左官工事のモルタル塗りはどんな工事?必要性や工事の手順について解説

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目次

建築工事の中でも、建造物の壁・床・天井に資材を塗りつけ、滑らかにする工事を「左官工事」といいます。左官工事にもいくつか分類があるのですが、今回はその中から「モルタル塗り」を伴う工事について、以下の視点から解説します。

  • 左官工事における「モルタル塗り」とは?
  • モルタル塗りが必要な場面
  • モルタル塗りの手順
  • モルタル塗りの単価

今後、左官工事を行う建築事業を立ち上げようと考えている方はもちろん、既存事業において左官工事のナレッジを増やしたいと考えている方も、ぜひ今回の内容を参考にしてください。

左官工事における「モルタル塗り」とは?

モルタル塗りは、壁や床などの下地や仕上げにモルタルを塗る湿式工法の一種です。セメントモルタル塗りとも呼ばれ、建築物の強度や防火性、耐久性を上げることができる重要な工法です。

ここからは、モルタルの種類や性能、メリット・デメリットについて解説します。

モルタルの主な種類

モルタルには、以下のようなさまざまな種類があります。

<セメントモルタル>

  • 一般的なモルタルで、セメント、砂、水を混ぜ合わせたもの
  • コンクリートの接着や補修に主に使用される
  • 経年とともにひび割れが起こりやすい特徴があります

<無収縮モルタル>

  • モルタルが固まるときに収縮せず、ひび割れを起こさないモルタル
  • 主に充填用として使用される

<ポリマーセメントモルタル>

  • セメントモルタルにポリマー成分を加えたもの
  • 構造体コンクリートとの一体性能や劣化因子の侵入抑制などの性能が向上している
  • セメント、細骨材、ポリマーディスパージョンまたは再乳化形粉末樹脂を混合して作られる

<樹脂モルタル>

  • モルタルに樹脂性の混和剤を混ぜて化学反応させて硬化させたもの
  • 通常のモルタルと比べて硬化時間が短く、柔軟性があるため、補修材料として優れている

<インスタントモルタル>

  • 細かい配合を考えずに水を混ぜるだけで使用できるモルタル
  • 用途に合わせて配合が変えられており、仕上げ用、土間用、ひび割れ用などがある

<カラーモルタル(色モルタル)>

  • 白色のモルタルに顔料を加えて着色したモルタル
  • 通常のグレーのモルタルとは異なる色合いが得られる

モルタルの性能について

モルタルは、以下のような優れた性能が備わっている素材です。

耐火性

耐久性

美観性

モルタルは不燃性の材料でできているため、優れた耐火性を持っている

物理的な衝撃に強く、壊れにくい高い耐久性を備えている

継ぎ目がないため、見た目が綺麗で、汚れも掃除しやすい

モルタルの優れた性能は、建築物の基本的な仕上げ材料としての用途だけでなく、様々な分野での活用を可能にしています。

例えば、耐火性の高さから、火災に強い建築物の構造材料としての活用が期待できるでしょう。

また、耐久性の高さから、水回りの設備や屋外の舗装材料としての需要も高まっています。さらに、美観性の高さから、デザイン性の高い仕上げ材料としての活用も進んでいます。

このように、モルタルの特性を生かした用途の拡大が進んでいるのが現状です。

モルタルのメリット・デメリット

モルタルには、以下のようなメリットとデメリットがあります。

<メリット>

  • 不燃性が高く、燃えにくい
  • 高い耐久性を持つ
  • デザイン性に優れ、自由度が高い
  • 部分的な補修が容易
  • 金属製の外壁材に比べて熱くなりにくい

<デメリット>

  • 汚れやすい
  • ひび割れが入りやすい
  • サイディングボードに比べると耐久性や不燃性が劣る
  • コンクリートよりも価格が高い
  • 防水性が低い
  • 初期費用が高い

