建設業の高齢化の実態とは?2025年問題と対策についても解説
目次
建設業従事者の高齢化問題は、深刻化しています。
令和3年時点で、建設業全体の約25%が65歳以上の高齢人材であり、29歳以下の若手人材は、わずか12%ほどです。
また、少子高齢化が進む日本では、2025年には約800万人が75歳以上となり、労働人口が大幅に減少することが懸念されています。
建設業だけでも90万人ほどが足りなくなると予測されているので、人材雇用の強化や労働環境の改善など、できることからはじめておきましょう。
この記事では、
- 建設業従事者の高齢化の実態
- 建設業が抱える課題
- 建設業で2025年に起きる問題と問題への取り組み
などを詳しく解説します。
建設業従事者の高齢化の実態
建設業における若手人材の不足が騒がれている一方で、従事者全体の高齢化が進んでいることも大きな問題になっています。
本章では、建設業従事者の高齢化の実態について解説します。
60歳以上の技能者が全体の25%
建設業界の高齢化について理解する上で重要なのが、現状はどの年齢層の割合が多いのかということです。
以下のグラフは、国土交通省が公表している、年齢階層別の建設技能者の数です。
最も多いのが65歳以上で約52万人以上おり、60歳以上の割合が全体の約25%以上になります。
また29歳以下の割合が少なく、中間層である45歳以上の割合が大きくなっているので、今後さらに建設業の高齢化は進むと考えられます。
若手人材不足が顕著になっている
前項で解説したグラフからもわかるように、若手人材の数は非常に少なく、全体の約12%・約37万人です。
以下のグラフを見てもらうと、どの時期ぐらいから若手人材が減り出しているのかがわかります。
平成13年ごろから、全産業を通して29歳以下の割合が減りはじめていますが、特に建設業の落差が大きくなっています。
平成25年ごろが下落のピークに達しており、これからの若手人材の育成を担う30代・40代の割合が少なくなっていると予測できるでしょう。
このように若手人材が少ない理由として、昔ながらのやり方が色濃く残る建設業に対してネガティブなイメージをもつ人が多いと考えられます。
また、長時間労働への耐性や体力・精神面でのタフさが求められるため、若手人材が選ばない・離れるということにつながるのです。
>>>建設業の人材採用が困難な理由とは?採用強化のためにできることも解説
離職者が入職者を上回っている
建設業の高齢化を理解する上で欠かせないのが、離職者と入職者の割合です。
ここまでの内容から、若手人材が減り高齢人材が増加していることがわかりますが、以下のグラフを確認すると、離職者と入職者の推移を把握できます。
出典:労働賃金・公共工事設計労務単価の推移|一般社団法人 日本建設業連合会
2012年から2021年までは、離職数よりも入職数のほうが上回っていましたが、2022年では離職率が入職率を大きく上回る結果になっています。
建設業従事者の25%以上が60歳以上というのは事実で、今後、定年退職を迎えて離職する人が増えてくることは確実でしょう。
ただし、入職率と離職率は建設市場の需要の大きさも関係するため、入職率が減り続けるとは限りません。
建設業が抱える課題
建設業が抱える課題として、以下の3つが挙げられます。
- 長時間労働が常態化している
- 就業者の評価基準が不透明なケースが多い
- 労働環境や給与水準が改善されない
それぞれ詳しく解説します。
長時間労働が常態化している
建設業は、ほかの産業に比べると、年間の労働時間が長い傾向にあり、残業を含めて長時間労働が常態化しています。
以下のグラフは、建設業の年間出勤数と年間実労働時間の推移を表した、国土交通省が公表しているものです。
年間の出勤日数を確認すると、建設業は全産業と比べて12日以上多く、240日以上働いています。
また、労働時間も全産業と比較して68時間以上多く、2,000時間を超えています。
さらに、建設業における休日取得状況では、4週間で6日しか休日が取れていない人が最多という結果が出ており、週休2日の確保ができていないのが現状です。
このような調査結果からもわかるように、建設業界では長時間労働が常態化しています。
>>>建設業には労働時間の課題がある?その理由や解決策について
就業者の評価基準が不透明なケースが多い
建設業の業界構造として、発注者・元請・下請という構図ができます。
各現場では、発注企業の担当者や元請企業の現場監督が指揮にあたり、下請業者は担当者数名が現場作業にあたることが一般的です。
そのような仕事のやり方において、仕事への取り組み姿勢やスキルを評価してもらいにくい環境が就業者の評価を曖昧にしている原因の一つと言えます。
スキルや知識を身につけても評価してもらえなければ、昇格や昇進の機会を得るのが困難であり、自身のアピールもしにくいのが現状です。
曖昧な評価基準であれば、将来的なキャリアパスのイメージがつきにくく、就職に対してメリットを感じられないことから就業希望者の減少につながると考えられます。
労働環境や給与水準が改善されない
国土交通省の「建設現場で働く人々の誇り・魅力・やりがい検討委員会提言」によると、建設業は「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く残っています。
時間外労働の常態化や休日の少なさだけではなく、職場・現場の環境の不衛生さなども、多くの現場で問題に挙げられます。
また、適切な評価を受けられないことから、給与水準も曖昧な会社も多く、過去の経験や資格の有無、マネジメント経験などが給与に反映されないことも多く見受けられるのです。
