建設業許可に必要となる6つの要件|要件緩和や取得する流れを解説

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目次

「建設業許可を取得したいけれど要件がわからない」や「建設業許可の要件が定期的に更新されていて把握しづらい」とお悩みの方は多いでしょう。

建設業許可を取得するには、6つの要件を満たす必要があります。

この記事では、建設業許可の概要や6つの要件、取得する流れを解説します。

令和5年7月に施行された「専任技術者の要件緩和」についても説明するので、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも建設業許可とは

建設業許可とは、建設業を営む場合に取得しなければいけない許可です

建設業法の第3条では、次のように定義されています。

(建設業の許可)

第三条

建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

引用URL:建設業法| e-Gov法令検索

土木一式工事業や大工工事業など、29種類の業種が建設業許可の対象です

なお、建設業許可を受けずに工事を進めると「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科される恐れがあります(建設業法第47条)。

建設業許可を取得することで、建設業法に違反しないことはもちろん、社会的な信用度の向上や工事の受注率アップが見込めます。

参考URL:建設業法| e-Gov法令検索

参考URL:業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方(H29.11.10改正)

大臣許可と知事許可の違い

建設業許可は「大臣許可」と「知事許可」の2種類に分けられます

これらの区分は、営業値の所在地によって次のように判断されます

大臣許可

知事許可

条件

営業所を2箇所以上の都道府県に設ける

営業所を1つの都道府県に設ける

許可する人

国土交通大臣

都道府県知事

大臣許可・知事許可に該当するのは、以下のようなケースです。

例①

営業所が複数あり、全ての営業所が1つの都道府県に所属する場合

→知事許可

例②

1つの都道府県でしか工事しないが、2箇所以上の都道府県に営業所が存在する場合

→大臣許可

ここでいう「営業所」とは

  • 本店
  • 支店
  • 常時建設工事の請負契約を締結する事務所
  • 他の営業所に対して請負契約に関する指導監督を行う事務所
  • 建設業に係る営業に実質的に関与する事務所

を指します。

登記上本店とされていても、建設業と無関係な店舗は営業所に該当しません。

参考URL:建設業の許可とは

建設業許可の区分

知事許可・大臣許可以外にも、建設業許可には「一般建設業」と「特定建設業」の2区分があります

建設業許可は、工事代金によって区分されます。

  • 特定建設業……元請として工事を受注し、そのうち4,500万円(建築一式工事は7,000万円)以上の工事を下請に発注する場合
  • 一般建設業……上記以外の場合

注意点として、令和5年度の建設業法改正の際に、特定建設業とみなされる金額が「4,000万円から4,500万円」に変更されました。

参考URL:「建設業法施行令の一部を改正する政令」を閣議決定

建設業許可に必要となる6つの要件

建設業許可に必要となる6つの要件を紹介します。

  1. 建設業の経営管理責任者を設置する
  2. 専任技術者を設置する
  3. 誠実性がある
  4. 安定して財産がある
  5. 欠格要件に当てはまらない
  6. 適正な社会保険への加入

1つずつ解説していきます。

1.建設業の経営管理責任者を設置する

建設業の経営管理責任者とは、建設業の経営業務を適切に行える能力を持つ人材です

令和2年度における建設業法の改正までは

  • 法人の場合……役員のうち一人
  • 個人の場合……本人または支配人のうち一人

上記のように、個人が経営管理責任者の要件を満たす必要がありました。

しかし、建設業法改正により「補佐」とする人材を配置すれば、経営管理責任者の経験年数にまつわる要件が緩和されることになりました

加えて、経営管理責任者の要件を紹介します。

【常勤役員のうち一人が次の要件のいずれかに該当すること】

条件A:建設業に関し5年以上の経営業務の管理責任者としての経験を有する者であること

条件B:建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者としての5年以上経営業務を管理した経験を有する者であること

条件C:建設業に関し経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者としての6年以上経営業務の管理責任者を補助する業務に従事した経験を有する者であること

【常勤役員のうち一人が次の要件のいずれかに該当する+常勤役員を補佐する者を配置する】

条件D:建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有し、かつ、五年以上役員等又は役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者

条件E:五年以上役員等としての経験を有し、かつ、建設業に関し、二年以上役員等としての経験を有する者

※常勤役員を補佐する者は、以下の条件Fを満たすこと

条件F:財務管理または労務管理、運営業務に関して5年以上の経験を有する者

上記の要件に該当するか判断が難しい場合は、許可行政庁にご相談ください。

参考URL:3.(1)許可基準の見直しについて(建設業法第7条関係)

