土木工事数量算出要領の役割と重要性|算出のルールや例を紹介

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目次

土木工事において、工事費用を算出するための項目のひとつに「数量」が挙げられます。算出方法や集計方法など、数量に関する内容をまとめたものが「数量算出要領」です。

数量算出要領は当然土木工事にも適用されるので、その概要や詳細を理解しておくことが重要視されます。

今回は、

  • 数量算出要領とは
  • 土木工事数量算出要領とは
  • 土木工事数量算出要領の役割と重要性
  • 最新版の​​土木工事数量算出要領について
  • 土木工事数量の算出に関するルール
  • 代表的な数量算出例

について解説します。

そもそも「数量算出要領」とは?

数量算出要領とは、工事数量における標準的な算出方法や集計方法をまとめたものだと、農林水産省が発表しております。主に、以下の目的があるのが、数量算出要領の特徴です。

  • 数量の根拠を明示する
  • 品質の向上、数量をとりまとめる作業を効率化する
  • 積算業務における合理化を図る
  • 契約内容を明確にする

なお数量算出要領は、最終的に数量算出表・数量計算書としてまとめられることも覚えておきましょう。

土木工事数量算出要領とは?

土木工事数量算出要領とは、土木工事ごとに算出する数量の項目や区分、算出方法を定めたものを指します。

数量算出要領の概要も踏まえて、土木工事数量算出要について見てみましょう。ここでは、土木工事数量算出要の役割や重要性について解説します。

土木工事数量算出要領の役割

工事にかかる費用の積算や契約の透明性・客観性を向上させ、発注者と受注者の間に共通認識を形成させるのが土木工事数量算出要領の役割です。

「そもそも「数量算出要領とは?」」の項目でも触れた、以下の目的が土木工事数量算出要領にも適用されます。

  • 数量の根拠を明示する
  • 品質の向上、数量をとりまとめる作業を効率化する
  • 積算業務における合理化を図る
  • 契約内容を明確にする

土木工事数量算出要領の重要性

土木工事数量算出要領は、設計者・発注者・受注者それぞれ3同一の数量算出要領を利用することによる、契約内容の明確化や事業執行の円滑化につながる重要なツールです。

また、数量計算書様式を統一化し、品質向上・照査時間の短縮といった重要な目的もあります。

【最新版】​​土木工事数量算出要領

現段階で最新版の​​土木工事数量算出要領とされているのは、国土技術政策総合研究所により発表されている「令和5年度 土木工事数量算出要領」です。ここでは「令和5年度 土木工事数量算出要領」の内容から抜粋して紹介します。

例えば土木工事における適用範囲については、以下のように記されています。

土木工事に係る土木数量の計算等に当たっては、本要領を適用する。

続けて、同じ資料に記載されている数量の計算方法も見てみましょう。

数量の計算は、計量法によるものとする。

ほかにも「令和5年度 土木工事数量算出要領」には、構造物の数量より控除とならないものや、数量に加算されないものなどの詳細が記載されています。また、河川や道路、公園など工事場所によって異なる事項も詳細に記載されているのも特徴です。

加えて同機関より「令和4年度(4月版) ~令和5年度 新旧比較表」も発表されているので、最新版の情報を過去のものと比較したい場合はぜひ参考にしてください。

土木工事数量算出要領の基本構成

土木工事数量算出要領は、以下の項目から構成されています。

<第1編(共通編)>
1章 基本事項
2章 土工
3章 発泡スチロールを用いた超軽量盛土工
4章 コンクリート工
5章 法覆工
6章 擁壁工
7章 函渠工
8章 地盤改良工
9章 基礎工
10章 構造物取壊し工
11章 仮設工
12章 構造物補修工

<第2編(河川・砂防編)> 
1章 護岸根固め工
2章 樋門・樋管
3章 浚渫工
4章 河川維持工
5章 砂防工
6章 斜面対策工
7章 消波工
8章 光ケーブル工

<第3編(道路編)> 
1章 舗装工
2章 付属施設工
3章 道路維持修繕工
4章 鋼橋上部工
5章 コンクリート橋上部工
6章 鋼製橋脚設置工
7章 橋台・橋脚工
8章 橋梁補修工
9章 トンネル工
10章 共同溝工

