建設業法令遵守ガイドラインとは?項目別の記載内容について

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目次

建設業法令遵守ガイドラインは、建設業法をはじめとする関連法規を正しく理解し、適切に活用することで円滑な事業運営を実現するために策定された指針です。

本記事では、建設業法令遵守ガイドラインに関する以下のポイントを掘り下げていきます。

  • 建設業法令遵守ガイドラインの概要
  • 建設業法令遵守ガイドラインの対象者
  • 建設業法令遵守ガイドラインが重要な理由
  • 建設業法令遵守ガイドラインの記載内容

本記事を通じて、建設業法令遵守ガイドラインの重要性を理解し、安全かつ適正な事業運営にお役立ていただければ幸いです。

建設業法令遵守ガイドラインとは

建設業法令遵守ガイドラインは、国土交通省が策定した指針です。
建設業法を基盤として元請負人と下請負人の公正な取引を推進し、業界全体の健全な発展を図ることを目的としています。

建設業法令遵守ガイドラインは、建設業法や関連法令の適用事例を具体的に示し、法令違反の未然防止を支援する役割も担っています。
建設業に携わる事業者は、建設業法令遵守ガイドラインを活用しながら法令を正しく遵守し、適正かつ持続可能な事業運営を実践することが求められるのです。

出典:国土交通省|建設業法令遵守ガイドライン

建設業法令遵守ガイドラインの対象者

建設業法令遵守ガイドラインは、建設業に携わるすべての事業者を対象としています。
元請負人に限らず、下請負人も含まれます。
つまり、発注者から直接工事を請け負う元請業者だけでなく、下請契約に基づき業務を遂行するすべての建設業者が遵守しなければならないのです。

建設業法令遵守ガイドラインは建設業法を基盤とし、公正な取引の促進と業界全体の健全な発展を目的としています。
そのため、法令遵守の徹底が業界全体に求められており、各事業者が正しく把握し、業務に反映させることが重要です。

建設業法令遵守ガイドラインが重要な理由

建設業法令遵守ガイドラインを正しく理解することで法令違反の防止につながり、健全な事業運営が可能となります。

ここでは、建設業法令遵守ガイドラインの重要性について、具体的なポイントごとに解説していきます。

下請契約における法令遵守の徹底

建設業では、元請業者と下請業者の間で契約を結ぶことが一般的です。
建設業法令遵守ガイドラインでは下請契約に関する重要なポイントとして、以下の項目について具体例を交えながら解説されています。

  • 見積条件の提示
  • 書面での契約締結
  • 適切な工期設定
  • 不当に低い請負代金の禁止

元請業者が下請業者に対して不当な要求を行うことを防ぎ、両者が対等な関係を築くことが可能です。

例えば元請業者が下請業者に対し、一方的に短い工期を強要したり、適正価格を大きく下回る金額で契約を迫ったりする行為は建設業法違反となる可能性があります。
建設業法令遵守ガイドラインを正しく理解し適用することで、違法行為を未然に防止できるのです。

発注者と受注者の対等な関係構築

建設工事の契約は、発注者と受注者の間でも締結されます。
建設業法令遵守ガイドラインは法律の知識不足による法令違反を防ぎ、発注者と受注者が対等な関係を築きながら公正で透明な取引を実現するのが目的の制度です。

発注者は建設業者に対して不当な要求を行わず、適正な契約条件を設定する責任を負います。
例えば、極端に短い工期を指定したり、適正価格を大幅に下回る金額で発注したりする行為は、建設業法違反となる可能性があります。
建設業法令遵守ガイドラインを理解し遵守することにより、発注者も適正な取引を行い、法令に則った事業運営を実現できます。

時間外労働上限規制への対応

2024年4月1日より、建設業にも時間外労働の上限規制が適用されることになりました。
結果、長時間労働の是正や働き方改革への取り組みが建設業者に求められています。

建設業法令遵守ガイドラインでは適正な工期設定の重要性が強調されており、無理な工期が長時間労働や手抜き工事を引き起こすリスクがあることを指摘しています。
適正な工期の確保は、労働者の健康維持や工事品質の向上にも直結するため、建設業者にとって不可欠な要素です。

建設業法令遵守ガイドラインを活用しながら、労働時間の適正管理を徹底し、働きやすい職場環境を整えることが求められます。

トラブルの未然防止と迅速な解決

建設業の取引では、契約内容や支払いに関するトラブルが発生することがあります。
建設業法令遵守ガイドラインでは、契約締結時の注意点や契約変更時の手続き、下請代金の支払い方法などを具体的な事例を交えて解説しています。

さらに、トラブルが発生した際の相談窓口も紹介されており、活用することでトラブルの未然防止や迅速な解決につなげることが可能です。
例えば、工事のやり直しに伴う費用負担や下請代金の支払い遅延への対応方法など、実際のケースを参考にすることで適切な対処ができるようになります。