参考URL:許可の要件

2.専任技術者を設置する

建設工事に必要となる専門的な実務経験・資格を有する技術者を「専任技術者」と呼びます

建設業許可を受けるには、営業所ごとに専任技術者を設けなければいけません

また、専任技術者となる要件は、一般建設業と特定建設業で細かく異なります。

専任技術者の要件の例としては

  • 国家資格を取得している
  • 一定年数の実務経験がある
  • 専門学科の指定学科卒業後に一定年数の実務経験がある

などが挙げられますが、詳細は国土交通省のページをご参照ください。

なお、令和5年7月より専任技術者の要件は緩和されています。

具体的な要件緩和の内容は「【令和5年7月1日施行】専任技術者の要件緩和」にて詳しく説明します。

参考URL:許可の要件

3.誠実性がある

不正または不誠実な行為をする恐れがある場合、建設業許可を受けられません。

ここでいう不正または不誠実な行為とは、それぞれ次の行為のことです。

不正な行為

不誠実な行為

請負契約の締結または履行の際における
・詐欺
・脅迫
・横領
など法律に違反する行為

工事内容や工期、天災など不可抗力による損害の負担等について、請負契約に違反する行為

具体的に、誠実性がないと判断される例を紹介します。

【誠実性がないと判断される例】

建築士法・宅地建物取引業法の規定により不正または不誠実な行為を行ったことで、免許等の取消処分を受けて、その最終処分から5年経過していない場合

法人であれば当該法人・役員・使用人、個人であれば申請者・使用人に誠実性が必要です。

参考URL:【2.許可の要件について】

参考URL:許可の要件

4.安定して財産がある

安定して財産があることが、建設業許可の要件のひとつです。

一般建設業と特定建設業で要件は違うので注意しましょう。

それぞれの要件を、表にまとめました。

一般建設業

特定建設業

①~③のいずれかに該当すること

①自己資本が500万円以上であること
②500万円以上の資金調達能力を有すること
③許可申請直前の過去5年間許可を受けて継続して営業した実績を有すること

①~③の全てに該当すること

①欠損の額が資本金の20%を超えていないこと
②流動比率が75%以上であること
③資本金の額が2,000万円以上であり、かつ、自己資本の額が4,000万円以上であること

一般建設業では「いずれかに該当すること」、特定建設業では「すべてに該当すること」が求められます

参考URL:【2.許可の要件について】

参考URL:許可の要件

5.欠格要件に当てはまらない

建設業許可を受けるには、許可申請者や役員が欠格要件に当てはまらないことが条件です

欠格要件をいくつか紹介します。

  • 破産者で復権を得ない者
  • 一般建設業または特定建設業の許可を取り消され、その取消しの日から5年を経過しない者
  • 営業の停止を命ぜられ、その停止の期間が経過しない者

全ての欠格要件は、建設業法の第8条をご参照ください。

参考URL:【2.許可の要件について】

参考URL:許可の要件

6.適正な社会保険への加入

令和2年度の建設業法改正により、適正な社会保険への加入が建設業許可の要件に加えられました

  • 健康保険・厚生年金保険……適用事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること
  • 雇用保険……適用事業の事業所に該当する全ての営業所について、その旨を届け出ていること

参考として、法人・個人それぞれ加入が義務付けられている保険を表にまとめました。

健康保険

厚生年金保険

雇用保険

法人(労働者数1人~)

法人(役員のみ等)

個人事務所(労働者数5人~)

個人事務所(労働者数1~4人)

個人事務所(一人親方等)

上記の表から分かるように、法人であれば原則として健康保険・厚生年金保険の適用事務所となります。

参考URL:3.(1)許可基準の見直しについて(建設業法第7条関係)

