建設業許可の種類と区分について

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目次

建設業を生業としていくうえで、建設業許可の取得は必要不可欠です。建設業許可とは、建設業を営むために求められる許可のことを指します。

この建設業許可にはさまざまな種類があるため、施工内容に応じた最適なものを選択・取得しなければなりません。

そこで今回は、建設業許可に関する以下の内容についてまとめました。

  • 建設業許可の種類一覧
  • 近年の建設業許可における傾向
  • 建設業許可にまつわる注意点

なお建設業許可の概要や仕組みに関する詳細は、当サイトに掲載されている以下の記事を参考にしてください。

建設業許可証とは?テンプレートや書き方、有効期限など全解説!

建設業許可の種類一覧

国土交通省の発表したデータから、建設業許可は以下の29種類になっていることがわかります。

  • 土木一式工事
  • 建築一式工事
  • 大工工事
  • 左官工事
  • とび・土工工事
  • 石工事
  • 屋根工事
  • 電気工事
  • 管工事
  • タイル・れんが・ブロック工事
  • 鋼構造物工事
  • 鉄筋工事
  • 舗装工事
  • しゅんせつ工事
  • 板金工事
  • ガラス工事
  • 塗装工事
  • 防水工事
  • 内装仕上工事
  • 機械器具設置工事
  • 熱絶縁工事
  • 電気通信工事
  • 造園工事
  • さく井工事
  • 建具工事
  • 水道施設工事
  • 消防施設工事
  • 清掃施設工事
  • 解体工事

ここでは、建設業許可の種類それぞれの概要をまとめています。なお、それぞれの建設業許可における内容や例示、区分の考え方については国土交通省の「建設工事の内容、例示、区分の考え方」を参考にしてください。

土木一式工事

土木一式工事は、土木工作物の建設に関する総合的な企画・指導・調整のもとで行われる大規模かつ複雑な工事です。

専門工事を必要としない場合や、全体の調整が求められる工事が該当します。

建築一式工事

建築一式工事とは、複数の専門工事を組み合わせて、総合的に企画・指導・調整をして建築物を建設する工事を指します。

建設業法においては、一定額を超える建築系の工事を単体で請け負うには、建築一式工事の許可を取得しなければなりません。元請業者が複数の専門工事業者を統括して建築物を建設するため、建築一式工事の許可取得が重要となるのです。

大工工事

大工工事とは、木材の加工と組み立てによって、家屋や神社仏閣などの木造建築物を建築する工事のことです。

建設業法では、木材の加工や取り付けにより工作物を築造したり、工作物に木製設備を取り付けたりする工事と定義されています。

左官工事

左官工事とは、モルタルやプラスター、土壁・漆喰・繊維などを水で練り、建物の壁や床を塗り仕上げる工事を指します。

建物の保護や上面の装飾、意匠が左官工事の主な目的です。左官工事は建築物の品質や美観に大きな影響を与えるため、高い技術が求められます。

とび・土工工事

とび・土工工事とは、建築物の骨組みとなる部分の組立や、土砂の掘削・盛り上げ・締め固めなどの工事を行う建設業の一種です。

建物の基礎や構造の形成に深く関わるため、確実性・安全性が強く求められます。そのため、着工前の綿密な工程管理と作業計画の立案が必要不可欠です。重機の使用や高所作業など、危険を伴う作業が多いため、あらゆる状況に対応できるよう、事前の体制整備も重要になります。

石工事

石工事は、石材やコンクリートブロック、擬石などを加工・積み上げて工作物を築造し、その工作物に石材を取り付ける建設工事のことです。石積み工事やコンクリートブロック積み工事などが該当します。

石工事は、商業ビル・ホテル・駅・再開発プロジェクト・公共施設など、多くの建築物の重要な部分にて実施されています。石材の加工や積み上げによって、街の景観を整え、建物の安全性を確保する大切な役割を担っているのです。

