建設業の人材採用が困難な理由とは?採用強化のためにできることも解説
目次
- 建設業界における採用の現状
- 建設業の有効求人倍率は5倍以上
- 若手人材の不足が問題視されている
- 工業高校生の7割以上は建設業を志望
- 建設業の人材採用が困難な理由とは
- 建設業界の労働環境に対して悪い印象がある
- 採用ターゲットを絞れていない
- キャリアパスのイメージがわかない
- 建設業で採用強化のためにできること
- 職場の労働環境を整える
- 採用者を絞る
- キャリアパスを見える化する
- 給与水準や福利厚生を整える
- スキルアップへの支援を積極的におこなう
- デジタル技術を導入し、職員の負担を軽減する
- 建設会社の採用成功事例
- 事例1:株式会社田中建興
- 事例2:株式会社ダイニッセイ
- まとめ:建設業の採用は社内の労働環境とイメージの改善から行おう!
建設業界の人材採用は厳しい状況が続いており、有効求人倍率が5倍以上とほかの職種と比べても非常に高い数値で推移しています。
原因には、建設業界の働き方や昔ながらのイメージが関係しています。
しかし、工業高校に通う学生の7割以上が建設業を志望しているアンケート調査もあり、採用チャンスがないわけではありません。
そこでこの記事では、
- 建設業界における採用の現状
- 建設業の人材採用が困難な理由
- 建設業で採用強化のためにできること
- 建設会社の採用成功事例
などを、詳しく解説します。
建設業界における採用の現状
建設業界における採用は深刻な問題となっています。
事実、若手人材の数が少なくなり、50代以上の割合が増えているのが実情です。
建設業界の採用の現状に関して、有効求人倍率や高校生へのアンケート調査を基に解説します。
建設業の有効求人倍率は5倍以上
ハローワークが公表している建設業(躯体工事を除く)の有効求人倍率は、令和6年2月時点で5.42倍です。
建設業(躯体工事を除く)の5.42倍は、全業種のなかで6位にあたります。
また、1位〜5位は以下の通りです。
順位 | 業種 | 有効求人倍率(令和6年2月時点) |
1 | 建設躯体工事 | 9.75倍 |
2 | 保安 | 7.16倍 |
3 | 建築・土木・測量技術者 | 7.09倍 |
4 | 土木 | 6.80倍 |
5 | 採掘 | 6.20倍 |
1〜5位の8割が建設業に関する仕事であり、建設業界全体で人員が足りていないと推測できます。
若手人材の不足が問題視されている
人手不足が顕著な建設業界ですが、特に若手人材の不足が問題視されています。
以下のグラフは、建設業界に従事する者の割合を年齢で表したものです。
出典:国土交通省|建設業における働き方改革 中部地方整備局 建政部
建設業に従事する29歳以下の割合はおよそ1割で、55歳以上は3割以上いることがわかります。
全産業と比較しても、建設業界の若手人材の数は少ないのです。
また、以下のグラフを確認すると、年齢階層別の建設技能者数の割合がわかります。
45歳以上と比較すると、29歳以下の若手人材が少なくなっています。
60歳以上が全体の4分の一を占めており、10年後にはその技能者の多くが引退し世代交代することを考えると、若手人材の確保と育成は建設業にとって大きな問題と言えるでしょう。
工業高校生の7割以上は建設業を志望
建設業の若手人材は減少していますが、工業高校に通う学生の7割以上が建設業を志望しているのも事実です。
建設業振興基金の「建設企業が行う工業高校生の採用活動の取組事例集」では、工業高等学校における就職意識に関する実態調査の内容が掲載されています。
以下のグラフが、学生が志望する就職先をまとめたものです。
出典:建設業振興基金|建設企業が行う工業高校生の採用活動の取組事例集
志望産業で働きたいと思ったきっかけは、以下の結果になっています。
出典:建設業振興基金|建設企業が行う工業高校生の採用活動の取組事例集
親や親戚の影響もあるようですが、「社会の役に立ちたい」「手に職をつけたい」と考えている学生が多い傾向にあるとわかります。
志望する業種や志望理由から、建設業自体が社会の役に立てる仕事と認識している学生も多いとわかるでしょう。
そのため、採用方法や学生へのアプローチ次第で、若手人材不足を解消できると考えられます。
建設業の人材採用が困難な理由とは
建設業の人材採用が困難な理由には、以下の3つがあります。
- 建設業界の労働環境に対して悪い印象がある
- 採用ターゲットを絞れていない
- キャリアパスのイメージがわかない
それぞれ詳しく解説します。
建設業界の労働環境に対して悪い印象がある
建設業界の労働環境に対して、以下のような悪い印象を持つ人も少なくありません。
