納期の遅延が起こったりした場合の内容です。

建設業法に抵触する可能性のある行為として、以下の内容が挙げられます。

  • 追加費用の負担や工期について、下請負人からの協議に応じず、必要な変更契約を行わなかった場合
  • 原材料費等のコストの上昇分を取引価格に反映せずに、従来通りの金額で施工した場合

原材料費や労務費、エネルギーコストなどの高騰によるコスト上昇は、下請負人からは言い出しにくいことですので、元請負人から積極的に協議の場を設けることが大切でしょう。

指値発注

指値発注は、「建設業法 第十八条、第十九条第一項、第十九条の三、第二十条第四項」に該当します。

「不当に低い請負代金」と被る内容もありますが、下請負人の見積金額を大きく下回る額での契約や、契約代金の一方的な指値などが、指値発注として禁止されているのです。

建設業法に抵触する可能性のある行為として、以下の内容が挙げられます。

  • 元請負人が一方的に提供または貸与した設備や防具などの費用や、下請代金の金額を決定して契約を締結した場合
  • 合理的根拠がないのにもかかわらず、下請負人が提示した見積金額を大きく下回る金額で契約した場合
  • 下請負人が提示した見積書に記載されている労務費や法定福利費などを検討することなく、一方的に指値を行い契約した場合

指値発注は建設業法違反に該当するため、元請負人と下請負人の双方でしっかりと金額に対して話し合った上で契約を進める必要があります。

不当な使用資材等の購入強制

不当な使用資材等の購入強制は、「建設業法 第十九条の四」に該当します。

元請負人や注文者が、工事に使用する資材や機械などの購入先を指定して、下請負人に購入を強制するのは禁止です。

建設業法に抵触する可能性のある行為として、以下の内容が挙げられます。

  • 使用する資材や機械などの指定、あるいは購入先の指定をし、当初予定していた購入金額よりも高い価格で資材や機械を購入させた場合
  • 元請負人が資材などを購入させたことで、すでに購入していた資材等を返品し、金銭面および信用面で損害を受けた場合

元請負人の関連する会社などを無理に進めて、下請負人が損害を被ると法律に違反することになります。

やり直し工事

やり直し工事は、「建設業法 第十八条、第十九条第二項、第十九条の三」に該当します。

工事のやり直しが発生した際に、元請負人が双方の責任および費用負担を明確にしないまま、工事をやり直し、結果的に責任と費用を下請負人に負担させるのは法律で禁止されています。

やり直し工事を下請負人に依頼する場合は、下請負人に責任がある場合を除き、基本的には元請負人が費用を負担する必要があるのです。

また、やり直し工事を依頼する場合は、契約変更も必要です。

赤伝処理

赤伝処理は、「建設業法 第十八条、第十九条、第十九条の三、第二十条第四項」に該当します。

赤伝処理とは、元請負人が下請負人に対して支払う代金から、以下の費用を差し引く行為のことです。

  • 一方的に提供したり貸与したりした安全衛生防具等の費用
  • 下請代金を支払う際に発生する振り込み手数料
  • 施工時に発生する建設廃棄物の処理費用
  • 駐車場代や安全協力会費などの上記以外の諸費用

下請負人が使用した根拠がないにもかかわらず、下請代金から勝手に差し引く行為は違法にあたります。

下請代金の支払

下請代金の支払は、「建設業法 第二十四条の三、第二十四条の六、第二十四条の三第二項」に該当します。

下請代金の支払いにおける違法行為には、支払留保支払遅延があります。

その名の通り、工事が完了しているのにもかかわらず、支払いをしなかったり遅れたりする行為は違法というわけです。

建設業法では、元請負人は、工事完了後に支払を受けた場合は、当該支払を受けた日から一ヶ月以内で、かつなるべく短い期間で支払いをしなければならないと記されています。

長期手形

長期手形は、「建設業法 第二十四条の六第三項」に該当します。

長期手形は、一回の工事で4,000万円以上の工事を下請負人に出す場合の「特定建設業者」に関する内容です。

特定建設業者が元請負人は、手形期間が120日を超える手形での下請代金の支払いを行った場合に建設業法違反となります。

そもそも金融機関による割引を受けるのが困難な長期手形の交付が違反にあたるため、なるべく現金による支払いが望ましいでしょう。

不利益取扱いの禁止

不利益取扱いの禁止は、「建設業法 第二十四条の五」に該当します。

元請負人が下請負人に対して、資材の購入を強制させられたり長期間に渡って代金を支払わなかったりした場合に、下請負人が監督行政庁に通報した場合の内容です。

通報されたことに逆恨みして、下請代金を一方的に減額したり、今後の取引を停止したりする行為は「不利益取扱いの禁止」として業法違反にあたります。

帳簿の備付け

帳簿の備付けは、「建設業法 第四十条の三」に該当します。

建設業者は、国土交通省令で定めのある帳簿を営業者ごとに備えなければなりません。

さらに帳簿は5年間の保存が必要であり、完成図面などの営業に関する図書は10年の保存が義務付けられています。

帳簿の備付けや正しい期間保存されていないと違反にあたります。

まとめ:建設業の働き方改革においてガイドラインの遵守は欠かせない

本記事では、元請負人と下請負人との関係における、建設業法のガイドラインについて解説しました。

建設業法は非常に細かく、知らず知らずのうちに違反を犯している可能性もあります。

あらためて建設業法のガイドラインを確認し、元請負人と下請負人の双方が気持ちよく工事を進められるようにしましょう。

また、建設業法では「工事請負契約書」や「建設業許可証」の作成が義務付けられています。

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