「建設業を辞めたい」と思う5つの理由とは?おすすめの仕事も解説

「建設業を辞めたい」と思う5つの理由とは?おすすめの仕事も解説のイメージ写真
目次

「建設業の仕事がきつくて辞めたいけど、本当に辞めていいのだろうか……」

「建設業で培ったスキルを活かせる仕事には何があるのだろうか?」

このように悩んでいる人も多いのではないでしょうか。

建設業は日本の基幹産業として重要な役割を担う仕事ですが、厳しい労働環境や責任感の重さ、人間関係など、さまざまな理由で転職を考える人が増えています。

厚生労働省の「令和4年雇用動向調査結果の概況(p.12)」によると、令和4年における入職者数が22万人に対して離職者数は28.7万人です。

定年退職を迎えた人も含まれた数字ではありますが、他産業と比較しても、離職数の割合が高い傾向にあります。

具体的にどのような理由で建設業を離れる決断をするのか、また転職後のキャリアを事前に把握しておくと、冷静になって判断できるでしょう。

この記事では、

  • 「建設業を辞めたい」と思う理由
  • 建設業に向いている人と向いていない人の特徴
  • 建設業を辞めるべきか悩んだときの判断基準
  • 建設業を辞めてよかったと思える理由
  • 建設業を辞めたい人におすすめの仕事

などを詳しく解説するので、ぜひ最後まで読み進めてみてください。

「建設業を辞めたい」と思う5つの理由

「建設業を辞めたい」と思う理由は、以下の5つです。

  • 休みが少なく残業が多い労働環境に不満がある
  • 給与や労働条件に不満がある
  • 職場の人間関係に悩んでいる
  • 責任感の大きさに耐えられない
  • 将来性に不安がある

それぞれ詳しく解説します。

休みが少なく残業が多い労働環境に不満がある

「建設業の仕事を辞めたい」と考える人の多くが、長時間労働や休日の少なさなどの労働環境に不満を抱えています。

建設業界における長時間労働や休日の少なさは、深刻な問題として注目を集めています。

国土交通省の「建設業における働き方改革」によると、建設業の年間出勤数と年間実労働時間の推移は以下の通りです。

出典:国土交通省|建設業における働き方改革 中部地方整備局 建政部

グラフを見るとわかるように、建設業は全産業と比べて年間の出勤日数が12日以上多く、労働時間も68時間以上多い結果が出ています。

また、建設業における平均的な休日取得状況では、4週間のうち6日しか休日が取れていない人が最多という結果が出ており、週休2日の確保ができていないのが現状です。

働き方が工期に左右される建設業では、繁忙期には一月の残業時間が100時間を超える会社もあり、こうした過酷な労働環境が心身に大きな負担となっています。

土曜日に現場が稼働することもあり、その場合には、毎週日曜日だけ休みという人もいるでしょう。生活リズムが不規則になりやすく過酷な労働環境が、離職を考えるきっかけとなっています。

