建設業法の具体的な違反事例とは?処分の種類や処分内容についても解説
目次
建設業法とは、建設業者の資質向上や建設工事における請負契約適正化により、発注者の保護や建設業の健全な発達促進などを目的に制定された法律です。
建設業法に違反した場合は様々な処分に科せられる他、最悪の場合は建設業許可を取り消されてしまう事態となります。
そのため、建設業者として建設業を営む以上、建設業法の内容を理解し、遵守しなければなりません。
この記事では建設業法の具体的な違反事例とともに、処分の種類や内容について解説していきます。
建設業法違反に対する監督処分
建設業法違反に対する監督処分は次の3つです。
- 指示処分
- 営業停止処分
- 許可取消処分
それぞれ詳しく解説します。
指示処分
指示処分とは、法令違反および不適切な状態を訂正するため、監督行政庁が建設業法違反業者に対して改善命令するものです。
監督行政庁とは、営業許可を与えている国土交通大臣や都道府県知事を指します。
指示処分に該当する事象は次のとおりです。
- 建設工事の請負契約規定違反
- 労働災害発生時の虚偽報告
- 営業所の専任者を監理技術者として配置していない
- 営業所新設から30日以内に変更届出書を提出していない
- 適切な足場の設置など、労働者の墜落を防止する必要な措置を講じていない
続いて具体的な違反事例を紹介します。
違反事例
処分日……2024年2月6日
処分業者……高知県某建設業者
処分根拠……建設業法第28条第1項
処分原因……県に提出した書類の記載によると、建設業法第26条第3項及び建設業法施行令第27条により専任の主任技術者等の配置が義務づけられている、民間発注の建築一式工事に、建設業法第7条第2号に規定される営業所の専任技術者を主任技術者として配置していたことが判明した。
引用・参考:国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト
営業停止処分
営業停止処分とは、指示処分に従わなかった場合、適用される監督処分です。
営業停止期間は1年以内ですが、停止期間は監督行政庁の判断で決まるため、どれくらいの期間になるかは業者によって異なります。
また、営業停止には「営業の全停止」と「営業の1部停止」に分けられる他、悪質な違反行為の場合には指示処分を経ず、直接営業停止処分が課せられます。
営業停止処分に該当する事象は次のとおりです。
- 指示処分違反
- 資格要件を満たさない者を主任技術者・管理技術者に配置
- 経営事項審査における虚偽申請
- 労働災害防止に向けた注意義務がありながら必要な措置を講じていない
- 外注加工費などを架空計上し、事業年度における法人税・地方税を免れた
続いて具体的な違反事例を紹介します。
違反事例
処分日……2024年1月11日
処分業者……石川県某建設業者
処分根拠……建設業法第28条第3項(第1項第2号該当)
停止期間……令和5年12月28日から令和6年2月10日までの45日間
処分原因……令和3年5月31日及び令和4年5月31日を審査基準日とする経営事項審査において、完成工事高を水増しした虚偽の申請を行うことにより得た経営事項審査結果を公共工事の発注者に提出し、公共発注者がその結果を資格審査に用いた。このことは、建設業法第28条第1項第2号に該当すると認められる。
引用・参考:国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト
許可取消処分
許可取消処分とは、営業停止処分に違反して営業したり、不正な手段で建設業の許可を取得したりした場合、建設業の許可が取り消せられる1番重い監督処分です。
また、役員・支店長・営業所長などが建設業法に違反して罰則を受けるなどして、建設業許可の欠格用件に該当した場合でも許可取消処分が科せられます。
許可取消処分に該当する事象は次のとおりです。
- 指示処分・営業停止処分への違反
- 不正な手段による許可取得
- 経営業務の管理責任者・専任技術者が退職などでいなくなった
続いて具体的な違反事例を紹介します。
違反事例
処分日……2024年1月9日
処分業者……大阪府某建設業者
処分根拠……建設業法第29条第1項第1号
処分原因……当該建設業者は、建設業法第7条第2号に規定する営業所の専任技術者である者が、当該建設業者を退職し、当該建設業者の営業所に常勤して専ら職務に従事しておらず、同号に掲げる許可の基準を満たさなくなった。
引用・参考:国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト
建設業法違反に対する刑事処分・対象となる違反事例
建設業法違反に対する刑事処分は次の4つです。
- 300万円以下の罰金または3年以下の懲役
- 100万円以下の罰金もしくは6ヵ月以下の懲役
- 100万円以下の罰金
- 10万円以下の過料
ここでは、対象となる違反事例も踏まえて解説します。
300万円以下の罰金または3年以下の懲役
300万円以下の罰金または3年以下の懲役に処される該当項目は次のとおりです。
第四十七条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役又は三百万円以下の罰金に処する。
一 第三条第一項の規定に違反して許可を受けないで建設業を営んだ者
二 第十六条の規定に違反して下請契約を締結した者
三 第二十八条第三項又は第五項の規定による営業停止の処分に違反して建設業を営んだ者
四 第二十九条の四第一項の規定による営業の禁止の処分に違反して建設業を営んだ者
五 虚偽又は不正の事実に基づいて第三条第一項の許可(同条第三項の許可の更新を含む。)又は第十七条の二第一項から第三項まで若しくは第十七条の三第一項の認可を受けた者
また、情状によっては、懲役または罰金を併科されることがあります。
100万円以下の罰金もしくは6ヵ月以下の懲役
100万円以下の罰金もしくは6ヵ月以下の懲役に処される該当項目は次のとおりです。
第五十条 次の各号のいずれかに該当する者は、六月以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
