電気工事で1人工の単価はどう決める?積算の方法や注意点を解説!

電気工事で1人工の単価はどう決める?積算の方法や注意点を解説!のイメージ写真
目次

企業の競争力を高め、適正に利益を得るために大切な積算。

電気工事で1人工の単価はどう決めるのか、どのように積算を行えばよいか知りたい方も多いのではないでしょうか。

今回は、適正な工事単価を設定するために必要な積算の考え方や、具体的な見積書の作成手順、注意点などについて解説します。

電気工事の単価は「積算」により決められる

電気工事の単価は「積算」をもとに決定します。

電気工事は、さまざまな材料を使い、人が作業を行うことで完了します。

積算とは、工事の図面や配線図などの設計書や指示書をもとに、必要な材料費や施工をする人件費をもとに工事原価を計算する作業のこと。

積算で計算をした原価に、営業や会社運営に必要な経費、利益を上乗せし見積書を作成します。

材料の単価は種類や数により異なり、工事内容により必要な人材や人数も変わるでしょう。

そのため、一つひとつの材料、作業ごとに必要な人数などの計算が必要となりますが、この業務には大変手間がかかります。

しかし、適正な見積書を作成するためには、正しく積算を行うことが大切。

明確に根拠のある見積書は、顧客からの信頼や工事の受注率の向上にもつながります。

電気工事の単価を決める際に重要となる考え方

工事単価を決める際のポイントは、積算基準を参考に人件費を正しく把握することです。

積算基準とは、金額の計算方法を示すガイドラインのこと。

材料であれば、どこから仕入れを行っても大きく変わることはありません。

また、過去仕入れた値段から大きく値上げされることも少ないでしょう。

ただ人件費は違います。

そもそも人件費は「労務単価×歩掛(ぶがかり)」で算出されます。

作業内容により求められる人材の熟練度が異なり、また業者ごとに値段を設定するため労務単価は大きく変動。

作業自体は短時間作業であっても、移動や待機などを含めると拘束時間が長くなり、その分費用がかかることもあります。

ここからは、「不適切に高い値段を設定している」と顧客から不信感を抱かれないように、積算基準と人件費の計算における考え方を詳しく解説します。

積算基準

積算基準とは、工事の内容や定義により項目ごとに金額の計算方法を示すガイドラインのことです。

見積書の作成業務における効率化を図るとともに、金額の妥当性があるかを確認し、適正金額での見積提示を促します。

積算基準は主に公共工事の予算額を計算する際に使われますが、民間工事でも独自に儲けられている場合があります。

具体的には、下記のとおりです。

  • 公共建築工事標準単価積算基準
  • 電気通信施設設計業務積算基準
  • 電気通信施設点検業務積算基準
  • 電気設備工事積算要領

あくまでもガイドラインなので法律で決められたルールではありませんが、水増しなどの不正を防止する役割を果たしています。

工事の材料規格や単価計算、諸経費の考え方などが詳しく掲載され、積算が正しく行われているかを確認することが可能。

積算を行う際は、ぜひ参考にしてください。

労務単価

労務単価とは、工事を行うスタッフに支払う1人工あたりの報酬のことです。

具体的には、下記があります。

  • 基本給や手当
  • ボーナス
  • 昼食などの現物支給品

公共工事の場合、国土交通省が都道府県ごとに設定した「公共工事設計労務単価」に、1人工あたりの単価が記載されています。

歩掛

歩掛とは、作業に必要な時間や日数を数値化したもので、単位は「人工(にんく)」です。

そのため、例えば2人が1日で行う作業は2人工となります。

ただ、作業を行う手間は、作業内容の難易度や、それを行う人の保有する資格やスキル、熟練度により異なるでしょう。

これを一つひとつ設定するとなると、多くの時間がかかります。

そのため、歩掛においても「公共建築工事標準単価積算基準」で設定されている基準を参考にする会社が多くあります。

歩掛については「【具体例アリ】歩掛とは?初心者向けに計算方法・メリットをわかりやすく解説」でも詳しく解説しています。

電気工事の積算をする手順

続いて、電気工事の積算をする手順を具体的に解説していきます。

工事に必要な材料や規模を把握する

まず、工事に必要な材料や規模を把握します。