建設業の週休2日に関しては、以下の記事でも詳しく解説しているので参考にしてみてください。

建設業の週休2日はいつから義務化されるのか?週休2日に向けてやるべき5つのこと

給与や労働条件に不満がある

建設業界の給与水準は、労働時間の長さに比べると高くないと感じる人も少なくありません。

休日の打ち合わせや会社から現場への移動などが、労働時間外として給与・残業に反映されないという不満の声も目立ちます。

また、現場作業では危険を伴う作業も多いにもかかわらず、待遇面での優遇がないことも不満の要因です。

天候による作業の中止で給与が減少するなど、収入が不安定になりやすい点も課題となっています。

中小企業の場合、福利厚生面でも大手企業と比べて充実度が低いケースが多く、将来的な生活設計に不安を感じる要因となっています。

職場の人間関係に悩んでいる

建設現場では、元請け・下請け・協力会社など、多くの関係者との調整が必要不可欠です。

この複雑な人間関係のなかで、板挟みになりストレスを抱えることが少なくありません。

特に若手社員は、経験不足を理由に現場で厳しい指導を受けることも多く、このような上下関係のストレスが離職につながるケースがあります。

また、現場では年配の職人が多いため、世代間のコミュニケーションギャップに悩むこともあるのです。

コミュニケーションの失敗が重大な事故につながる可能性もあり、この精神的プレッシャーは非常に大きいと考えられます。

責任感の大きさに耐えられない

建設業では、一つのミスが重大な事故や品質問題につながる可能性があり、常に緊張感を強いられます。

現場監督として工程管理や安全管理、品質管理などを任されると、その責任の重さに押しつぶされそうになることも少なくありません。

特に施工ミスは、人命に関わる重大な事故を引き起こす可能性があるため、日々のプレッシャーは想像以上です。

また、予算管理や工期遵守の責任も重く、天候不順や資材の納期遅れなど、自分ではコントロールできない要因にも対応を迫られます。

このように常に大きなプレッシャーと戦う必要のある建設業の仕事にがしんどいと感じて、他業種へ転職を検討する人も多くいます。

将来性に不安がある

建設業界では、高齢化や若手不足が深刻な問題となっています。

将来的な担い手不足により、一人あたりの業務負担が更に増加することへの不安を感じる人も多くいます。

また、建設需要の減少や建設DX・AIの導入により、従来型の建設技術者の需要が低下するのではないかという懸念もあるのです。

転職市場における建設業界の経験が、他業界でどこまで評価されるのかという不安も、離職を躊躇する要因となっています。

関連記事として、以下の記事でも詳しく解説しているので、参考にしてみてください。

「建設業の若者離れは当たり前」と言われる理由と今後の対策案

建設業の高齢化の実態とは?2025年問題と対策についても解説

建設業に向いている人と向いていない人の特徴

建設業に向いている人と向いていない人の特徴は、以下の通りです。

向いている人

向いていない人

・細かな作業が苦にならない

・人とのコミュニケーションが好き、得意

・仕事への責任感が強い

・柔軟に対応するのが苦手

・細かい作業が苦手

・体力に自信がない

・マネジメントや人とのコミュニケーションが苦手

建設業に向いている人の特徴として、細かな作業を丁寧にこなせる几帳面さと、予期せぬ事態に柔軟に対応できる応用力を併せ持っていることが挙げられます。

また、多くの関係者と円滑にコミュニケーションを取れる協調性や、安全管理を徹底できる強い責任感も重要です。

一方、向いていない人の特徴としては、急な予定変更へのストレスが大きい人や、細かい作業が苦手な人が挙げられます。

また、屋外作業が多いため、暑さや寒さに弱い人、体力に自信がない人は苦労する可能性が高いでしょう。

複数の業務を同時進行でマネジメントするのが苦手な人も、建設業の仕事には向いていないと考えられます。

建設業を辞めるべきか悩んだときの判断基準

建設業を辞めるべきか悩んだときの判断基準は、以下の3つです。

  • 精神的な健康を保てているか
  • 現職でやれることをすべてやったのか
  • キャリアプランは明確になっているのか

それぞれ詳しく解説します。

精神的な健康を保てているか

建設業を続けることで精神的な健康が損なわれているかどうかは、転職を考える上で重要な判断基準となります。

たとえば、不眠や食欲不振、イライラ、感情の起伏が激しくなるなどが続くようなら、早めに環境を変えたほうがいいでしょう。

また、休日でも仕事のことが頭から離れず、リフレッシュできない状態が続いているなら要注意です。

心身の健康を損ねてからでは、転職活動自体も困難になる可能性があるので、なるべく早い段階で転職に乗り出しましょう。

現職でやれることをすべてやったのか

建設業での経験は、他業界でも活かせる貴重なスキルとなります。

そのため、現在の職場で習得できる技術や資格、経験を十分に積んでから転職を考えることがおすすめです。

特に施工管理技士の資格取得や現場監督としての経験は、転職時の強みとなります。

一方で、明確な目標もないまま漫然と仕事を続けているのであれば、転職のタイミングを逃してしまう可能性もあります。

キャリアプランは明確になっているのか

建設業から転職する際は、具体的なキャリアプランを立てることが極めて重要です。

ただ、現状から逃げ出すような転職では、次の職場でも同じような問題に直面する可能性が高いためです。

キャリアプランを考える際は自分のスキルや経験を活かせる業界は何か、どのような働き方を実現したいのか、年収はどの程度必要なのかなど、具体的な目標を設定しましょう。

また、必要な資格の取得や、スキルアップのための準備期間も考慮に入れる必要があります。

建設業を辞めてよかったと思える理由

建設業を辞めてよかったと思える理由は、以下の通りです。

  • 労働環境に関するストレスが軽減した
  • 年収がアップした
