建設業許可の決算変更届とは?記載する内容や提出に関する疑問を解消

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目次

建設業許可の「決算変更届」は、事業年度ごとに提出が求められる必須書類です。
ただし、決算変更届の詳細を正確に把握している建設業者は少ないかもしれません。
本記事では、決算変更届について、以下のテーマに沿ってわかりやすく解説します。

  • 決算変更届の内容
  • 建設業許可で決算変更届が重視される理由
  • 決算変更届の必要書類
  • 決算変更届の提出について


決算変更届に関する疑問をスムーズに解消し、手続きを効率的に進めるための参考にしてください。

建設業許可における決算変更届の内容

画像出典:国土交通省

建設業許可を維持するために必要な決算変更届は、事業年度ごとに監督官庁へ提出が義務付けられている重要な書類です。
以下では、工事実績・財務状況・その他の報告事項という観点から、建設業許可における決算変更届の具体的な内容について説明します。

工事実績

決算変更届には、過去1年間に実施した工事の記録を記載します。
工事実績を報告する目的は、建設業許可を受けた業種での活動を証明するためです。
工事経歴書には、請負金額が大きい順に、完成工事や未完成工事をまとめます。

  • 工事名
  • 発注者名
  • 請負金額
  • 着工日
  • 完成日


上記を正確に記入することが重要です。
業種ごとに分類し、技術者の配置状況を明確に示すことで、事業の信頼性を高められます。

財務状況

決算変更届を通じ、事業年度の財務状況を詳しく報告する必要もあります。
報告に含まれるのは、貸借対照表や損益計算書、完成工事原価報告書です。
これらはすべて、建設業法に基づいた形式で作成しなければなりません。

建設業法で定められた勘定科目を正確に使用しなければ、書類が受理されない場合があります。
税務申告用の財務諸表とは異なる点を理解し、慎重に準備を進めることが重要です。

その他の報告事項

決算変更届では工事実績や財務状況に加え、使用人数や保険加入状況などの詳細も報告しなければなりません。
従業員の採用や退職による人数の変動があれば、届け出が必要です。

また、保険加入状況に変更があった場合も、速やかに報告することが義務付けられています。

建設業許可で決算変更届が重視される理由

建設業許可において決算変更届が重要とされる理由は、大きく分けて2点あります。

まず1点目は、監督官庁が建設業者の事業が適正に運営されているかを判断するための基礎資料となる点です。
工事実績や財務状況を報告することで、許可された業種で実際に事業を行っているか、経営が健全であるかを確認することが可能になります。

2点目は、決算変更届に記載された情報が一般公開されるため、企業の信用度に大きく影響する点です。
発注者は公開された情報をもとに事業実績や財務状況を確認し、安心して工事を任せられるかどうかを判断します。

つまり、決算変更届を適切に提出していることは、会社の信頼性を高めるだけでなく、新たな受注機会の増加にもつながるのです。

決算変更届の必要書類

決算変更届の必要書類は、以下の状況ごとに異なります。

  • 法人の場合
  • 個人事業主の場合

ここでは、決算変更届において必要な書類を、状況別に紹介します。
また、変更がある場合のみの必要書類についても解説しているので、あわせて参考にしてください。

法人の場合

法人が決算変更届を提出する際には、基本的な書類として以下を用意しなければなりません。

  • 行政庁が定めた様式の変更届出書
  • 前事業年度に完成した工事や未完成工事を記載した工事経歴書
  • 直近3事業年度の工事施工金額をまとめた書類

財務状況を示すための書類は、以下のとおりです。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 完成工事原価報告書
  • 株主資本等変動計算書
  • 注記表
  • 付属明細表

上記の財務諸表に加え、事業報告書も必要です。
また、税務の適正な納付を証明するため、法人事業税の納税証明書も用意しましょう。

なお、変更がある場合には、営業所ごとの技術者や事務員の人数を記載した使用人数、建設業法施行令第3条に基づく使用人の一覧表、定款に変更があれば最新版を提出する必要があります。

個人事業主の場合

個人事業主の場合も、法人の場合と同様の基本書類が必要です。
財務状況を示すためには、貸借対照表や損益計算書を用意しなければなりません。

また、社会保険加入の確認書類として、以下を準備しておきましょう。

  • 社会保険料の領収書
  • 納入証明書
  • 標準報酬決定書
  • 健康保険厚生年金の被保険者資格取得届(受付印付き)

納税証明書としては個人事業税の納税証明書が対象となりますが、8月中旬までに提出する場合は確定申告書第一表の写しで代用可能です。

変更があった場合には、法人と同様に使用人数や建設業法施行令第3条の使用人一覧表を提出します。

変更がある場合のみの必要書類

変更がある場合のみ必要な書類は、法人・個人事業主で共通しています。以下を示せる書類を用意してください。

<使用人数>

  • 技術者や事務員の人数を営業所ごとに記載した書類
  • 新規雇用や退職が発生した場合に提出する

<建設業法施行令第3条に基づく使用人一覧表>

  • 支店や従たる営業所に配置された権限を持つ使用人がいる場合に必要
  • 人員に変更があれば報告

<健康保険等の加入状況>

  • 健康保険・厚生年金・雇用保険の内容が変わった場合に提出する

<定款>

  • 定款の内容が変更された際に最新版を届け出る

上記の書類は、前年度から変更がなければ提出する必要はありません。

決算変更届の提出について

最後に、決算変更届の提出に関する内容を以下の視点から解説します。

  • 提出先
  • 提出期限
  • 提出しなかった場合の罰則

参照:国土交通省|変更届等の提出

提出先

決算変更届の提出先は、取得している建設業許可の種類により異なります。

都道府県知事許可を受けている場合は、主たる営業所の所在地を管轄する都道府県庁の窓口が提出先です。
例えば兵庫県では、地域によって提出窓口が分かれ、神戸市なら神戸県民センター神戸土木事務所、尼崎市や西宮市などでは阪神南県民センター西宮土木事務所が該当します。

一方、国土交通大臣許可を受けている場合は、本店所在地を管轄する地方整備局長などが提出先となります。
兵庫県の場合は近畿地方整備局が担当となり、さらに電子申請や郵送による手続きも選択可能です。

提出期限

決算変更届の提出期限は、毎事業年度の終了後4か月以内と定められています。
提出期限は、法人と個人事業主の双方で共通です。

提出期限を過ぎると、郵送が認められなくなり、かつ窓口での手続きに時間がかかるといった不都合が生じます。

また、提出書類に「期限内提出指導済み」のスタンプが押され、取引先に悪印象を与えるおそれもあります。
さらには、建設業許可の更新ができなくなる場合もあるため、期限内の提出が重要です。

提出しなかった場合の罰則

決算変更届を提出しない場合、建設業法第50条に基づき、6か月以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
罰則が適用されることは稀ですが、悪質な場合は適用されるかもしれません。

さらに、未提出の状態が続けば、建設業許可の更新や業種追加が不可能になるだけでなく、公共事業への参加や経営事項審査の申請が制限されます。
取引先からの信用も失い、受注機会の減少という重大な影響が出る可能性があるため注意が必要です。

参照:e-GOV法令検索|建設業法第五十条

まとめ

建設業許可を維持するためには、決算変更届を正確に作成し、期限内に提出することが重要です。
本記事で紹介したポイントを参考に必要書類をしっかり準備し、ミスのない手続きを進めましょう。

期限を守らない場合、罰則が科される可能性があるため、十分な注意が求められます。
決算変更届を適切に提出し、建設業許可を継続するための信頼性ある運営を目指してください。