施工体系図とは?下請けとの関連性や書き方、入手先について
目次
建設業界では、数多くの業者や職人が協力してプロジェクトを進行します。その中で重要な役割を果たすのが「施工体系図」です。施工体系図は、施工現場における組織体制や各業者の役割を明確に示し、プロジェクトの円滑な進行を支える基盤となります。
本記事では、施工体系図の基本的な概念から必要性、保管期間や掲示義務について解説します。また、施工体系図に関する、以下についてもまとめています。
- 施工体制台帳との違い
- 下請け業者との関連性
- 記載項目と書き方
- テンプレートの入手先
なお施工体系図は、発注者の依頼を受けた建設業者(元請業者)が作成するものであることも、覚えておきましょう。
施工体系図とは
施工体系図とは、施工体制台帳・再下請負通知書の情報をベースに、工事に関係する人材の施工分担関係をまとめた書類のことです。
- 施工体系図の必要性
- 施工体系図の作成義務と保管期間
- 施工体系図の掲示義務
- 施工体制台帳との違い
ここでは、施工体系図について、上記の視点から解説します。
施工体系図の必要性
建設プロジェクトにおいて、施工体系図は円滑な施工と安全性の向上に不可欠なツールです。関係者全員が施工分担を一目で把握できるため、役割と責任の明確化に役立ち、コミュニケーションの円滑化や情報共有の促進にもつながります。
また、施工体系図の作成と掲示は法令で義務付けられている場合があり、これを遵守することで法的要件を満たすだけでなく、施工体制を可視化し、工事の透明性を高めることができます。透明性の向上は、悪質な業者の参入防止や建設業法違反の未然防止にもつながるでしょう。
さらに、施工体系図によって施工体制が明確化されることで、施工中のトラブルを未然に防ぎ、工事の品質と安全性を向上させられます。
このように、施工体系図は施工の円滑化、法令遵守、透明性の向上、施工品質・安全性の向上、プロジェクト全体の円滑な推進など、様々なメリットをもたらすことから、建設プロジェクトにおいて不可欠なツールと言えるでしょう。
施工体系図の作成義務と保管期間
施工体系図は、民間工事・公共工事いずれの場合にも作成義務がある書類です。
民間工事では、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が、下請契約の総額が4,000万円以上(建築一式工事の場合は6,000万円以上)になる場合に作成が義務付けられています。
公共工事では、2015年4月1日以降に公共工事発注者から直接建設工事を請け負った建設業者が下請契約を締結した場合、金額にかかわらず施工体系図の作成が必要です。
なお、国土交通省のデータによると、施工体系図は工事が完了してから10年間の保管が義務付けられているようです。
情報引用:国土交通省|施工体制台帳等の作成義務
施工体系図の掲示義務
施工体系図には掲示義務があり、民間工事と公共工事で掲示場所が異なります。民間工事では工事関係者が見やすい場所に、公共工事では工事関係者および公衆が見やすい場所に掲示する必要があります。
施工体系図は建設業法に基づき、特定の条件下における作成と掲示が義務付けられていることも覚えておきましょう。例えば、発注者から直接建設工事を請け負った特定建設業者が下請金額の総額が一定額以上となる場合に適用されます。
施工体系図には、元請業者と下請業者の建設業許可証の情報や各下請負人の施工分担関係が記載されます。
施工体制台帳との違い
施工体系図と施工体制台帳は、どちらも建設工事において施工体制を明確化するために必要不可欠な書類ですが、以下のような違いがあります。
<目的>
- 施工体制台帳:工事に関わる全ての業者名、施工範囲、技術者氏名などを詳細に記録し、元請業者が現場の施工体制を把握するための資料
- 施工体系図:施工分担関係を視覚的に表し、関係者全員が施工体制を理解するための資料
<内容>
- 施工体制台帳:発注者名、工事名、元請業者名、下請業者名、施工範囲、技術者氏名、資格、工期など(下請業者数が多い場合は、階層構造で整理することも可能)
- 施工体系図:元請業者を頂点とした樹形図形式で、下請業者を階層的に表示
<形式>
- 施工体制台帳:詳細な情報を含む文書形式
- 施工体系図:図表形式
<掲示・保管>
