特定建設業許可とは?一般建設業との違いや取得要件について解説

目次
建設業における「特定建設業許可」は、大規模なプロジェクトや公共工事への参画に不可欠な要素です。本記事では、特定建設業許可の重要性に焦点を当て、以下のトピックについて詳細に解説しています。
- 特定建設業許可の概要や目的
- 特定建設業許可を取得するメリット
- 一般建設業との違い
- 取得に必要な要件
本記事の内容が、特定建設業許可の取得を検討している建築業者の方々にとって、より良い判断材料を得るための手助けとなれば幸いです。
特定建設業許可とは

特定建設業許可とは、一定規模以上の建設工事を請け負う際に必要となる許可制度です。建設業者が元請けとして工事を請け負い、かつ一部を下請けに出す場合に下請け契約金額が一定規模を超えると、特定建設業許可を取得しなければなりません。
特定建設業許可の目的
特定建設業許可制度は、主に以下2つの目的のために設けられています。
- 下請け業者の保護
- 工事の適切な施工の確保
大規模な工事の場合、元請け業者が倒産すると、下請け業者に多大な影響が及ぶ可能性があります。また、工事の施工が不適切であれば、建設中や建設後に重大な事故が発生するリスクも高まります。特定建設業許可制度は、このような事態を避けるために設けられているのです。
特定建設業許可を取得するメリット
特定建設業許可を取得することで、企業はさまざまなメリットを受けられます。
まず、より大規模な案件を獲得できるようになります。特定建設業許可がおりていることで、大型の建設工事を請け負う資格が得られるためです。
次に、社会的信用の向上が挙げられます。特定建設業許可の取得は容易ではないため、許可を持つ企業は高い技術力と財務基盤を持つと見なされます。結果、取引先や顧客からの信頼が高まるのです。
さらに、資金調達における優位性もあります。社会的信用が向上することで、金融機関からの融資を受けやすくなる可能性が高まるでしょう。
特定建設業許可が必要な業者

元請業者として以下の条件を満たす工事を請け負う場合、特定建設業許可を取得する必要があります。
- 発注者から直接請け負った工事である
- 下請けに出す工事代金の額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)である
つまり、大規模な建設工事を元請業者として受注し、一部を他の業者に下請けに出す場合、特定建設業許可が必要となります。ただし、下請け業者がさらに下請けに出す場合(二次下請け以降)は、契約金額に関わらず特定建設業許可は不要です。
なお、元請け業者が提供する材料費等は、上記の金額には含まれません。また、発注者から直接請け負う工事金額自体に制限はありません。
特定建設業者に課せられる義務
特定建設業許可を取得した業者には、工事の品質確保や下請け業者との適切な関係構築のために、以下の義務が課せられます。
- 許可申請内容に変更があった場合の変更届の提出
- 各店舗・工事現場への標識掲示
- 請負契約内容を記載した帳簿の備付・5年間保存
さらに、一般建設業者と共通する義務に加え、以下の4つの義務を負います。
<施工体制台帳の作成>
工事に関わる全業者名・工事内容・工期を記載した施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに設置する
<下請負業者への指導>
工事に関わる全ての下請業者に対し法令順守指導を実施する
<特定建設業者の下請代金に関する特例>
下請代金の支払いを引渡し日から50日以内に行う
<監理技術者の設置義務>
工事現場に施工管理を行う監理技術者を常駐させる
特定建設業者と一般建設業との違い
特定建設業と一般建設業は建設業許可における区分であり、主な違いは元請けとして下請けに出せる工事金額です。
<特定建設業>
元請けとして受注した工事のうち、4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)を下請けに出す場合に必要
<一般建設業>
主に元請け業者とならない場合や、元請けとして請け負う工事の下請けに出す金額が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)の場合に該当
特定建設業許可は、一般建設業許可よりも許可要件が厳しく、その分、多くの義務が課せられます。大規模な下請け構造を持つ特定建設業では、元請け業者の経営状況が下請け業者に大きな影響を与えるため、より厳格なルールが求められることが理由です。
特定建設業許可の取得要件

特定建設業許可を取得するには、下記に示す6つの要件をすべて満たしている必要があります。
- 経営業務管理責任者を設置する
- 専任技術者を営業所ごとに設置する
- 誠実性がある
- 財産的基礎がある
- 欠格要件に該当しない
- 社会保険に加入している
上記の要件を満たしていない場合、特定建設業許可は取得できません。
経営業務管理責任者を設置する
特定建設業許可を申請するにあたり、事業の本拠地(本店など)において、経営業務管理責任者を置かなければなりません。経営業務管理責任者は、法人であれば役員、個人事業主の場合は事業主自らが勤めることが一般的です。
経営業務管理責任者として認定されるには、以下いずれかの条件を満たす必要があります。
- 建設業の経営業務管理経験が5年以上
- 経営業務管理責任者に準ずる立場で5年以上の経験
- 経営業務の補佐経験が6年以上
専任技術者を営業所ごとに設置する
特定建設業許可を取得するためには、営業所ごとに専任技術者を設置する必要があります。 特定建設業の専任技術者になるには、1級の国家資格者または技術士の資格が必要です。
例えば、土木建設業の一般建設業許可は2級土木施工管理技士の資格があれば取得できますが、特定建設業許可を得るには1級の資格が求められます。 一般建設業の専任技術者要件を満たし、かつ「元請として4,500万円以上の工事に関して2年以上指導監督的な実務経験」がある場合も、特定建設業の専任技術者になることが可能です。
誠実性がある
特定建設業許可を取得するためには、許可申請者が請負契約の締結や履行について法律違反や不誠実な行為をしていないことが求められます。過去に法律違反や不誠実な行為があった場合、建設業許可を取得できません。
財産的基礎がある
特定建設業許可を取得するためには、以下4つの財産的基礎に関する要件をすべて満たしていなければなりません。
- 欠損金が資本金の20%未満
- 資本金が2,000万円以上
- 自己資本が4,000万円以上
- 流動比率が70%以上
なお上記の要件は、特定許可申請を行う直前の決算により判断されます。
欠格要件に該当しない
特定建設業許可を取得するには、以下の欠格要件に該当しないことが必要です。
- 暴力団の構成員ではない
- 破産者ではないこと
- 認知能力に問題がない
上記の要件を満たしているかは、誓約書で証明しなければなりません。欠格要件に該当すると、許可が取り消されたり、新規の許可申請が却下されたりする可能性があります。
社会保険に加入している
2020年の改正建設業法により、社会保険への加入が必須とされています。事業規模や労働者の状況に応じて必要な社会保険は異なりますが、すべての事業主は何らかの形で社会保険に加入していなければなりません。
まとめ
今回は、特定建設業許可の重要性や詳細について解説しました。特定建設業許可の取得は、事業の幅を広げるだけでなく、業界内での信頼度を向上させるために欠かせません。
また、一般建設業との違いや取得に必要な条件を理解することで、自社のビジネスを適切に拡大し、法的要件を満たすことが可能になります。
特定建設業許可を取得することで得られるメリットを活かし、より大きな市場でのチャンスを掴むための一歩を踏み出しましょう。許可取得に向けた具体的なアクションプランを立て、業界での競争力をさらに強化することが重要です。