屋根工事

屋根工事とは、新築や改修工事における屋根に関する一連の工事です。

新築工事では、母屋や垂木、トラスなどの構造体を作り、瓦やスレート、金属板などの屋根材を葺き付ける工事が行われます。一方、リフォームで行われるのは、屋根の重ね葺き・葺き替え・塗装・漆喰補修・棟板金交換などの工事です。

さらに、下地材の取り付け、防水シートの張り付け、陸屋根の防水工事、雨樋の取り付けなども屋根工事に含まれます。

電気工事

電気工事は、建築工事の一分野であり、電気設備の施工、修理、保守を行う工事です。

電気会社から送電された電気の送配電や変電のための配線工事や、電灯・電気機器の設置や変更工事、施工後の保守点検や故障時の修理が主な業務になります。

電気工事は、建物の電力供給や照明、機器の稼働に不可欠な工事であるため、適切な工事と確実な保守管理が求められます。

管工事

管工事とは、建物内の設備工事の一種です。主な施工内容は以下を参考にしてください。

  • 水・ガス・蒸気などを送るための管の設置
  • 冷暖房や空調設備の取り付け
  • 建物内の快適な環境を維持するための設備工事

管工事は、建物の水道やガス、空調などのライフラインを支える重要な工事であるため、適切な設計と確実な施工が求められます。

タイル・れんが・ブロック工事

タイル・れんが・ブロック工事とは、建築物の壁や床、屋根などにタオル・れんが、コンクリートブロックなどを使用して築造・取り付ける工事です。

この工事により、建物の外観を美しく仕上げ、建物を保護し、耐久性を高めることができます。建築物の外観や品質に大きな影響を及ぼすため、安全性や規格を満たす必要があります。

鋼構造物工事

鋼構造物工事とは、形鋼や鋼板などの鋼材を加工・組み立てて工作物を築造する建設工事のことです。

主な工法は溶接加工で、鋼材を溶接することで構造物を築造します。組み立て作業においても、溶接が主な方法として採用されています。

鋼構造物工事は、鉄骨フレームの建築物や橋梁、鉄塔など、様々な鋼製の工作物の建設に用いられるのが特徴です。

鉄筋工事

鉄筋工事とは、建築物やインフラ構造物のコンクリート内部に鉄筋を組み立てる工事です。

鉄筋はコンクリートの「骨組み」のような役割を果たしているため、建物や構造物の強度に大きな影響を与える重要な工事であることがわかります。

舗装工事

道路や広場などの地盤面を数層の砂利や砕石で締め固め、その上にアスファルトやコンクリートを敷き詰める工事を舗装工事といいます。

舗装工事の主な目的は、人や車が安全かつスムーズに通行できるようにすることです。また、道路の景観を美しく保つことや、下水道管やガス管などのインフラ設備を設置することも舗装工事における目的の一つ。

舗装工事は、道路や広場の基礎となる重要な工事であり、安全性と利便性の向上に寄与しているのです。

しゅんせつ工事

しゅんせつ工事とは、河川や港湾の水底に堆積した土砂を取り除く土木工事です。その目的は、船舶の安全な航行を確保するため、航路や泊地の水深を確保すること。

また、しゅんせつにより水質が改善され、水中の酸素量や光量が増加することで、水生生物や植物の生育条件が改善されます。このことから、生物多様性の向上にも寄与している工事とも言えるのです。

