工事・通勤車両届とは?作成時の注意点や書き方のポイントを解説

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日々多くの工事車両や関係者が出入りする工事現場では、安全かつ工程通りに工事を進めるためにも出入りする車両の把握が欠かせません。

万が一、会社から現場への通勤中に事故が起きた場合、責任の所在を明らかにする必要があります。

そこで、工事車両の運転や会社から現場への通勤で自家用車を使用する場合は、元請け業者に対して「工事・通勤車両届」の提出が義務付けられています。

この記事では、工事・通勤車両届の書き方と注意すべきポイントを詳しく解説します。

工事・通勤車両届とは

「工事・通勤用車両届」とは、工事現場に入る車両と会社から現場への通勤で使用する車両を管理するための安全書類のことです。

車両を管理する目的は、現場での作業中や通勤途中に事故や災害に見舞われた場合に、責任の所在を明らかにするためです。

工事は元請けと下請けの複数社が協力しており、車両1台が遅れただけでも工事全体の遅れにつながり、関係各社に影響が及びます。

そのため、工事車両と会社から現場への通勤車両は、例外なく届出を提出する必要があるのです。

それぞれの届け出を簡単に説明すると以下のとおりです。

  • 工事用車両届……クレーン車や生コン車などの工事現場で使用する車両1台ごとに提出
  • 通勤車両届……会社から現場への通勤で使用する車両を管理するために提出

対象となる車両が違うだけであり、入力する項目に違いはありません。

そのため、一般的には工事・通勤車両届として、1つのフォーマットでまとめられています。

工事・通勤車両届作成時の注意点は?

工事・通勤車両届を作成する際には、以下4つのポイントに注意してください。

  • 車両を所有するすべての会社が作成する必要がある
  • 1台ごとに提出が必要
  • 任意保険の証明書のコピーを添付が必要
  • 運転者が変わった場合にはその都度提出

1つずつ解説していきます。

車両を所有するすべての会社が作成する必要がある

前提として、工事・通勤用車両届は、車両を所有するすべての会社が作成する必要があります。

会社から現場までの通勤だけで、工事車両を使わない場合でも必須です。

1台ごとに提出が必要

工事・通勤用車両届は、車両1台につき1枚を作成します。

ただし、元請けが指定するフォーマットによっては複数台を1枚に記載できるものもあるため、届出の様式に合わせるようにしましょう。

任意保険の証明書のコピーを添付が必要

そして少し手間ではありますが、工事車両・通勤車両どちらの場合でも、「任意保険の証明書のコピー」を添付する必要があります。

元請けによっては、運転免許証や車検証のコピーを求めるケースもあるため、その都度柔軟に対応しましょう。

運転者が変わった場合にはその都度提出

最後の注意点は、車両が同じでも運転手が変われば再度届け出が必要ということです。

運転者本人は変わっていなくても、引越し等で住所変更があった場合も同様に再提出をします。

工事・通勤車両届(全建統一様式8号)に必要な項目と書き方

ここからは、工事・通勤車両届に必要な項目と書き方について解説します。

また、元請けやゼネコンによって様式が異なる場合がありますが、記載する内容は概ね共通しているため、この記事の解説を参考にすれば問題なく作成できます。

それでは各項目について説明していきます。

まずは、「工事」なのか「通勤」なのか、どちらか該当するほうを選択してください。

①事業所の名称

事業所の名称とは、工事する現場のことであり、作業所名や工事名称を記載します。具体的には、以下のような表記です。

  • 〇〇作業所
  • △△様邸新築工事
  • ⬜︎⬜︎ビル解体工事

②所長名

所長名は、元請け業者の現場代理人を指します。二次請け以降の業者は、一次請けや二次請けなど直接請け負っている会社と間違わないように注意しましょう。

③一次会社名

工事・通勤用車両届を提出する一次請け企業の名前を記載します。会社名の代わりに、現場代理人の名前を記載することも可能です。

④使用会社名

自社名の記入欄です。会社名の左側には、何次請けに該当するのかを記載する欄があるので忘れずに記載します。

⑤現場代理人(現場責任者)

自社の現場代理人または現場責任者の名前を記載します。所長名の欄では元請け業者の現場代理人を記載するので、それぞれ書き間違いをしないようにしましょう。

⑥日付記入部分

右上の日付記入部分には、本届出の「提出日」を記載します。書類を作成した日ではないので気をつけましょう。

欄内部分の項目と書き方

欄内部分には、使用する車両や運転者、保険の情報などを記載します。あらかじめ、車検証や自賠責保険の書類を手元に用意しておくとスムーズに作成できます。

⑦使用期間

使用期間には、該当する車両が現場入りする期間を記載します。工事の進み具合や天候によって、使用期間が前後するケースは珍しくありません。しかし、届出への記載は、工程表を基に使用予定の期間を記載しましょう。

