施工計画書の作成方法|導入による効果やチェックポイントは?
目次
- 施工計画書の基本情報
- 施工計画書の目的・役割
- 施工計画書に記載する内容
- 施工計画書を作成する流れ
- 1.工事書類を確認のうえ工事内容を把握する
- 2.現場の状況をチェックする
- 3.発注者と協議をする
- 4.施工計画書のテンプレートを入手する
- 5.施工計画書を作成する
- 施工計画書のテンプレートはどこから入手する?
- 施工計画書の作成による効果
- 進捗確認が容易になる
- 工事内容を周知しやすくなる
- 工事の一元管理が可能になる
- 工事の品質を担保できる
- 施工計画書作成時のチェックポイント
- 品質・効率のバランスは整っているか
- 5W1Hが踏襲されているか
- ソフト・ツールを活用しているか
- 環境配慮の項目を追加しているか
- まとめ
施工計画書は、建設工事の成功に欠かせない重要な書類です。建設プロジェクトの複雑さや規模が増すにつれて、施工計画書の重要性も高まります。
施工計画書を適切に作成することで、工事の品質と安全性を確保し、円滑な進行を実現できます。この記事では、施工計画書の目的や役割、記載内容について解説します。
加えて、施工計画書に関する、以下についてもみていきましょう。
- 施工計画書の作成方法
- 施工計画書のテンプレート入手先
- 施工計画書の作成・導入による効果
- 施工計画書作成時のチェックポイント
本記事をきっかけに施工計画書の重要性を理解し、その効果を最大限に引き出すための具体的な手法を学びましょう。
施工計画書の基本情報
施工計画書とは、工事の手順や工程、使用する資材や機械、安全対策などをまとめた書類です。建築工事、土木工事、電気設備工事など多くの工事で必要となります。
ここでは施工計画書について、以下の視点から解説します。
- 施工計画書の目的・役割
- 施工計画書に記載する内容
なお施工計画書は施工業者が作成するのが一般的です。ただし、下請け業者に依頼する場合は、下請けの現場責任者が作成した計画書を元請け業者が確認し、調整することが必要です。
施工計画書の目的・役割
施工計画書は、工事全体の概要を明確にするための役割を果たす重要な書類です。スケジュールや作業手順、使用する材料や設備など、工事に関する詳細な情報が記載されています。施工計画書があることで、関係者は工事の進行状況や手順を把握しやすくなるのです。
さらに、施工計画書には安全対策や注意事項も詳しく記載されているため、工事の安全性を確保するための指針となります。
また、施工計画書を用いることで、工事の目標や目的、予算や工期などを関係者全員で共有できるため、全員が同じ目標に向かって協力しやすくなります。
このように、施工計画書は工事の進行や安全性の確保、品質管理、そして関係者の共通理解を得るために欠かせないのです。
施工計画書に記載する内容
施工計画書に記載する主な項目は、以下のとおりです。
1. 工事概要
- 工事名称、工事場所、工期、発注者名などの基本情報
- 工事の目的や範囲を明確に示す
2. 工程表
- 工種ごとの施工期間を示したガントチャートなどを作成する
- 工程の順序とスケジュールを明確にし、進捗管理に役立てる
3. 現場組織表
- 工事における組織体制を図表化し、責任者の氏名と役割を明記する
- 関係者間の連携を強化し、スムーズな意思決定を可能にする
4. 主要機械・資材リスト
- 使用する主な機械や資材の種類、数量、調達計画を記載する
- リソースの確保と管理を効率化し、コスト削減にも貢献する
5. 施工方法
- 各工程の具体的な施工手順や方法を詳細に記載する
- 特殊な工法がある場合は、その詳細も明記する
- 品質と安全性を確保するための指針となる
6. 施工管理計画
- 品質管理、出来形管理、写真管理などの方法を定める
- 工程の進捗状況や品質を管理し、目標達成に貢献する
7. 安全管理計画
- 安全衛生管理体制を構築し、安全教育や訓練の計画を立てる
- 事故や災害のリスク低減のために緊急時の連絡体制も明記する
8. 環境管理計画
- 騒音・振動対策、粉じん対策など、環境への影響を低減するための対策を定める
- 環境負荷を最小限に抑え、持続可能な建設プロジェクトの実現につながる
9. 交通管理計画
- 工事に伴う交通規制や誘導方法を定める
- 周辺住民への影響を最小限に抑え、安全な交通環境を確保できる
10. 仮設計画
