現場管理費の内訳17項目|一般管理費との違いや計算方法を解説

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目次

現場管理費とは、現場を適切に管理するための費用です。

労務管理費や法定福利費、保険料などが現場管理費に含まれます。

工事費を正確に見積もるには、現場管理費を把握することが大切です。

この記事では、現場管理費の内訳17項目や計算方法を紹介します。

現場管理費と一般管理費との違いまで詳しく解説するので、ぜひ最後までご覧ください。

現場管理費とは

現場管理費とは、工事現場を管理するための費用のことです

具体的には

  • 労務管理費
  • 外注経費
  • 退職金
  • 福利厚生費

などが現場管理費に含まれます。

工事に直接関係する費用でないものの、現場管理費に大きな誤差が生じると、工事が赤字になる可能性があります。

正確に工事費用を見積もるには「何が現場管理費に含まれ・どのように計算するのか」を理解しておくことが重要です

現場管理費と一般管理費の違い

一般管理業務を行うためにかかる費用を「一般管理費」と呼びます

一般管理費には

  • 現場以外で勤務する従業員の給与・福利厚生費
  • 広告宣伝費
  • 事務所の家賃

などが含まれます。

参考画像からわかるように、一般管理費は工事現場でかかる費用でないため、工事原価には含まれません。

工事費について理解するために、基礎用語を以下の表にまとめました。

用語

意味

工事費

工事価格と消費税を合わせた費用

工事価格

工事原価と一般管理費を合算したもの

工事原価

1つの工事を完了させるまでにかかる費用、完成工事原価とも呼ばれる

一般管理費

会社の運営・維持にかかる費用

純工事費

直接工事費と共通仮設費を合わせた費用

現場管理費

現場管理に必要となる費用

直接工事費

工事に直接かかる費用

共通仮設費

防音シートや足場の設置費用など、現場の仮設物にかかる費用

簡単にまとめると、現場の管理に必要となるのが「現場管理費」で、会社運営に必要となるのが「一般管理費」です

現場管理費の内訳

現場管理費の内訳を17項目紹介します。

1つずつ見ていきます。

労務管理費

労務管理費とは、現場で働く作業員に対して、給与以外にかかる費用です。

労務管理費に含まれるのは

  • 作業員の食事代や通信費
  • 作業服代
  • 作業用具代
  • 人員募集の費用

などが挙げられます。

外注経費

外部の企業に対して工事を依頼する際の費用は「外注経費」として計上します。

一部の業務を外部委託したときや、現場監督を外注したときの費用は、外注費用として処理して構いません。

ただし、企業によっては外注経費を労務管理費に含めるケースもあります。

作業員の給料手当

現場で勤務する作業員の給料も現場管理費に含まれます。

毎月支払われる基本給はもちろん、次のような各種手当て・賞与も「作業員の給料手当」として計上しましょう。

  • 危険手当
  • 通勤手当
  • 住宅手当
  • 時間外手当
  • 休日手当

危険な作業が多い建設業では、特殊勤務手当に該当するケースが多いです。

費用計上の抜けモレがないように注意してください。

退職金

作業員に支払う退職金は、労務管理費や給料手当とは別に「退職金」として計上します。

なお、定年退職のほか、自己都合の退職や解雇も退職金の支給対象です。

安全訓練にかかる費用

安全に工事を進めるための研修・訓練にかかる費用です。

安全教育に関する研修費用や、取引先との安全大会の開催費用が含まれます。

保険料

工事現場にかける火災保険や自動車保険、組立保険、法定外の労災保険に関する項目です。

建設業はリスク管理のため、他の業界よりも加入する保険が多いです。

そのため、各保険料を適切に管理する必要があります。

法定福利費

法定福利費とは、法律で​支払いが義務づけられた福利厚生の費用のこと。

具体的には、雇用保険料や労災保険料、健康保険料、厚生年金保険料などが該当します。

福利厚生費

法定福利費以外で、福利厚生にかかわる費用は「福利厚生費」として扱いましょう。

該当するのは健康診断や慶弔見舞、慰安旅行、レジャー施設の優待などです。

補償費

建設業では工事による振動や騒音、濁水によって現場周囲に悪影響を与える可能性があります。

工事が原因となり第三者に補償を支払う場合は、補償費として計上してください。

事務用品費

現場事務所で使用する、以下のような事務用品に関する費用です。

  • パソコン
  • 電話
  • 文房具
  • 新聞
  • 図書
  • コピー機

消耗品費として計上する企業もあるので、どちらで計上するのかを事前に確認しておきましょう。

交際費

接待費や宴会費、取引先の慶弔にかかる費用など、取引先の対応に必要となる費用は「交際費」として記録します。

起工式・落成式といった、建設業ならではの費用も交際費に該当します。

動力用水光熱費

工事現場や現場事務所で使用する電力・水道・ガスにかかる費用です。

電気設備や給排水設備の設置にかかった費用も、動力用水光熱費に含みます。

なお、現場管理費ではなく「共通仮設費」に含めることも可能です。

通信交通費

業務にまつわる通信費や交通費は「通信交通費」として計上します。

具体的な通信交通費の例は、次のとおりです。

  • 電話代
  • インターネット費用
  • 移動にかかる定期代やバス代、タクシー代
  • 車のガソリン代
  • 車検代
  • 郵送費用
  • ヘルメットに装着する小型カメラの購入費用
  • 監視カメラの購入費用

