建設業の労働時間に関する現状|長時間労働による課題と解決策

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長時間労働に関して、課題を感じている建設業者も多いのではないでしょうか。労働時間に関する課題を放置すると、従業員の健康被害やワークライフバランスの崩れ、さらには人材確保の困難につながります。

本記事では、建設業における労働時間について、以下の視点から解説します。

  • 労働時間の現状と課題
  • 労働時間の課題を解決する方法
  • 建設業が改善すべき給与や社会保険、生産性向上について

本記事の内容を参考にすることで、より良い労働環境づくりのヒントが得られるでしょう。

建設業における労働時間の現状と課題

まずは、建設業における労働時間の現状と課題について解説します。

労働時間の現状

建設業の労働時間は、他の産業と比べて長いのが現状です。厚生労働省の調査によると、建設業の年間総実労働時間は2,000時間近くになっています。

特に繁忙期には、1日12時間以上の労働も珍しくありません。

建設業における長時間労働の背景には、工期の厳守や天候に左右される屋外作業の特性があります。また、人手不足も深刻で、一人当たりの業務量が増加しているのも要因の一つです。

さらに、建設現場では予期せぬトラブルへの対応も求められるため、労働時間が延びやすい傾向にあります。

労働時間の課題

建設業における労働時間の最大の課題は、長時間労働による健康被害とワークライフバランスの崩れです。過度な残業は、心身の疲労を蓄積させ、作業効率の低下や事故のリスク増大につながります。

また、私生活の時間が確保できないことで、若手人材の確保や定着率の向上が難しくなっています。

労働時間の課題に対し、政府は「働き方改革」の一環として、建設業の時間外労働の上限規制を2024年度から適用する予定です。

しかし、急激な変化は現場の混乱を招く恐れがあるため、段階的な導入が求められています。

また、ICT技術の活用や作業の効率化、適切な工期設定など、複合的なアプローチが必要不可欠です。

建設業が労働時間の課題を解決する方法

建設業が労働時間の課題を解決する方法として挙げられるのは、以下のとおりです。

  • 工期の見直し
  • 社会保険の加入
  • 週休2日制の推進
  • 勤怠管理システムの導入
  • DX化
  • IoT化

労働時間に関する課題解決策を模索している建設業者の方は、ぜひここで紹介する対策の導入を検討してみましょう。

工期の見直し

建設業の労働時間短縮には、適切な工期設定が不可欠です。国土交通省は、2020年7月に「工期に関する基準」を策定しました。

国土交通省の発表した基準では、休日・法定外労働時間を考慮した上で、必要な工期を確保することを求めています。

具体的には、準備・後片付け期間の確保や、天候等のリスクを考慮した余裕期間の設定が推奨されています。また、発注者と受注者の協議によって、無理のない工程を組むことが重要です。

適切な工期設定により、作業の効率化や労働時間の削減が期待できます。

社会保険の加入

建設業における社会保険の加入促進は、労働時間の適正化に向けた重要な対策です。社会保険への加入により、労働者の権利が守られ、長時間労働の抑制につながります。

また、企業側も労務管理の意識が高まり、適正な労働時間管理が可能になるでしょう。さらに、社会保険加入は人材確保にもプラスに働くため、人手不足解消の一助となる可能性があります。

週休2日制の推進

建設業界での週休2日制導入は、労働時間短縮の有効な手段です。

週休2日制導入により、労働者の心身のリフレッシュが図れ、作業効率の向上につながります。また、若手人材の確保や定着率の向上も期待できるでしょう。

ただし、工期や人員配置の見直しが必要なため、段階的な導入が求められます。

建設業における週休2日制に関する詳細は、以下の記事でも詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

>>>建設業の週休2日はいつから義務化されるのか?週休2日に向けてやるべき5つのこと

勤怠管理システムの導入

勤怠管理システムの導入は、労働時間の可視化と適正管理に効果的です。建設現場では、ICカードやスマートフォンアプリを使用した入退場管理システムの導入が進んでいます。

