建設業における改正労働基準法|改正の内容や業界としての課題

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目次

改正労働基準法が施行されることで、建設業界にも少なからず影響が及ぶと予想されます。
本記事では、建設事業者に向けて、改正労働基準法に関する以下のテーマを分かりやすく解説しています。

  • 労働基準法の基本情報
  • 改正労働基準法の基本的な内容
  • 建設業における労働基準法の改正
  • 改正労働基準法を受けた建設業界の課題

業務体制の見直しや職場環境の改善を目指す際の参考資料として、ぜひご一読ください。

そもそも「労働基準法」とは

労働基準法は、労働者と使用者の間で定める労働条件について、最低限の基準を規定した法律です。
日本国憲法第27条第2項を基に、1947年に制定されました。

本来、労働条件は契約自由の原則に従い決定されるべきものですが、労働者が経済的に弱い立場に置かれがちな状況を考慮し、法律を通じて保護が図られています。
結果、健康で文化的な最低限度の生活を確保する仕組みが整えられているのです。

法律で規定されている内容には、以下の事項が含まれます。

  • 賃金
  • 労働時間
  • 休日・休暇
  • 雇用・解雇

具体例として、労働時間は1日8時間、週40時間を基本とし、超過や休日労働に対しては割増賃金の支払いが義務付けられています。
また、解雇の場合には30日以上前の予告や、相当する解雇予告手当の支払いが求められます。

近年、働き方改革の影響で、時間外労働の上限や有給休暇取得の義務化といった改正が頻繁に実施されているのです。
こうした改正は、労働環境の改善を促進し、より良いワークライフバランスを実現するための取り組みとされています。

企業においては、法改正を踏まえた就業規則の改定や適切な対応が必要です。

改正労働基準法の基本的な内容

ここでは改正労働基準法について、近年の改正内容と2024年施行の改正内容に分けて詳しく解説します。

近年の改正内容

働き方改革を推進する中で、労働基準法に大きな変更が加えられてきました。
中でも注目すべき改正点は以下のとおりです。

<時間外労働の上限規制>

労働者の健康を守るため、時間外労働の時間に上限が設けられた

<年次有給休暇の取得義務化>

休暇取得をしやすくするため、一定の日数の有給休暇取得が義務化された

<同一労働同一賃金>

正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で、不合理な待遇差を解消することを目的とした改正

上記の改正により、労働者が働きやすい環境づくりが進み、ワークライフバランスの向上が期待されています。

参照:厚生労働省|労働基準法が改正されました

2024年の改正内容

2024年4月1日から新たに施行された改正内容は、労働条件の明確化に焦点を当てています。
主な変更点は、以下を参考にしてください。

<就業場所・業務の変更範囲の明示>

  • 労働契約の締結時や有期労働契約の更新時に、就業場所や業務の変更範囲を文書で明示することが義務付けられる

<更新上限の有無と内容の明示>

  • 有期労働契約を締結する際、更新上限の有無とその内容を明示する義務がある
  • さらに、更新上限の新設や短縮を行う場合は、理由を事前に説明する必要がある

<無期転換申込機会と無期転換後の条件明示>

  • 無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新時に、無期転換申込機会や無期転換後の労働条件を明示することが求められる

上記の改正は、労働者が自らの労働条件を把握し、安心して働ける職場環境を整備することを目的としています。

参照:厚生労働省|令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます

建設業における労働基準法の改正

建設業界でも、労働基準法の改正が進められています。
ここでは、改正の具体的な内容や背景に注目しながら、具体的な取り組みについて解説します。

参照:厚生労働省|建設業の働き方改革等の実現に向けた取組の実施について

改正・実施される取り組みの内容

2024年4月1日から、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されることになりました。
改正前までの建設業は時間外労働の上限規制の対象外とされていましたが、今後は原則として月45時間、年間360時間を超える残業が禁止されます。

特別な事情で時間外労働が必要な場合、労使間で「特別条項付き36協定」を締結することで、年間720時間まで延長が認められる仕組みが設けられています。
ただし、複数月平均で月80時間以内、単月で100時間未満といった制約があることも覚えておきましょう。

一方で、災害復旧や復興事業に従事するケースでは、一部の制限が緩和される場合もあります。

改正された背景

建設業界では、長時間労働や休暇取得の困難さが長年の課題として指摘されてきました。
国土交通省の調査によると、建設業の年間労働時間は全産業の平均を360時間以上も上回り、週休2日を確保している企業は全体の2割未満という状況です。

