左官工事における見積もりの内訳|作成時のポイントも解説
目次
実際に左官工事に携わる仕事をするうえで、見積書の作成における知識を事前に身につけておきたい、より詳細に把握したいと考える方も多いのではないでしょうか。
今回は、左官工事の見積書について、
- 記載される基本項目
- 見積もりの作成例
- 見積書の入手先
- 見積書を作成する際のポイント
- 依頼者に見積もりを出すうえでの注意点
上記の視点から解説します。
左官工事の見積書に記載される基本項目
左官工事の見積書には、作業内容や工程、工事費用などが記載されます。
作業内容・工程
見積書には、実際に行った左官工事の概要や内容について記載する必要があります。
- 見積もり作成日
- 工事の名称
- 工事箇所
- 依頼者
- 受注者
まず見積書には、工事の名称を記載します。「壁のモルタル塗り替え」や「浴室のタイル補修」など、実際に行う左官工事の内容がわかる名称を記載してください。
次に、工事場所を記載します。戸建てであれば住所、マンションであれば部屋番号を含めた住所を記載しておきましょう。また「工事の名称」で記載した壁・浴室などの施工箇所を、ここで記載する場合もあります。
続いて、施工を依頼した方と、施工を実施する工務店の詳細を記載します。それぞれ氏名(会社名)と住所、連絡先などの基本情報だけ記載しておけば問題ありません。
また、見積もり作成日に関しては「見積書を作成した日」を記載してください。依頼者に見積もり内容が届くタイミングと作成日は異なることが多い点に配慮し、できるだけ確認日と作成日の間が開かないよう工夫する必要があるでしょう。
これらの項目に加え、近隣への挨拶の有無など、別途特記事項がある場合はあわせて記載しておきましょう。
工事費用
左官工事の見積書には、工事にかかった費用を記載する必要があります。
- 資材費
- 人件費
- 経費
- 合計額
まずは、左官工事に使用した資材費の内訳を記載します。資材の名称や数量、単価や合計金額がわかるように記載してください。
続いて、人件費を記載しましょう。工事に参加した職人の時間単価や人数、さらにそれぞれの合計金額をミスなく記載し依頼者に渡してください。
さらに、左官工事の際に発生した経費も、別途記載する必要があります。ここでいう経費とは、運搬費やゴミ処理費、足場設置費や養生費などです。
これらの経費は、左官工事の単価に含まれない場合もあります。詳細は別記事「左官工事の単価表|算出方法や項目、工事の種類について」を参考にしてください。
なお、見積書を作成するうえでは、費用に関連する以下の項目もあわせて記載するようにしましょう。
- 支払期日
- 支払方法
- 保証期間
左官工事の見積書作成例
左官工事の見積書を作成する際は、国土交通省が掲載する見積書の書式と、株式会社フロアエージェントで掲載されている単価の例を掛け合わせた以下の表を参考にしてください。
名称 | 摘要 | 単価 | 単位 |
---|---|---|---|
モルタル塗り金鏝押え | ・壁 ACパネル下地 塗り厚15mm | 2,800円 | ㎡ |
材料費 | ・黒モルタル:3,500円 | 18,000円 | ㎡ |
労務単価 | ・人件費 | 25,958 | 人 |
情報引用
国土交通省|公共建築工事見積標準書式
国土交通省|令和5年3月から適用する公共工事設計労務単価について
株式会社フロアエージェント|左官工事価格一覧
左官工事の見積書はどこで入手できる?