近年では、現場のIT化が進んでいるため、通信交通費にかかる費用が増加傾向にあります。

工事登録にまつわる費用

工事の実績登録にかかる費用を計上する項目です。

業務データを登録することで、工事がスムーズに進みやすくなります。

租税公課

自治体に支払う手数料・罰金と国に納める税金、公共団体に支払う会費を合わせて「租税公課」と呼びます。

建設工事で押さえておくべき主な租税公課は

  • 契約書の印紙代
  • 申請書の証紙代
  • 固定資産税
  • 自動車税

上記4点です。

公共事業労務費調査の費用

農林水産省および国土交通省が実施する、公共工事に従事する労働者の賃金に関する調査を「公共事業労務費調査」といいます。

社会保険加入の有無や、作業員の給与額などが調査対象です。

公共事業労務費調査でかかった交通費や書類代は、現場管理費に該当します。


参考URL:公共事業労務費調査・公共工事設計労務単価について

その他雑費

ここまで紹介した項目の、いずれにも該当しない費用は「その他雑費」として扱います。

現場管理費を把握するメリット

現場管理費を把握するメリットは、主に4つあります。

  • 工事費を正確に把握できる
  • 内訳を見ることで無駄な費用がないかを確認できる
  • 工事費の正当性を説明できる
  • 値引き交渉に対応できる

現場管理費は、工事費に含まれる重要な費用です。

もし現場管理費を把握できていなければ、工事費が高くなって受注が困難になったり、工事費が低くなって工事が赤字になったりします

さらに、労務管理費や外注経費など、内訳ごとの経費を確認すれば、無駄な費用が発生していないかを見直せるでしょう。

現場管理費を管理することで、工事費の正当性を説明することも可能です

取引先から現場管理費を値引き交渉された場合でも

  • 「安全訓練を実施するには〇〇円必要となり、値引きは難しいです」
  • 「今回の工事では保険料が✕✕円かかるので、〇〇円以下にはできません」

上記のように、根拠を持って適切に対処できます。

現場管理費の計算方法

現場管理費の計算方法は、次の2種類です。

  1. 経費を積み上げて算出する
  2. 現場管理費率を使用して算出する

計算方法①の場合、「現場管理費の内訳」で紹介した17項目の費用をそれぞれ見積り、全体的な現場管理費を求めます。

計算方法②の場合に使用する計算式は、以下のとおりです。

【現場管理費の計算式】

純工事費×現場管理費率+積み上げ

具体的に

  • 純工事費:173,632,309円
  • 現場管理費率:11.52%
  • 積み上げ:なし

上記の場合ならば「173,632,309×11.52+0」となり、現場管理費は20,002,441円と計算できます。

なお、現場管理費率は工種によって算定式が異なります。

現場管理費率の算出方法は「「公共建築工事共通費積算基準」(令和5年改定)における共通費の算定について」をご参照ください。

参考URL:公共建築工事の工事費積算における共通費の算定方法及び算定例

現場管理費を設定するときの注意点

現場管理費を設定するときの注意点を、3つピックアップしました。

  • 工事費への影響を考慮する
  • パーセントを増やしすぎない
  • パーセントを減らすときは現場の意見を聞く

現場管理費が高くなるほど工事費も高額になり、受注のしやすさに影響します。

現場の労働環境を快適にしたいからといって、現場管理費のパーセントを増やしすぎると、受注が困難になる恐れがあります

現場管理費をおさえたい場合は、現場の意見を聞きながら、費用を削減すべき箇所を検討しましょう

たとえば「新聞を読んでいる人はほとんどいないので無くしても問題ない」や「電子化が進めば事務用品費を削減できそう」など、現場ならではの業務改善案を聞ける可能性があります。

まとめ:正確な工事費を知るために現場管理費を把握しておきましょう

今回の記事は、現場管理費の内訳17項目や計算方法を解説しました。

現場管理費を把握するメリットは

  • 工事費を正確に把握できる
  • 内訳を見ることで無駄な費用がないかを確認できる
  • 工事費の正当性を説明できる
  • 値引き交渉に対応できる

上記4点です。

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