経営事項審査(経審)とは?メリットや流れ、点数アップのポイントを解説

目次
- 経営事項審査(経審)とは
- 経営事項審査を受けるメリット
- 公共工事の競争入札に参加できる
- 自社の実績をアピールできる
- 自社の経営状況を客観的に把握できる
- 経審の審査項目と評価の算出方法
- 経営規模
- 経営状況
- 技術力
- その他審査項目(社会性等)
- 算出方法
- 経営事項審査の流れ
- 決算報告書の作成と届出
- 経営状況分析の申請
- 経営規模等評価申請
- 経営規模等評価結果通知書の受領
- 経営事項審査の点数アップのポイント
- 完成工事高の算定方法を見直す
- 手持ち資金の比率を高める
- 「その他の審査項目」を確認する
- 経営事項審査に必要な3つの手数料
- 経営状況分析申請の手数料
- 経営規模等評価申請の手数料
- 総合評定値の手数料
- 経営事項審査の有効期間
- まとめ
公共工事の入札に必要な経営事項審査(経審)。
経審を受けることで、実績のアピールや経営状況を客観的に把握できるなどのメリットがあります。
経審に関する理解を深めたい方の参考になれば幸いです。
経営事項審査(経審)とは

経営事項審査とは、建設業の経営規模や状況、技術力を客観的に審査し、点数化・ランク付けを行うものです。
経営事項審査を略して「経審(けいしん)」と呼ばれることも多く、耳にしたことのある方も多いのではないでしょうか。
1994年建設業法の改正により、公共工事の入札に参加するためには経審を必ず受けることが求められます。
ちなみに、公共工事とは国や地方自治体、市区町村などの官公庁やそれに準ずる法人が発注先を決める工事のことで、経審のランクにより入札に参加できる工事の金額範囲が決定します。
また、近年は入札参加だけでなく、下請業者の選定や取引している下請業者の経営状態確認などのために利用される場合もあります。
経営事項審査を受けるメリット
ここからは、経審を受けるメリットについて解説します。
主なメリットは以下の3つです。
- 公共工事の競争入札に参加できる
- 自社の実績をアピールできる
- 自社の経営状況を客観的に把握できる
それぞれのメリットについて詳しく説明します。
公共工事の競争入札に参加できる
経審を受ける1つ目のメリットは、公共工事の競争入札に参加できることです。
公共工事は、民間の工事と比較し規模が大きく、長期的で安定的な受注につながりやすいのが特徴です。
また、国や自治体が発注元になるため、貸し倒れのリスクがなく安心して工事に取り組めるでしょう。
さらに公共工事を受注できた場合、会社の信用力を高めます。
自社の実績をアピールできる
経審を受ける2つ目のメリットは、自社の実績をアピールできることです。
経審の点数やランクは一般公開され、国や自治体だけではなく、誰でも閲覧が可能。
先ほどお伝えした通り、元請業者が下請業者の選定や取引継続の意思決定の判断材料の1つにする場合もあります。
元請企業も安心して工事を依頼できる会社を探しています。
経審で良い点数・ランクを得られれば、自社の実績や技術力をアピールし、チャンスを広げるきっかけになるでしょう。
自社の経営状況を客観的に把握できる
経審を受ける3つ目のメリットは、自社の経営状況を客観的に把握できることです。
自社を成長・発展させる、PDCAを回すためには自社の現状を正しく把握することが欠かせません。
ただ、自社のみで行う場合、主観が入りやすく時間もかかるでしょう。
経審であれば、客観的に自社の現状を明らかにできます。
経審の審査項目と評価の算出方法