これらのシステムにより、リアルタイムでの労働時間把握が可能になり、長時間労働の抑制や36協定の遵守がしやすくなるでしょう。

また、データの蓄積により、業務の効率化や人員配置の最適化にも活用できます。導入にはコストがかかりますが、長期的には労務管理の効率化につながります。

DX化

建設業のDX(デジタルトランスフォーメーション)は、労働時間短縮につながる重要な施策のひとつです。BIM(Building Information Modeling)やCIM(Construction Information Modeling)の活用により、設計から施工、維持管理までのプロセスを効率化できます。

これらのツールを使用することで、図面の作成時間が短縮され、現場での手戻りも減少します。また、関係者間の情報共有がスムーズになり、意思決定も迅速になるでしょう。

DX化には初期投資と教育が必要になりますが、長期的には大幅な労働時間削減が期待できます。

なお、建設業のDX化には、クラフトバンクオフィスの導入もおすすめです。

クラフトバンクオフィスを導入することで、建設業に関わるあらゆる業務の効率化が期待できます。詳細については、以下より資料をダウンロードし、ご確認ください。

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IoT化

建設現場のIoT(Internet of Things)化も、労働時間短縮に貢献します。センサーやドローン、ウェアラブルデバイスなどの活用により、現場の状況をリアルタイムで把握し、効率的な作業管理が可能です。

例えば、重機にGPSとセンサーを搭載することで、稼働状況や位置情報をリアルタイムで把握でき、作業の無駄を削減できます。

また、ウェアラブルデバイスによる作業者の健康管理は、過重労働の防止にも役立ちます。

IoT化には初期コストがかかりますが、作業効率の向上と安全性の確保につながり、結果的に労働時間の削減に寄与するでしょう。

労働時間だけではない?建設業が改善すべきこと

建設業が改善すべきは、労働時間のみではありません。ここでは、労働時間とあわせて建設業が改善すべき、給与や社会保険、生産性の向上について解説します。

給与や社会保険

建設業の改善には、労働時間の短縮だけでなく、適切な給与水準の確保と社会保険の加入促進が不可欠です。

国土交通省の調査によると、建設業の平均年収は全産業平均を下回っており、人材確保の観点からも改善が急務です。

具体的な取り組みとして、技能や経験に応じた処遇の実現があります。建設キャリアアップシステムの導入により、技能者の能力を適切に評価し、それに見合った給与水準を確保することが目指されています。

また、社会保険加入の徹底も重要です。2024年度からは、建設業許可の更新時に社会保険加入が義務付けられる予定です。これにより、労働者の権利保護と企業の責任ある経営が促進されます。

なお、建設業の社会保険に関しては、以下の記事を参考にしてください。

>>>建設業は保険加入が必須?主な種類や選び方、手続きについて

生産性の向上

建設業の生産性向上は、労働時間短縮と密接に関連しています。国土交通省のデータによると、建設業の労働生産性は、製造業の約8割程度にとどまっています。

生産性に関する課題解決のため、IoTや新技術の導入が推進されているのです。

具体的な取り組みとして挙げられるのは、BIMやCIMの活用による設計・施工プロセスの効率化です。また、ドローンやAIを活用した測量・検査の自動化も進んでいます。

さらに、建設業許可等の手続きの電子化により、事務作業の負担軽減も図られています。

これらの施策により、限られた人材と資機材を効率的に活用し、生産性の向上と労働時間の短縮を同時に実現することが期待できるでしょう。

まとめ

建設業の労働時間問題は、業界全体で取り組むべき重要な課題です。工期の見直しや週休2日制の推進、勤怠管理システムの導入やDX化・IoT化などの施策により、労働時間の短縮と業務効率化が期待できます。

また、適切な給与水準の確保や社会保険加入の徹底、生産性向上への取り組みも不可欠です。

これらの改善策を総合的に実施することで、働きやすい環境が整い、人材確保や定着率向上にもつながります。

建設業の持続可能な発展のためには、労働環境の改善が鍵となります。一つずつ着実に改善を重ねることで、業界全体の魅力向上と競争力強化が実現できるでしょう。