このような背景が、若手人材不足を招いている要因の一つと考えられるでしょう。
建設業で2025年におこる問題とは
2025年問題とは、日本の少子高齢化が進むことで、2025年に約800万人が75歳以上となり、地域の人口・労働人口が大幅に減少することが懸念されているのです。
建設業においても、2025年問題は大きな影響を受けると予測されています。
現在60歳以上の建設業従事者の約80万人は、これからの10年間の間に引退する可能性があり、引退後には約90万人の職人が不足すると言われています。
つまり、今までの建設業界を支えてきたベテラン職人が引退することになるのです。
また、次の世代を担う若手人材が減っているので、ただ労働人口が減るだけではなく、技術や知識を継承する人材がいなくなることも懸念されています。
今後は、インフラや高層ビルなどの老朽化による維持修繕工事の増加も増えてくるため、建設業界全体で大きな問題として捉える必要があります。
建設業が職人の高齢化・2025年問題にそなえて取り組むべき対策
建設業が職人の高齢化や2025年問題にそなえて取り組むべき対策は、以下の4つです。
- 労働環境や評価基準を見直す
- 人材雇用に力を入れる
- 国の取り組みを自社に取り入れる
- 仕事効率化のシステムを導入する
それぞれ詳しく解説します。
労働環境や評価基準を見直す
建設業界の2025年問題に対応するには、まずは労働環境の改善や評価基準の見直しが必要です。
例えば、勤務時間と残業時間を正確にはかるために勤怠管理システムを導入し、労働時間の透明性を確保すると、働きやすさの高い会社になるでしょう。
また、不衛生さの解消では、女性用仮設トイレの設置や更衣室や休憩所への空気清浄機の導入などが挙げられます。
さらに、会社の給与水準や福利厚生を整えることも、人材不足を解消するための一助になるでしょう。
一例として、工業高校出身・大学出身・経験・未経験・資格保有などを考慮して、各々のスキルを評価した給与にすることが大切です。
また、福利厚生は社員のモチベーションに影響しますし、求職者には「社員を大切にしている会社なのかな」と好印象を与えられます。
人材雇用に力を入れる
建設業の2025年問題で企業が取り組むポイントは、いかにして人材不足を解消するかです。
前項で解説した、労働環境や評価基準の見直しは会社内部の対策と言えます。
さらに、少しでも多くの人に興味をもってもらうためには、外部に対して働きかけることが重要です。
例えば、工業高校の生徒向けに会社の概要や仕事内容を説明したり、先輩社員から仕事の魅力ややりがいを語ってもらったりすると、働くイメージがつきます。
また、外国人採用に力を入れることも大切です。
建設業における外国人人材の就業者数は、2023年10月時点で約11.6万人、全産業の約6.4%に該当します。
建設業全体の就業者数は減少していますが、外国人就業者の数が10年で約10倍になっていることは、人材採用における大きなチャンスと言えます。
外国人雇用を促進したい場合は、厚生労働省の「外国人雇用サービスセンター」を活用してみましょう。
国の取り組みを自社に取り入れる
建設業の高齢化問題や人材不足に関しては、国も力を入れています。
一例として、2019年4月から国土交通省と建設復興基金が主体となり運用を開始している「建設キャリアアップシステム」が挙げられます。
建設キャリアアップシステムとは、建設業に従事する技能者の所有資格や現場での職業履歴などを登録し、技能者の客観的な評価と処遇につなげる仕組みのことです。
建設業の人手不足・職人の高齢化・長時間労働の常態化といった問題への対策として導入されたシステムで、以下のような目的があります。
- 技能者のキャリアパスを見える化する
- 技能者の待遇を改善する
- 技能者の雇用と育成に役立てる
- 事業者の業務効率を改善する
本システムを導入するのには、登録や専用端末の準備が必要で、また利用料金もかかります。
ただし、これから人材確保が難しくなると予想される建設業では、システムを導入することが大きなメリットになると考えられます。
建設キャリアアップシステムの概要やメリットについては、以下の記事も参考にしてみてください。
>>> 建設業のキャリアアップシステムとは?運用目的やメリットなどを解説
>>>建設業の働き方改革とは?国土交通省のガイドラインをわかりやすく解説
仕事効率化のシステムを導入する
人材不足への対策として、仕事の効率化も重要なポイントになります。
IoTやDXなどのデジタル技術を導入することで、業務効率の改善につながり、職員の負担軽減ができます。
従業員1人あたりの業務負担が軽減できれば、人材不足の問題にも対処可能です。
また、若手人材の採用を強化する上で、デジタル技術の導入や業務の効率化はよいアピールにつながるでしょう。
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まとめ:建設業の高齢化問題に向き合う必要がある
建設業における就業者の高齢化と若手人材不足は深刻化しています。
国土交通省が公表している、令和3年時点の年齢階層別の建設技能者数では、60歳以上の割合が全体の約25%以上です。
また、2025年問題のように、今後はベテラン職人がどんどん引退していき、建設業だけでもおよそ90万人が不足すると考えられています。
人材の流出は止められないため、今からは、若手人材の雇用や建設業界の働き方改善が必須になるでしょう。
まずは各企業で業務効率の改善に取り組んでみてはいかがでしょうか。
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