左官工事の単価表|算出方法や項目、工事の種類について

目次
土やセメント、石灰やモルタル、漆喰などで壁・床・塀を塗り上げる工事を左官工事といいます。左官工事の多くは、資材や作業工程はもちろん、職人の技術や人数によって費用・単価が異なる傾向にあります。
そこで今回は、左官工事における単価に関して、
- 左官工事の単価表とは
- 左官工事における単価設定の重要性
- 単価表の作成手順
- 左官工事の単価を算出する方法
- 左官工事に含まれない単価
- 左官工事の地域別単価
上記の観点で解説します。
左官工事の単価表とは

左官工事にかかる費用を、施工内容や資材、施工面積などに応じてまとめた表を、単価表といいます。まれに、下地処理の費用や足場設置費用、養生・高圧洗浄の費用が含まれることもあります。
一般社団法人「建築コスト管理システム研究所」が発表したデータでは、左官工事の単価は以下の内容で構成されていました。
・床コンクリート面直均し仕上げ |
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なお、左官工事の単価は、あくまで業者ごとに設定された価格がベースとなります。また、同じ業者でも、施工内容・資材・施工面積によって単価が異なる場合が大半であることも覚えておきましょう。
左官工事における単価設定の重要性
左官工事における単価設定は、顧客満足度と事業の収益性を左右する要素であるため、適切に設定することが極めて重要です。
はじめに、顧客満足度について考えてみましょう。顧客は、予算内で工事を依頼できるかどうかを判断するために、事前に明確な単価を知りたいと考えています。
適切に設定された単価は、高品質なサービスが適正な価格で提供されているという印象を顧客に与え、顧客満足度を高める結果につながります。しかし、単価が高すぎると顧客を遠ざけ、反対に低すぎると品質への不安を生じさせ、顧客満足度を低下させる可能性があるでしょう。
次に、収益性の観点から見ると、適切な単価設定は事業の成長と持続性に不可欠です。必要な利益を確保し、事業を継続するために必要な資金を調達するためには、適切な単価設定が必須です。
しかし、単価が低すぎると利益が減少し、事業の存続を脅かす可能性があります。また、単価が高すぎると顧客数が減少し、結果的に収益性が低下する可能性があります。
このように、顧客満足度と収益性の両方を考慮し、適切な単価設定を行うことが求められます。
左官工事の単価表を作成する手順
左官工事の単価表を作成する際の手順は以下の通りです。
- 作業範囲を確認して数量を把握する
- 作業環境を考慮して作業の手間・材料を算出する
- 算出した総費用を面積(㎡)で割り㎡単価を算出する
- 算出した結果をメートル・段数で割ってそれぞれの単価を計算する
まず、作業の範囲を確認し数量を把握します。次に、作業環境を考慮し、それに基づいて作業の手間と必要な材料を算出します。このとき、砂やセメント、タイルなどの材料費と施工手間賃を計算に含めることを覚えておきましょう。
その後、算出した総費用を面積(㎡)で割り、㎡単価を算出します。さらに、その結果をメートルや段数で割り、それぞれの単価を計算することで左官工事の単価表を作成可能です。
左官工事の単価はどのように算出する?

左官工事の単価設定は、さまざまな要素が考慮され、かつそれぞれの要素が算出に大きな影響を及ぼします。
まず、材料費です。左官工事で使用する材料は、モルタル・漆喰・珪藻土など多種多様であり、それぞれの価格は大きく異なります。
また、使用する材料の品質やグレードによっても価格は変動します。材料費は施工面積や材料の使用量によって計算されるため、単価設定における重要なポイントとなるでしょう。
次に、人件費という要素です。左官工事の人件費は、職人の技術や経験により大きく変動します。経験豊富な職人の人件費は、高くなる傾向にあるのが一般的です。
施工時間や職人の人数によって計算される人件費も、左官工事の単価を決める重要な要素と言えるでしょう。
さらに、経費という要素も考慮されます。左官工事は、足場設置費や養生費、運搬費など、材料費や人件費以外のさまざまな経費が発生するのが特徴です。これらの経費は、工事の内容や規模によって異なります。
なお、これらの経費は、左官工事の単価には含まれないこともあります。詳細は後述する「左官工事の単価に含まれない項目は?」の項目を参考にしてください。
最後に、事業を継続するためには利益が不可欠です。利益は材料費・人件費・経費を差し引いた金額から算出されます。
これら全ての要素を考慮し、適切にバランスを取ることで、適正な左官工事の単価が設定されます。
左官工事の単価に含まれない項目は?

左官工事の単価には、通常、以下の項目が含まれない場合が多いでしょう。
- 下地処理
- 養生
- 足場設置
- 搬入・搬出
- 清掃
- その他(特殊な材料の使用、複雑な施工など)
第一に「下地処理」という作業です。既存の壁や床が左官工事を行うための適切な強度や平滑性を欠いている場合、モルタル補修やボード貼り、パテ処理などの下地処理が必要になります。その費用は、下地の状態や選択する処理方法により変動します。
第二に「養生」が単価には含まれないこともあるため注意が必要です。家具や床などを保護するための養生は、ビニールシートやテープ等を使用し、その費用は養生する範囲や使用する材料で変動するでしょう。
第三に「足場設置」ですが、これも左官工事という枠では単価に含まれないこともあるでしょう。特に高所での作業を伴う場合、足場の設置は必須となりますが、その費用は足場の高さや設置場所によります。
第四に「搬入・搬出費用」が含まれない可能性もあるでしょう。材料や道具の搬入・搬出にかかる費用は、距離や量によって変動します。
第五に「清掃費用」も単価には含まれないことが多いです。工事完了後の清掃にかかる費用は、清掃する範囲や使用する材料によります。
最後に「その他」の項目として、特殊な材料の使用や複雑な施工など、通常の範疇を超える作業がある場合、別途費用が発生することがあります。
【地域別】左官工事の単価例

ここでは、左官工事にかかる単価を、地域ごとに紹介します。
・北海道:28,300円 |
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情報引用:国土交通省|令和6年3月から適用する公共工事設計労務単価について
まとめ
今回は、左官工事の単価を明確にするための、単価表に関する知識を紹介しました。
左官工事を行ううえでは、施工でかかる単価について理解を深めることが重要です。国土交通省のデータで、左官工事の公共工事設計労務単価が27,414円(前年比+5.0%)となっていることから、左官工事を依頼したい顧客側の負担は増えることになります。
したがって、顧客に対してより明瞭な単価を掲示しつつ、他社と比較した際のメリットを感じさせる単価設定が重要になるのです。
左官工事における単価表の重要性も加味しつつ、自社なりの単価を設定し、顧客に対して提示できるようにしましょう。