工事台帳とは?作成目的やエクセルでの作り方、各方法のメリット・デメリットを解説

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工事現場ごとの原価を記録・集計・管理するための工事台帳。

工事台帳(実行予算)と案件一覧表を別のエクセルで運用することで、同じ情報を何度も入力して手間とミスが増えていませんか?

原価を正確に把握することで、経営的なリスク回避や利益率向上に向けた施策の検討に役立ちます。

今回は、工事台帳について以下の5つに分けて解説します。

この記事を活用し、工事台帳に関する理解を深めたい方の参考になれば幸いです。

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工事台帳とは

工事台帳とは、工事現場ごとに原価を下記4つの項目で記録・集計する台帳のことです。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

工事台帳以外にも「工事管理台帳」や「工事原価台帳」「工事原価管理台帳」と言われる場合がありますが、意味は同じです。

建設業は工事現場ごとに工期が異なり、また天候や計画変更で工期が伸びる場合があるため、他の業界と比べ売上や原価の管理が困難です。

工事台帳を作成することで、原価や工事の進捗を明確に把握でき、経営的なリスク回避や利益率向上に向けた施策の検討にも役立つでしょう。

また、工事台帳は経営事項審査(経審)を受ける際や、労災保険の申告、税務調査時にも提出する場合があります。

経営事項審査(経審)についての詳しい記事は「経営事項審査(経審)とは?メリットや流れ、点数アップのポイントを解説」をご覧ください。

なかには「工事原価の算出には、建設原価内訳書を用いるのでは」と疑問を持つ方もいるかもしれません。

ただ、建設原価内訳書の場合、工事別の労務費や外注費の把握が困難であるため、工事台帳をしっかりと作成するのがおすすめです。

工事台帳を作成する目的

工事台帳は作成するのに手間がかかります。

なぜ手間をかけてまで工事台帳を作成する必要があるのでしょうか。

ここからは、工事台帳を作成する目的を下記5つの項目で解説します。

  • 各工事の進捗を管理する
  • 各工事の収支や利益率を把握する
  • 完成工事原価・未成工事支出金を算出する
  • 経営事項審査で提出する
  • 税務調査へ対応する