顧客から入手した図面をもとに、建物の規模や用途、必要な設備・材料を把握することが大切。

どのように回線を引き込むか、建物特有の設備がないかも確認しましょう。

また、図面に不足している設備や改修が必要な点がないかも見逃さないようご注意ください。

違法工事にならないよう、建築基準法や消防法、自治体の条例も最新情報の確認も怠らないことが大切です。

材料費を計算する

次に、材料費を計算します。

照明器具や配線の種類や大きさ、数などを正確に拾い出し計算をしましょう。

少しでもミスがあれば、合計額に大きな影響があるため注意してください。

図面は細かく作られており、作成した本人であってもミスをする場合があります。

時間もかかり面倒ですが、受注後にミスが発覚すれば赤字工事の原因にもなり得るため、計算は慎重に行いましょう。

計算する際には、引き込み設備や照明器具などの中項目ごとに、工事を行う建物の面積や材料の数などを計算するのが一般的。

また、「切り無駄」などのロスが発生しないよう配線の材料は長めに確保をしておくとよいでしょう。

一般的な材料費の算出方法は「材料費=所要数 ×(1+ロス率)×材料単価(購入単価+運搬費)」です。

ロス率は、国土交通省の「公共建築工事標準単価積算基準」を参考にするのがおすすめ。

また、材料費には工事現場まで運ぶ運搬費用を忘れないようにしましょう。

運搬費用を計算するには、財団法人経済調査会などが公開している公的な数値を参考にしましょう。

労務費用を計算する

3番目に、労務費を計算します。

労務費とは人件費のことで、一般的には「労務単価×歩掛」で算出されます。

先ほども解説した通り、労務単価とは工事を行うスタッフに支払う1人工あたりの報酬、歩掛とは作業に必要な時間や日数を数値化したものです。

労務単価は公共工事設計労務単価として、歩掛は公共建築工事標準単価積算基準として、国土交通省が制定し公表しているため、これをもとに計算をすると良いでしょう。

国土交通省のホームページから簡単に確認できます。

例えば、Hf蛍光灯器具(埋込形)FHF 86Wを1個設置するのに必要な電気工の歩掛は、0.502人工。

東京で工事をする場合の労務単価は、28,800円。

参考:国土交通省ホームページ

10個分の労務費を計算すると、

労務単価28,800円×歩掛0.502人工×10個=144,576円となります。

ただし、歩掛は工事現場の状況により異なるので注意ください。

歩掛には含まれませんが、移動時間や作業の待ち時間にも人件費が発生します。

これらについても計算し、また具体的にどのような計算をしたのか、顧客から質問された場合に明確に答えられるようにしておきましょう。

その他経費費用を計算する

4番目に、その他経費を計算します。

工事にかかる費用は、材料費や人件費だけではなく、それ以外にもあります。

例えば、機械費用。

機械を使うにもお金がかかります。

機械費用の計算は2つの方法があり、下記の通りです。

  • 所有している機械の償却費・維持修理費・管理費などからなる建設機械等損料をもとに計算する
  • 機械のリース料金からなる建設機械等賃料をもとに計算する

どちらも、工事の種類ごとに標準歩掛が設定されています。

2つ目は、特許使用料。

工事の方法のなかには、特許権や意匠権の対象になるものがあり、それらの方法を使う場合は使用料が発生することがあります。

特許権や意匠権とは、発明者のアイディアやデザインを保護する権利のこと。

特定の技術を使える技術者に対して費用が発生する場合もあります。

3つ目は、水道光熱費。

当然ですが、工事では電気や水道を使い、水道料金や電気料金などが発生します。

水道局や電気会社が設定している時間当たりの使用量から算出するのが一般的です。

また、足場や仮囲いなどの仮設物の費用、現場管理の費用も必要。

他にも費用がかかる場合は、もれなく計算をするようにしましょう。

見積書を作成する

最後に、見積書を作成します。

まず、積算が完了したら、それをまとめた内訳明細書を作成します。

内訳明細書は、内訳書や明細書、仕分け表がツリー式に記載され、どんどん細かくなる書類のこと。

必要な材料や数量や人員を項目ごとにまとめて記載し、内容に間違いがないか確認。

見積書を作成する際は、この内訳明細書を参考にしながら、会社の経費や利益を上乗せして作成します。

