建設業における経営管理責任者の要件|重要視される理由や変更点

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目次

建設業界では、経営管理責任者の役割が極めて重要視されています。法的基準を満たすだけでなく、企業の健全な運営や外部への責任を果たし、経営の安定と持続可能性を確保するために欠かせない存在です。

本記事では、建設業における経営管理責任者について、以下の視点から解説します。

  • 建設業における「経営管理責任者」定義
  • 建設業で経営管理責任者が重要とされる理由
  • 建設業における経営管理責任者の具体的な要件

さらに、要件緩和の背景や業界に及ぼす影響についても触れているので、最後までご覧いただければ幸いです。

建設業の「経営管理責任者」とは

建設業界における経営管理責任者は、企業の営業活動や取引全般における外部との交渉を担当し、経営業務を総合的に管理する役職です。許可申請の書類では「常勤役員等」という名称で表記されています。

建設業の許可を得るためには、主要な営業所に常勤する経営管理責任者が不可欠です。建設業における取引は多額の資金を伴うため、適切な経営体制が整っていることが重要です。

なお、経営管理責任者がいない状況では許可を取得できません。そのため、十分な経営経験を持つ人材を常勤として配置し、健全な経営基盤を維持することが求められています。

建設業で経営管理責任者が重要視される理由

建設業において経営業務の管理責任者が重要視される理由は、以下のとおりです。

  • 法的要件
  • 経営の適正性の確保
  • 対外的責任の重視
  • 経営の安定性の確保
  • 法令遵守の徹底

建設業は社会基盤を支える産業であり、資金のかかる大規模工事や人命に関わる作業も多くなります。こうした責任の重さから、経営の透明性と安全性が求められ、管理責任者が不可欠となるのです。

法的要件

経営管理責任者は、建設業許可の取得および維持において欠かせない役職です。法律に基づき、主要な営業所に常勤することが義務付けられており、適切な経営体制を確保するために必要な存在として位置づけられています。

これにより、建設業者としての信頼性と資格が保証されます。

経営の適正性の確保

経営管理責任者は、建設業の経営業務を包括的に管理・運営した実績が求められます。適切な業務管理ができる人材を配置することで、業界全体の健全性が保たれます。

また、不適切な業者の排除にもつながり、業界の信頼性を高める役割を果たすのです。

対外的責任の重視

経営管理責任者は、取引に関する全ての対外的な責任を担っています。契約の締結や意思決定、トラブル対応などで責任ある対応が求められ、建設業者の信頼性と取引先との交渉力を向上させます。

経営の安定性の確保

経営管理責任者には、例えば5年以上の経営業務の経験など、一定のキャリアが求められます。長期的な視野を持った経営判断や、業界に精通した人材が配置されることが期待されているためです。

結果、建設業の安定性や持続可能な経営の実現につながります。

法令遵守の徹底

経営管理責任者の要件には、不正や不誠実な行為を行う人物の排除という側面も含まれています。建設業における法令遵守が強化され、反社会的勢力との関係遮断や、労務管理の適正化、環境保護への対応が徹底されます。

法令を順守し、社会的責任を果たすことが業界全体の信頼性向上にも寄与するでしょう。

建設業における経営管理責任者の要件

ここでは、建設業における経営管理責任者の要件について、以下の視点から解説します。

  • 経験年数による要件
  • 経験年数と補佐役による要件
  • 経営管理責任者に関する注意点

なお、国土交通大臣が個別の申請に基づき、上記と同等以上の経営体制を有すると認めた場合も、経営業務の管理責任者として認められます。

上記の要件を満たしていることを証明するには、健康保険被保険者証・登記簿謄本・確定申告書・請負契約書などの書類が必要です。

経験年数による要件

経営管理責任者になるための経験年数に関しては、3つの主要な条件が存在します。まず、建設業の経営者として5年以上の実務経験があることです。法人なら常勤役員、個人事業主なら本人が該当します。

次に、執行役員などの立場で、建設業の経営を5年以上総合的に管理した経験が必要です。こちらの場合、取締役会からの具体的な権限委譲が必要とされます。最後に、経営者補佐として6年以上の経験が求められます。

経験年数と補佐役による要件

経験年数と補佐役による要件には、常勤役員等の経験と補佐役の配置も含まれます。常勤役員等は、2つの条件のうちいずれかを満たす必要があります。1つ目は、建設業での2年以上の役員経験に加え、5年以上の役員や次席職の経験です。2つ目には、5年以上の役員経験に加え、建設業で2年以上の役員経験を持つことが挙げられます。

さらに、財務・労務・業務運営において、5年以上の経験者を補佐役として配置することが必須です。

経営管理責任者に関する注意点

経営管理責任者には、いくつかの重要な注意点があります。まず、常勤性の要件です。基本的に、主要な営業所に常駐し、定められた時間に勤務することが必要とされます。仮に住所が遠い場合でも、通勤定期券などの証拠を提出し、常駐の証明が必要となります。

また、兼任の制限も課されており、他社の経営管理責任者や専任の必要がある職との兼任はできません。ただし、専任技術者との兼任は認められています。さらに、経営管理責任者が不在となった場合には、許可が取り消されるリスクがあるため、後任者の確保が重要です。

建設業の経営管理責任者の要件緩和について

2020年10月1日の法改正により、建設業の経営管理責任者に求められる条件が緩和されました。改正の背景には、業界が抱えていた新規参入の難しさや、許可取得企業における人材不足、特に経営管理責任者の確保の難しさが挙げられます。

要件の見直しにより、これらの課題の解消が期待され、業界全体に活力がもたらされる可能性が高まっています。従来は個人の経営能力に依存していた条件が、今後は組織として適切な経営体制を整えることで充足できるようになり、より多くの企業が条件を満たせるようになりました。

主な変更点

2020年10月1日の改正では、2つの重要な変更が行われました。1つ目は、新たに設けられた要件緩和の基準です。常勤役員のうち1名が一定の条件を満たす場合、役員を補佐する形で、財務管理や労務管理、業務運営の実務経験を5年以上持つ者を配置することが求められ、経営管理責任者の条件が満たせるようになりました。2つ目は、建設業経験の範囲が広がった点です。

これまでは特定の業種に関する経験が必要とされていましたが、今後は建設業全般に関わる経験が認められるようになり、多くの企業がこの条件を満たしやすくなりました。

要件緩和の意義

経営管理責任者の要件緩和には、新規参入の促進と人材不足の解消という2つの意義があります。まず、新規参入の障壁が下がることで、異業種からの参入が活発化し、新しい技術や視点が業界にもたらされることが期待されています。

また、経営管理責任者の確保が難しかった問題に対して、条件を満たす企業の増加が人材不足の解消に寄与することが考えられるでしょう。結果、建設業界全体の成長と持続的な発展が期待されているのです。

まとめ

建設業界では、経営管理責任者が法令遵守と経営の適正性を確保するために、重要な役割を果たしています。かつては経験年数や補佐役の配置が要件として定められていましたが、近年の要件緩和により、より幅広い人材の登用が可能になりました。

これに伴い、人手不足や高齢化といった課題にも対応しやすくなっています。経営管理責任者の役割と要件を正しく理解し、適切な人材を配置することが、建設業の持続的な成長と健全な経営に貢献する要素となるでしょう。