建設業法施行令とは?施行規則との違いや改正履歴、新旧対照法を紹介

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目次

建設業法施行令とは、建設業法を施行するための規則です。

建設業法よりも具体的な指示・命令が明記される点が特徴といえます。

建設業法に違反しないためには、建設業法施行令を理解することがポイントです。

この記事では、建設業法施行令の概要や施行規則との違い、改正履歴について解説します。

建設業法施行令が改正される理由についても触れるので、建設業に携わる方はぜひ最後までご覧ください。

建設業法施行令とは

建設業法施行令とは、建設業法を施行するために定められたルールです

建設業法施行令は国会ではなく、内閣によって「政令」という形で制定されます。

建設業法は全体的な方針を取り決めるため、漠然とした内容になってしまいます。

そこで、建設業者の判断を助けるために、建設業法施行令にて具体的な指示・命令を記載するのです

たとえば、建設業の許可については、それぞれ次のように定められています。

【建設業法 第三条】

建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあつては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあつては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。

【建設業法施行令 第一条】

建設業法(以下「法」という。)第三条第一項の政令で定める支店に準ずる営業所は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所とする。

【建設業法施行令 第一条の二】

法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあつては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。

上記のように、建設業法の内容を、建設業法施行令が補足する形をとっています。

参考URL:建設業法 | e-Gov法令検索

参考URL:建設業法施行令 | e-Gov法令検索

そもそも建設業法とは?

建設業法とは

  • 建設業者の資質の向上
  • 建設工事の請負契約の適正化
  • 発注者の保護
  • 建設業の健全な発達

上記4点を目的として制定された法律です。

【建設業法 第一条】

この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。

建設業に携わる方は、建設業法に基づいて工事を行わなければいけません。

建設業法に違反すると、罰金や営業停止処分、許可の取り消しなどのペナルティが科せられる恐れがあります

参考URL:建設業法 | e-Gov法令検索

建設業法施行令と建設業法施行規則との違い

建設業法施行規則は建設業法施行令と同様に、建設業法の施行を目的として制定されたルールです

建設業法施行規則は内閣に、建設業法施行規則は大臣により定められます。

なお、建設業法施行令のほうが建設業法施行規則よりも上位に位置し、命令の効力は強いです。

建設業法施行令とガイドラインとの違い

建設業法ガイドラインは、国土交通省が提示する建設業者向けの指針です

そもそもガイドラインは遵守が推奨される規則であり、法的な強制力はありません。

しかし、国土交通省は基本的に、建設業法に沿って建設業法ガイドラインを作成しています。

そのため、建設業者はガイドラインの内容を理解した上で、工事を進める必要があります。

建設業法のガイドラインについては、以下の記事でも解説しているので参考にしてみてください。

>>>建設業法のガイドラインとは?建設業者が守るべきルールをわかりやすく解説

建設業法施行令の改正履歴

建設業法施行令の改正履歴を、いくつかピックアップしました。

  • 令和2年10月1日施行|著しく短い工期の禁止
  • 令和2年10月1日施行|監理技術者の専任義務の緩和
  • 令和2年10月1日施行|下請負人の主任技術者の配置が免除される特定専門工事
  • 令和3年4月1日施行|技術検定の合格者に与えられる称号
  • 令和5年1月1日施行|金額要件の見直し
  • 令和6年4月1日施行|技術検定の受検資格の見直し

1つずつ見ていきます。

令和2年10月1日施行|著しく短い工期の禁止

建設業法施行令が改正され、著しく短い工期が禁止されました

【建設業法施行令 第五条の八関係】

建設工事の注文者に対して、著しく短い工期による請負契約の締結を禁止し、これに違反した発注者に対して、国土交通大臣等は、必要があると認められるときは、勧告等をすることができることとする。

上記の勧告対象となる請負代金の下限額は、500万円(建築一式工事にあっては1,500万円)です。

著しく短い工期の禁止に違反した場合、発注者に対して勧告を行えます。

加えて、勧告に従わない場合は、その旨を公表することも可能です。

参考URL:「建設業法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました

参考URL:著しく短い工期の契約は - 禁止されています

令和2年10月1日施行|監理技術者の専任義務の緩和

工事現場の技術水準を確保するために配置される技術者を「監理技術者」と呼びます。

以前は工事ごとに専任の監理技術者を配置する義務がありましたが、建設業法施行令の改正により配置義務が緩和されました

【建設業法施行令 第二十八条、二十九条関係】

元請の監理技術者に関し、これを補佐する者を置く場合は、元請の監理技術者の複数現場の兼任を容認することとする。

監理技術者が現場を兼務するには

  • 監理技術者補佐を専任で配置すること
  • 監理技術者補佐は直接的かつ恒常的な雇用関係にあること
  • 監理技術者が兼務できる工事数は2件までであること

などの要件を満たさなければいけません。

参考URL:「建設業法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました

参考URL:監理技術者の専任緩和(建設業法第26条)

令和2年10月1日施行|下請負人の主任技術者の配置が免除される特定専門工事

特定専門工事における主任技術者の配置義務が見直され、改正された建設業法施行令が令和2年10月1日より施行されました

【建設業法施行令 第三十条関係】

専門工事のうち、施工技術が画一的である等として政令で定めるもの(以下、「特定専門工事」という。)については、元請の主任技術者が、下請の主任技術者が行うべき施工管理を併せて行うことができることとする。