また、クラフトバンク総研では、見積書のエクセルテンプレートを無料でプレゼントしています。ぜひこの機会に受け取ってみてください。

見積書のエクセルテンプレートを受け取る

電気工事における見積作成時の注意点やポイント

ここまでで解説した通り、電気工事における見積は積算をもとに行います。

積算は細かい作業となるため、間違いや抜け漏れなどのミスが起きやすく、注意しましょう。

少しでもミスがあれば、費用の合計額に大きな影響が出ます。

続いて、電気工事における見積作成時の注意点やポイントを解説します。

工事規模を正確に算出する

1つ目は、工事規模を正確に算出することです。

図面や配線図をもとに、必要な材料や人員、設備を洗い出していきます。

細かい作業で、ミスがよく発生するポイントなので注意しましょう。

図面や配線図に線が多いと、必要な線の数や材料の長さを間違える場合があります。

材料の種類や大きさが変わればその単価が、また工事をする人件費が大きく変わり、合計額に影響を与えます。

そのため、メモなどもしながら慎重に行いましょう。

適正な単価設定にする

2つ目は、適正な単価設定にすることです。

適正に単価を設定しなければ、自社の利益を確保することができなかったり、お客様からの信頼を得られなかったりします。

単価が高すぎれば、工事を受注することはできないでしょう。

逆に、低すぎれば工事を受注したとしても赤字になってしまう可能性があります。

材料費や人件費の積算をしっかり行い、適正な単価を設定しましょう。

過去の案件の単価を参考にするのもおすすめ

過去の案件単価を参考にするのもおすすめです。

似た案件を参考にすることで、スムーズに積算や見積書の作成ができるでしょう。

この場合、工事や建物の規模や用途が似ている案件が参考になります。

完全に同じ案件はなく、物価や人件費は変動する点に注意しましょう。

最新の単価や材料の修正などが必要です。

電気工事の単価計算には専用ソフトの活用もおすすめ!

電気工事の単価計算はエクセルなどでもできますが、専門ソフトの活用もおすすめです。

専門ソフトを活用することにより、手間のかかる作業を効率化でき、ミスのない正確な単価計算が可能になります。

確実に利益を出すためには、適正な単価を設定し顧客の信頼を得ることで工事を受注する必要があります。

また、専門ソフトを活用すれば、単価計算だけではなく工事台帳や実行予算書の作成もあわせて行うことが可能。

工事の進捗管理や利益管理は経営において欠かすことができませんが、目の前の業務に振り回され作成が遅くなる場合もあります。

専門ソフトによっては、原価や受発注、工程表の管理ソフトと連携ができたり、顧客情報の管理や日報作成までできたりするものも。

単価計算業務だけではなく、管理や日々の業務の効率化を実現します。

【PR】見積書を正確かつスピーディーに作りたいなら、弊社の提供する「クラフトバンクオフィス」がおすすめです。

エクセルの見積書は動作が重くなったり、ファイル管理が大変だったりと、作成者の負担は小さくありません。

クラフトバンクオフィスの見積機能を使えば、歩掛の自動入力や、粗利率を確認しながらの作成、バージョン管理や請求書への変換もサクサクできます。

クラフトバンクオフィスの詳細は、サービス資料をダウンロードしてご覧ください。

クラフトバンクオフィスのサービス資料を読む

まとめ

今回は、適正な工事単価を設定するために必要な積算の考え方や、具体的な見積書の作成手順、注意点やポイントを解説しました。

電気工事の積算を理解して適切に単価を決めることが大切です。

細かく手間のかかる作業ですが、積算の正確性が工事受注を左右し、適正な利益を得るポイントになります。

クラフトバンク総研では、見積書のエクセルテンプレートを無料でプレゼントしています。ぜひこの機会に受け取ってみてください。

見積書のエクセルテンプレートを受け取る


建設業で絶対に必要となる工程表。ただ、「工程表を作るのがめんどくさい…」という声をよく聞きます。

そこで、クラフトバンクでは1,200人以上の専門工事会社の方にお使いいただいた工程表のテンプレートをご用意しました。

毎月多くの人に読まれている記事の中で、どんな作りなのかも合わせて解説しています。ぜひ1度ご覧になってみてください。

人気記事→工程表をエクセルで作ろう!作り方を画像付きで丁寧に解説