建設業全体の健全な発展

建設業法令遵守ガイドラインは個々の建設業者の指針であると同時に、建設業界全体の健全な発展を促すことを目的としています。
遵守することで、不当な取引や不正行為が減少し、公正かつ透明性の高い業界環境の実現が期待されます。

また、建設業者の社会的信頼が向上することで優秀な人材が集まりやすくなり、業界全体の活性化につながると考えられるでしょう。
各建設業者が建設業法令遵守ガイドラインを参考に法令遵守を徹底し、適正な事業運営を行うことこそが、建設業界の持続的な発展に欠かせない要素と言えるでしょう。

建設業法令遵守ガイドラインの記載内容

建設業法令遵守ガイドラインは元請負人と下請負人の関係に重点を置き、具体的な事例を交えながら、遵守すべきポイントを詳しく解説しています。

ここでは、建設業法令遵守ガイドラインで特に重要な記載項目について説明しましょう。

見積条件の明確化と適切な期間設定

建設業法令遵守ガイドラインでは見積条件の提示に関して、元請負人が下請契約を締結する際、以下の情報を適切に提供することの重要性を強調しています。

  • 工事内容
  • 工期
  • 責任範囲

曖昧な見積条件の提示や必要な情報の提供を怠る行為は、建設業法違反に該当する可能性があります。

また、元請負人は下請負人に見積もりを提出させる際、発注予定価格に応じた十分な見積期間を確保しなければなりません。

  • 予定価格500万円未満:1日以上
  • 予定価格500万円以上、5000万円未満:10日以上
  • 予定価格5,000万円以上:15日以上

上記の適切な期間設定により、下請負人は十分な時間を確保し、正確な見積もりを作成できるため、不当な契約を未然に防ぐことが可能となります。

書面による契約締結と重要事項の記載

建設業法令遵守ガイドラインでは、書面による契約締結の重要性も強調されています。
建設工事の請負契約は工事の着工前に必ず書面で交わす必要があり、口頭のみでの契約は建設業法により禁止されています。

契約書には、工事内容・請負代金・工期・支払い条件など、建設業法で定められた16項目をすべて記載しなければなりません。
また、当初の契約内容に変更が生じた場合には、追加・変更工事に関する変更契約を締結することが求められています。

契約を適切に書面化することで元請負人と下請負人の間で認識のずれが生じるのを防ぎ、トラブルの未然防止につながります。

さらに、建設リサイクル法の対象となる工事では、分別解体の方法などの項目を追加で記載する必要があるため、より慎重な契約管理が必要になるでしょう。

工期設定の適正化と不当な行為の禁止

適正な工期設定の重要性について明確に示されているのも、建設業法令遵守ガイドラインの特徴です。
元請負人は極端に短い工期を強いることなく、時間外労働規制を考慮した適切な工期を設定しなければなりません。
不合理な工期設定は下請負人の長時間労働を招き、手抜き工事や労働災害のリスクを高めるため、十分な配慮が求められます。

さらに建設業法令遵守ガイドラインでは、不当に低い請負代金の強要や一方的な契約変更を禁止しています。
建設業法に違反するだけでなく、下請け業者の経営を圧迫し、業界全体の健全な発展を妨げる要因となるためです。

また、下請負人の責任によらない理由で工期が変更になった場合、元請負人は下請負人に対して必要な費用を適切に負担する必要があります。

下請代金の支払いと建設副産物の取り扱い

建設業法令遵守ガイドラインでは、下請代金の支払いに関する規定も細かく定められており、可能な限り現金での支払いが求められています。
特に、労務費に相当する部分は現金払いが義務付けられており、支払いの不当な遅延も禁止されています。

また、建設副産物の取り扱いについても明確に示されており、元請負人は運搬や処理にかかる費用を下請負人に不当に負担させることは許されません。

建設副産物の処理については、資源有効利用促進法に基づき、再生資源としての活用が推奨されています。
特に公共工事では、指定利用が原則として義務付けられています。

安全衛生対策と帳簿の保存義務

建設業法令遵守ガイドラインにおいては、安全衛生対策の重要性についても触れられています。
元請負人は下請負人と連携し、労働災害を防ぐための対策を講じることが求められています。
その際、費用負担の取り決めを明確にすることも必要です。

また、建設業者には営業に関する帳簿の備え付けと一定期間の保存義務があります。
特に、元請業者として工事を請け負った場合、営業に関する図書を10年間保管することが義務付けられています。

適切に履行することで法令違反のリスクを回避し、健全な事業運営を維持することにつながるのです。

まとめ

本記事では、建設業法令遵守ガイドラインの概要や対象者について解説し、重要性を詳しく見てきました。
下請契約や発注者との関係、時間外労働の上限規制への対応など、実務に直結する要素が多く含まれていることがわかります。

建設業法令遵守ガイドラインを正しく理解し適用することで、紛争の未然防止や作業環境の改善につながり、建設業全体の公正かつ健全な発展が期待できるでしょう。
今後も法令やルールの改正が行われる可能性があるため、最新の情報を常に把握し、法令遵守を徹底する姿勢が求められます。