建設業法施行令で押さえておきたいポイント|含まれる規定内容や歴史的背景

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目次

建設業界の適正な運営と健全な競争を維持するために「建設業法施行令」が定められています。
建設業法を具体的に補完する政令であり、業界で重要とされる要件が規定されています。

本記事では、建設業法施行令の概要に触れながら、以下のポイントについて詳しくみていきましょう。

  • 軽微な建設工事
  • 見積期間
  • 許可申請
  • 経営事項審査
  • 技術者の配置
  • 施工体制台帳

また、建設業法施行令制定や改正の背景についても解説しています。
建設業に携わる企業や技術者にとって、建設業法施行令の理解は業務を適切に進めるうえで欠かせないため、ぜひ参考にしてください。

そもそも「建設業法施行令」とは?

建設業法施行令は、建設業法の実施を支えるための具体的なルールを定めた政令です。
建設業法が基本方針を示すのに対し、施行令は業界関係者が実務で活用できる明確な基準や指示を記しています。

例えば、建設業の許可要件や軽微な工事の範囲などが具体的に定められています。
法令を正しく守るためには、建設業法だけでなく施行令の内容をしっかり理解することが欠かせません。
建設業法施行令は、建設業者が法規を順守しながら円滑に業務を進めるための指針となる重要な制度です。

建設業法施行令に関する詳細は、以下の別記事もあわせて参考にしてください。

建設業法施行令とは?施行規則との違いや改正履歴、新旧対照法を紹介

建設業法施行令における規定内容

建設業法施行令は、建設業者が事業を適切に運営するために遵守すべき詳細なルールを定めています。
許可の取得条件や工事の見積期間、技術者の配置基準など、幅広い項目が規定されており、業界関係者にとって重要な指針となっているのです。

ここでは、建設業法施行令を理解するうえで押さえておくべき規定内容を整理しました。

出典

国土交通省|建設業法令遵守ガイドライン

国土交通省|発注者・受注者間における建設業法令遵守ガイドライン

軽微な建設工事に関する規定

建設業法施行令では、許可を必要としない「軽微な建設工事」の範囲が明確に定められています。
すべての工事に許可を義務付けると小規模な工事まで規制対象となり、業界の健全な成長を阻害する恐れがあるためです。

例えば、請負代金が500万円未満の工事は原則として許可が不要ですが、建築一式工事の場合は1500万円未満が基準となります。
また、延べ面積150平方メートル未満の木造住宅の解体工事も許可不要の対象です。

結果、小規模事業者や個人でも一定の範囲内で建設工事を請け負うことが可能になります。適用範囲を正しく把握することで無許可営業のリスクを回避し、適正な事業運営が可能です。

見積期間に関する規定

発注者が受注予定者に対して見積もりのために確保すべき期間が明確に定められているのも、建設業法施行令の特徴です。
受注者が工事内容を十分に精査し、適正な見積もりを作成するために必要な時間を確保することを目的とした規定です。

具体的には、工事の予定価格に応じて以下のように見積期間が設定されています。

  • 500万円未満:1日以上
  • 500万円以上5000万円未満:10日以上
  • 5,000万円以上:15日以上

ただし、特別な事情がある場合に限り、一定範囲内での短縮が認められています。
見積もりを行う側が過度に短い期間で対応を迫られることを防ぎ、公正な競争環境の維持が期待されます。

許可申請に関する規定

建設業の許可を取得する際、建設業法施行令で申請に必要な書類や手続きを詳細に定めていることも覚えておきましょう。申請時には、以下に挙げる情報を記載した書類を提出しなければなりません。

  • 経営状況や技術者に関する情報
  • 過去の施工実績

上記の情報は、申請者が建設業を適切に運営できる能力を有しているかを判断するために欠かせないものです。
建設業法施行令が許可基準を明確に定めることで、不適格な事業者を排除し、業界全体の信頼性を向上させる狙いがあります。

