ISOは建設業で必須?経審で加点となるISO9001取得のメリットやコツを解説

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目次

建設業において、経営事項審査(経審)の加点対象となるISO認証。

ISO認証を取得することにより、経審だけでなく主観点・総合評価がアップする、顧客の信頼につながるといったメリットがあります。

今回は、ISOについて以下の4つに分けて解説します。

  • ISOとは何か
  • ISOが建設業に広まったきっかけ
  • 建設業と関係のあるISO認証や、取得するメリット
  • 建設業がISO認証を受けるコツ

この記事を活用し、建設業のISOに関する理解を深めたい方の参考になれば幸いです。


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ISOとは

ISOは、スイスに本部を置く非政府機関 International Organization for Standardization(国際標準化機構)の略称です。

ISOは製品の品質や労働環境を良くするための規格を決めており、その規格をISO規格と言います。

このISO規格は、国際的に取引をスムーズにするのに役立ち、世界で同じ品質・レベルのものを提供するための基準です。

ISO規格には大きく分けて、製品を対象とする「モノ規格」と組織の活動を管理する仕組みを対象とする「マネジメントシステム規格」の2種類があります。

モノ規格は、案内標識や長さ、プラグインなどの規格を定めており、例としては以下の通りです。

  • 非常口のマーク(ISO 7010)
  • クレジットなどのカードサイズ(ISO/IEC 7810)
  • ネジ(ISO 68)

マネジメントシステム規格は、組織の品質活動や環境活動など仕組みに関する規格を定めており、例としては以下の通りです。

  • 情報セキュリティマネジメントシステム(ISO27001)
  • 食品安全(ISO22000)
  • 事業継続(ISO22301)
  • 情報セキュリティ管理策(ISO27002)
  • 教育組織(ISO21001)

ISOが建設業に広まったきっかけ

ISO規格は、製造業に関するイメージが強く、建設業とはあまり関係ないのではと思う方もいるのではないでしょうか。

建設業でISOが広まったきっかけは、国土交通省がISO9001(品質マネジメントシステム)を経営事項審査(経審)の加点対象としたことです。

経審とは、建設業の経営規模や状況、技術力を客観的に審査するものです。

1994年建設業法の改正により、公共工事の入札に参加するためには、経審が必須。

審査結果を点数化し、その点数にもとづき建設業のランク付けを行い、ランクにより入札に参加できる工事の金額が決定します。

公共工事は、工事規模が大きく長期で安定した案件がほとんど。

また、国や自治体が発注元のため、貸し倒れリスクがなく安心して工事に取り組めるという特徴があります。

そのため、公共工事を受注したいと考えている建設業は多いでしょう。

また、国土交通省は2000年より、ISO9001を公共工事の入札参加の必須条件にすることを検討し始めました。

つまり、国土交通省の取り組みが、建設業にISOを広めるきっかけを作ったのです。

経営事項審査について詳しく知りたい人は「経営事項審査(経審)とは?メリットや流れ、点数アップのポイントを解説」も合わせてご覧になってみてください。

建設業と関係のあるISO認証

ISO認証は、なんと50,000種類以上存在しています。

事業継続(ISO22301)や情報セキュリティ管理策(ISO27002)などのマネジメントシステム規格は、業種・業界に関わらずどのような企業でも関係します。

また、先ほどお伝えした通り、なかには経営事項審査(経審)に影響をあたえるものも。

ここからは、建設業と関係のある3つのISO規格について解説します。

ISO9001(品質マネジメントシステム)

ISO9001は、品質マネジメントシステムに関する規格です。

最も知名度のあるマネジメントシステム規格で、全世界で170ヵ国以上、100万以上の組織が認証を取得しています。

顧客満足の向上を目的に、提供する製品やサービスのプロセスを見直し、品質を向上することについて定められています。

ISO9001は「品質」と入っているため、性能などをイメージする方が多いかもしれませんが、価格や納期も対象になります。

これは、顧客満足の向上にはQ(quality:品質)C(cost:価格)D(delivery:納期)が重要だと考えられているからです。

ISO14001(環境マネジメントシステム)

ISO14001は、環境マネジメントシステムに関する規格です。

環境へのリスクを洗い出し、対策・改善をすることで、環境への負荷を減らし環境保全に取り組むことが目的です。

ISO9001と一緒に取得する企業が増えています。

ISO45001(労働安全衛生マネジメントシステム)