左官工事の見積書を作成する際は、自社で使用するフォーマットのようなものを用意しておくべきです。
見積書のフォーマットを入手する際は、工事概要や工事内容、費用やその他特記事項などをしっかり記載できるか、事前に確認しておきましょう。
自社で実施する左官工事の内容を、よりわかりやすく記載できるか否かがフォーマットを決めるうえでの基準となります。
フォーマットをどこで入手すべきか悩んでいる場合は、弊社クラフトバンクが無料でプレゼントしてる見積書テンプレートをぜひご活用ください。
左官工事の見積書を作成する際のポイント
ここでは、左官工事の見積書を作成する際に押さえておきたい、以下3つのポイントについて解説します。
- スケジュールに余裕を持たせる
- 資材費と労務費それぞれで単価を算出する
- 単価ごとに値引き設定をする
スケジュールに余裕を持たせる
左官工事の成功は、スケジューリングが鍵となります。
スケジュールに余裕をもたせず、見積もり作成・提出期間を不適切に短縮すると、工事費が過大になるリスクがあるでしょう。
これは、施工会社が適切な期間を持たせずに見積もりを作成することで、依頼主が工事の内容を把握し切れず、不確定な部分を概算で計上することになるためです。
結果、見積もりの検証が不十分になり、根拠に基づいた価格設定が困難になります。
さらに、依頼者が施工会社を決める意思決定までの期間が短いと、価格交渉のための適切な日程が確保できません。
そうすると、交渉の選択肢が制限され、適正な金額への落とし込みが困難になり、自社以外の会社に依頼されてしまうでしょう。
ただし、スケジュールに余裕を持たせすぎると、人件費の負担が増大する可能性もあります。
そのため、あくまでバランスを意識したスケジュールを作成することで、いわゆる「現実的」なスケジュールをもとにした見積書を作成可能です。
資材費と労務費それぞれで単価を算出する
左官工事の見積書を作成する際は、資材費・労務費はそれぞれ別途で単価を算出しましょう。
工事費には使用した資材の費用に加え、職人の人数や稼働時間に応じた費用がそれぞれかかります。
これらの費用を一緒くたにしてしまうと、見積書の内容が不明瞭になってしまい、依頼者が不信感を抱いてしまいます。
左官工事における見積書作成時は、実際の施工にかかった費用を、項目ごとに細かく記載することが大切です。
費用内訳を詳細に記載しておけば、依頼者が内容を把握しやすくなるのはもちろん、価格交渉に関する説明・やりとりをスムーズにすることが可能です。
単価ごとに値引き設定をする
依頼者が見積金額からの値引きを申し出てきた場合、全体でかかる金額ではなく、単価ごとに値引き設定をしましょう。
まれに、一括値引きを行う施工会社もありますが、一括値引きをしてしまうと、資材費・労務費の項目で算出した単価が意味のないものになってしまうのです。
また、一括値引きを施工会社から提案することも、できれば避けましょう。
せっかく単価を詳細に設定しても、一括値引きを提案することで依頼者が「根拠のない価格設定をしていた」と誤解してしまうためです。
「値引きを交渉された」
「こちらから値引きを提案して契約にこぎつけたい」
このような場合は単価ごとに値引き設定をし、あくまで「根拠のある値引き」を行うことが重要です。
左官業者が依頼者に見積もりを提示する際の注意点
左官業者が見積書を作成し、依頼者に提示するうえでは、以下3つに注意する必要があります。
- 「一式」という表現は使用しない
- 項目ごとの費用に関して具体的な説明をする
- 相場より極端に安い金額にしない
「一式」という表現は使用しない
見積書を作成する際は「一式」という表現を使用せず、項目をそれぞれ設定し、単価も細かく設定・記載しましょう。
左官工事の内訳には資材費・労務費があり、それぞれ細かく項目を設定できます。
この各項目の内容を明確にしないと、依頼者が見積金額に対して信用を持てなくなります。
見積書を見た段階で「なぜこの価格なのか」がわかるよう、一式という表現は避け、項目ごとの単価を細かく記載することが大切です。
項目ごとの費用に関して具体的な説明をする
見積書に記載する項目ごとの単価について、依頼者から質問を受ける場合もあります。
その際にしっかり根拠を答えられるようにしないと、依頼者の信頼は得られないでしょう。
上述の項目でも触れたように、見積書には「一式」という表現は使わず、施工内容ごとに詳しく価格を記載します。
そのうえで、項目ごとの価格に根拠を持たせ、具体的に説明できるようにしておくことで、価格に関しての納得度が高い状態で施工を開始できます。
項目ごとに根拠のある価格を設定しておけば、仮に内容が不服として価格交渉をされた場合でも、納得のいく説明がしやすくなるでしょう。
また、項目ごとにそれぞれ値引き対応ができるので、項目別の費用設定は非常に重要です。
相場より極端に安い金額にしない
工事の契約締結のみを重視し、相場よりも安い金額を提示しないよう注意してください。
確かに安い金額であれば、依頼者が興味を持ってくれるかもしれません。
しかし、相場より極端に安い金額で契約を締結できても、結局赤字になってしまう可能性が高いでしょう。
また、相場より極端に安い見積もりを提示する業者に対し「悪徳業者なのではないか」と不信感を抱く方も少なくありません。
そのため、見積書を作成する際はあくまで相場を基準にし、自社が行う施工にかかる金額を明確に記載することが大切です。
まとめ
左官工事の見積書には、作業内容や工程、費用の内訳といった項目を記載します。
なお、左官工事における見積書を作成する際は、以下の点を意識することも大切です。
- 余裕を持ったスケジュールを設定する
- 資材費・労務費それぞれで単価を算出する
- 一括値引きは極力実施しない
- 「一式」ではなく項目ごとに単価を設定する
- 項目ごとの費用に根拠を持たせる
- 相場より極端に安い金額は提案しない
見積書作成に関する詳細を把握したい、見積書作成手順を改めて設定したい左官業者の方は、ぜひ今回紹介した内容を参考にしてください。
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