- 仮設事務所、仮設トイレなどの配置計画を作成する
- 現場の安全と利便性を向上させ、作業効率のアップにつながる
11. 再生資源利用計画
- 建設副産物の処理方法を定める
- 環境負荷を低減し、資源の有効活用に貢献する
上記以外にも、プロジェクトの特性に合わせて、適宜必要な項目を追加・調整する必要があります。
施工計画書を作成する流れ
施工計画書を作成する一般的な流れは、以下のとおりです。
- 工事書類を確認のうえ工事内容を把握する
- 現場の状況をチェックする
- 発注者と協議をする
- 施工計画書のテンプレートを入手する
- 施工計画書を作成する
ここでは、施工計画書の作成手順について、各項目ごとに解説します。
1.工事書類を確認のうえ工事内容を把握する
施工計画書を作成する際には、まず工事全体の概要を把握することが非常に重要です。これには、図面や契約書、設計書などの関連書類を綿密に確認することが含まれます。
工事における重要な書類を丁寧にチェックして要点を整理しておくと、施工計画書の作成が円滑に進むでしょう。また、請負金額や工期などの重要な項目も事前にしっかりと確認しておく必要があります。
2.現場の状況をチェックする
工事内容を書類で把握した後には、工事現場に直接足を運び、現地の状況を確認することが重要です。施工計画書には、実際の現場やその周辺の状況を反映させる必要があるため、現地での確認作業は不可欠です。
現場訪問の際には、各工程をシミュレーションしながら詳細に精査することで、より精密で現実に即した施工計画書の作成が可能となります。
3.発注者と協議をする
発注者との協議を行い、施工方針や内容を確認する機会を設けることが非常に重要です。施工計画書の作成において必須の手順ではないものの、発注者とイメージを共有することで、計画的な工事の進行が可能となります。
全体像や完成イメージにズレが生じると、ミスやトラブルが発生するリスクが高まります。したがって、計画書の作成前に懸念点を早期に伝え、協議することが望ましいでしょう。
4.施工計画書のテンプレートを入手する
施工計画書は、ひな形やテンプレートを活用すると効率的で、記載項目の漏れを防げます。発注企業の指定形式がある場合は、それを共有してもらうとよいでしょう。
また、各自治体や整備局のホームページからひな形をダウンロードして使用することも可能です。ただし、ひな形がそのまま適用できるとは限らないため、施工内容に合わせて項目を修正・追加する必要があります。
5.施工計画書を作成する
ここまでの手順を経てから、施工計画書に必要な項目を記入していきましょう。
施工計画書を作成する際には、必要な項目を丁寧に記入し、関連する添付書類も合わせて準備します。しかし、初稿がそのまま承認されることは稀なので、修正や加筆の時間を見越して、スケジュールには余裕を持たせることが重要です。
施工計画書のテンプレートはどこから入手する?
施工計画書のテンプレートは多様な方法で入手可能です。例えば国土交通省では、記載項目ごとの参考例が掲載されています。また一般社団法人日本建設業連合会でも、施工計画書のテンプレートをダウンロード可能です。
さらに、施工管理ソフトやクラウドサービスには、テンプレート作成機能が含まれていることが多く、専門書籍やガイドブックにもテンプレートが掲載されています。インターネット上には無料で提供されているテンプレートもありますが、その信頼性を確認することが重要です。
また、過去に自社で使用したテンプレートをカスタマイズする方法もあります。
なお、テンプレートを使用する際には、最新の法改正に対応しているか、自社の工事内容に適しているかを確認することが重要です。テンプレートはあくまで基本形として使用し、実際の工事の特性に合わせてカスタマイズすることが推奨されます。
施工計画書の作成による効果
施工計画書の作成により、以下の効果が期待できます。
- 進捗確認が容易になる
- 工事内容を周知しやすくなる
- 工事の一元管理が可能になる
- 工事の品質を担保できる
ここでは、施工計画書による効果について解説しているので、実際に作成するうえでの参考情報としてお役立てください。
進捗確認が容易になる
施工計画書には、工事の進捗状況が詳細に記載されています。そのため、実際の進捗と比較しながら、計画が順調に進んでいるかどうか確認できます。
もし遅れが発生した場合には、迅速に対策を講じることが可能です。