ISO45001は、労働安全衛生マネジメントシステムに関する規格です。

労働者の負傷や疾病の防止、安全で健康的な職場環境の提供を目的に、仕組みの構築と継続的改善に必要なことが定められています。

労働者が安心して働ける環境を創ることで、パフォーマンスの向上が期待できます。

建設業がISO認証を取得するメリット

先ほどお伝えした通り、ISO9001(品質マネジメントシステム)を取得することで経審の加点対象になります。

しかし、ISOを取得するメリットは他にもあります。

ここからは、建設業がISOを取得するメリットについて解説します。

主観点・総合評価がアップする

建設業がISO認証を取得するメリットの1つ目は、主観点・総合評価がアップすることです。

主観点とは、地域での実績や地域貢献などを発注者(自治体)が独自に審査する制度のこと。

経審の点数に、主観点の点数を加え総合点数を計算し、入札の参加条件が決められます。

そのため、経審の点数アップと同様に取り組む必要があります。

主観点の基準は自治体で決定しており、自治体によってはISO9001やISO14001で加点される場合も。

総合評価とは、価格だけでなく技術力や工事品質、技術開発なども評価し入札の落札者を決める方法です。

以前は価格で決めるケースが多くありましたが、最近では技術力なども含めて決定する「総合評価落札方式」が増えています。

総合評価の項目は自治体などで異なりますが、例を挙げると以下の通り。

  • 施工計画や提案
  • 工事成績
  • 配置技術者の施工経験
  • 女性技術者の登用
  • 建設機械保有状況
  • 男女共同参画に関する認証

自治体によってはISO認証を評価する場合があり、ISO9001やISO14001が対象になります。

自社が入札に参加する自治体で、ISO認証が加点や評価される項目か確認すると良いでしょう。

経営事項審査について詳しく知りたい人は「経営事項審査(経審)とは?メリットや流れ、点数アップのポイントを解説」も合わせてご覧になってみてください。

顧客の信頼につながる

建設業がISO認証を取得するメリットの2つ目は、顧客の信頼につながることです。

ISO認証を取得するためには審査を受ける必要があり、品質や環境、労働安全衛生に対する高品質のマネジメントに取り組んでいることが証明されます。

発注者からすると、施工管理における品質管理や記録管理、環境対策などが適切に行われていることが期待できるでしょう。

自治体だけではなく、民間企業も気になるポイントで、ISO認証を受けていると信頼につながります。

実際に、企業によっては発注先の条件に「ISO認証の取得」を設けているところもあります。

また、建設業のホームページを見ると、ISO認証の取得をアピールしている企業が多数存在します。

企業体質の強化につながる

建設業がISO認証を取得するメリットの3つ目は、企業体質の強化につながることです。

ISO認証は簡単に取れるわけではなく、社内でマニュアル作成などの取り組みが必要。

ISO認証を受けるためのステップの例としては、以下の通りです。

  1. プロジェクトの組成

    どのISO認証を取得するのかを決め、プロジェクトチームを組成します。

    責任者・推進者は決めますが、マニュアル作成など行うことが多いため、誰か一人で認証の取得に取り組むことはまれです。

    プロジェクトを組成したら、認証までの期間などを決め、ISOに関する勉強会を実施します。

  2. 現状の業務や課題の調査

    現状の業務を確認しながら、業務の問題点やISOの要求事項に反すること、管理すべき事項などを洗い出します。

  3. ルール化・マニュアル化など体制整備

    ステップ2の結果にもとづき、業務をルール化しマニュアルを作成します。

    負担が増加し過ぎては業務に支障が出るため、その点も考慮するのが重要。

    マニュアルにもとづいた運用ができるよう、管理体制や社内での浸透(勉強会の実施など)も進めます。

  4. 社内PDCAを回す

    ルールやマニュアルができた段階で審査を受けるのではなく、一度社内で実施し問題点や改善点を確認するPDCAを回します。

    ルールやマニュアル通りに業務が可能か、設計段階で気がつかなかった問題点は無いかを確認し、必要に応じて修正します。

  5. 第一段階(書類)審査

    ISO認証を受けるためには、審査機関と契約し2つの審査を受ける必要があります。

    第一段階(書類)審査は、マニュアルなどの文書を中心とした書類審査。

    書類審査と言っても、審査員が来訪し質問を受ける場合があるため、答えられる準備が必要です。

  6. 第二段階(実地)審査

    第二段階(実地)審査は、第一段階(書類)審査の大体1ヵ月後に行われます。

    審査員が実際の現場を見ながら、マニュアルにもとづいた運用がされているか確認。

    第一段階審査・第二段階審査ともに、もし指摘事項があれば改善報告書を提出する必要があります。

上記の通り、ISO認証を取得する過程で、現在の業務を見直し、ルール化・マニュアル化を行う工程が発生します。

そのため、現状の業務の無駄を改善しマニュアル化することで、社員育成にも役立つでしょう。

このように、ISO認証の取得の過程で、あらためて社内を見直し体質強化が図れます。

建設業がISO認証を取得するコツ

最後に、建設業がISO認証を取得するコツを解説します。

建設業がISO認証を取得するコツは、下記の通りです。

  • 効率も踏まえて仕組みを検討する
  • 一部の人だけではなく、全員参加で取り組む(経営者が積極的に活動参加を促す)
  • 新たに書類を作るのではなく、現在使用しているものを極力使う
  • 審査会社や(支援を受ける場合)コンサル会社は、信頼でき自分たちに合う会社を探す

建設業がISO認証を取得するのは手間であり、場合によっては日々の業務の手間が増加します。

例えばISO認証の取得には「現場の記録」が求められている場合があります。

新たな書類を作成しようと考えると、現在の業務にプラスして負荷が発生。

ただ建設業の場合、公共工事でも民間工事でも、書類を作成し提出することがISO認証と関係なく求められているのではないでしょうか。

すでに作成している書類を利用することにより、業務負荷を抑えることができます。

業務負荷が抑えられれば、会社全体の理解も得やすくなるでしょう。

ISO認証は、一部の方だけでなく組織全体の理解が必要です。

全社員が理解し、しっかりと運用されなければ意味がないため、効率的な運用を検討しましょう。

まとめ

今回は、ISOとは何かや、建設業に広まったきっかけ、建設業と関係のあるISO認証、取得するメリット、認証を受けるコツについて解説しました。

ISOを取得することで、下記のメリットがあります。

  • 経審の点数がアップする
  • 主観点・総合評価がアップする
  • 顧客の信頼のつながる
  • 企業体質の強化につながる

ISO認証を取得するためには、全社員の理解と協力が必要です。

ISO認証のために、新たな書類を作成するのではなく、現在作成している書類を活用しながら、効率的な運用を考えましょう。


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