建設業振興基金とは?活動内容や関連する検定、融資制度について解説

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目次

「建設業振興基金」は、建設業のさらなる成長を目指し、経営の効率化や従業員のスキルアップに向けた多彩な支援を展開しているのが特徴です。
本記事では、建設業に携わる事業者に役立つ情報として、以下のポイントに分けて建設業振興基金に関するトピックをまとめています。

  • 主な活動内容
  • 研修・検定制度
  • 融資制度

建設業者としての発展を支援し、人材の成長や技術革新を後押しする建設業振興基金の取り組みを理解すれば、業界の最新トレンドやキャリアアップの道がより鮮明になるでしょう。

建設業振興基金とは

建設業振興基金は、昭和50年に国と建設業者団体などの出資で設立された公益法人です。
建設産業の近代化や合理化を推進し、産業の発展を図ることを目的としています。

近年、公共投資の縮小などにより、建設業界は厳しい経営環境に直面していますが、建設業振興基金は官民の架け橋としてさまざまな事業を展開し、業界の健全な発展に貢献しています。
平成24年には公益法人制度改革により一般財団法人へと移行しました。

主な事業内容

建設業振興基金は、建設業界の安定と成長を支える多岐にわたる事業を行っています。
主な事業内容として挙げられるのは、中小建設業者への資金支援に加え、業界全体のデジタル化や経営効率化を促進する取り組みなどです。

また、次世代を担う人材の育成に注力し、業界の質向上を目指した試験や講習も提供しています。
詳細な活動内容については、以下の項目で解説します。

建設業振興基金の活動内容

ここでは建設業振興基金が行っている、主な活動内容について解説します。

経営支援

建設業振興基金は、中小建設企業の経営基盤を強化するために、多様な支援策を展開しています。
一例として国土交通省が進める金融支援事業があり、債務保証を通じて中小建設業の資金調達を支援します。

具体的例として挙げられるのは「出来高融資制度」や「下請債権保全支援事業」、建設業団体向けの「共同事業等の債務保証」などです。
また、建設産業団体が実施する調査研究や研修、災害備蓄品の購入を対象に助成金を交付する「建設産業活性化助成事業」も行われています。

人材育成支援

人材確保と育成を目的とした広報活動や教育支援を実施しているのも、建設業振興基金の特徴です。
後述する「建設キャリアアップシステム」の運営を通じて、技能者一人ひとりの資格や就労履歴を管理し、能力に応じた待遇の実現を目指しています。

また「こども霞が関見学デー」への参加やパンフレットの発行、作文コンクールの開催など、若者が建設産業に関心を持つための取り組みも行われています。
さらに、熟練技能者向けの「登録基幹技能者」資格の周知や、講習用テキストの作成にも注力しているのです。

検定・講習の実施

施工管理技士試験の実施機関でもある建設業振興基金は、建設業法に基づいた国家資格試験を提供しています。
建築施工管理技術検定や電気工事施工管理技術検定は全国主要都市で開催され、監理技術者向けの講習も全国250か所以上の会場とオンラインで実施されています。

さらに、建設業経理士検定や経理事務士検定など、会計知識を深める試験も行われ、建設業界で働く人々のスキル向上と業界全体の質向上を支えているのです。

研究開発・技術革新の推進

建設業振興基金は、CI-NETという建設業界のEDI(電子データ交換)標準のルール策定や普及活動を通じ、建設産業の生産性向上を図っています。
CI-NETは、注文書や請求書などのやり取りを電子化し、効率的な業務運営を支える仕組みとして活用されているのが特徴です。

また、建設産業活性化助成事業を通じて、産業団体が行う調査研究への助成も行われ、研究開発や技術革新の推進に貢献しています。

建設業振興基金の検定・講習について

建設業振興基金では、以下の検定・講習が実施されています。

  • 建築/電気工事施工管理技術検定試験
  • 建設業経理検定
  • 監理技術者講習
  • 建築・設備施工管理CPD制度

ここでは、建設業振興基金で行われている検定・講習の詳細について解説します。

建築/電気工事施工管理技術検定試験

施工管理技術の重要性が増す中、建設業振興基金では「建築施工管理技術検定」と「電気工事施工管理技術検定」を実施し、技術者の能力向上を目指しています。
建設業法に基づいた国家試験として、全国の主要都市で開催され、第二次検定の合格者には「施工管理技士」の資格が与えられます。