- 昔ながらの文化が残っていそう
- 全国転勤が多そう
- ワークライフバランスが取れなさそう
- 給料が低そう
- 残業や休日出勤が多そう など
事実、時間外労働や長時間労働の常態化、休日日数などは、建設業界の大きな問題の一つです。
「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージは、今も根強く残っているのです。
また、学生が会社選びをする際に重要視する項目として、以下のアンケート結果があります。
出典:建設業振興基金|建設企業が行う工業高校生の採用活動の取組事例集
学生の傾向としては、勤務時間や給料といった「労働条件」に関する項目を重要視していることがわかります。
建設業としては、労働環境改善に力を入れていることやスキルや経験に見合った給料がもらえるかなど、悪い印象を払拭して働きやすさをアピールできるかがポイントになるでしょう。
採用ターゲットを絞れていない
人手不足を解消するのが目的になり、とにかく人を集めたいと考えている企業も少なくないでしょう。
しかし、採用ターゲットを絞れていないと、求職者に向けたメッセージがズレてしまったり、不要な求人を出してしまいコストが余計にかかったりします。
効果的に採用を進めたい場合は、採用ターゲットを絞ることが大切です。
キャリアパスのイメージがわかない
建設業の採用が困難な理由の一つに、将来的なキャリアパスのイメージがつきにくい点も挙げられます。
建設業ではどうしても現場作業のイメージが強いため、資格取得やマネジメント業務などのイメージができず、自身の将来像が浮かびにくいでしょう。
キャリアパスのイメージにつながる一例として、島根県が作成する「建設業キャリアパスガイド」が挙げられます。
建設に関わる職種ごとで、1年目以降のキャリアパスが具体的に記載されているので、どのように成長できるのかが明確です。
女性が働いている姿や各職種のやりがいなどもわかるため、求職者は仕事とキャリアのイメージがつきやすいでしょう。
建設業で採用強化のためにできること
建設業で採用強化のためにできることは、以下の6つです。
- 職場の労働環境を整える
- 採用者を絞る
- キャリアパスを見える化する
- 給与水準や福利厚生を整える
- スキルアップへの支援を積極的におこなう
- デジタル技術の導入をし職員の負担を軽減する
それぞれ詳しく解説します。
職場の労働環境を整える
国土交通省の「建設現場で働く人々の誇り・魅力・やりがい検討委員会提言」に記載されているように、建設業は「3K(きつい・汚い・危険)」のイメージが根強く残っています。
時間外労働の常態化や休日の少なさだけではなく、職場・現場の環境の不衛生さなども、多くの現場で問題に挙げられます。
時間外労働を削減するためには、ノー残業デイの導入や休日は現場に入れなくする仕組みを導入するのが一つの手段です。
また、不衛生さの解消では、女性用仮設トイレの設置や更衣室や休憩所への空気清浄機の導入などが挙げられます。
労働時間や女性でも働きやすいクリーンな環境をアピールすることで、人材採用の強化になるでしょう。
また、建設業では2024年4月より働き方改革が施行開始され、時間外労働のルールを破った企業に対しては罰則がかされます。
働き方改革のように、国も建設業界の環境改善を進めており、今後はより働きやすい業界へと変貌していくでしょう。
建設業の働き方改革については、以下の記事を参考にしてみてください。
>>>建設業の働き方改革とは?国土交通省のガイドラインをわかりやすく解説
採用者を絞る
なるべく多くの人を採用したいと考えて幅広く採用活動を行うよりも、企業にとって必要な人材にターゲットを絞るのが大切です。
例えば、若手人材の確保を目指すのであれば、工業高校で会社説明会をおこなったり、興味を持ってもらえる説明資料を作ったりするのが大切です。
また、経験豊富で資格を持つベテラン職人を採用したい場合は、転職エージェントサービスを活用し、エージェントから該当する人材を紹介してもらうのがいいでしょう。
キャリアパスを見える化する
建設業で採用強化するためには、キャリアパスの見える化も非常に重要です。
実際に働いている社員を基に、キャリアパスの実例を見せることで求職者は働くイメージができます。
どの段階で資格を取得して、部下を持ったりマネジメント業務を行ったりするのかなどをわかりやすく見える化してみましょう。
給与水準や福利厚生を整える
会社の給与水準や福利厚生を整えることも、採用強化のポイントです。
建設業では、工業高校出身・大学出身・経験・未経験・資格保有などを考慮して、各々のスキルを評価した給与にすることが大切です。