労働時間や休暇取得における現状を改善し、かつ業界における人材不足を解消するため、今回の法改正が実施されることになりました。
2024年の適用開始を契機に労働環境の改善が進み、建設業がより魅力的な働き場所となることが期待されているのです。

改正労働基準法を受けた建設業界の課題

改正労働基準法を受けた建設業界には、以下の課題があります。

  • 労働時間管理の徹底
  • 働き方改革の推進
  • 人材確保・育成
  • 生産性の向上
  • コンプライアンス体制の強化

ここで紹介する課題と自社の現状を照らし合わせつつ、具体的な解決策を講じましょう。

労働時間管理の徹底

改正労働基準法の施行に伴い、建設業界でも時間外労働の上限規制が導入されました。
規制に対応するためには、労働時間の管理が喫緊の課題とされています。
従来、建設業界では労働時間の記録が不正確で、労働者の自己申告や日報、タイムカードを使った管理では正確な労働時間の把握が難しいケースが多く見られました。

今後は、勤怠管理システムの導入など、客観的なデータに基づく管理方法が求められます。
管理者は実際の労働時間を正確に把握し、36協定で定められた時間外労働の範囲内で運用するための適切なマネジメント体制を構築することが必要です。

建設業における労働時間管理については、当サイト掲載の以下も参考にしてください。

建設業における残業時間の現状は?残業を削減する取り組みを紹介

働き方改革の推進

改正労働基準法は、建設業界における働き方改革を加速させる契機です。
時間外労働の削減だけでなく、週休二日制の導入や有給休暇取得の促進など、包括的な働き方改革が求められています。

国土交通省では「建設業働き方改革加速化プログラム」を策定し、週休2日制の推進やICTの活用による生産性向上など、具体的な施策を提案しています。
業界全体でこれらの取り組みを積極的に進めることで、働きやすい環境を整備し、人材確保や業界イメージの向上につながることが期待できるでしょう。

参照

国土交通省|建設業働き方改革加速化プログラム

一般社団法人日本建設業連合会|時間外労働上限規制対応

人材確保・育成

建設業界が直面する深刻な人材不足への対策は、改正労働基準法への対応と密接に結びついています。
労働環境を改善し、若年層の入職促進や離職率の低下を目指すためには、労働時間の適切な管理や働き方改革の推進が必要です。

加えて「建設キャリアアップシステム」の活用や、技能と経験に応じた適切な処遇、社会保険加入の徹底なども重要です。
企業は従業員のスキルアップを支援し、働きがいを感じられる職場作りを進める必要があります。

建設業を取り巻く人材の課題については、以下の記事でも詳しく確認できます。

「建設業の若者離れは当たり前」と言われる理由と今後の対策案

生産性の向上

労働時間の短縮を実現するためには、生産性の向上が不可欠です。
建設業界においては、ICT建機やIoTの活用、施工時期の平準化といった取り組みを通じて、生産性向上を目指すことが求められています。

国土交通省は「i-Construction」プロジェクトなどを通じて、ICT 活用を推進しています。
企業は最新の技術やシステムの導入を通じた業務効率化や省人化を図り、労働時間削減と生産性向上を両立させる必要があるでしょう。

なお、建設業における生産性の向上には、クラフトバンクオフィスの導入もおすすめです。
クラフトバンクオフィスは、あらゆるジャンルの建設業務を効率化できるプログラムです。
既存の体制では生産性向上が図れないと不安を感じている場合は、ぜひ導入を検討してください。

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コンプライアンス体制の強化

改正労働基準法への対応には、コンプライアンス体制の強化が欠かせません。
企業は法改正を正確に理解したうえで、就業規則の見直しや労働時間管理システムの導入、さらに従業員への周知徹底を進める必要があります。

加えて、下請け企業にも法令遵守を徹底させることで、建設業界全体で適正な労働環境を整備することが求められます。
コンプライアンス体制の強化は、社会的責任を果たすためだけでなく、企業の信頼性を高め、持続可能な成長を実現するうえでも重要な視点です。

まとめ

改正労働基準法は建設業界に対して、労働時間管理の徹底や働き方改革の推進、人材の確保と育成、生産性向上、さらにはコンプライアンス体制の強化といった多方面の課題に対応することを求めています。
法令を遵守するだけでなく、従業員の働きがいを向上させ、持続可能な事業運営を実現するためには、積極的な取り組みが欠かせません。

本記事の内容を踏まえ、自社の現状を丁寧に分析し、適切な対応策を模索してください。
労働基準法に準拠した事業運営体制を整えることが、健全な成長と将来の安定に繋がる一歩となるでしょう。