特定専門工事とは、下請契約の合計額が3,500万円未満の型枠工事・鉄筋工事を指します。

なお、設置不要となるには、注文者から書面による承諾を得る必要があります。

参考URL:「建設業法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました

参考URL:工事現場に配置する技術者とは

令和3年4月1日施行|技術検定の合格者に与えられる称号

令和3年より、技術検定により与えられる称号が変更されました

【建設業法施行令 第四十条関係】

これまで学科試験と実地試験により行っていた技術検定について、それぞれを独立の試験とし、第一次検定及び第二次検定として実施する。

建設業法施行令の改正前における検定では、学科試験と実地試験に合格することで「技士」の称号を得られました。

改正後は、第一次検定合格により「技士補」、第二次検定合格により「技士」の称号が与えられます。

なお、検定資格は制度・内容が定期的に修正されるので、受ける前に試験元ホームページにて詳細を確認してみてください。

参考URL:「建設業法施行令の一部を改正する政令」が閣議決定されました

令和5年1月1日施行|金額要件の見直し

工事費の上昇を考慮し、建設業にまつわる費用が次のように見直されました

【特定建設業の許可等が必要となる下請代金額の下限】

改正前

改正後

建築一式工事以外

4,000万円

4,500万円

建築一式工事

6,000万円

7,000万円

【主任技術者および監理技術者の専任が費用となる請負代金額の下限】

改正前

改正後

建築一式工事以外

3,500万円

4,000万円

建築一式工事

7,000万円

8,000万円

【特定専門工事の下請代金額の上限】

改正前

改正後

建築一式工事かどうかに関わらず

3,500万円

4,000万円

建築一式工事とみなされる条件は

  • 工事1件の請負代金の額が1,500万円以上
  • 延べ面積が150平方メートル以上の木造住宅工事

上記2点です。

参考URL:「建設業法施行令の一部を改正する政令」を閣議決定

参考URL:建設業の許可とは

令和6年4月1日施行|技術検定の受検資格の見直し

建設業における人材確保・育成を目的とし、技術検定の受検資格が見直されました

改正された建設業法施行令の内容は、次のとおりです。

  • 1級の第1次検定は、19歳以上(当該年度末時点)であれば受検可能
  • 2級の第1次検定は、17歳以上(当該年度末時点)であれば受検可能(※変更なし)
  • 1級および2級の第2次検定は、第1次検定合格後の一定期間の実務経験で受検可能

大学卒業後の場合、これまでは実務経験3年以上でなければ、1級の第1次検定を受けられませんでした。

学歴によって数年の実務経験が求められる資格要件が変更され、より若手が受験しやすいような制度になったといえます。

参考URL:「施工技術検定規則及び建設業法施行規則の一部を改正する省令」等の公布

参考URL:令和6年度より施工管理技術検定の受検資格が変わります

建設業法施行令改正の新旧対照表

建設業法施行令の改正に関して、新旧対照表を作成しました。

建設業法施行令の施行日

改正前

改正後

令和2年10月1日

工期について明確なルールはない

著しく短い工期が禁止される

令和2年10月1日

工事ごとに専任の監理技術者を配置しなければいけない

監理技術者補佐の配置などの要件を満たせば、監理技術者の兼任が認められる

令和2年10月1日

請負金額に関わらず主任技術者を配置する義務がある

特定専門工事に限り、主任技術者の配置が不要となるケースがある

令和3年4月1日

学科試験・実地試験の合格により「技士」の称号を得られる

第一次検定合格で「技士補」、第二次検定合格で「技士」の称号が与えられる

令和5年1月1日

・特定建設業の許可等が必要となる下請代金額の下限:4,000万円(6,000万円)
・主任技術者および監理技術者の専任が費用となる請負代金額の下限:3,500万円(7,000万円)
・特定専門工事の下請代金額の上限:3,500万円
※()は建築一式工事の場合の金額

・特定建設業の許可等が必要となる下請代金額の下限:4,500万円(7,000万円)
・主任技術者および監理技術者の専任が費用となる請負代金額の下限:4,000万円(8,000万円)
・特定専門工事の下請代金額の上限:4,000万円
※()は建築一式工事の場合の金額

令和6年4月1日

・1級の第1次検定の資格要件:学歴や保有資格ごとに数年の実務経験が求められる
・1級および2級の第2次検定:学歴や保有資格ごとに数年の実務経験が求められる

・1級の第1次検定の資格要件:19歳以上であれば受験可能
・1級および2級の第2次検定:一定期間の実務経験で受検可能

建設業法を守るために、変更点を理解しておきましょう。

建設業法施行令が改正される理由は?建設業の現状

建設業法施行令が改正される理由として、建設業が抱える「人手不足」や「作業員の高齢化」などが挙げられます

上記2つはどの業界でも問題視されていますが、建設業は特に深刻な状況です。

2022年における建設業就業者は「29歳以下が約12%で55歳以上が約36%」でした

55歳以上の作業員が全体の約3分の1を占めており、10年後には多くの方が引退すると予想されます。

加えて、建設業就業者は1997年時点で685万人でしたが、2022年になると479万人にまで減少しています

建設業の現状を改善するには、労働環境や雇用制度の見直しが必要です。

そのため、建設業法施行令は定期的に改正されています。

建設業の若者離れに関しては以下の記事も、ぜひご参照ください。

>>>「建設業の若者離れは当たり前」と言われる理由と今後の対策案

参考URL:4. 建設労働 | 建設業の現状

参考URL:建設業の働き方改革の推進

まとめ:建設業法施行令の改正内容を理解することが大切

今回の記事は、建設業法施行令の概要や施行規則との違い、改正履歴を紹介しました。

建設業法施行令の改正により「著しく短い工期の禁止」や「監理技術者の専任義務の緩和」などが定められました。

建設業法施行令は定期的に改正されるため、「改正内容を把握するのは面倒」と感じる方もいるかもしれません。

しかし、建設業法施行令に関する理解は、建設業法の遵守につながります。

建設業法施行令の改正ポイントを知った上で、法律にもとづいた現場管理を行いましょう。