建設業の安全大会とは?開催義務や時期、主な内容まで徹底解説

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目次

建設業の安全大会とは、現場での事故や災害を防止するために、安全に対する意識を高める集会です。

他の産業と比較して建設業は事故の発生率が高いため、安全への意識づくりが欠かせません。

この記事では、建設業における安全大会の概要や、開催時期・義務について解説します。

安全大会の主な内容やメリットも説明するので、労働災害ゼロを目指している方はぜひご覧ください。

建設業の安全大会とは「現場での事故や災害を防止するために、安全に対する意識を高める集会」のこと

安全大会とは、建設業における事故・災害を防ぐために、安全衛生に関する知識を深める集会です。

自社の作業員はもちろん、取引先や関係会社の方など、工事に携わるすべての人々が参加します。

他の産業でも労働災害が発生していますが、建設業は特に危険な作業が多い業種です。

機械や工具の取り扱いを誤れば、大きな怪我につながる恐れがあります。

そのため、建設業では現場の安全意識を高める必要性が高いです。

建設業における安全大会の開催時期や頻度

建設業の安全大会は、企業ごとに年に1度開催されます。

開催時期に明確なルールはありませんが、多くの企業が5〜8月に安全大会を実施しています。

なぜなら、厚生労働省・中央労働災害防止協会が実施する「全国安全週間」の一環として、安全大会が開催される傾向にあるからです。

全国安全週間は、現場の安全活動推進に積極的に取り組むキャンペーンで、毎年7月の1週目に行われます。

令和5年度の全国安全週間では「高める意識と安全行動、築こうみんなのゼロ災職場」がスローガンとして掲げられました。

参考URL:令和5年度 全国安全週間の実施について

建設業において安全大会の開催は義務ではない

建設業における安全大会の開催は、法的に義務付けられていません。ですが、国によって推奨されています。

平成7年に公布された「元方事業者による建設現場安全管理指針について」では、請負契約において「実施者及び経費の負担者を明示する労働災害防止対策」が記載されています。

その労働災害防止対策の1つとして「元方事業者が主催する安全大会等への参加」が挙げられているのです。

この文書から、国は労働安全対策の一環として、安全大会の実施を推奨していることが推測されます。

加えて、労働安全衛生法において、事業者には

  • 労働者の安全・健康を確保する義務がある
  • 作業員に対して労働安全に関する教習・講習を行う義務がある

と以下のように定められています。

(事業者等の責務)

第三条

事業者は、単にこの法律で定める労働災害の防止のための最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない。また、事業者は、国が実施する労働災害の防止に関する施策に協力するようにしなければならない。

(安全管理者等に対する教育等)

第十九条の二

事業者は、事業場における安全衛生の水準の向上を図るため、安全管理者、衛生管理者、安全衛生推進者、衛生推進者その他労働災害の防止のための業務に従事する者に対し、これらの者が従事する業務に関する能力の向上を図るための教育、講習等を行い、又はこれらを受ける機会を与えるように努めなければならない。