<第4編(公園編)>
1章 公園植栽工 

それぞれの項目の詳細については「令和5年度 土木工事数量算出要領」をご覧ください。

土木工事数量の算出に関するルール

土木工事の数量算出は、工事費用の算定や施工計画の作成における重要な役割を担います。数量を正確に算出するには、さまざまなルールを理解しておかなければなりません。

ここでは、土木工事数量の算出に関するルールを、いくつかのセクションに分けて解説します。

積算基準

土木工事の数量は、国土交通省による「土木工事標準積算基準書(赤本)」に基づき算出できます。土木工事標準積算基準書に記載されているのは、各工種における作業量や労務単価、材料単価などです。

なお、土木工事標準積算基準書に記載されている内容はあくまで「基準」であり、実際はさまざまな要件で工事費は変動することを前提にしておきましょう。

算出方法

現場の状況や施工方法などを考慮の上、適宜数量算出を行わなければなりません。土木工事の数量を算出する方法は、大きく2種類に分類されます。

ひとつは、標準単価を用いて費用を算出する「単価積算」です。そしてもうひとつは、作業員数・作業時間・機械台数・資材量などを算出の上、単価を乗じて費用を算出する「歩掛型積算」です。

標準単価や歩掛に関する詳細は、当サイトに掲載している以下の記事を参考にしてください。

算出手順

土木工事の数量は、以下の手順で算出することが可能です。

  1. 工事内容を分類する
  2. 各工種ごとの作業量を算出する
  3. 労務単価、材料単価、施工仮設費、共通仮設費などを適用する
  4. 工事費用の合計額を算出する

なお、より効率的な数量算出を行うには、積算ソフトの活用がおすすめです。積算ソフトを導入することで、業務工数の削減や一元管理、過去データの使用がより容易になります。

代表的な算出例について

ここでは、以下の工事を例に、具体的な算出例を紹介します。

  • 土工事
  • 舗装工事
  • トンネル工事

土工事の数量算出例

土工事の数量算出例は、以下のとおりです。

  • 「床掘り量 − 埋戻し量 × 土量変化率(1/C)」で残土量を算出
  • 「面積(㎡)× 深さ(m)」で残土の量を算出
  • 2点間の両断面積(A1・A2)の平均断面積と、2点間の距離(L)を乗じ、2点間の体積(V)を求めることで平均断面法による土量計算が可能

土工事の数量算出においては、盛土量に関して注意するポイントがあります。それは、現地盤線以上の断面積が1㎡以上となる場合に、盛土量からこれを控除することです。

構造物に裏込め材を使用する場合も盛土量からこれを控除し、セレクト材などの裏込め材の数量を別途算出する必要があります。

舗装工事の数量算出例

舗装工事の数量算出例は、以下を参考にしてください。

  • 舗装する面積(延長 × 幅)と舗装の厚さを掛け合わせて舗装合材の体積を算出する
  • 舗装合材の体積に2.3(舗装合材の比重)と、余盛分の係数である1.08を掛け合わせることで実際に使用する舗装合材の数値を算出可能(舗装合材の搬入に必要)
  • 一般的なアスファルトでの舗装は、1㎥あたりの重量は2.5tほど
  • アスファルトの換算係数は1.48であるため「体積(㎥)×1.48(t/㎥)=重量(t)」となる

舗装工事においては、排水性アスファルト舗装面積と導水パイプ延長を、区分ごとに算出します。平均施工幅員・平均厚さ・導水パイプの設置の有無・片側車線数・規格などが区分となります。

トンネル工事の数量算出例

トンネル工事の数量算出例は、次のとおりです。

  • 「床掘り量 − 埋戻し量 × 土量」で残土量を算出する
  • 「床掘り量 − 埋戻し量 × 土量変化率」で残土量を算出する場合も

トンネル工事の数量は、トンネルのタイプごとに区分して算出されます。なお、数量算出項目に該当するのは、電気設備・照明設備・換気設備・給排水設備などです。

まとめ

今回は、土木工事における費用の算出に必要な「土木工事数量算出要領」について紹介しました。土木工事数量算出要領は費用の算出だけでなく、工事費用の積算や契約の透明性・客観性を向上させる上でも重要なツールです。

数量を基準に工事費用を算出する際は、この土木工事数量算出要領について理解を深めることが非常に重要になります。土木工事数量の算出におけるルールや工事種別の算出例は、本記事の内容と「令和5年度 土木工事数量算出要領」を参考にしてください。