建設国保はどこがいい?国保との違いや加入条件について解説
目次
建設業を営むうえで、毎月かかる保険料を抑える工夫は非常に大切です。保険料といえば「健康保険」を思い浮かべますが、建設業に特化した「建設国保」という制度があるのをご存じでしょうか。
今回は、建設業が加入できる建設国保について、以下の視点から解説します。
- 建設国保とは何か
- 建設国保の利点・懸念点
- 建設国保と国保の違い
- 建設国保の加入条件や加入しなければならないケース
- 建設国保に加入しないとどうなるのか
建設国保の概要を把握したい方はもちろん、建設国保はどこがいいのかという疑問を解消したい方も、ぜひ参考にしてください。
そもそも建設国保とは?
建設国保は、建設業界に携わる人々とその家族の健康を支える医療保険制度です。医療費の保険給付のみならず、病気や怪我で仕事を休む際の傷病手当金、出産育児に関する一時金や葬祭費用など、さまざまな給付が提供されます。
さらに、建設業特有の働き方を考慮した健康診断をはじめとする、各種保健事業も行われています。このように、建設業に従事する人々が互いに支え合い、健康的な生活を維持できるよう、国の支援により運営されているのが建設国保の大きな特徴です。
建設国保の保険料
建設国保の保険料は、組合員とその家族の年齢や人数に基づき一律で設定されます。そのため、世帯の収入や就労状況、従事する業種による変動はありません。
建設国保の保険料は、医療保険料・後期高齢者支援金分保険料、および介護保険料の3つを合算した金額で構成されています。
なお最新の建設国保の保険料は、全国建設工事業国民健康保険組合の公式サイトで確認できます。(令和6年分の保険料は準備中)
同サイトでは、保険料をシミュレーションもできるため、最新情報が更新された段階で実施してみてはいかがでしょうか。
建設国保の補助制度
建設国保は、多彩な補助制度を提供しています。健康診断や人間ドックの費用補助、インフルエンザや肺炎球菌の予防接種費用の実費補助が例に挙げられます。
また、最高80日までの傷病手当金の支給や、入院・通院にかかる費用の払い戻し、本人及び家族の健康診断の無料提供など、充実したサポートを実施しているのも特徴です。
加えて、インフルエンザの予防接種助成金やアスベスト健診、費用の減免制度もあるため、組合員の健康維持・増進に力を入れていることがわかるでしょう。
建設国保はどこがいい?
建設国保は、低所得者に対して保険料が安く設定される点や、収支が安定しやすい点など、補償内容が充実している制度です。
また、事業者による保険料負担がなく、出産手当や傷病手当などの手当金が充実しており、本人及び家族の健康診断が無料で受けられるのも大きな利点です。
さらに、医療費の返金制度や、仕事を休む際にも安心の傷病手当金が支給されるため、経済的な負担を軽減し、建設業に従事する人々の健康と安定した生活をサポートできる制度と言えます。
建設国保に関し、
「この保険はどこがいいの?」
「加入することでどんなメリットがあるの?」
と、疑問に思う方も多いでしょう。
建設国保は、上述したようなさまざまなメリットがあるので、ぜひ加入を検討してみましょう。
建設国保にはデメリットもある
建設国保は、加入する家族の人数によって保険料が高くなってしまいます。そのため、加入時に保険料を抑えられていても、加入後に家族が増えた場合、負担が増えてしまうのです。
また建設国保は原則、規模の小さな事業所のみが加入できる制度です。そのため、事業を始めた段階で建設国保に加入できていても、事業を拡大したことで健康保険への切り替えが必要になるのです。
建設国保の保険料は所得に左右されないメリットがあるものの、事業全体の動きによってこの恩恵が受けられなくなる可能性も視野に入れなければなりません。
建設国保と国保の違い
建設国保と国保は、運営母体・保険料決定の基準が異なります。
建設国保は、国民健康保険法に基づき、全国建設工事業国民健康保険組合により運営されています。
建築業者をはじめ、医師や弁護士、理美容師といった、地域の同業者により設立した国民健康保険組合が提供しているのです。
対して、国保を運営するのは、各市町村にある「地方自治体」です。
また保険料については、国保が所得を基準に保険料を決定するのに対し、建設国保は家族構成・年齢を基準に保険料を決定します。
建設国保は、保険料が所得額に左右されず、国保と比べて保険料が安くなる傾向にあります。所得の多い個人事業所の事業主や一人親方の場合、所得に応じて保険料が増額されるケースがあるものの、基本的には一定額と決められているのです。
建設国保の加入について
ここでは、建設国保の加入について、以下の視点から解説します。
- 建設国保の加入条件
- 建設国保の加入方法
建設国保の加入を検討している建設業者はもちろん、建設国保についての理解を深めたいと考えている場合もぜひここで解説する内容を参考にしてください。
建設国保の加入条件
全国建設工事業国民健康保険組合によると、建設国保は建設工事業に携わっており、かつ個人事業所もしくは一人親方の場合のみ加入できるとされています。
また建設国保の加入に関して、以下のような注釈があったので引用して記載します。
株式会社などの法人事業所や常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所については、健康保険(協会けんぽなどの被用者保険)と厚生年金に加入することが義務づけられています。
