建設業従事者が覚えておくべき移動時間と労働時間の関係性

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建設業で働く方々にとって、移動時間の長さは大きな悩みの種ではないでしょうか。

移動時間に関する問題を放置すると、労働時間の増加や作業効率の低下につながり、従業員の健康や企業の生産性に悪影響を及ぼす可能性があります。

本記事では、建設業における移動時間について、以下の視点から解説します。

  • 建設業における移動時間の例
  • 建設業の移動時間が労働時間になるパターン
  • 建設業の移動時間が労働時間にならないパターン
  • 建設業における移動時間の短縮方法

本記事で解説する内容を活用することで、労働時間に関する意識改革が可能になるでしょう。

建設業における移動時間の例

移動時間が労働時間とみなされるかどうかは「指揮命令下に置かれている時間」に該当するかで判断されます。

例えば、従業員が会社に集合後、倉庫から資材を車両に積み込んでから現場へ向かう場合は、移動時間が労働時間とみなされる可能性が高いでしょう。

これは、従業員が会社の指示に従って作業をしていると解釈されるためです。

ただし、移動時間の扱いはケースバイケースで判断されます。そのため、会社は移動時間に関するルールを明確にし、従業員に周知することが重要です。

建設業の移動時間が労働時間になるのはどんな時?

上述のとおり建設業では、移動時間が労働時間として認められるかは「労働者が使用者の指揮命令下に置かれているか」が判断基準となります。具体的には、以下3つのケースで移動時間が労働時間に含まれる可能性が高くなるでしょう。

  • 所定労働時間内で移動する場合
  • 移動中に業務を行う必要がある場合
  • 移動中でも会社の指示がある場合

ここでは、建設業の移動時間が労働時間になるシチュエーションについて解説します。

所定労働時間内で移動する場合

所定労働時間内の移動は、労働時間として認められる可能性が高いでしょう。例えば、午前9時から午後6時までが所定労働時間の場合、この時間内に会社から指示を受けて現場へ移動すれば、移動時間が労働時間とみなされます。

所定労働時間が労働者の働くべき時間とされ、使用者の指揮命令下にあると考えられるためです。ただし、直行直帰が認められている場合など、状況によっては労働時間に含まれない場合もあります。

移動中に業務を行う必要がある場合

移動中でも、会社の業務を行う必要がある場合は労働時間に含まれます。例えば、現場へ向かう車中でパソコンを使って見積書を作成する場合や、他の従業員を乗せて運転する場合などが該当します。

これらは明らかに業務の一環であり、使用者の指揮命令下にあると判断されるためです。ただし、単に移動するだけの時間は、原則として労働時間には含まれません。

移動中でも会社の指示がある場合

移動中に会社からの指示があり、かつ従わなければならない状況であれば「手待ち時間」として労働時間にカウントされます。労働者が常に使用者の指揮命令下にあると判断されるためです。

例えば、現場へ向かう途中で会社から電話で指示を受ける可能性がある場合などが該当します。ただし、単に連絡が入る可能性があるだけでは不十分であるため、あくまで実際に指示を受ける状況であることが前提です。

建設業の移動時間が労働時間にならないパターン

建設業において移動時間が労働時間としてみなされないパターンは、以下のとおりです。

  • 社員の自主性による集合・移動
  • 直行直帰
  • 移動中の自由時間

また、当日の作業内容が前日までに決まっており、会社に立ち寄って指示を受ける必要がない場合は、移動時間は労働時間とはみなされにくいでしょう。

社員の自主性による集合・移動

会社の指示ではなく、社員同士の話し合いで集合時間や移動手段を決めている場合は通勤時間とみなされ、労働時間にはなりません。例えば、現場へ向かう際に同僚と自主的に相乗りすることを決めた場合が該当します。

この場合、社用車を使用していても、会社からの指示がない限り労働時間とはみなされません。ただし、会社が暗黙のうちに集合を強制しているような場合は、労働時間として認められる可能性があります。

直行直帰

会社を経由せず、自宅から現場へ直接向かい、作業終了後も直接帰宅する場合も、移動時間は労働時間とはみなされません。直行直帰の場合は、移動時間が通常の通勤と同様に扱われるためです。

例えば、前日に次の日の作業内容と現場が決まっており、朝に会社に立ち寄る必要がない場合が該当します。ただし、直行直帰の途中で会社の指示を受ける必要がある場合は、状況によって労働時間とみなされる可能性があります。

移動中の自由時間

移動時間中に読書やスマートフォンの使用など、自由に時間を使える場合は、労働時間とはみなされません。なぜなら、使用者の指揮命令下にないと判断されるためです。

また、会社からの連絡があってもすぐに対応する必要はなく、現場到着後に確認すればよい場合の移動時間も、労働時間とはみなされません。ただし、常に連絡に備えていなければならない状況では、労働時間として認められる可能性があります。

建設業における移動時間の短縮方法

建設業における移動時間の短縮方法には、以下のようなものがあります。

  • 効率的な現場配置
  • モバイル技術の活用
  • 遠隔会議システムの導入
  • 資材の事前準備と効率的な配送

上記の方法を組み合わせることで、建設業における移動時間を効果的に短縮し、労働時間の適正化につなげられます。

効率的な現場配置

作業員を居住地に近い現場に配置することで、通勤時間を大幅に短縮できます。これにより、例えば片道1時間以上かかっていた通勤時間が30分程度に短縮される可能性があります。

ただし、技術や経験に応じた適切な配置も考慮しなければなりません。

モバイル技術の活用

タブレットやスマートフォンを使用して現場で直接報告や記録を行うことで、事務所への移動時間を削減できます。日報や進捗報告をモバイルアプリで行えば、毎日事務所に戻る必要がなくなるでしょう。

モバイル技術の活用により、1日あたり30分から1時間程度の移動時間を削減できる可能性があります。ただし、データのセキュリティには十分な注意が必要です。

遠隔会議システムの導入

一部の打ち合わせをオンラインで行うことで、移動時間を大幅に削減できます。

ただし、現場の状況を直接確認する必要がある場合は、対面での打ち合わせも適宜実施する必要があります。

資材の事前準備と効率的な配送

必要な資材を事前に準備し、効率的に配送することで、資材を取りに行く時間を削減できます。

なお、効率化のみを重視し、資材の保管場所や管理方法が疎かにならないよう注意してください。

まとめ

建設業における移動時間の扱いは、労働時間管理の重要な課題です。移動時間が労働時間とみなされるかどうかは、使用者の指揮命令下にあるかが判断基準となります。

労働時間と認められるケースには、所定労働時間内の移動や業務遂行中の移動などがあります。一方で、直行直帰や自主的な集合・移動の場合は労働時間とみなされにくいでしょう。

移動時間を短縮するには、効率的な現場配置やモバイル技術の活用、遠隔会議システムの導入などが効果的です。これらの方法を適切に組み合わせることで、労働時間の適正化と業務効率の向上が期待できるでしょう。