モルタルは、建築物の外壁や内装、床などさまざまな用途で活用されています。特に、デザイン性の高さから、個性的な外観を実現するのに適した素材です。

また、不燃性が高いことから、火災に強い建築物の構造材料としても注目されています。

一方で、防水性が低いことや、ひび割れが入りやすいといったデメリットもあるため、用途に応じた適切な施工が重要です。

モルタル塗りが必要な場面

モルタル塗りが必要とされる主な場面は、以下のとおりです。

<外壁の仕上げ>

  • モルタルは外壁の仕上げ材として使用される
  • 塗り仕上げることで、継ぎ目のない美しい外観を実現できる
  • 手仕上げならではの温かみのある質感が特徴

<内壁の仕上げ>

  • 内壁の仕上げにもモルタルが使用される
  • 外壁と同様に、継ぎ目のない美しい仕上がりが可能

<床の仕上げ>

  • 室内や玄関、土間の床の仕上げにもモルタルが使用される
  • おしゃれな雰囲気を演出可能

<接着剤>

  • 花壇やブロック塀などを作る際の接着剤としてモルタルが使用される

<下地補修>

  • 防水工事の下地として、カチオン樹脂モルタルが使用されることがある

モルタル塗りの手順

モルタル塗りを行う際の基本的な手順は以下のとおりです。

1. モルタルの練り混ぜ

  • 水とモルタル材料を混ぜて、適度な練り具合のモルタルを作る

2. モルタル塗り

  • コテを使ってモルタルを壁や床に3〜4mm厚で塗りつける
  • 継ぎ目や開口部の周りにはネットを埋め込む
  • 追加で6〜7mm厚を重ね塗りし、合計10mm以上の厚さにする

3. 養生

  • 寒冷時は保湿に気をつける
  • 日射や通風によるドライアウトにも注意が必要

4. 仕上げ

  • 塗り終わったモルタルの表面を木ゴテなどで平滑に仕上げる
  • ひび割れがある場合は、健全部分と縁切りをしてから補修する

モルタル塗りを行う際は、材料の配合や養生管理が重要です。適切な水分量を保つことで、強度や耐久性を確保できます。

また、ひび割れ防止のためには、下地の状態を確認し、必要に応じて補強を行うことも重要です。さらに、仕上げ時の平滑性や美観にも気を配る必要があります。

モルタル塗りの単価

モルタル塗りの単価は施工条件や仕様によって異なりますが、以下のような例が参考になります。

床・溝モルタル仕上げ

階段(モルタル)

外部モルタル

1,200~2,500円/㎡

・4,000~5,000円/㎡前後

・フェルト、ラス貼り(波ラス8㎜)込み: 4,300 円/㎡〜

・フェルト、ラス貼り(波ラス8㎜)込みメッシュシート: 4,800円/㎡〜

・藤川ノンクラック工法: 9,500円/㎡〜

モルタル塗りの単価は、モルタルの塗り方が手塗りか機械塗りかによって変動することもあります。

他にも、屋内か屋外か、もしくは高所での作業か、これらの条件で単価が変動する可能性もあるでしょう。

また、モルタルの厚みによっても単価が変わってきます。モルタル塗りは一般的に5mm~40mmの厚さで施工されますが、厚みが増えるほど工事費用も高くなります。

なお、モルタル塗りも含めた左官工事の単価については、当サイトに掲載している以下の記事もあわせて参考にしてください。

左官工事の単価表|算出方法や項目、工事の種類について

まとめ

建築物の防火性や耐久性アップ、外観を整える役割を果たすのがモルタルの特徴です。どのような場面でモルタル塗りが必要になるのか、またその手順はどのようになっているのか、左官工事を事業に取り入れる際は覚えておかなければなりません。

また、自社におけるモルタル塗りの単価を決定するうえで、平均相場を把握しておくことも大切です。本記事で紹介したモルタル塗りの概要や重要性、施工手順や単価を参考にし、今後の事業展開にお役立てください。