- 施工体制台帳:現場に備え置き(公共工事の場合は、写しを発注者に提出)
- 施工体系図:工事現場の見やすい場所に掲示(公共工事の場合は、公衆でも見やすい場所に掲)
<詳細度>
- 施工体制台帳:より詳細な情報を含み、下請業者数が多い場合でも分かりやすく管理できる
- 施工体系図:簡潔で視覚的な情報を提供し、関係者全員が容易に理解できるようにする
<作成順序>
- 施工体制台帳:施工体系図を作成する前に作成する
- 施工体系図:施工体制台帳に基づいて作成する
両書類とも、建設工事の円滑な施工と安全性の向上に不可欠です。
施工体制台帳は、情報管理に重点を置き、詳細な記録を必要とする場合に適しています。施工体系図は、関係者全員が施工体制を迅速かつ簡単に理解できるよう、視覚的に情報を表現するのに適した書類です。
施工体系図と下請けの関係性
施工体系図は元請業者が作成すべき書類ですが、下請け業者との関係性はどのようになっているのでしょうか。ここでは、下請けがない場合における施工体系図の必要性や、施工体制台帳に記載すべき下請けの情報について解説します。
下請けがない場合に施工体系図は必要か
下請けがない場合、施工体系図は必要ありません。施工体系図は元請業者と下請業者の施工分担関係を明確にするために作成されるもので、下請けがいない場合はこの目的が該当しないためです。
建設業法でも、下請契約を締結した場合にのみ施工体制台帳と施工体系図の作成が義務付けられています。
実務上も、複数の業者が関わる工事の全体像を把握するためのツールである施工体系図は、単独の業者のみで工事を行う場合には必要ありません。
施工体制台帳にはどこまでの下請けを記載すべきか
施工体系図は施工体制台帳をよりシンプルにしたものであるため、念のため施工体制台帳における下請けの記載内容についても把握しておきましょう。
施工体制台帳には、すべての下請業者を記載する必要があります。具体的には、元請業者(特定建設業者)から一次下請業者、二次下請業者、三次下請業者と最終の下請業者まですべて記載します。
なお、施工体制台帳に記載すべき下請けについては、国土交通省の「施工体制台帳記載の下請負人の範囲」で把握することが可能です。
施工体系図の記載項目と書き方
施工体系図には、以下の項目を記載することが一般的です。
- 工事名:プロジェクトの正式名称を記載する
- 工事場所:現場の所在地を明記する
- 発注者:発注者の名前や連絡先を記載する
- 元請業者:元請業者の情報を詳細に記載する
- 下請業者:関与する下請業者全てを一覧で示す
- 役職名:各業者内の担当者の役職名を記載する
- 役割分担:各業者の具体的な役割や担当範囲を明確にする
書き方としては、図式化して視覚的に分かりやすくすることが重要です。各業者をボックスで示し、矢印や線で関係性を示すことで、全体の組織体制を一目で理解できるようにします。
例えば、発注者から元請業者、さらにその下請け業者へと続く関係性を示すことで、誰がどの部分を担当しているのかが明確になります。
施工体系図の作成には、専門的なソフトウェアを使用するのがおすすめです。これにより、図式の編集が容易になり、最新の情報に基づいた正確な施工体系図を作成できます。
また、デジタル形式での保存が可能なため、保管や共有が容易です。
施工体系図のテンプレートはどこから入手する?
施工体系図のテンプレートは、主に国土交通省のWebサイトから入手できます。また、地方自治体や建設業関連の団体・協会のWebサイト、建設業向けのソフトウェア・サービス、実務書籍やガイドブックなどでも提供されています。
テンプレートを使用する際は、最新の法改正に対応していることを確認することが重要です。また、各工事の特性や会社の方針に合わせてテンプレートをカスタマイズすることが一般的です。
まとめ
施工体系図は、建設プロジェクトの円滑な進行を支える重要な書類です。下請け業者の有無にかかわらず、明確な組織体制を示すことで、関係者全員が役割を理解し、プロジェクトの効率的な運営が可能となります。
施工体系図の書き方やテンプレートの入手方法を理解し、適切に活用することで、建設現場のコミュニケーションを向上させられるでしょう。また、施工体制台帳との違いを理解し、両者を適切に使い分けることも重要です。
本記事を参考に、施工体系図を効果的に作成し、プロジェクトの成功につなげてください。