建設業許可の廃業届が必要なケースと手続き|廃業における注意点も解説
目次
建設業を廃業する際には、基本的に建設業許可の廃業届を提出する必要があります。
届出すべき者と必要な書類は、法人の合併や一部廃業、破産手続開始による解散の決定など、廃業のケースによって異なります。
また、個人事業から法人成りする場合にも廃業届の提出義務があるため、一人親方や個人で建設業を営んでいる方も届出が必要です。
本記事では、
- 建設業許可の廃業届が必要なケース
- 建設業を廃業する際の手続き
- 建設業を廃業する際の必要な手続き
- 建設業許可の廃業届を提出する際の注意点
- 廃業後に建設業許可を再取得できるケース
などを詳しく解説します。
建設業許可の廃業届が必要なケース
建設業許可の廃業届は、許可を受けた事業者が事業を終了する際に、建設業法第12条に基づき許可行政庁に提出する書類のことです。
建設業法には以下のように記されています。
(廃業等の届出)
第十二条許可に係る建設業者が次の各号のいずれかに該当することとなつた場合においては、当該各号に掲げる者は、三十日以内に、国土交通大臣又は都道府県知事にその旨を届け出なければならない。
一 許可に係る建設業者が死亡したとき(第十七条の三第一項に規定する相続人が同項の認可の申請をしなかつたときに限る。)は、その相続人
二 法人が合併により消滅したとき(当該消滅までに、合併後存続し、又は合併により設立される法人について第十七条の二第二項の認可がされなかつたときに限る。)は、その役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。以下同じ。)であつた者
三 法人が破産手続開始の決定により解散したときは、その破産管財人
四 法人が合併又は破産手続開始の決定以外の事由により解散したときは、その清算人
五 許可を受けた建設業を廃止したとき(第十七条の二第一項又は第三項の認可を受けたときを除く。)は、当該許可に係る建設業者であつた個人又は当該許可に係る建設業者であつた法人の役員
建設業許可は、5年ごとの更新制度を採用しており、更新しなければ許可が取り消されます。
しかし、廃業届を提出することで、満了日をまたずに建設業許可を取り消すことが可能です。
建設業許可の廃業届が必要となる具体的なケースは、以下の通りです。
- 個人事業主が死亡したとき
- 法人が合併により消滅したとき
- 法人が破産手続開始の決定により解散したとき
- 法人が合併または破産手続開始の決定以外の事由により解散したとき
- 許可を受けた建設業を廃業したとき
- 許可を受けた建設業の一部を廃業したとき
- 個人事業主から法人成りしたとき
- 専任技術者が退職したとき など
このように、廃業届を提出する主なケースは、会社の解散や破産、個人事業主の引退などが挙げられます。
また、建設業からほかの業種へ転換する場合や、合併により消滅会社となる際にも廃業届の提出が求められます。
一時的な事業停止や休業の場合は廃業届は不要です。
しかし、長期にわたって建設業を営まない状況が続く場合は、廃業届の提出を検討する必要があります。
建設業を廃業する際の必要な手続き
建設業を廃業する際の必要な手続きについて、届出に必要な書類と提出期限について詳しく解説します。
建設業許可の廃業届に必要な書類として、まずは以下の「廃業届(様式第二十二号の四)」を準備しましょう。
以下のように、東京都都市整備局が廃業届の記入例を公開していますので、参考にしてみてください。
また、廃業に至ったケースにより、以下のように「確認書類」と「届出すべき者」が異なります。
届出事項 | 確認書類 | 届出すべき者 |
個人事業として建設業を営む者が死亡したとき | 届出者の印鑑証明書および戸籍謄本(個人事業主の死亡および届出者が相続人であることが確認できるもの) | 相続人 |
法人が合併したことで消滅したとき | 役員個人の印鑑証明書および当該法人の役員であったことがわかる商業登記簿謄本または、閉鎖登記簿謄本、閉鎖事項全部証明書 | 役員であった者 |
破産手続開始の決定により会社を解散したとき | ・裁判所発行の「破産管財人および印鑑証明書」 | 破産管財人(破産手続を終了している場合は役員であった者) |
法人が合併または破産手続き開始の決定以外の事由により解散したとき | 当該法人の清算人であることがわかる商業登記簿謄本または、履歴事項全部証明書および法務局に登録済の清算人の印鑑証明書 | 清算人(清算を結了している場合は役員であった者) |
許可を受けた建設業を廃止したとき | ※届出者によって必要書類が異なる | 【法人の場合】 |
廃業届の作成と届出を行う前には、管轄の許可行政庁で確認してみましょう。
また、実際に届出する場合には、管轄の国土交通大臣もしくは都道府県知事に提出する必要があります。
廃業届の提出期限は、廃業時または廃業事由の発生後から30日以内に提出する必要があります。
提出期限をすぎると罰則を受ける可能性もあるので注意しましょう。
建設業許可の廃業届を提出する際の注意点
建設業許可の廃業届を提出する際の注意点は以下の3つです。
- 借入によって廃業できない場合
- 廃業に関する情報の公開
- 帳簿の保存義務
それぞれ詳しく解説します。
借入によって廃業できない場合
金融機関からの借入が残っている場合、廃業したくても廃業手続きができない可能性があります。
返済が完了していない状態での廃業は、債権者との交渉が求められますし、保証人がいる場合は、その方々への影響も考慮しなければなりません。