それぞれ見ていきましょう。

各工事の進捗を管理する

工事台帳を作成することで、各工事の取引内容を把握し進捗を管理できます。

工事進捗のマネジメントツールとして役立つでしょう。

各工事の収支や利益率を把握する

工事台帳を作成しお金の流れを記録すれば、各工事の収支や利益率を正しく把握できます。

建設業では売上高を中心に管理する会社も多くありますが、原価を正確に把握しなければ赤字になってしまう場合も。

機械への投資や従業員の賃金アップなどは利益が源泉となります。

工事台帳で原価を管理することで、各工事の原価を把握し必要に応じて早期に対策を打てるでしょう。

また、工事台帳でデータを蓄積すれば、受注時の正確な見積作成にもつながります。

建設業においての利益については「建設業の利益率の目安は25%と4% !利益を増やすための方法も紹介 」で解説しています。

完成工事原価・未成工事支出金を算出する

工事台帳は、完成工事原価や未成工事支出金の算出にも役立ちます。

完成工事原価とは、完成した工事の売上高や収益の計算に必要な工事原価のことで、完成工事の純利益の把握に役立ちます。

未成工事支出金とは、完成していない工事で支払った費用のこと。

決算時、完成工事原価と未成工事支出金のうち完成した工事の原価は、損益計算書に計上します。

ただし、未完成の工事部分は次期に繰り越すため、損益計算書の資産の部に計上。

工事台帳は、正確な決算申告にも役立ちます。

工事原価については「工事原価とは?工事原価を構成する4つの要素や粗利益を増やす方法も解説」でも詳しく解説しています。

経営事項審査(経審)で提出する

先ほどお伝えした通り、工事台帳は経審でも提出します。

公共工事の入札資格を得るためには、経審を受ける必要があります。

公共工事は、工事規模が大きく安定的な売上につながるため大変重要。

経審では、経営状況や経営規模、技術力などを客観的に評価し、点数化・ランク付けが行われ、入札に参加できる工事の金額が決まります。

公共工事の入札に参加するためにも工事台帳の作成は欠かせないのです。

税務調査へ対応する

工事台帳は、税務調査への対応にも活用できます。

建設業は、他の業界と比べ税務調査の対象になりやすい傾向にあります。

税務調査の対象になりやすい理由は、1件当たりの工事の売上高が大きいから。

税務調査で工事台帳を提出する義務はありませんが、お金の動きが把握しやすいため、工事台帳を確認されるケースがあります。

税務調査官に良い印象をあたえ、調査をスムーズに終わらせるためにも、工事台帳は活用できます。

工事台帳に記載する4つの項目

工事台帳には、どのような費用項目を記載すれば良いのでしょうか。

工事台帳に記載する項目は以下の4つです。

  • 材料費
  • 労務費
  • 外注費
  • 経費

それでは1つずつ解説します。

材料費

工事台帳に記載する項目の1つ目は、材料費です。

材料費とは、工事に使用するために仕入れたものの費用になります。

労務費

工事台帳に記載する項目の2つ目は、労務費です。

労務費とは、自社の従業員の賃金のこと。

給与だけでなく、手当や交通費なども対象となるので、ご注意ください。

また、工事を行う従業員が対象で、事務員や雇用関係がない職人・作業員の賃金は含まれません。

外注費

工事台帳に記載する項目の3つ目は、外注費です。

外注費とは、自社が雇用していない下請け業者や協力業者の職人、作業員に支払う費用のこと。

工事規模が大きくなれば、自社だけでなく外部の協力を得て工事を行います。

その際に、協力会社などの外部業者や一人親方に依頼し支払う費用が該当します。

経費

工事台帳に記載する項目の4つ目は、経費です。

経費とは、これまで解説した材料費・労務費・外注費以外の費用のこと。

たとえば下記が該当します。

  • 水道光熱費
  • 重機のレンタル費
  • 現場事務所 事務員の給与
  • 事務用品費
  • 通信費

工事台帳を作成する2つの方法は「エクセル」と「専門ソフト」

これまで工事台帳とは何かや、作成する目的などを解説してきました。

ここからは、工事台帳を作成する2つの方法について具体的に解説します。

エクセルを使う

取り組みやすい方法はエクセルを使うことです。

下記項目を中心に工事ごとにファイルを作成し、取引の都度記入します。

  • 工事名
  • 日付
  • 施工内容
  • 仕入先
  • 費用科目
  • 費用額

エクセル操作が優れている方がいれば、イチから作成しても良いですしWebで無料テンプレートを検索、ダウンロードして利用する方法もあります。

テンプレートを自社用にアレンジするのも良いでしょう。

仕入れ先などよく利用する項目のプルダウンの設定や、自動計算をする関数やマクロを組むと業務効率化につながります。

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専門ソフトを使う

専門ソフトを使う方法もあります。

工事台帳ソフトや工事管理ソフトなどの専門ソフトは、さまざまな機能を備えており、業務効率化につながります。

ただ、もし専門ソフトを利用する場合は、機能や操作性が異なるため慎重に検討しましょう。

自社にあった専門ソフトでなければ、業務負担が増加します。

また、あまりITツールに慣れていない場合は、サポートの有無や充実度を確認するのも重要。

専門ソフトで工事台帳を作成するメリット・デメリットも、後ほど詳しく解説します。

エクセルで工事台帳を作成するメリット

それでは、エクセルで工事台帳を作成するメリットについて詳しく解説します。

導入コストが低い

エクセルで工事台帳を作成するメリットの1つ目は、導入コストが低いことです。

エクセルは多くの企業で利用されており、追加費用がかからない場合もあります。

新たに購入するとしても、専門ソフトと比べ価格が安く、導入しやすいでしょう。