また、福利厚生には以下のような種類があります。
- 家賃補助
- 家族手当
- 資格取得手当
- 毎年の健康診断費用
- 財産形成
- 社員食堂 など
福利厚生は社員のモチベーションに影響しますし、求職者には「社員を大切にしている会社なのかな」と好印象を与えることが可能です。
福利厚生にも様々な種類があるので、現社員の意見も取り入れつつ、ニーズに合わせて導入してみてください。
スキルアップへの支援を積極的におこなう
人材育成・スキルアップできる仕組みを導入し整えておくことも、人材採用を進める上で大切です。
「昔ながらの働き方」の印象がある建設業界では、若手職人を育成する仕組みが整っておらず、離職につながるケースも少なくありません。
建設業界で働きたい人の多くは、現場でしっかり知識と経験を身につけて活躍したいと考えています。
そのため、スキルアップするための支援には、積極的に取り組み、求職者にアピールしましょう。
また、人材育成の仕組みとしておすすめなのが、2019年4月から国土交通省と建設復興基金が主体となり運用を開始している「建設キャリアアップシステム」です。
建設業の人手不足や職人の高齢化・若手人材の育成といった問題への対策として導入されているので、ぜひ検討してみてください。
>>>建設業のキャリアアップシステムとは?運用目的やメリットなどを解説
デジタル技術を導入し、職員の負担を軽減する
便利なデジタル技術を導入することで、業務効率の改善につながり、職員の負担軽減ができます。
業務負担が軽減できれば、労働時間の削減ができ、そのぶん有意義に時間を使うことが可能です。
労働時間や残業時間を気にする若手人材を採用するにあたって、業務の効率化を進めるデジタル技術の導入を検討してみましょう。
なお、弊社クラフトバンクでは、事務作業の課題を払拭できる「クラフトバンクオフィス」を提供しております。
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建設会社の採用成功事例
建設会社の採用成功事例として、以下の2社を紹介します。
- 事例1:株式会社田中建興
- 事例2:株式会社ダイニッセイ
各社の事例を参考にしてみてください。
事例1:株式会社田中建興
公共工事などを手がける株式会社田中建興。
2019年に蘇大輝氏が社長を引き継ぎ、定期的な新卒社員の採用に取り組んでいます。
蘇社長は、「10年20年先を見据えて、未経験の新卒社員をゼロから育てる仕組みを構築し、企業永続への第一歩とする」との思いで新卒採用に力を入れているとのこと。
入社後には、月に一度の新入社員研修会や個別にコミュニケーションを取る機会を確保しており、現場以外で社員と向き合う時間を作っています。
そのほか、週休2日制や有給消化の推奨により、若手社員が生き生きと働ける環境を整えていると語ってくれました。
事例2:株式会社ダイニッセイ
株式会社ダイニッセイでは、若手人材の採用や育成に向けた改革が効果を上げています。
池田社長は、「頼りになるベテランが多く在籍しているからこそ、若手への技術継承に集中し、新たな仕掛けで組織を活性化したい」との思いで採用を強化されています。
具体的には、以下のようなアクションを実施しているようです。
- 大卒求人
- 高校への出前講座
- インターンシップ
- オンライン説明会
これらのアクションを実行し始めてから、新卒学生が毎年入社するようになっています。
また、人材採用を進めるにあたり、「週休2日制」を希望する学生が多かったこともあり、若手人材確保のために、思い切って「週休2日制」を導入。
人事評価制度の改革や社員一人ひとりとのコミュニケーション時間の確保などのアクションも、人材採用・育成がうまくいっている要因とのことです。
>>>若手の採用・育成改革が好調のダイニッセイ。鉄の結束で難局打開を目指す
まとめ:建設業の採用は社内の労働環境とイメージの改善から行おう!
この記事では、建設業界における採用の現状について解説しました。
建設関係の職種の有効求人倍率は5倍以上であり、ほかの職種に比べると非常に高いのが実情です。
しかし、工業高校に通う学生へのアンケート調査では、7割の学生が建設業への就職を志望していました。
建設業のイメージや働き方、給与などを整えていきアピールすることで、採用のチャンスは生まれてくるでしょう。
労働時間や働き方を整えるには、デジタル技術を積極的に導入するのがおすすめです。
弊社クラフトバンクの「クラフトバンクオフィス」では、各業務を一元管理でき、事務作業の時間削減につながります。
業務改善で悩んでいる方は、以下のリンクからクラフトバンクオフィスの導入を検討してみてください。