一 第五条(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による許可申請書又は第六条第一項(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
二 第十一条第一項から第四項まで(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による書類を提出せず、又は虚偽の記載をしてこれを提出した者
三 第十一条第五項(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による届出をしなかつた者
四 第二十七条の二十四第二項若しくは第二十七条の二十六第二項の申請書又は第二十七条の二十四第三項若しくは第二十七条の二十六第三項の書類に虚偽の記載をしてこれを提出した者
また、情状によっては、懲役または罰金を併科されることがあります。
100万円以下の罰金
100万円以下の罰金に処される該当項目は次のとおりです。
第五十二条 次の各号のいずれかに該当するときは、その違反行為をした者は、百万円以下の罰金に処する。
一 第二十六条第一項から第三項まで又は第二十六条の三第七項の規定による主任技術者又は監理技術者を置かなかつたとき。
二 第二十六条の二の規定に違反したとき。
三 第二十九条の三第一項後段の規定による通知をしなかったとき。
四 第二十七条の二十四第四項又は第二十七条の二十六第四項の規定による報告をせず、若しくは資料の提出をせず、又は虚偽の報告をし、若しくは虚偽の資料を提出したとき。
五 第三十一条第一項、第四十一条の二第四項又は第四十二条の二第一項の規定による報告をせず、又は虚偽の報告をしたとき。
六 第三十一条第一項、第四十一条の二第四項又は第四十二条の二第一項の規定による検査を拒み、妨げ、又は忌避したとき。
七 第四十一条の二第三項の規定による命令に違反したとき。
10万円以下の過料
10万円以下の過料に処される該当項目は次のとおりです。
第五十五条 次の各号のいずれかに該当する者は、十万円以下の過料に処する。
一 第十二条(第十七条において準用する場合を含む。)の規定による届出を怠つた者
二 正当な理由がなくて第二十五条の十三第三項の規定による出頭の要求に応じなかつた者
三 第四十条の規定による標識を掲げない者
四 第四十条の二の規定に違反した者
五 第四十条の三の規定に違反して、帳簿を備えず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿若しくは図書を保存しなかつた者
「建設業法 違反事例」でよくある質問
「建設業法 違反事例」でよくある質問は次の4つです。
- 建設業法は直近だといつ改正されましたか?
- 建設業法違反による営業停止処分を受けたらすべての業務が停止するのですか?
- 建設業法違反による欠格要件とは?
- 建設業法違反で行政から通知が来た場合の対応方法とは?
それぞれ詳しく解説します。
1.建設業法は直近だといつ改正されましたか?
法律は時代の流れに合わせて、都度改正されます。
建設業法も例外ではなく、直近ですと2023年1月1日に改正建設業法が施行されました。
今回の改正で特定建設業許可に必要な下請金額が変更され、改正前は3,500万円以上でしたが、改正後は4,000万円以上に緩和されています。
また、施工体制台帳の作成が必要な下請金額も4,000万円以上から、4,500万円以上に変更されました。
建設業法に違反しないためには、改正内容を理解し、適切に対応していくことが大切です。
2.建設業法違反による営業停止処分を受けたらすべての業務が停止するのですか?
営業停止処分を受けたからといって、停止期間中にすべての業務を停止する必要はありません。
停止期間中の実施不可能な行為と可能な行為は次のとおりです。
営業停止期間中に実施可能な行為 | 営業停止期間中に実施不可能な行為 |
---|---|
建設業の許可・経営事項審査・入札監査資格審査の申請 | 建設工事の新規請負契約の締結 |
3.建設業法違反による欠格要件とは?
欠落要件とは、欠落事由ともいい、法に則った営業を見込めない事業者を排除するための要件です。
建設業法違反により罰金などを科せられると欠格要件とみなされる恐れがあります。
欠格要件とみなされると許可取消処分に科せられる他、建設業許可の新規取得を5年に渡って許可されなくなります。
建設業の許可は5年間を期限とした更新制であり、欠格要件によって新規許可の取得ができない場合は、建設許可が不要な500万円以下の工事のみしか受注できません。
4.建設業法違反で行政から通知が来た場合の対応方法とは?
建設業法違反の疑いがある場合、国土交通省から立入検査の通知が届く可能性があります。
通知が届いた後は、検査職員が国土交通省から事務所に派遣された後、立入検査が実施されます。
検査当日に関係資料を迅速に確認するために、事前に資料を準備しておくように指示されるため、関係資料は不備なく準備しなければなりません。
また、立入検査に対応する際は、次の注意点を押さえておく必要があります。
- 検査職員の質問に虚偽の説明はしない
- 検査職員が書類を持ち出す場合は書類提出理由を確認する
- 提出した書類を記録しておく
- 質問事項を後の検証に備え簡単な報告書をまとめる
まとめ
この記事では、建設業法の違反事例などについて紹介しました。
内容は以下のとおりです。
- 建設業法違反に対する処分は「監督処分」と「刑事処分」がある
- 建設業法違反に対する監督処分は「指示処分」「営業停止処分」「許可取消処分」の3つ
- 建設業法の内容だけでなく、違反事例も理解して何に気を付けておくべきか具体的に理解しておくことが大切
建設業法に違反してしまうと、様々な処分に科せられてしまい、最悪の場合は建設業の許可を取り消されてしまいます。
取得した建設業許可を取り消されないためには、日頃から建設業法の内容を理解して遵守しておかなければなりません。
建設業法の違反リスクを低減するためにも、当記事を参考にして法令内容や違反事例を押さえておくことをおすすめします。
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