建設業法施行規則とは?記載内容や活用場面、近年の改訂について
目次
建設業法施行規則とは、建設業法の運用を具体的に定めた詳細な規則です。
建設業許可の申請手続きや技術者の配置基準、施工体制台帳の作成要領など、実務に密接に関わる内容が網羅されています。
本記事では、以下の観点を中心に、建設業法施行規則について解説しましょう。
- 建設業法施行規則の概要
- 建設業法施行規則の主な規定内容
- 建設業法施行規則を活用すべき場面
- 建設業法施行規則における近年の改定
本記事で解説する内容を、事業運営の強化や法令遵守のための参考資料として活用していただければ幸いです。
建設業法施行規則の概要と主な規定
建設業法施行規則は、建設業法を具体的に運用するための詳細な内容を定めた重要な法令です。
許可の取得や施工体制の整備、技術者の配置に関する要件や手続きを具体的に規定しています。
以下は、建設業法施行規則に記載されている主な内容の概要です。
<許可に関する要件>
- 建設業許可の取得条件と手続きが整理されている
- たとえば「5年以上の経験者要件」の撤廃などが含まれる
<施工体制台帳に関する要件>
- 作成が義務付けられる対象となる建設業者や工事の種類をはじめ、健康保険の加入状況、工事の内容や期間、発注者情報の明記などが求められている
<技術者配置の義務>
- 大規模な工事では、監理技術者の設置が義務付けられている
- たとえば、契約金額4,500万円以上の工事など
- 公共性のある工事では、専任技術者を配置する必要がある
<その他の規定>
- 許可が不要な工事の基準(例:請負代金が500万円未満)
- 請負契約における記載内容の明確化(例:工事内容や工期の記載)
- 下請業者の保護策として、違法行為を密告した際の不利益処分を禁止する
- 施工体系図の作成と掲示が義務化されている
建設業法施行規則で定められた内容は、実務に密接に関連しています。
具体的な活用方法については、後述の「建設業法施行規則を活用すべき場面」を参考にしてください。
建設業法施行規則を活用すべき場面
建設業法施行規則を活用すべき場面は、以下のとおりです。
- 建設業許可の申請
- 現場技術者の配置
- 施工体制台帳の作成
- 請負契約の締結
- 下請契約の締結
上記の業務を遂行する際に施行規則を適切に活用することで、法令を遵守しながら建設業務を円滑に進めることが可能です。
最新の改正内容を常に確認し、実務に反映させることが重要になります。
建設業許可の申請
新たに建設業許可を取得する場合や更新を行う場合、施行規則の内容を正確に把握する必要があります。
特に注目すべきポイントは、以下のとおりです。
- 許可申請に必要な書類と手続きの詳細
- 経営業務管理責任者に関する要件
- 専任技術者の資格要件
たとえば、営業所専任技術者の資格要件が緩和され、技術検定合格者が指定学科卒業者と同等に扱われるようになりました。
現場技術者の配置
現場に技術者を配置する際は、施行規則に従い、監理技術者や主任技術者の配置基準を満たす必要があります。
監理技術者の設置が求められる契約金額や主任技術者の専任が必要となる工事の規模について、基準を正しく理解・適用することが重要です。
施工体制台帳の作成
施工体制台帳を作成するうえでは、建設業者の基本情報や工事の詳細、技術者の情報などを正確に記載することが義務付けられています。
正確な記載により事業運営の透明性が確保され、円滑な進行が実現するでしょう。
請負契約の締結
建設工事の請負契約を締結する際には、施行規則で定められた内容を契約書に明記することが必要です。
工事の具体的な内容や請負代金、工期に加え、工事を実施しない日や時間帯も契約に記載しなければなりません。
改正事項を反映することで、契約の明確化が図られます。
下請契約の締結
元請業者が下請業者と契約を結ぶうえでは、労務費相当分の現金払いを義務付ける規定や、短すぎる工期による不適切な契約の締結を防ぐ規定が重要な役割を果たします。
これらの措置によって、下請業者の保護が図られ、公平な取引環境が整備されるでしょう。
建設業法施行規則における近年の改定
ここでは、建設業法施行規則における近年の改定内容について解説します。
ここまで解説した基礎知識とあわせて、改定内容も押さえておくことが重要です。
実務経験による技術者資格要件の見直し
2023年7月1日に施行された改正により、一般建設業許可の営業所専任技術者に関する要件が緩和されました。
具体的には以下の点が変更されています。
- 技術検定合格者が指定学科卒業者と同等と認められるようになった
- 第一次検定合格後、一定期間の実務経験を積んだ者も専任技術者として認められるになった
ただし、技術者資格要件の改正が適用されるのは指定建設業(土木一式・建築一式・電気・管・鋼構造物・舗装・造園の7業種)および電気通信工事業を除く業種です。
金額要件の変更
2023年1月1日から、特定建設業許可に関連する下請代金の金額要件が以下のように引き上げられました。
<特定建設業許可を要する下請代金額の下限>
- 改正前:4,000万円(建築一式工事は6,000万円)
- 改正後:4,500万円(建築一式工事は7,000万円)
<監理技術者の配置を要する下請代金額の下限>
- 改正前:3,500万円(建築一式工事は7,000万円)
- 改正後:4,000万円(建築一式工事は8,000万円)
時間外労働の上限規制
2024年4月より、建設業法施行規則に基づき、時間外労働に対する上限規制が導入されました。働き方改革の一環として、長時間労働の是正を目的としています。
建設業は天候の影響などで工期が遅れることが多く、時間外労働が常態化していました。
しかし、改正後は以下の制限が適用されます。
- 月45時間・年360時間を超える時間外労働は禁止
- 災害復旧などの緊急事態の場合には例外規定あり
なお、上記に違反した事業所には罰則が科される可能性があるため、労働時間管理の徹底が求められています。
参照:厚生労働省|建設業・ドライバー・医師等の時間外労働の上限規制 (旧時間外労働の上限規制の適用猶予事業・業務)
建設業法・公共工事の入札と契約の適正化
建設業法施行規則の改定は、公共工事の入札や契約における適正化にも寄与しています。
具体的な改正内容として挙げられるのが、以下のとおりです。
<標準労務費の勧告>
- 中央建設業審議会が適正な労務費に関する基準を作成・勧告する権限を持つようになった
<著しく低い材料費等の見積り禁止>
- 材料費等が過度に低い金額で提示されることが禁止された
<原価割れ契約の禁止>
- 正当な理由がない限り、原価を下回る契約を結ぶことは認められない
<請負代金変更時の契約書記載義務>
- 資材高騰時の変更に対応するため、金額算定方法を契約書に明記することが義務付けられた
<誠実な協議対応義務>
- 資材高騰時には、発注者が誠実に変更協議へ対応する必要がある
まとめ
本記事では、建設業許可の申請手続きや施工体制台帳の作成方法、さらには技術者資格要件の見直しや時間外労働の上限規制など、建設業法施行規則に関連する主要なポイントについて解説しました。
建設業法施行規則は、建設業界の健全な発展と公共の安全を守るために欠かせない法規です。
今回取り上げた情報を正しく理解し、実務に反映することが重要です。
常に最新の法改正や規則を確認し、的確に事業に組み込むことで、信頼性の高い運営が可能となります。
規則の今後の動向を注視しながら、法令を遵守し、健全な事業運営を目指しましょう。