ただし、すでに建設国保に加入している被保険者については事実発生日から14日以内に日本年金機構に手続きを行い、「健康保険適用除外」の承認を受けることで引き続き建設国保に加入することできます。
情報引用:全国建設工事業国民健康保険組合|資格・適用のご案内(加入資格)
なお、家族が建設国保に加入する場合は、組合員と同じ世帯に属しており、かつ75歳未満であれば加入はできます。
また、組合員と同一世帯で、かつ75歳未満であったとしても、以下に該当する場合は加入対象外となるので注意してください。
- 組合員と同一の世帯に属していない
- 健康保険の被保険者、被扶養者
- 船員保険の被保険者、被扶養者
- 各種共済組合の組合員、被扶養者
- 後期高齢者医療広域連合の被保険者
- 生活保護法の保護を受けている世帯に属している
- その他国民健康保険組合の被保険者
上記に加え、厚生労働省で定める特別な事情に該当する場合は建設国保に加入できません。
建設国保の加入方法
建設国保に加入する際は、居住地域の支部・出張所にある「加入申込書」「重要事項説明同意書」に記入のうえ、全国建設工事業国民健康保険組合に提出しましょう。
なお建設国保の加入時は、必ず用意しなければならない書類と、パターンごとに別途必要になる書類がそれぞれあります。
<加入において必須な書類>
1.世帯全員の住民票 |
2.加入者本人及び同一世帯の者の被保険者証の写し |
3.業種・業態が確認できる書類・法人事務所「履歴事項全部証明書(法人登記簿謄本)」または「建設業の許可について(通知)」・個人事業所、一人親方「所得税の確定申告書」 |
情報引用:全国建設工事業国民健康保険組合|資格・適用のご案内(加入手続き)
<別途必要となる書類>
1.法人事業所の従業員や常時5人以上の従業員を雇用している個人事業所 | 「健康保険被保険者適用除外承認証」の写し |
2.従業員が4人以下の個人事業所の従業員 | 「雇用保険資格確認通知証」又は「雇用証明書」 |
3.同じ住民票に記載されているが、建設国保に加入しない人がいるとき | その人の被保険者証の写し |
4.加入される方で70歳から74歳の人がいるとき | その人の課税標準額の確認できる書類 |
5.修学のために居住地を離れて生活している家族がいるとき | ・在学証明書 |
6.住民票の住所地から離れて加入されるとき | 「遠隔地雇用者届」 ※支部・出張所に用紙があります。 |
情報引用:全国建設工事業国民健康保険組合|資格・適用のご案内(加入手続き)
建設国保に加入しないとどうなる?
建設国保に加入しないと、さまざまなリスクが想定されます。ここでは、建設国保に加入しないことによるリスクを解説しているので「建設国保のどこがいいの?」とまだ懐疑的な印象の方はぜひ参考にしてください。
なお、建設国保未加入に関する疑問は、国土交通省の提供する「建設業における保険未加入問題に関するQ&A」でも確認できます。
医療費が高額になる
建設国保に加入していない場合、病気・怪我をした際の医療費が全額自己負担となります。そのため、高額な医療費がかかった際、経済的に困窮する可能性があるのです。
高額療養費制度が利用できない
高額療養費制度とは、医療費が高額になった際、一定額を超えた分の医療費を負担してもらえる制度のことです。建設国保に加入していないと、高額療養費制度を利用できません。
出産一時金・育児手当金などが給付されない
出産一時金や育児手当金とは、出産・育児にかかる費用を補助する給付のことです。建設国保に加入していない場合、これらの給付を受けられないため、家族の負担が増えることにつながります。
健康診断・予防接種などの保健事業対象外になる
建設国保では、各種健康診断や予防接種などの保健事業が実施されています。未加入の状態だとこれらの事業を受けられなくなり、健康状態の把握・維持においてのデメリットが生じるでしょう。
社会保険未加入者に対する制裁を受けてしまう
建設業においては、元請業者が下請業者に対して、社会保険への加入を義務付けるガイドラインが施行されています。建設国保に加入していないと、元請業者から仕事を依頼してもらえなくなる可能性があるでしょう。
情報参考:国土交通省|社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン
また、社会保険への加入義務がある建設業者が未加入だった場合、最大2年分の社会保険料が追徴金として請求される可能性があります。未加入であることが「悪質」と判断された際には、6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金の対象となるケースもあるでしょう。
まとめ
今回は、建設業者を対象とした建設国保について解説しました。
建設業界に携わる人材とその家族をサポートする医療保険制度である建設国保は、保険料負担や収支の安定、充実性といった点でメリットがある制度です。
ただし、加入人数によって保険料が増加する側面もあるため、記事内で解説した建設国保の加入条件や国保との違いを把握のうえ、加入を検討しましょう。
「建設国保ってどこがいいの?」
このような疑問を抱えている方は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。