板金工事

板金工事とは、金属薄板などを加工し、建築物に取り付ける工事です。金属製の屋根や外壁、付属物などを施工する専門工事に分類されます。

建築物の外装を担う重要な工事分野であり、金属建材の特性を活かし、建築物の機能性と美観を高めることが求められる工事です。

板金工事を行うには、金属建材を扱う専門性が求められるため、適切な資格と技術を持つ業者が施工を行う必要があります。

ガラス工事

ガラス工事は、建設業における専門工事の一つで、建築物にガラスや鏡を取り付ける工事全般が含まれます。

具体的な工事内容は、ガラス加工・取付け、ガラスフィルム施工、板ガラスの加工・取付、ガラスブロックの施工、サッシへのガラス取り付けが該当します。

ガラス工事では、使用場所に合わせて部品の製作を行うこともあります。そのため、建築物にガラスを取り付ける前に、適切な加工を施すのが一般的です。

塗装工事

塗装工事とは、建物の外壁や屋根などの工作物に塗料や塗材を塗布または吹き付ける工事です。塗膜を形成し、建物の表面を保護し美観を維持することが主な目的です。

塗装工事には、足場設置や養生、下地処理など、実際の塗装作業以外の工程も含まれます。特に下地処理は塗装の仕上がりや耐久性に大きな影響を及ぼすため、慎重に行わなければなりません。

なお、塗料の選定にも様々な要素が考慮されます。建物の材質、環境条件、コストなどを踏まえ、適切な塗料を選択する必要があるのです。

防水工事

防水工事とは、建物の屋上や屋根、ベランダやバルコニーなど雨に晒される場所を水から保護するための工事です。建物本体を雨風から保護し、建物の健全性を長期的に維持することが目的です。

防水工事が必要とされる部位には、屋根・ベランダなどの雨が直接当たる場所や、浴室・洗面所・トイレなどが該当します。防水工事を行わないと、建物内部への浸水や腐食、シロアリ被害などさまざまな問題が生じる可能性があります。

内装仕上工事

内装仕上工事とは、建物の内部を施主の要望や空間イメージに合わせて仕上げる工事です。建物の外観だけでなく、居住性にも大きな影響を及ぼす重要な工事となります。

内装仕上工事には、インテリア・天井・壁・間仕切り・床・畳・襖・家具など、多岐にわたる部位に施す作業が含まれます。建物の用途や設計に合わせて、適切な材料や工法を選択しなければなりません。

内装仕上工事は、建物の美観と快適性を高める上で欠かせない工程です。施主の要望を反映しつつ、建物の特性に合わせた最適な仕上げを行うことが重要になります。

機械器具設置工事

機械器具設置工事とは、プラントや発電所などの機械設備を組み立て、据え付ける工事です。機械設備が工作物と一体となって初めて機能を発揮するため、非常に重要な位置づけにあります。

機械器具設置工事には、電気工事・管工事・通信工事・消防設備工事などが含まれる場合があります。ただし、それぞれの専門工事に該当しない機械器具や複合的な設備の設置が、機械器具設置工事の対象となることを覚えておきましょう。

熱絶縁工事

熱絶縁工事とは、建物や工場設備の熱の出入りを抑えるための工事です。保温・保冷材を適切に取り付けることで、熱エネルギーを効率的に利用できるようになります。

熱絶縁工事は、空調設備の故障や破損を防ぐ効果も期待できます。適切な保温・断熱処理により、設備の長寿命化や省エネにもつながるでしょう。

熱絶縁工事の対象は、ビルや工場の室内、配管やタンクなど多岐にわたります。用途や設備の特性に合わせて、最適な保温・保冷材を選定し、確実な施工が重要です。

電気通信工事

電気通信工事とは、主に情報通信設備に関わる「弱い電気」にまつわるの工事を指します。電話・テレビ・インターネット・防犯カメラ、火災報知器などの設置や配線工事が主な作業内容です。

電気通信工事と一般的な電気工事の違いは、扱う電力の大きさと必要な資格です。電気通信工事は「弱い電気」を扱い、対象設備は有線・無線通信設備、データ通信設備、放送設備などが中心となります。

造園工事

造園工事とは、庭園・公園・緑地などの緑化空間を創出する工事です。主な作業内容は、整地や樹木の植栽、景石の設置などです。

また、道路や建築物の屋上などを緑化したり、植生を復元したりする工事も含まれます。緑地の創出や植生の再生を通じた快適な環境づくりが、造園工事の目的です。

造園工事の担い手には、10年以上の実務経験と建設業の許可を持つ技術者が求められます。

さく井工事

さく井工事とは、地下水を利用するために地面に穴を掘り、ポンプや配管などの設備を設置する工事です。さく井機などの機械を使って、さく井や観測井、温泉や還元井などの掘削や、浅井戸の築造、揚水設備の設置などを行います。