経審は、以下の4つの項目で審査されます
- 経営規模
- 経営状況
- 技術力
- その他審査項目(社会性等)
ここからは、経審の審査項目と評価の算出方法について詳しく解説します。
経営規模
経営規模は、下記で評価されます。
- 許可業種別完成工事高(X1)
- 自己資本額・利払前税引前償却前利益(X2)
完成工事高は、直近2期平均か3期平均が評価対象になります。
2期平均にするか3期平均にするかは、評価を受ける建設業者が選択可能。
自己資本額・利払前税引前償却前利益は、2期平均が評価されます。
経営状況
経営状況(Y)は、下記4つの項目で評価されます。
- 負債抵抗力(純支払利息比率・負債回転期間)
- 収益性・効率性(総資本売上総利益率・売上高経常利益率)
- 財務健全性(自己資本対固定資産比率・自己資本比率)
- 絶対的力量(営業キャッシュフロー・利益剰余金)
国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関が分析し、評価します。
技術力
技術力(Z)は、許可業種別元請完成工事高と許可業種別技術職員数で評価されます。
その他審査項目(社会性等)
その他審査項目(W)は、上記3項目に含まれない項目を評価します。
- 労働福祉の状況
- 建設業の営業継続の状況
- 防災活動への貢献の状況
- 法令遵守の状況
- 建設業の経理の状況
- 研究開発の状況
- 建設機械の保有状況
- 国際標準化機構が定めた規格による登録の状況
- 若年の技術者及び技能労働者の育成及び確保の状況
各項目で指標が決まっており、細かく評価されます。
たとえば、労働福祉の状況の指標は下記です。
- 労働福祉の状況
- 雇用保険未加入
- 健康保険の未加入
- 厚生年金保険の未加入
- 建退共加入
- 退職一時金もしくは企業年金制度の導入
- 法定外労災制度への加入
算出方法
経審では各項目で審査・点数付けを行い、ウェイトを掛け、総合評定値(P)を算出します。
算出の計算式は下記の通りです。
総合評定値(P)=0.25×X1+0.15×X2+0.20×Y+0.25×Z+0.15×W
項目区分 | 審査項目 | 最高点/最低点 | ウェイト |
---|---|---|---|
経営規模(X1) | 完成工事高(許可業種別) | 最高点:2,309点 | 0.25 |
経営規模(X2) | ①自己資本額 | 最高点:2,280点 | 0.15 |
経営状況(Y) | ①負債抵抗力 | 最高点:1,595点 | 0.2 |
技術力(Z) | ①技術職員数(許可業種別) | 最高点:2,441点 | 0.25 |
その他審査項目(社会性等)(W) | ①労働福祉の状況 | 最高点:1,966点 | 0.15 |
経営事項審査の流れ

経審を受けるためには、届出や申請などの手続きが必要です。
ここからは、経審の流れについて解説します。
決算報告書の作成と届出
まず、決算報告書を作成します。
後ほど詳しく解説しますが、経審の有効期限は決算日を基準日とし1年7ヵ月。
決算報告書の作成ができたら「事業年度終了届」を許可行政庁に提出してください。
経営状況分析の申請
次に、経営状況分析の申請を行います。
経営状況分析は、国土交通大臣の登録を受けた登録経営状況分析機関に申請・下記書類の提出・手数料の支払いが必要になります。
- 審査基準日直前1期分の財務諸表等
- 減価償却実施額を確認できる書類
- 建設業許可通知書(または証明書)の写し
なお、初めて経営状況分析をする場合は、直近3期分の財務諸表が必要。
分析が完了すると「経営状況分析結果通知書」が届きます。
この通知書がなければ、経営規模等評価申請はできません。
経営規模等評価申請
続いて、経営規模等評価申請を許可行政庁で行います。
申請をする際に提出する書類は、申請書等、添付書類および確認書類の大きく3種類があります。
ちなみに、申請書等は下記の通りです。
- 経営規模等評価申請書・総合評定値請求書
- 工事種類別完成工事高/工事種類別元請完成工事高
- 工事種類別完成工事高付表
- その他の審査項目(社会性等)
- 技術職員名簿
- 経営状況分析結果通知書の原本
- 委任状(行政書士等による代理申請の場合のみ必要)
- 審査手数料印紙貼付書
- 外国子会社並びに建設業者及び外国子会社についての数値の認定書(外国子会社の提出する認定を受けた場合のみ必要)
建設業法で書式が指定されているものは、国土交通省のホームページからダウンロードが可能です。
添付書類では工事経歴書、確認書類では消費税確定申告書の控えおよび添付書類の写し、消費税納税証明書の写し等が必要になります。
確認書類は、国土交通大臣許可業者と都県知事許可業者で異なるためご注意ください。
経営規模等評価結果通知書の受領
経営規模等の審査が完了すると「経営規模等評価結果通知書」が、請求した場合は併せて「総合評定通知書」が届き、結果が一般公開されます。
申請から審査完了までは、大体1ヵ月かかります。
経営事項審査の点数アップのポイント

