建設業会計とは?一般会計との違いや仕訳、勘定科目を徹底解説

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目次

建設業会計とは、一般的な基準では正確に会計処理を行うことが難しい、建設業の特殊性を考慮した方式です。

通常の会計処理は1年を区切りとしますが、建設業では工期が1年以上に渡るケースが多々あります。

「着工した年に利益を計上できない」などの問題が起きないよう、建設業では建設業会計を採用しているのです。

この記事では、建設業会計の概要や一般会計との違い、建設業独自の勘定科目について解説します。

具体的な仕訳例も紹介するので、建設業の会計にまつわる知識を身につけたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

建設業会計とは

建設業は、工事の着工から引き渡しまでに長い期間を要します。

工事が完了するまでに、1年以上かかるケースも珍しくありません。

このような特性を考慮し、建設業では「建設業会計」と呼ばれる独自の会計処理を行います

建設業会計は基本的に一般の会計をベースとしますが、他業種とは異なる勘定科目や基準を用いています

建設業会計を理解するには、一般の会計との違いを理解することが重要です。

建設業会計と一般会計との違い

建設業会計と一般会計との違いを3つピックアップしました。

  • 一般会計とは異なる勘定科目を用いる
  • 工事進行基準と工事完成基準が設けられている
  • 複雑な方法で原価計算をする

1つずつ見ていきます。

一般会計とは異なる勘定科目を用いる

建設業会計では、一般会計とは異なる勘定科目を用います。

一般会計・建設業会計において、勘定科目の対応表を以下にまとめました。

一般の勘定科目

建設業会計の勘定科目

売上高

完成工事高

売上原価

完成工事原価

売上総損益(粗利益)

完成工事総利益

仕掛品

未成工事支出金

売掛金

完成工事未収入金

前受金

未成工事受入金

買掛金

工事未払金

それぞれの勘定科目については「【仕訳例つき】建設業会計の勘定科目一覧」にて、詳しく解説します。

なお、建設業独自の勘定科目を使うのは、工事契約に関係する項目のみです。

通信費や広告宣伝費、消耗品費などは一般的な勘定科目で計上して問題ありません。

工事進行基準と工事完成基準が設けられている

建設業会計では「工事進行基準」と「工事完成基準」の2つの基準があります

工事進行基準とは、工事の途中に進捗状況を見積もった上で、売上や費用を計上する方式です

数年におよぶ大規模な工事でも、現場の状況に合わせて合理的に見積もりを行えます。

一方、工事完成基準を採用する場合は、引き渡しの際にまとめて費用を計上します

工事進行基準よりも契約内容がシンプルなため、短期間の工事で採用される方式です。

注意点として、次の3つの要件をすべて満たした場合は「長期大規模工事」と見なされ、工事進行基準が強制適用されます。

  • 工事着手日から引渡期日までが1年以上である
  • 請負対価が10億円以上である
  • 請負対価の2分の1以上が、引渡日から1年内に支払われる場合

2つの基準の違いを理解し、自社に適したものを採用しましょう。

参考URL:別紙 JV工事の場合の長期大規模工事の判定について

複雑な方法で原価計算をする

一般的な企業では、材料費・労務費・経費の3つをまとめて「原価」とします。

しかし、建設業における原価は、上記3つに「外注費」を加えたものを指します

分類項目が増えることで、一般会計よりも原価計算が複雑になる点が建設業会計の特徴です

さらに、工事進行基準を用いる場合、工事の進捗に応じて費用を計上しなければいけません。

工事に取りかかっているものの、まだ完成していない費用は「未成工事支出金」として振り分けます。

引き渡しが完了した時点で、未成工事支出金を「完成工事原価」に振り替える作業が発生します。

ただし、計上するタイミングは企業によって異なることがあるので注意が必要です。

工事原価については以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。

>>>工事原価とは?工事原価を構成する4つの要素や粗利益を増やす方法も解説

建設業における会計の重要性

建設業において、会計が重要となる理由は主に2つあります。

  • 建設業許可を取得するため
  • 長期間の工期に対応するため

それぞれ解説していきます。

建設業許可を取得するため

建設業許可とは、建設業を営むために受けなければいけない許可です

建設業許可を取得しないまま工事を進めると、「3年以下の懲役または300万円以下の罰金」が科される恐れがあります(建設業法第47条)。

そして、建設業許可を取得するには建設業会計にもとづいて、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成する必要があります

