現場管理費の相場は何%?一般管理費との違いや内訳、計算方法を説明
目次
現場管理費とは、工事現場の管理に必要となる費用です。
工事内容や工事場所によって左右されますが、現場管理費の相場は10〜30%程度です。
工事費の正確な見積りや品質・安全管理のために、現場管理費の把握は欠かせません。
この記事では、現場管理費の相場や一般管理費との違いを解説します。
現場管理費の内訳や計算方法も紹介するので、建設業の見積りに関する知識を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
現場管理費とは
現場管理費とは、現場管理にかかる費用です。
工事費や工事原価に含まれる費用のひとつで、間接的に工事に関係しています。
具体的には、次のような費用が現場管理費に該当します。
- 労務管理費
- 外注経費
- 作業員の給料手当
- 事務用品費
- 退職金
- 福利厚生費
材料費や機械費などの直接的な費用よりも、現場管理費のような間接的な費用を把握することは難しいです。
しかし、現場管理費に大きな誤差があると、工事の利益に影響を与えてしまいます。
赤字工事を防ぐために、現場管理費の相場や計算方法を理解しておきましょう。
現場管理費と一般管理費との違い
会社の運営・維持に必要となる費用を「一般管理費」といいます。
現場管理費と混同されやすいのですが、一般管理費は現場でかかる費用でないため、工事原価に含まれません。
一般管理費の具体例としては
- 現場以外で勤務する従業員の給与・福利厚生費
- 広告宣伝費
- 事務所の家賃
などが挙げられます。
参考として、工事費用の見積りに関係する用語を、表にまとめました。
用語 | 意味 |
---|---|
工事費 | 工事価格と消費税を合わせた費用 |
工事価格 | 工事原価と一般管理費を合算したもの |
工事原価 | 1つの工事を完了させるまでにかかる費用、完成工事原価とも呼ばれる |
一般管理費 | 会社の運営・維持にかかる費用 |
純工事費 | 直接工事費と共通仮設費を合わせた費用 |
現場管理費 | 現場管理に必要となる費用 |
直接工事費 | 工事に直接かかる費用 |
共通仮設費 | 防音シートや足場の設置費用など、現場の仮設物にかかる費用 |
簡潔にまとめると
- 現場管理費:現場の管理に必要となる
- 一般管理費:会社運営に必要となる
両者には、上記のような違いがあります。
参考URL:公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例
現場管理費と諸経費との違い
建設業における諸経費とは、直接的に工事に関わらない経費を指します。
直接工事に関係しないものの、安全に施工を進めるためには欠かせない費用です。
諸経費は、現場管理費と一般管理費の2種類に分けられます。
また、直接工事費以外の費用である「共通費」は、諸経費と共通仮設費によって構成されます。
参考URL:4編 共通費
現場管理費の相場は約10~30%
現場管理費の相場は約10〜30%です。
国土交通省が提示している現場管理費率の標準値を、工種別に見ていきます。
工種区分 | 現場管理費率標準値 |
---|---|
河川工事 | 14.75 |
河川・道路構造物工事 | 23.20 |
海岸工事 | 17.57 |
道路改良工事 | 24.71 |
鋼橋架設工事 | 28.56 |
P・C橋工事 | 19.84 |
舗装工事 | 16.52 |
砂防・地すべり等工事 | 15.48 |
公園工事 | 21.03 |
電線共同溝工事 | 18.72 |
情報ボックス工事 | 18.08 |
※純工事費が10億円を超える場合の現場管理費率標準値
工種区分 | 現場管理費率標準値 |
---|---|
道路維持工事 | 31.27 |
河川維持工事 | 28.34 |
※純工事費が1億円を超える場合の現場管理費率標準値
工種区分 | 現場管理費率標準値 |
---|---|
コンクリートダム | 15.56 |
フィルダム | 26.20 |
※純工事費が50億円を超える場合の現場管理費率標準値
工事の規模や自社の経営状況によって、適切な現場管理費率は異なるので、上記はあくまで参考程度にしてください。
参考URL:工種別現場管理費率標準値(平成27年度土木工事積算基準)
参考URL:土木請負工事工事費積算要領等の一部改定について
現場管理費の内訳17項目
現場管理費の内訳17項目を、次の表にまとめました。
項目 | 内容 |
---|---|
労務管理費 | 場で働く作業員に対して、給与以外にかかる費用 |
外注経費 | 外部の企業に工事を依頼する際の費用 |
作業員の給料手当 | 現場で勤務する作業員の給料、危険手当や通勤手当などの各種手当て・賞与を含む |
退職金 | 作業員に支払う退職金 |
安全訓練にかかる費用 | 安全に工事を行うための研修・訓練に必要となる費用 |
保険料 | 工事現場にかける火災保険や自動車保険、組立保険、法定外の労災保険に関する費用 |
法定福利費 | 法律で支払いが義務づけられた福利厚生の費用 |
福利厚生費 | 健康診断や慶弔見舞など、法定福利費以外で福利厚生にかかる費用 |
補償費 | 工事が原因となって支払う第三者への補償金 |
事務用品費 | 現場事務所で使用する事務用品にかかる費用 |
交際費 | 取引先の対応に関する費用 |
動力用水光熱費 | 工事現場や現場事務所で使用する電力・水道・ガスにかかる費用 |
通信交通費 | 業務にまつわる通信費・交通費 |
工事登録にまつわる費用 | 工事の実績登録に関する費用 |