工事内容を周知しやすくなる
施工計画書を関係者全員に共有すことで、工事全体の計画が明確になります。現場作業員や関係部署、関係会社のスタッフも工事の計画を把握できるため、工事が円滑に進みます。
また、リスクや問題点を事前に把握することで、対応策を考える時間も確保できるしょう。
工事の一元管理が可能になる
施工計画書の作成により、工事全体の管理を一元化することができます。工事の計画やスケジュール、必要な資材や人員が詳細に記載されているためです。
各工程の進行状況や必要な資材、完了予定時期などを一目で把握できるようになっています。
工事の品質を担保できる
施工計画書は、工事の品質を確保するための指針となります。施工計画書には、工事の品質管理に関する項目が含まれており、品質基準や検査手順が明記されているためです。
さらに、施工計画書を作成することで、工事を計画的かつ効率的に進めることが可能になります。
施工計画書作成時のチェックポイント
施工計画書はただ作成するだけでなく、以下のポイントを意識することが大切です。
- 品質・効率のバランスは整っているか
- 5W1Hが踏襲されているか
- ソフト・ツールを活用しているか
- 環境配慮の項目を追加しているか
ここでは、施工計画書作成時にチェックすべきポイントについて解説します。
品質・効率のバランスは整っているか
施工計画書を作成する際には、品質と効率のバランスを取ることが極めて重要です。
まず、計画が現実的で実行可能である必要があります。品質を追求しすぎると非効率な計画になり、逆に効率を重視しすぎると品質が犠牲になる可能性があるためです。
適切なバランスを意識することで、工事の成功に直結し、かつ工期を守りつつ予算内での完成が可能となります。さらに、バランスの取れた計画は、品質低下や工期遅延といったリスクを最小限に抑え、関係者全員の共通理解を促進します。
これにより、予期せぬ事態が発生した場合にも柔軟に対応できる計画となり、コスト管理にも役立つのです。
5W1Hが踏襲されているか
施工計画書の作成時には「5W1H(誰が、いつ、どこで、何を、なぜ、どのように)」を意識すると良いでしょう。
現場監督や各工程の作業者など、さまざまな立場の人が確認する書類であるため、記載内容に不備や漏れがあると修正が必要となり、工期やスケジュールに影響を与えてしまいます。
したがって、5W1Hを意識してわかりやすく記載することが大切なのです。
ソフト・ツールを活用しているか
効率的に施工計画書を作成するうえでは、テンプレートとあわせて各種ソフトウェアやツールの利用が推奨されます。
エクセルなどの表計算ソフトや、施工専用のソフトウェアを活用することで、数値の自動計算や自動反映が可能となり、作業が効率化できます。また、パソコンで作成することでデータとして保存でき、修正や加筆がより効率的になるでしょう。
施工計画書専用のツールには多くの便利な機能が備わっているため、これらを活用することで、スムーズな作成が実現します。
環境配慮の項目を追加しているか
施工計画書には、環境配慮の項目を追加することが推奨されます。現代の建設プロジェクトにおいて、環境への配慮は非常に重要です。
具体的には、以下の項目を含めることが望ましいでしょう。
- 騒音・振動対策
- 粉じん対策
- 排水管理
- 廃棄物の削減と適正処理
- エネルギー使用の効率化
- 生態系への影響の最小化
- 再生可能資源の利用
- 環境負荷の少ない建設機械の使用
これにより、環境に配慮した持続可能な建設プロジェクトを実現し、発注者や監督者に対して、環境面での取り組みを明確に示すことができます。
まとめ
本記事では、施工計画書の基本情報、作成手順、導入による効果、作成時のチェックポイントについて詳しく解説しました。
施工計画書の主な役割は、工事の全体像を明確にし、進捗管理、リソース管理、リスク管理などの側面を包括的にカバーすることです。適切に作成・管理することで、工事の進捗確認や一元管理、品質・安全性の確保につながります。
なお、施工計画書を作成する際は、品質と効率のバランスを取ること、5W1Hの視点を取り入れること、専用ソフトやツールを活用すること、環境配慮の項目を追加すること、そしてフィードバックの仕組みを導入することが重要です。
これらのポイントを踏まえて、施工計画書を作成・運用することで、高品質な工事を達成し、関係者全員が満足できる結果につながるでしょう。