参考URL:許可の要件

参考URL:令和2年 10 月 1 日付建設業法改正に伴う「適切な社会保険への加入」について

【令和5年7月1日施行】専任技術者の要件緩和

令和5年7月1日に施行された新ルールにより、専任技術者の要件は以下のように緩和されました

  • 1級の1次検定合格者を大学指定学科の卒業者と同等とみなす
  • 2級の1次検定合格者を高校指定学科の卒業者と同等とみなす

指定学科とは、建設業法施行規則第1条に掲げられている、建築学や土木工学などを指します。

検定合格者が指定学科卒業者とみなされることで、専任技術者となるための実務経験が短縮されるのがポイントです

たとえば、指定学科を卒業していない方が専任技術者となるには「10年以上の実務経験」や「高度な技術系資格の取得」などが必要でした。

しかし、この改正によって、検定に合格すれば「実務経験3〜5年ほど」で要件を満たせる可能性があるのです。

参考URL:「施工技術検定規則及び建設業法施行規則の一部を改正する省令」等の公布

~建設業における技術者制度の見直しが行われます~

参考URL:建設業法施行規則| e-Gov法令検索

建設業許可を取得する流れ

建設業許可を取得する流れは、以下のとおりです。

  • 建設業許可の要件を確認する
  • 建設業許可の申請先・区分を確認する
  • 申請に必要となる書類を用意・提出する
  • 手数料を納入する

まずは、先ほど紹介した「建設業許可に必要となる6つの要件」を参考にしながら、要件を満たしているかを確認します。

その後、申請先や区分をチェックし、建設業許可申請書や各種証明書を用意します。

自治体によって必要となる書類は異なるので、行政庁のホームページを参照してください

建設業許可証の申請書類の書き方は、こちらの記事でも解説しています。

>>>建設業許可証とは?テンプレートや書き方、有効期限など全解説!

さらに、大臣許可ならば15万円、知事許可ならば9万円の手数料を納める必要があります

建設業許可の取得には約1〜4ヶ月かかるので、早めに準備しておきましょう。

建設業許可の対象業務

建設業許可の対象となるのは、2種の一式工事と17種の専門工事、計29種の業務です

  • 土木一式工事業
  • 建築一式工事業
  • 大工工事業
  • 左官工事業
  • とび・土木工事業
  • 石工事業
  • 屋根工事業
  • 電気工事業
  • 管工事業
  • タイル・れんが・ブロック工事業
  • 鋼構造物工事業
  • 鉄筋工事業
  • 舗装工事業
  • しゅんせつ工事業
  • 板金工事業
  • ガラス工事業
  • 塗装工事業
  • 防水工事業
  • 内装仕上工事業
  • 機械器具設置工事業
  • 熱絶縁工事業
  • 電気通信工事業
  • 造園工事業
  • さく井工事業
  • 建具工事業
  • 水道施設工事業
  • 消防施設工事業
  • 清掃施設工事業
  • 解体工事業

複数の業種で工事を行う場合、業種ごとに全ての許可を取得しなければいけません。

参考URL:業種区分、建設工事の内容、例示、区分の考え方

建設業許可が不要となるケース

先ほど紹介した建設業許可の対象業務であっても、国土交通省が定める「軽微な建設工事」に該当すれば、許可の取得は義務付けられません

軽微な建設工事とは、次の条件を満たす工事を指します。

建築一式工事

①1件の請負代金が税込1,500万円に満たない
②請負代金にかかわらず、木造住宅で延床面積が150平方メートルに満たない

上記①または②に該当する

建築一式工事以外の工事

1件の請負代金が税込500万円に満たない

ただし、法律的には建設業許可が不要でも、取引先から取得を求められる可能性があります。

参考URL:建設業の許可とは

建設業許可の要件に関するQ&A

建設業許可の要件に関するQ&Aを、2つピックアップしました。

  • 個人事業主でも建設業許可を取得できるのか?
  • 建設業許可は何年で取得できる?

それぞれ詳しく解説していきます。

個人事業主でも建設業許可を取得できるのか?

個人事業主か法人かに関わらず、要件を満たせば建設業許可を取得可能です

個人事業主が建設業許可を取得すると

  • 請負金額の大きい工事を受注できる
  • 取引先からの信用度がアップする
  • 他社との差別化につながる

などのメリットを得られます。

たとえば、建設業許可を取得すれば「請負代金が500万円以上の工事」や「請負代金が1,500万円以上の建築一式工事」を受注できます。

建設業許可を取得していない企業よりも、大きな工事を受注する機会を得やすいです。

建設業許可は何年で取得できる?

建設業許可の取得には、申請から1〜4ヶ月程度かかります

混雑状況によっては、取得までに4ヶ月以上かかるケースもあるので、早めに書類を作成・提出することが重要です。

なお、建設業許可の有効期限は登録より5年間です

許可が失効しないように、有効期間満了の30日前までに更新手続きを済ませましょう。

参考URL:国土交通大臣に係る建設業許可の基準及び標準処理期間について

参考URL:建設業の許可とは

まとめ:建設業許可の要件を理解して手続きを進めましょう

今回の記事は、建設業許可の概要や6つの要件、取得する流れについて解説しました。

建設業許可を取得する要件は

  1. 建設業の経営管理責任者を設置する
  2. 専任技術者を設置する
  3. 誠実性がある
  4. 安定して財産がある
  5. 欠格要件に当てはまらない
  6. 適正な社会保険への加入

上記6点です。

なお、建設業許可に関する申請書類は、自治体ごとに異なるので注意しましょう。

弊社クラフトバンクでは、都道府県ごとの申請資料ダウンロード先をまとめています。

建設業許可を取得する方は、ぜひコチラからご自身の申請先の書類をご確認ください。

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