施工管理技士の資格は、建設業許可に求められる専任技術者や、工事現場の監理技術者・主任技術者としての職務に不可欠です。
品質向上に貢献するだけでなく、許可取得や工事受注にも直結する重要な役割を担っています。

建設業経理検定

建設業振興基金は、建設業界における経理知識の評価を目的とした「建設業経理検定試験」も実施しています。
1級から4級までのランクが設けられ、経営基盤の強化と業界の近代化を目指している検定です。

昭和56年に「建設業経理事務士検定試験」として始まり、平成18年の法改正に伴い、1級・2級は「建設業経理士検定試験」、3級・4級は「建設業経理事務士検定試験」と名称が変更されました。

建設業経理検定については、当サイト掲載の以下も参考にしてください。

建設業経理士2級の難易度は?取得方法や効果、求められる場面について

監理技術者講習

国土交通大臣から認可を受けた講習機関として「監理技術者講習」も実施されています。建設工事現場で技術管理を行う監理技術者になるうえでは、監理技術者講習の受講が必須です。

講習は全国の約250会場で行われる対面講習と、オンラインで提供されるオンデマンド方式から選択可能で、修了者には当日「監理技術者講習修了証(ラベル)」が交付されます。

建設業振興基金の監理技術者講習に関する詳細は、当サイト掲載の以下記事も参考にしてください。

建設業振興基金の監理技術者講習とは?必要性や特徴、受講費用について

建築・設備施工管理CPD制度

建設業振興基金が運営する「建築・設備施工管理CPD制度」は、建築施工管理技士などの技術者が能力を継続的に向上させ、成長を社会に示すことを目的としています。
講習会やセミナーなどのプログラムへの参加を通じて、CPD単位を取得可能です。

令和3年4月からは、CPDが経営事項審査の評価項目に含まれ、業界内での重要性がさらに高まっています。

建設業振興基金における融資制度

建設業振興基金では、中小建設企業の資金繰りを支援するための融資制度を整えています。
代表例として挙げられるのが「出来高融資制度」です。

出来高融資制度は国土交通省の施策に基づき、工事の進捗に応じた融資を受けられる仕組みです。
保証人や担保が不要であることや、金融機関での借入枠がなくても利用可能である点が特徴といえます。
また、必要書類が少なく迅速に資金が得られる点もメリットです。

さらに、建設業振興基金は「下請債権保全支援事業」も提供しています。
下請債権保全支援事業は、下請建設企業が元請企業からの工事代金を受け取れないリスクを軽減するものです。
債権の支払保証や債権の買取といったサポートを通じて、安定した経営を支援しています。

建設業振興基金のデータから見るキャリアアップシステム

建設業振興基金が管理する「建設キャリアアップシステム」は、技能者の資格や就業履歴を蓄積し、技能と経験を客観的に評価することで、処遇改善や現場管理の効率化を目指すシステムです。
若手にとってはキャリアパスが明確になり、技能や経験に応じた待遇改善が可能となる一方、技能者を雇用・育成する企業にとっても成長を促進する効果が期待されています。

2023年4月末時点では、116.5万人の技能者と22.2万社の事業者が登録しており、就業履歴は427万件に達し、増加傾向が続いています。
さらに、50社以上の元請企業がシステムの評価を基に独自の手当を支給しており、技能者の処遇改善に向けた具体的な進展として注目されていることがわかるでしょう。

参照:国土交通省|建設業を巡る現状と課題


なお当サイトでは、建設業のキャリアアップシステムに関する詳細もまとめているので、以下の記事もあわせて参考にしてください。

建設キャリアアップシステムの義務化はいつから?導入しないことで起こりうる問題も解説

まとめ

建設業界の持続的な発展を後押しするため、経営支援から人材育成に至るまで幅広いサポートを提供しているのが建設業振興基金の特徴です。
特に各種検定や講習制度は、建設業に携わる方々のスキル向上に直結し、確かなキャリア形成に寄与しています。

また、融資制度による経営支援は、企業が安定した経営基盤を築くための大きな助けとなっています。基金の支援制度を活用することで、企業の成長促進と従業員の能力向上を効率的に進められるでしょう。