引用URL:労働安全衛生法 | e-Gov法令検索

事業者の責務を果たすために、安全大会の実施は重要といえるでしょう。

参考URL:元方事業者による建設現場安全管理指針について

建設業における安全大会の主な内容・項目

建設業における安全大会の主な内容・項目を、5つ紹介します。

  • 安全・健康に関する講話やセミナー
  • 労働安全衛生に関する上映
  • 避難・消火器訓練
  • 救命講習
  • 表彰式

1つずつ解説していきます。

安全・健康に関する講話やセミナー

建設業の安全大会では、安全・健康に関する講話やセミナーが行われます

企業の代表者や現場の責任者が

  • 現場で実施している安全対策の内容
  • ヒヤリハットの体験談
  • 安全な職場環境を形成するための心構え

などを話すのが一般的です。

また、有識者を招いて労働災害の現状や、健康維持の方法について話してもらうケースもあります。

労働安全衛生に関する上映

労働災害が起こりやすい状況や事故防止の方法など、労働安全衛生に関するビデオを上映するのも、安全大会で実施される項目の1つです

リアルな映像で危険性を訴えることで、作業員の意識改善が期待できます。

避難・消火器訓練

地震や火災などの災害対策で、建設業の安全大会では避難・消火器訓練が行われます

たとえば、高い足場にいるときに地震が発生したら、焦らずに安全な場所まで避難することが大切です。

焦って飛び降りると、かえって転落する恐れがあるので注意しましょう。

他にも、実際に粉末消火器を使って消化にかかる時間を学んだり、事務所や工事現場での火災を想定した避難訓練が行われたりします。

事前に訓練で災害状況をイメージすることで、事故に遭った場合でも冷静に対処できるでしょう。

救命講習

救命講習ではAED(Automated External Defibrillator)の利用方法や怪我の応急手当、心配蘇生法などを学びます

AEDを製造しているメーカーから講師を招き、使用方法に関する講習を受けた後、実際に機器を使った訓練を実施します。

「熱中症」や「凍結路面」といった季節ごとに発生しやすい労働災害の対策法も、建設業の安全大会で取り上げられやすいテーマです。

表彰式

安全大会の表彰式では、安全な現場形成に貢献した作業員を賞します

表彰の機会を設けると、作業員のモチベーションアップが見込めるでしょう。

具体的な表彰の基準としては

  • 重大事故を起こさなかった
  • 積極的に安全対策に取り組んだ
  • 作業員の安全管理に関する意識を高めた

などが挙げられます。

建設業で安全大会を開催するメリット

建設業で安全大会を開催するメリットは、主に2つあります。

  • 現場の安全意識を高められる
  • 企業の信頼度が向上する

安全大会の実施を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。

現場の安全意識を高められる

建設業における安全大会の開催は、現場の安全意識を高められます

現場での事故を防止するには、作業員・関係者の意識改革が欠かせません。

しかし、ただ安全対策の推進を呼びかけても、労働安全衛生への問題意識は生まれないでしょう。

そこで、安全大会という特別な注意喚起の場を設ければ、労働安全衛生の重要性を見直せるのです

工事に携わる作業員や取引先の方が一堂に会することで、現場の危険性を共有できる点がメリットといえます。

企業の信頼度が向上する

安全大会を実施すると、自社が労働安全衛生に対して、積極的に取り組んでいることを内外にアピールできます

厚生労働省の調査にて「作業に危険が伴う」ことが、若手作業員が建設業を離職する理由の1つと報告されました。

若手作業員が離職した原因の上位5つは、次のとおりです。

順位

理由

回答率(%)