⑧所有者氏名

該当車両の所有者名を記載します。個人で所有している場合は個人名を、会社で所有している場合は「社有車」と記載します。

⑨安全運転管理者氏名

この欄には、安全運転管理者として届出している従業員の名前を記載します。

安全運転管理者とは、車両運転における安全確保に必要な業務(酒気帯びの確認や免許証を携帯しているかの確認、安全運転の指導など)をおこなう人のことです。

本来であれば、企業が責任者となり安全確認をすべきところを、代わりに安全運転管理者を選任して業務を任せます。

ただし、安全運転管理者は必ず必要なわけではなく、現場で使用する車両台数によって選任の有無が変わります。安全運転管理者が必要となる台数は、以下の通りです。

  • 乗車定員11人以上の自動車1台
  • 乗車定員10人以下の自動車5台以上

※大型または自動二輪車は、それぞれ1台を自動車0.5台で計算する

※20台以上40台未満の場合は副安全運転管理者を1人、40台以上では20台増すごとに副安全運転管理者を1人選任する必要がある

上記のどちらか一つでも満たす場合は、安全運転管理者を選任する必要があります。また、安全運転管理者は以下の要件を満たした人でなければなりません。

  • 20歳以上(副安全運転管理者がいる場合は30歳以上)
  • 自動車の運転管理に関して2年以上の実務経験を有している
  • 過去2年以内に都道府県公安委員会から安全運転管理者としての解任命令を受けていない

自動車運転に関する違反行為をした場合に、違反から2年以上が経過している(該当する違反は「安全運転管理者制度」にて定められています。)

安全運転管理者を選任した場合は、選任から15日以内に、本社または支社の所在地を所轄する警察署を経由して公安委員会に届ける必要があります。

より詳しい内容は、警察庁の「安全運転管理者制度」をご確認ください。

⑩車両

車両の欄には、該当する車両の情報を記載します。

型式は「マイクロバス」や「小型トラック(2t)」といった書き方をします。車両番号は「世田谷599 あ 0001 」のように、地名から全て記載してください。

車検期間は、車検証に記載された期間を記載します。

⑪運転者

運転者情報は、運転免許証の情報を元に記載します。

免許証番号は12桁の数字が並ぶため、記載する際は記入漏れやミスが起こらないように気をつけて、確認もおこないましょう。

⑫自賠責

自賠責の欄は「自動車損害賠償責任保険証明書」を確認しながら、保険会社名・証券番号・保険期間を記載します。

⑬任意保険

任意保険の欄も自賠責と同じように、保険証券を準備し、書き間違いが起こらないように記載します。自賠責保険の記載と異なるのは、対人賠償・対物賠償・搭乗者の障害に対する限度額を記載する点です。

また任意保険の証明書は、コピーを本届出と一緒に提出する必要があるので忘れないようにしましょう。

⑭運行経路

運行経路では、出発地から現場まで、どのような道順を通ったかを記載します。以下のように、簡単に要所を記載しましょう。

【自:会社(世田谷)〜経由:三軒茶屋 〜経由:表参道 至:国立競技場】

元請け業者によっては、より詳細な運行経路図の提出を希望する場合があります。もしも、届出期間中に住所が変わった場合は、あらためて届出書を提出する必要があるため注意しましょう。

工事・通勤車両届の作成後にやるべきこと

工事・通勤車両届を作成したあとは、元請け業者へ提出します。

基本的には一次請け業者が二次請け以降の業者の届出を回収し、まとめて元請け業者へ提出します。

しかし、二次請け以降の業者も、一次請け業者を通さずに直接元請け業者に提出する場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

工事・通勤車両届は安全書類(グリーンファイル)の一部

安全書類(グリーンファイル)とは、工事現場の安全管理に必要な書類の総称のことで、工事・通勤車両届も該当します。

工事開始前には、下請け業者から元請け業者に対して、必要な安全書類を提出する必要があります。

安全書類(グリーンファイル)を提出する目的は、工事内容や作業員の体制、下請け企業の状態などを元請け業者が把握するためです。

工事・通勤車両届を含めた安全書類があることで、現場の安全確保と事故が起きた際に責任の所在を明確化できます。

安全書類には労務・安全や人員、施工体制などさまざまな種類があります。

一例としては以下の書類です。

  • 作業員名簿
  • 火気使用届
  • 工事安全衛生計画書
  • 持込機械等(電気工具/電気溶接機等)使用届
  • 施工体制台帳

工事・通勤車両届は、安全書類のなかでも労務・安全関係に該当します。

まとめ

工事・通勤車両届の作成は特別難しいわけではありませんが、初めて作成する人にとっては戸惑う箇所もあります。

事業所の名称や所長名は、記載すべき内容がわかっていないと間違えやすい部分でもあります。

また、書類と合わせて、任意保険の保険証のコピーを提出する必要があるため忘れないようにしましょう。

工事・通勤車両届は、万が一の事故が発生した際に運転者や使用者を守る重要な書類ですので、間違いのない作成を心がけましょう。