許可要件を満たしているかどうかは事業の継続に直結するため、申請前に十分な確認が必要です。

経営事項審査に関する規定

建設業者が公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査(経審)を受ける必要があります。
建設業法施行令では、入札における評価項目や手続きが詳細に規定されています。

経審では企業の経営状況や技術力、社会性などが総合的に評価され、得点化される仕組みです。
点数が入札参加資格の基準となるため、経審の結果は事業の展開に大きな影響を及ぼします。

技術者の配置に関する規定

建設業法施行令では、工事現場に配置すべき技術者(主任技術者や監理技術者など)の資格や配置基準が明確に定められています。
技術者の配置に関する規定は、工事の品質と安全性を確保するために不可欠です。

現場の技術者には一定の専門知識と実務経験が求められ、資格要件は施行令によって具体的に規定されています。
また、技術者の適正な配置は、建設業者が許可を維持するための重要な条件であり、違反した場合は業務停止などの行政処分を受ける可能性もあるため注意してください。

施工体制台帳に関する規定

建設業法施行令では建設工事における下請契約の透明性を確保するため、施工体制台帳の作成および保存を義務付けています。

特に特定建設業者は、一定規模以上の下請契約を締結する際、下請業者の情報や配置技術者の詳細を記載した施工体制台帳を作成し、工事完了後も一定期間保管しなければなりません。

多重下請構造における責任の所在を明確にし、不適切な下請契約や労働環境の悪化を防ぐ目的で導入されている制度です。

建設業法施行令にある歴史的背景

建設業法施行令の制定および改正の背景には、日本の建設業界が直面してきた多様な課題や社会経済の変化が深く関わっています。
ここでは、建設業法施行令の歴史を振り返り、制定当初の目的や主な改正の経緯に焦点を当てて解説します。

出典

国土交通省|建設業法の構成、変遷等

国土交通省|建設業法等の変遷と時代背景

制定の背景

建設業法施行令は建設業法(昭和24年)の施行に伴い、具体的な制度運用を定めるために制定されました。
戦後の混乱期において建設業者の急増により、過当競争によるダンピング受注や施工品質の低下が深刻な問題となっていました。

また、下請代金の未払いや不当な契約といった請負契約の不公平性も、当時挙がっていた課題のひとつです。
こうした状況を改善するため、建設業法では登録制の導入や請負契約の基本原則、主任技術者の設置義務などが規定されました。

改正の背景

建設業法施行令は、社会経済の変化や建設業界が直面する課題に対応するため、幾度となく改正が重ねられてきました。

例えば昭和46年の改正では、登録制から許可制への移行、請負契約の適正化、下請業者保護のための新規定が導入されました。
建設業界の成長に伴い、より厳格な規制が求められたためです。さらに昭和62年の改正では、以下を通じた不良業者の参入防止が図られました。

  • 特定建設業の設定
  • 技術者資格の国家資格化
  • 経営事項審査制度の整備

平成以降も、公共工事に関する不祥事への対策やWTO協定への適応、ダンピング受注の是正など、多岐にわたる課題に対応するための改正が実施されました。

近年では、建設業界の担い手不足や維持更新時代への対応が求められ、平成26年の改正では解体工事業の追加や施工体制台帳の作成義務化が盛り込まれました。
建設業法施行令は幾度の改正を通じ、建設業界の発展と工事の適正な実施を支える役割を担い続けています。

まとめ

建設業法施行令は、建設業界の適正な運営を維持するために不可欠な法令です。
軽微な工事の基準や許可申請の要件、技術者の配置基準など、業界全体に影響を及ぼす規定が定められています。

建設業法施行令の制定や改正の背景を理解することで、法令の意図や目的をより深く把握することが可能です。
建設業界は時代とともに変化し続けており、最新の法改正に適切に対応することが求められます。

本記事が建設業法施行令の理解を深め、日々の業務に役立つ知識として活用できれば幸いです。