1

雇用が不安定である

9.6

2

遠方の作業場が多い

9.0

3

休みが取りづらい

8.4

4

労働に対して賃金が低い

7.9

5

作業に危険が伴う

6.7

参考URL:建設業の働き方として目指していくべき方向性

つまり、安全大会を開催して安全な職場を形成すると

  • 取引先や消費者の方からの信頼度が向上する
  • 人材確保を有利に進められる
  • 自社の作業員の満足度がアップする

などの効果が期待できるでしょう。

建設業の安全大会で意識したいポイント

建設業の安全大会で意識したいポイントを、3つピックアップしました。

  • オンライン形式を取り入れる
  • ヒヤリハット事例を見直す
  • 作業員・関係者に参加を呼びかける

以下で詳しく見ていきます。

オンライン形式を取り入れる

さまざまなビジネスでデジタル化が進むなか、オンライン形式での安全大会の開催に注目が集まっています

オンライン開催のメリットは

  • 会場まで移動する手間がかからない
  • 交通費を削減できる
  • 会場費用がかからない
  • 録画して後日配信することが可能

上記4点です。

なお、オンライン配信は「ライブ配信」と「オンデマンド配信」の主に2種類です

それぞれの特徴とメリット、デメリットを以下にまとめました。

ライブ配信

オンデマンド配信

特徴

リアルタイムで撮影している動画を配信する

事前に収録した動画を配信する

メリット

双方向でのコミュニケーションが可能

何度でも動画を見直せる

デメリット

特定の時刻に参加する必要がある

リアルタイムでコミュニケーションが取れない

より多くの方に安全大会に参加してもらうために、オンライン形式を検討してみてください。

ヒヤリハット事例を見直す

安全大会を実施する前に、自社が経験した事故やヒヤリハット事例を見直し、分析しておくことがポイントです

ハインリッヒの法則では「1件の重大事故のうらに29件の軽傷事故、300件の無傷事故(ヒヤリハット)がある」といわれています。

ヒヤリハットの事例を現場で共有して対策を講じれば、重大事故の発生を防止できます。

参考URL:ヒヤリハット活動でリスクアセスメント

作業員・関係者に参加を呼びかける

効果的な安全大会を開催しても、参加者が集まらなければ現場の環境改善が見込めません

労働環境を変えるには、工事に関係する方一人ひとりの取り組みが必要です。

自社の作業員だけでなく管理者や監督者、協力会社の方にも参加を呼びかけましょう。

建設業で起こりうる危険

建設業で起こりうる主な危険は、次のとおりです。

  • 高所作業における墜落・転落事故
  • 電気工事における感電事故
  • 地下作業での落盤事故
  • 建築資材の落下・衝突事故
  • 建設機械による巻き込まれ・切断事故
  • 工事車両による交通事故
  • 建物の倒壊・火災事故
  • 化学品による爆発・火災事故
  • 夏期現場の熱中症
  • 冬期現場の凍結路面による転倒事故

これらの危険のほとんどが、ヒューマンエラーを原因としています。

高所作業時の安全帯着用や作業前の声掛けなどを徹底すれば、上記リスクを減らすことが可能です

建設業における労働災害の現状

厚生労働省が発表したデータによると、令和4年度の全産業において、労働災害を原因とする死亡者数は774人でした。

そのうち、建設業における死亡者数は281人と高い割合を占めています

令和3、4年度の死亡者数は、以下のとおりです。

【労働災害による死亡者数】

業種

令和4年

令和3年

全産業

774人

778人

製造業

140人

131人

建設業

281人

278人

陸上貨物運送事業

90人

89人

林業

28人

30人

※新型コロナウイルス感染症へのり患によるものは除く

加えて、建設業における労働災害の発生状況を、事故の型別に以下の表にまとめました。

【建設業における死亡災害】

令和4年

令和3年

令和2年

令和1年

平成30年

平成29年

全体

281

278

256

269

309

323

墜落・転落

116

110

95

110

136

135

はさまれ・巻き込まれ

28

27

27

16

30

28

崩壊・倒壊

27

31

27

34

23

28

激突され

27

19

13

26

18

23

交通事故(道路)

24

25

37

27

31

50

飛来・落下

16

10

13

18

24

19

【建設業における死傷災害】

令和4年

令和3年

令和2年

令和1年

平成30年

平成29年

全体

14,539

14,926

14,790

15,183

15,374

15,129

墜落・転落

4,594

4,869

4,756

5,171

5,154

5,163

転倒

1,734

1,666

1,672

1,589

1,616

1,573

はさまれ・巻き込まれ

1,706

1,676

1,669

1,693

1,731

1,663

飛来・落下

1,318

1,363

1,370

1,431

1,432

1,478

切れ・こすれ

1,272

1,339

1,257

1,240

1,267

1,312

動作の反動・無理な動作

940

981

947

885

875

880

激突され

800

825

791

842

832

734

高温・低温物との接触

233

210

289

238

340

210

全体としては死亡災害・死傷災害は減少傾向にありますが、依然として労働災害が多数発生している状況です。

参考URL:令和4年労働災害発生状況の分析等

参考URL:令和4年の労働災害発生状況を公表

まとめ:建設業における事故を防止するために安全大会は必要

今回の記事は、建設業の安全大会の概要や、開催時期・義務を解説しました。

建設業における安全大会の実施は義務ではありませんが、国によって推奨されています。

建設業で安全大会を行うメリットは

  • 現場の安全意識を高められる
  • 企業の信頼度が向上する

上記2点です。

現場の安全を確保するために、安全大会は重要な行事です。

オンライン形式を導入したり、ヒヤリハット事例を見直したりして、効果的な安全大会を開催しましょう。