経審の点数とランクにより、入札に参加できる工事の金額範囲が決定するため、少しでも高い方が良いでしょう。
続いて、経審の点数アップのポイントを3つ解説します。
完成工事高の算定方法を見直す
経審の点数アップを目指す場合、完成工事高の算定方法の見直しが有効です。
経審の審査項目における完成工事高(経営規模)のウェイトは高く、また技術力でも評価されます。
完成工事高は2期平均か3期平均で評価され、どちらにするか選択可能。どちらを選択すべきか、計算してから選びましょう。
たとえば、完成工事高が前期8億円、前々期6億円、前々期4億円の場合、2期平均は7億円、3期平均は6億円で2期平均の方が高くなります。
手持ち資金の比率を高める
経審の点数アップには、手持ち資金の比率を高めるのも重要です。
経営状況の財務健全性や絶対的力量では、手持ち資金(キャッシュ)がポイント。
具体的な取り組みとして、配当金や役員報酬を抑える、売掛債権や立て替え工事高を減らすなどが考えられます。
自己資本を高め、キャッシュを増やしましょう。
経審の点数がアップするだけでなく、経営基盤が強く倒産しづらい会社になります。
「その他の審査項目」を確認する
「その他の審査項目」も確認しましょう。
その他の審査項目は、9項目とそれに付随する指標で成り立っています。
保険や退職金、研究開発、機械の保有など投資が必要なものも多くありますが、投資をすれば点数を得やすくなるでしょう。
また、労働福祉の状況は社員が安心して働ける会社づくりにも影響をあたえます。
建設業は、特に若手の労働人口が減少しており魅力的な会社づくりが重要。
経審の点数アップももちろんですが、長期的な視点で必要な取り組みです。
社員が確保できれば、技術力で評価される技術職員数も向上する可能性があります。
若者離れが気になる方は「「建設業の若者離れは当たり前」と言われる理由と今後の対策案」も合わせてご覧になってみてください。
経営事項審査に必要な3つの手数料

経審を受けるためには、手数料がかかります。
ここからは、経審を受けるために必要な3つの手数料について解説します。
経営状況分析申請の手数料
1つ目は、経営状況分析申請の手数料です。
経営分析は、国土交通大臣の登録を受けた「登録経営状況分析機関」が行います。
認定されている登録経営状況分析機関は、下記の通りです。
- 一般財団法人 建設業情報管理センター
- 株式会社 マネージメント・データ・リサーチ
- ワイズ公共データシステム 株式会社
- 株式会社 九州経営情報分析センター
- 株式会社 北海道経営情報センター
- 株式会社 ネットコア
- 株式会社 経営状況分析センター
- 経営状況分析センター西日本 株式会社
- 株式会社 NKB
- 株式会社 建設業経営情報分析センター
手数料の相場は、10,000円~14,000円程度で依頼する機関により異なります。
また、同じ機関でも申請方法やプランにより手数料が異なるため、詳細は各機関にご確認ください。
経営規模等評価申請の手数料
2つ目は、経営規模等評価申請の手数料です。
8,100円に審査対象建設業(審査を受ける業種)1種類につき2,300円を加算した金額が必要。
以下に、経営規模等評価申請の手数料の例を挙げておきます。
- 審査を受ける業種が1種類の場合‥8,100円+2,300円×1業種=10,400円
- 審査を受ける業種が2種類の場合‥8,100円+2,300円×2業種=12,700円
総合評定値の手数料
3つ目は、総合評定値の手数料です。
400円に審査を受ける業種1種類につき200円を加算した金額が必要。
たとえば、審査を受ける業種が3種類の場合は「400円+200円×3業種=1,000円」が総合評定値の手数料となります。
また、国土交通大臣許可業者の場合は、経営規模等評価申請と総合評定値の手数料を収入印紙で支払うのがルールです。
経営事項審査の有効期間

経審は、審査基準日(決算日)から1年7ヵ月です。
経審を受けるためには確定申告が必要で、確定申告は決算日から2ヵ月以内に行うのが基本。
確定申告後、経審を行うとさらに2ヵ月程度かかり、決算日から計4ヵ月必要な計算になります。
経審を受け忘れたり、対応が遅れたりした場合、有効期限が切れ公共工事の入札ができなくなるため、早めの対応を心がけましょう。
まとめ
今回は、経営事項審査(経審)とは何かや、受けるメリット、審査項目と評価の算出方法、流れ、点数アップのポイントなどについて解説しました。
経審は、公共工事の入札参加に必要で、また元請業者が下請業者の選定や取引継続判断の1つの材料にすることもあります。
経審を受けることで、自社実績のアピールや自社の経営状況を客観的に把握することにもつながります。
繰り返しになりますが、審査基準日(決算日)から1年7ヵ月で有効期限が切れると公共工事の入札ができなくなるため注意しましょう。