租税公課 | 自治体に支払う手数料・罰金と国に納める税金、公共団体に支払う会費を合わせたもの |
公共事業労務費調査の費用 | 公共事業労務費調査でかかった交通費・書類代 |
その他雑費 | 上記16項目に該当しない費用 |
各項目の意味を知った上で、現場管理費を正確に見積りましょう。
現場管理費の計算方法
現場管理費の計算方法は、主に2種類あります。
- 経費を積み上げて算出する
- 現場管理費率を使用して算出する
計算方法①を用いるならば、先ほど紹介した内訳17項目をそれぞれ見積り、全体的な現場管理費を導き出します。
計算方法②で用いる式は、次のとおりです。
【現場管理費の計算式】
純工事費×現場管理費率+積み上げ
【計算例】
- 純工事費:173,175,405円
- 現場管理費率:11.53%
- 積み上げ:なし
173,175,405(純工事費)×11.53(現場管理費率)=19,967,124円(現場管理費)
※積み上げはないので計算式に含めない
なお、現場管理費率の算定式は、工種によって違うので注意が必要です。
現場管理費率の詳しい算出方法は「「公共建築工事共通費積算基準」(令和5年改定)における共通費の算定について」を確認してみてください。
参考URL:公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例
現場管理費を把握する重要性
現場管理費を把握する重要性を3つ紹介します。
- 正確な工事費を見積もれる
- 取引先に工事費の正当性を説明できる
- 品質・安全管理につながる
1つずつ見ていきましょう。
正確な工事費を見積もれる
現場管理費を把握することは、工事費の正確な見積りにつながります。
現場管理費に誤りがあると
- 工事費が高額になり受注が難しくなる
- 工事費を実際よりも低く見積もることで工事が赤字になる
上記のような事態が起きるのです。
さらに、内訳項目ごとに現場管理費を見直せば、無駄な経費に気付くきっかけが得られます。
取引先に工事費の正当性を説明できる
工事費の正当性を説明するには、現場管理費への理解が必要です。
- 「A社では現場管理費を10%に設定していますが、なぜ御社では15%に設定しているのですか」
- 「現場管理費を削減して工事費をおさえることは可能ですか」
取引先から、上記のような質問を受けるケースがあります。
現場管理費の根拠を説明できないと、取引先からの信用を失ったり、工事費の値引きを求められたりします。
他にも、現場管理費は間接的な費用のため、材料費や労務費などの直接的な費用よりも値引き交渉されやすいです。
「値引き交渉に応じて現場管理費を削減した結果、現場の安全性・利便性が損なわれた」という事態は避けましょう。
品質・安全管理につながる
現場管理費が不足している場合、次のような問題が発生します。
- 給料手当が十分でなく、作業員のモチベーションが維持できない
- 外注経費が確保できず、低品質な外部企業に業務を委託する
- 安全訓練が行われず施工の安全性・品質が低下する
- 通信交通費や事務用品費などが削減され、情報共有がスムーズに行えない
品質・安全を管理するためには、現場管理費の確保が求められます。
現場管理費の設定で気を付けるべきポイント
現場管理費の設定で気を付けるべきポイントを、3つピックアップしました。
- 工事費への影響を考慮する
- 工事内容や工事場所によって現場管理費は異なる
- パーセントの増やしすぎ・減らしすぎに注意する
それぞれ詳しく説明していきます。
工事費への影響を考慮する
工事費に影響を与える点を考慮した上で、適切な現場管理費を設定しましょう。
現場管理費は工事現場の品質・安全を維持するための費用であり、工事費に含まれる重要な項目といえます。
コストを削減する際は、現場の意見に耳を傾けることがポイントです。
「ITツールの導入で最近は事務用品をあまり購入していない」や「新人研修が不足しているので安全訓練にコストをかけてほしい」など。
現場ならではの意見を参考にすれば、経営面での改善点が見つかります。
工事内容や工事場所によって現場管理費は異なる
先ほど現場管理費の相場を示しましたが、工事内容や工事場所によって現場管理費は異なるので注意してください。
工事の規模が大きいほど、作業員の数が増え、監督の稼働時間が長くなります。
また、現場が都市部だと地代や家賃が高額になり、現場管理費もかさんでしまいます。
現場管理費の相場を参考にしつつ、状況に応じて妥当な費用を見積りましょう。
パーセントの増やしすぎ・減らしすぎに注意する
パーセントの増やしすぎ・減らしすぎに注意しつつ、現場管理費を設定することが大切です。
現場管理費が高すぎると受注が難しくなり、低すぎると現場を適切に管理できません。
さらに、現場管理費を減らすには、業務の効率化が求められます。
近年では、ITツールを導入して業務効率の改善を図る企業が増えています。
たとえば、資料や図面をデータ化すれば、印刷にかかるコスト・手間を削減可能です。
事務所に足を運ばなくても情報を確認できて、交通費や残業代にかかる費用もおさえられます。
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まとめ:現場管理費の把握は高品質な工事につながる
今回の記事は、現場管理費の相場や一般管理費との違い、内訳、計算方法を解説しました。
現場管理費の相場は10〜30%ですが、工事内容・工事場所で異なります。
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