無料テンプレートをダウンロードすれば、設定費用なども掛かりません。

教育に時間がかからない

エクセルで工事台帳を作成するメリットの2つ目は、教育に時間がかからないことです。

エクセルは学生時代から長く利用している人も多く、基本操作には慣れている人が多いのが特徴。

これまで使ったことのない専門ソフトと比較すれば、導入・定着がスムーズでしょう。

自社にあった工事台帳の作成・管理ができる

エクセルで工事台帳を作成するメリットの3つ目は、自社にあった工事台帳の作成・管理ができることです。

エクセルは柔軟性があり、自社にあったオリジナルフォーマットを作成可能。

エクセルに詳しい方が社内にいれば、関数やマクロの設定も容易にできます。

もちろん、関数やマクロはWebで検索すれば、簡単に情報を得られます。

エクセルで工事台帳を作成するデメリット

エクセルによる工事台帳の作成は、メリットがある一方でデメリットも存在します。

ここからは、エクセルで工事台帳を作成するデメリットを解説します。

属人化しやすい

エクセルで工事台帳を作成するデメリットの1つ目は、属人化しやすいことです。

属人化は、ファイル作成段階でも運用段階でも起こります。

作成段階において、エクセルに詳しい社員に任せた場合、退職や休暇でその社員がいなければ、改修や修正ができないリスクが。

エクセルはファイルが破損する場合があり、関数が少し変更されただけで正しい原価が分からなくなります。

また、運用も各社員の独自の入力方法で工事台帳が作成されるケースもあります。

運用方法はルールを明確に定め、作成方法も含めマニュアル化するのがおすすめです。

編集・管理がしづらい

エクセルで工事台帳を作成するデメリットの2つ目は、編集・管理がしづらいことです。

エクセルは基本的にファイルの同時更新ができず、作業を完了してから共有するまでに時間がかかります。

各個人が工事台帳のファイルを所有した場合、誰が最新データを持っているのか分からなくなる可能性も。

また、エクセルはパソコンでの編集を基本としており、スマホやタブレットでの活用はできません。

別ファイルの横断的な集計や検索ができないため、工事現場ごとに作成された工事台帳をもとに、会社全体の費用を把握する際にも手間がかかります。

人為的ミスが発生する

エクセルで工事台帳を作成するデメリットの3つ目は、人為的なミスが発生することです。

エクセルでは、人為的なミスを防げません。

エクセルで工事台帳を作成した場合の具体的なミスとして、下記が挙げられます。

  • 入力する数字の間違い
  • 入力し忘れ
  • 入力場所の間違い
  • 関数やマクロの設定ミス
  • 関数やマクロの削除してしまう

原価管理は正しい数字が把握できなければ意味がありません。

特に、関数やマクロの設定にミスがあると、数字が大きく狂ってしまう可能性があります。

専門ソフトで工事台帳を作成するメリット

ここからは、専門ソフトで工事台帳を作成するメリット・デメリットを解説します。

まずメリットについてです。

業務効率化につながる

専門ソフトで工事台帳を作成することで、業務効率化につながるでしょう。

入力がしやすく、計算も自動で正確に行われます。また、情報を一元管理できるため、全体の集計も簡単。

在庫管理や販売管理システムなど他のシステムと連携できれば、さらに作業効率が向上します。

入力・管理がしやすい

専門ソフトで工事台帳を作成すれば、入力や管理がしやすいこともメリットです。

ソフトによっては、インターネット環境さえあればスマホやタブレットからも操作ができ、スキマ時間に入力・確認が可能なものも。

エクセルと違い、入力したデータファイルをメールなどで共有する必要もないため、リアルタイムで情報確認ができます。

各工事現場の情報を一元化し、分析しやすい点も魅力です。

人為的ミスを軽減できる

専門ソフトで工事台帳を作成すれば、人為的ミスを軽減できることも魅力の1つです。

人が作業する以上ミスが発生する可能性はあり、作業項目が多くなればなるほどその確率は高まります。

専門ソフトを活用すれば、人が行う業務が減り、作業項目もエクセルと比べ少なくなるため、ミスの軽減につながるでしょう。

また、編集履歴が確認できたり、自動でバックアップが取られたりする専門ソフトも。

万が一、工事台帳データの破損や紛失、ミスが発覚した場合も、早期の対応・普及ができます。

専門ソフトで工事台帳を作成するデメリット

これまで専門ソフトで工事台帳を作成するメリットを解説しました。

エクセル同様、専門ソフトでもデメリットは存在します。

最後に、専門ソフトで工事台帳を作成するデメリットについて解説します

導入コストがかかる

専門ソフトで工事台帳を作成する最大のデメリットは、導入コストがかかることです。

ソフトによって機能が異なり、それにともない価格も異なりますが、安くとは言えません。

また、料金体系も異なり、買い切りのものやランニングコストだけのもの、初期設定コストとランニングコストがかかるものなどさまざま。

専門ソフトと一言で言っても多くの種類があり、自社にあうものを選ばなければ意味がないため、事前にしっかり検討しましょう。

また、専門ソフトの操作性によっては、従業員が慣れるまで時間がかかり教育コストもかかります。

このように、専門ソフト導入にはデメリットもあるため、かけられる予算を算出した上で慎重に判断する必要があります。

まとめ

今回は、工事台帳とは何かや作成する目的、方法、各方法のメリット・デメリットについて解説しました。

工事台帳とは、工事現場ごとに原価を記録・集計する台帳のことです。

工事台帳を作成することで、原価や工事の進捗を明確に把握でき、経営的なリスク回避や利益率向上に向けた施策の検討にも役立ちます。

完成工事原価・未成工事支出金の算出や経審などでも必要となるため、必ず作成しましょう。

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