なお、次の条件に該当する場合は、建設業許可は不要です。

建築一式工事

①1件の請負代金が税込1,500万円に満たない
②請負代金にかかわらず、木造住宅で延床面積が150平方メートルに満たない

上記①または②に該当する

建築一式工事以外の工事

1件の請負代金が税込500万円に満たない

建設業許可が不要な場合でも、取引先から提出を求められるケースもあります。

加えて、建設業許可を取得すれば、工事の受注率アップや取引先からの信用度向上が見込めるでしょう。

参考URL:建設業の許可とは

長期間の工期に対応するため

建設業で会計が重要なのは、長期間の工期に対応するためです

工事の着工から完了までに長い時間がかかる建設業では、一定の会計期間内における収益管理が困難です

一般的な会計処理を行うと「着工1年目は売上がない」や「引き渡しのタイミングで多額の利益が出る」などの事態が起こります。

決算期に損益が不明なままでは、自社の経営状況を正しく把握できません。

そのため、売上を計上するタイミングを分ける建設業会計を採用しています。

【仕訳例つき】建設業会計の勘定科目一覧

建設業会計の勘定科目を、一覧形式で見ていきます。

  • 完成工事高
  • 完成工事原価
  • 完成工事総利益
  • 未成工事支出金
  • 完成工事未収入金
  • 未成工事受入金
  • 工事未払金

1つずつ仕訳例を紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

完成工事高

工事が完了して引き渡した際に得られる利益は「完成工事高」として扱います。

【200,000円で契約していた工事を引き渡した場合】

一般会計の「売上高」に該当する勘定科目です。

完成工事原価

「完成工事原価」は、完成工事高を得るためにかかった費用です。

「材料費・労務費・外注費・経費」の4区分で構成されます。

【工事進行基準を適用された契約にて、引き渡し完了に伴い、未成工事支出金100,000円を完成工事原価に振り替える場合】

一般会計の「売上原価」に該当するのが完成工事原価です。

完成工事総利益

請け負った工事における粗利益は「完成工事総利益」と呼びます。

一般会計の「売上総損益(粗利)」と同じ扱いで問題ありません。

【完成工事総利益の算出方法】
完成工事総利益=完成工事高ー完成工事原価

上記のように、完成工事高から完成工事原価を差し引いて計算します。

未成工事支出金

「未成工事支出金」とは、未完成な工事で要した費用です。

工期が1年を超えるような大規模な工事では、一旦かかった費用を未成工事支出金として計上します。

【工事進行基準を適用された工事において、材料費30,000円と労務費6,000円、経費4,000円を計上した場合】

一般会計でいう「仕掛品」に当たる項目です。

完成工事未収入金

すでに完了した工事の請負代金のうち、まだ回収していない金額を「完成工事未収入金」といいます。

具体的には

  • 工事完成の翌月に請負代金が振り込まれる
  • 完成工事未収入金として計上した債権を回収した

上記のケースで使用します。

【30,000円が当座預金に振り込まれ、完成工事未収入金として計上する場合】

完成工事未収入金は、一般会計の「売掛金」に相当する勘定科目です。

未成工事受入金

未完成な工事に対して、取引先から対価を先に入金された場合は「未成工事受入金」として処理します。

長期間の工事契約では、引き渡し前に分割して代金を受け取るケースは珍しくありません。

【50,000円が当座預金に入金され、未成工事受入金として計上する場合】

一般会計の「前受金」と同様の役割を果たします。

工事未払金

工事を終えた段階で、まだ支払いが済んでいない費用を「工事未払金」といいます。

工事未払金の対象となるのは

  • 工事に直接的に関係する費用
  • 未払いの費用

上記2点を満たす場合で、材料費や外注費などが該当します。

一般管理費や販売費は、直接工事に関係しないので、工事未払金として扱いません。

【材料費8,000円と外注費70,000円が発生し、工事未払金として計上した場合】

なお、工事未払金は一般会計における「買掛金」に該当します。

建設業会計における引当金

引当金とは、将来損失が見込まれる場合に、支出に備えて計上する費用です

建設業会計で用いられる引当金を、いくつか紹介します。

引当金

内容

工事損失引当金

工事で発生するコストが、収益の総額を上回る可能性が高い場合に使用する。

完成工事補償引当金

引渡しが完了した工事において、欠陥があった場合に備えて計上する。

修繕引当金

建物・機械などの固定資産の機能を、維持するために用意するメンテナンス費用。

発生の可能性が高い場合でなければ、引当金を計上できない点には注意しましょう。

建設業会計の注意点

建設業会計の注意点は、次のとおりです。

  • 基準ごとに仕訳は異なる
  • 工事ごとに会計処理が必要となる
  • 工事契約に関係しない項目は一般会計で処理する

工事進行基準と工事完成基準は、費用を計上するタイミングが異なります。

どちらの基準を採用しているかで、仕訳の方法が異なるため注意が必要です

加えて、複数の工事を並行する際は計上漏れが起きないように、工事ごとに会計を処理することがポイントです

また、工事契約にかかわらない費用に関しては、一般的な勘定科目を用いた仕訳を行います

建設業会計は複雑で、他の業界とは異なるルールが存在するため、経理への負担が大きくなりがちです。

正確に仕訳を行いつつ経理の負担を軽減するには、建設業会計に対応した会計システムの導入がおすすめです。

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まとめ:建設業会計の基礎知識を理解しておきましょう

今回の記事は、建設業会計の概要や一般会計との違い、建設業独自の勘定科目を説明しました。

建設業会計と一般会計との違いは

  • 一般会計とは異なる勘定科目を用いる
  • 工事進行基準と工事完成基準が設けられている
  • 複雑な方法で原価計算をする

上記3点です。

会計処理の負担を減らしたいならば、建設業会計に特化した会計システムの導入を検討してみてください。

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