このように、借入が多くあり、廃業したくてもすぐには返せない状況から事業を継続している場合は、「経営者保証に関するガイドライン」という制度を活用できます。
本制度を活用することで、多額の個人保証をもつ経営者や事業者に対して、廃業や事業の再生を手助けしてもらえます。
条件がいくつかありますので、詳しい内容は「経営者保証に関するガイドライン」をご確認ください。
また本制度は、企業だけでなく個人事業主にも適用されるため、一人親方や個人で建設業を営んでいる方も利用可能です。
廃業に関する情報の公開
建設業許可の廃業届が受理されると、その情報は国土交通省もしくは都道府県のサイトにおいて公開されます。
具体的には、以下の項目が公表されます。
- 処分をした年月日
- 許可番号
- 商号または名称(代表者名)
- 代表者氏名
- 主たる営業所の所在地
- 全部廃業または一部廃業
- 取り消した許可
情報が公表されることで取引先や関係者も目にする可能性があるため、重要な取引先や協力会社へは、事前に説明を行うことが望ましいでしょう。
帳簿の保存義務
建設業を廃業したあとも、帳簿の保存義務は継続するので注意が必要です。
例えば、帳簿であれば5年、営業に関する図書は10年と、建設業法によって書類の種類ごとで必要な保存期間が定められています。
帳簿の保存期間について、建設業法では以下のように記されています。
(財務諸表等の備付け及び閲覧等)
第二十六条の十三登録講習実施機関は、毎事業年度経過後三月以内に、その事業年度の財産目録、貸借対照表及び損益計算書又は収支計算書並びに事業報告書(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他の人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下この条において同じ。)の作成がされている場合における当該電磁的記録を含む。次項及び第五十四条において「財務諸表等」という。)を作成し、五年間事務所に備えて置かなければならない。
出典:建設業法|第二十六条の十三
帳簿や営業図書のような資料は、税務調査や引渡し後に問題が発生した際に重要な証拠となるのです。
また、保存期間中に帳簿を紛失したり破棄したりすると、罰則の対象となる可能性があるので注意しましょう。
デジタル化やクラウドストレージの利用など、効率的な保管方法を用いるのがおすすめです。
廃業後に建設業許可を再取得できるケースとできないケース
建設業許可を一度廃業したとしても、基本的に再取得が可能です。
しかし、違反を起こしたことで廃業している場合には、すぐに建設業許可を再取得できず、期間を空ける必要があります。
すぐに再取得できるケースとすぐにできないケースをそれぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。
すぐに再取得できるケース
建設業許可をすぐに再取得できるケースとして、以下のような許可の取り消しを受けた場合が挙げられます。
- 会社経営において管理責任者の要件を欠いた場合
- 専任技術者の要件を欠いた場合
- 建設業許可を受けてから1年以内に営業を開始しなかった場合
- 建設業許可を受けてから1年以上にわたって営業を休止した場合
- 建設業許可の廃業届を出した場合
これらは「手続き上の許可の取り消し」と言われ、建設業の許可条件を維持できなくなった場合に事務的に取り消されるケースです。
何かしらの罰則が与えられて建設業許可を取り消されるわけではないため、許可の条件さえ満たせばすぐに再取得できます。
すぐに再取得できないケース
建設業許可を廃業したあとに、すぐに再取得できないケースは、会社やその会社の役員が違反行為を行った場合です。
建設業法に違反して建設業許可を取り消されることを「不利益処分の取り消し」と言います。
不利益処分とは、ただ許可を取り消されるだけではなく、監督官庁から罰金の納付命令が課されることです。
不利益処分の取り消しに該当するケースとして、以下の例が挙げられます。
- 建設業許可の新規取得・更新にあたり不正な手段を用いた場合
- 許可行政庁の指示処分にあたる違反を行って情状が特に重い場合
- 許可行政庁の営業停止に違反して営業活動をした場合
このような不利益処分の取り消しに該当した場合、取り消しから5年間は建設業の許可を受けられません。
そのほか建設業法の具体的な違反事例に関しては、以下の記事を参考にしてみてください。
>>>建設業法の具体的な違反事例とは?処分の種類や処分内容についても解説
まとめ:建設業許可の廃業届を出す場合には提出書類と期限に注意しよう
建設業許可は、廃業届を提出することで、5年ごとの更新に関わらず建設業許可を取り消せます。
具体的に建設業許可の廃業届が必要となるケースは、以下の通りです。
- 個人事業主が死亡したとき
- 法人が合併により消滅したとき
- 法人が破産手続開始の決定により解散したとき
- 法人が合併または破産手続開始の決定以外の事由により解散したとき
- 許可を受けた建設業を廃業したとき
- 許可を受けた建設業の一部を廃業したとき
- 個人事業主から法人成りしたとき
- 専任技術者が退職したとき など
廃業届は、廃業から30日以内に提出しなければならないので提出漏れがないように注意しましょう。
個人事業から法人成りする場合も、一度廃業届の提出が必要になるため、本記事を参考に必要な書類の作成を進めてみてください。