「ボーリング工事」とも呼ばれているさく井工事は、地下水の有効活用と、効率的かつ耐久性のある井戸の構築を目的としています。

建具工事

建具工事とは、住宅の開口部に使用される建具の製作や取り付け、調整などを行う工事です。建具には金属製・木製・樹脂製などさまざまな種類があります。

建具工事は、内装仕上工事の一環として行われます。開口部に建具を適切に設置し、開閉機能を確保することが主な目的です。

水道施設工事

水道施設工事とは、自治体などの公共団体が管理する上下水道設備の建設・更新・維持管理に関する工事を指します。主な対象は、取水・浄水・配水施設や下水処理施設、道路下の水道管路などです。

これらの水道インフラは、地域住民の生活に不可欠な基盤設備です。水道施設工事は、安全で安定した水の供給と下水処理を実現するために重要な役割を果たします。

消防施設工事

消防施設工事とは、建物に火災警報設備・消火設備・避難設備などの消防関連設備を設置する工事です。新築時には必ず行われますが、既存建物でも設備の老朽化に伴い、改修工事が必要となる場合があります。

消防設備は、火災発生時の早期検知や初期消火、避難誘導など、人命と財産を守るための重要な役割を果たします。そのため、消防施設工事による、法令に基づいた適切な設備の選定と確実な設置が求められるのです。

清掃施設工事

清掃施設工事とは、公共団体が設置するごみ処理施設やし尿処理施設などの清掃関連設備を建設する工事を指します。地域の環境衛生を維持するうえで、重要な役割を果たすのです。

具体的な工事例としては、清掃センターでのごみ焼却炉の建設などが挙げられます。一方、下水道によりし尿や汚水が収集される場合は、清掃施設工事ではなく水道施設工事に分類されます。

解体工事

解体工事とは、建築物の全部または一部の機能を停止させる建設工事です。一般的には、建て替えや新築工事の前に行われます。

解体工事には建物本体の解体のみならず、建物内部や敷地内の物品撤去など、様々な付帯工事が含まれます。付帯工事の内容は建物によって異なり、木造住宅の場合は屋根瓦の撤去から始まり、手作業での内装解体、重機を使った建物本体の解体などが行われるのです。

近年の建設業許可における傾向

国土交通省の調査によると、2022年度末の建設業許可業者数は474,948業者で、前年度比0.1%減少していました。建設業許可業者数が減少するのは、実に5年ぶりとのこと。

特に近年においては、企業のコンプライアンス意識の高まりから建設業許可が重要視されるようになりました。無許可業者への発注を控える動きが広がり、法令遵守が業者間競争の前提となっています。

建設業界において、許可業者数の減少が続く中、企業の法令順守体制の強化が求められているのです。

建設業許可にまつわる注意点

建設業許可を取得するうえでは、90,000円の申請手数料が必要であること、有効期限は5年であることを覚えておかなければなりません。なお更新時には、各種変更届の提出が条件となります。

また、事業年度終了後4か月以内に「決算変更届」を提出しなければなりません。

さらに、商号や代表者、役員、専任技術者の変更時にも手続きが必要で、定められた期間内に提出する必要があります。

申請書類は管轄自治体によって異なり、常勤役員等の経営経験5年以上の要件も満たしていなければなりません。

また、建設業許可の取得には、以下の条件を満たす必要があることも覚えておきましょう。

  • 経営業務の管理責任者がいる
  • 専任技術者がいる
  • 請負契約に関する誠実性がある
  • 財産的基礎・金銭的信用がある
  • 許可を受けるものが一定の欠落要件に該当していない

まとめ

今回は、建設業許可に分類される29の工事について解説しました。各工事の概要を理解し、自身が営む建設事業にマッチしたものを取得するようにしましょう。

近年の傾向や取得時の注意点も踏まえて理解を深めることで、建設業許可の取得に関する滞りを回避できます。