  • キャリアの幅を広げられた

それぞれ詳しく解説します。

労働環境に関するストレスが軽減した

建設業から転職した人の多くが、労働環境の改善を実感しストレスも軽減します。

特に残業時間の大幅な削減や休日の確保により、プライベートの時間を充実させられるようになっている人も少なくありません。

天候に左右されない室内での仕事に転換したことで、体力的な負担が軽減されている人もいるでしょう。

また、極度のプレッシャーから解放されることで、精神的な安定を取り戻せて、仕事とプライベートがより充実したものになります。

年収がアップした

建設業から他業種に移ったことで、年収がアップするケースもあります。

転職後に実労働時間に応じた適切な残業代が支給される企業に移ることで、実質的な年収アップが可能です。

また、建設業で培った経験やスキルを活かせる職種に転職することで、むしろ給与が上がったという例も見られます。

特に専門性の高い技術職への転職では、建設業での経験が高く評価される傾向にあります。

営業職のような、インセンティブが期待できる職種でも、年収アップが見込めるでしょう。

キャリアの幅を広げられた

建設業での経験は、以下のように多岐にわたるスキルを身につけられる貴重な機会となります。

  • 品質管理や工程管理、安全管理などのマネジメント
  • 人材育成
  • 建築における高度な専門性
  • 対人コミュニケーション など

これらのスキルは、製造業や不動産業などさまざまな業界で活用できますし、建設業で培ったプロジェクトマネジメントの経験は、多くの業界で重宝されるでしょう。

さらに、転職を機に新しい資格や知識を習得することで、キャリアの選択肢が広がります。

建設業を辞めたい人におすすめの仕事4選

建設業を辞めたい人におすすめの仕事は、以下の4つです。

  • 道路や建築部署の行政職員
  • トラックドライバー
  • 建設資材の製造
  • 不動産営業

それぞれ詳しく解説します。

道路や建築部署の行政職員

建設業での経験を直接活かせる転職先として、地方自治体の道路や建築部署があります。

民間企業での施工管理経験は、行政側の立場で工事の監督や検査を行う際に大きな強みとなるでしょう。

行政職員の魅力は、安定した労働環境や収入にあります。

残業時間も民間企業と比べて少なく、休暇も取得しやすい環境です。

また、地域のインフラ整備に関わる仕事であり、やりがいを持って働けるでしょう。

さらに、入札業務や工事計画の立案など、建設業界を異なる視点から経験できることも魅力です。

民間企業での経験を活かしながら、よりよい公共工事の実現に貢献できる点も、建設業からの転職におすすめの理由の一つです。

トラックドライバー

建設現場での経験は、大型車両の運転や資材の取り扱いにも活かすことが可能です。

日頃から現場での荷下ろしや資材の扱い方を熟知している人は、トラックへの荷物の運搬や荷下ろしにも慣れており、注意すべき点や確認ポイントなども把握しています。

建設現場特有の専門用語や、現場でのルールを理解していることは大きなアドバンテージとなります。

特に大型資材の運搬では、現場経験者ならではの的確な判断と対応が求められるため、即戦力として活躍できるでしょう。

また、建設業界での人脈を活かして、専属ドライバーとして安定した仕事を確保できる可能性もあります。

勤務形態も選択肢が多く、ライフスタイルに合わせた働き方を実現可能なのも、トラックドライバーの魅力と言えます。

建設資材の製造

建設業の経験は、建設資材メーカーでの仕事において、製品の改良や新商品の開発にも活かされます。

例えば、実際の使用場面を熟知している経験者であれば、ユーザー目線での具体的な改善案を提案できるかもしれません。

製品開発者と現場作業員の考えや悩みにはズレが生じることも少なくないため、実際に現場を経験している人は貴重な存在と言えます。

さらに、品質管理の観点から、施工時の課題や改善点を製造工程に反映させることで、より現場に適した製品づくりに貢献できる点も魅力です。

なお、工場での製造管理は、建設現場と比べて労働環境が安定しており、シフト制で規則正しい勤務が可能です。

また、製品知識を活かした営業職へのキャリアチェンジも視野に入れることができるでしょう。

不動産営業

建築や土地に関する専門知識は、不動産営業においても大きな武器となります。

特に建築構造や施工品質に関する深い理解は、顧客との商談で高い信頼性につながるでしょう。

例えば、戸建て住宅販売を行う際に、顧客から機密性や断熱性、基礎の安全性を聞かれることも珍しくなく、その際に過去の経験を持って質問に答えられると、安心感を与えられるでしょう。

また、不動産営業の目線からリフォームや建て替えを提案する際にも、建設業での経験が活きてきます。

中古物件の購入を検討している顧客のなかには、リフォームを前提に購入を考える人もいるので、建設業目線でどのようなリフォームを実現できるのか伝えられると差別化にもなります。

施工上の注意点や工期の設定、概算費用の算出など、具体的なアドバイスができることは、顧客からの信頼獲得につながる重要な強みと言えるでしょう。

また、建設業界での人脈を活かして、物件情報の収集や業者との交渉を有利に進められる可能性もあります。

働き方も比較的自由度が高く、実績に応じた収入アップも期待できます。

まとめ

「建設業を辞めたい」と思ったときには、現在の不満点を明確にし、自身の適性や希望する働き方をしっかりと見極めることが重要です。

一時的な感情で行動してしまうと、後々後悔する可能性もあるので注意も必要です。

しかし、建設業での経験は、多くの業界で活かせる貴重なスキルとなります。

転職を決意する前に、現在の職場での経験や資格取得を最大限活用することを検討しましょう。

次のキャリアについては、労働環境や将来性、やりがいなど、複数の観点から慎重に検討することをおすすめします。

適切な準備と判断のもとでの転職は、よりよいキャリアを築くための大きなステップとなるはずです。