建設リサイクル法とは|対象工事や廃棄物との関連、届けに関する疑問を解消
目次
建設現場で発生する廃棄物を、正しく処理できているでしょうか。
建設廃棄物の適切な処理や資源の再利用を進めるために「建設リサイクル法」という法律が制定されています。
環境問題への意識が急速に高まる昨今、建設業界の方が理解しておくべき重要な法律といえるでしょう。
本記事では、建設リサイクル法の基本に加え、以下に関する内容を解説します。
- 建設リサイクル法の必要性や義務付け
- 建設リサイクル法の対象となる工事
- 建設リサイクル法と関わりの深い「廃棄物」とは
- 建設リサイクル法で重要な届出
本記事をきっかけに建設リサイクル法の理解度を深め、今後の事業運営に役立てられれば幸いです。
建設リサイクル法とは
建設リサイクル法は、建設現場から生じる廃材の適切な処理とリサイクルを促進することを目的とした法律です。
正式には「建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律」といい、2002年に施行されました。
ここでは建設リサイクル法について、なぜ必要とされているのか、そして法律で義務付けられている内容について解説します。
建設リサイクル法の必要性・義務付け
建設リサイクル法が制定された背景には、建設現場から出る廃棄物の急増に伴う最終処分場の逼迫や、不法投棄などの問題があります。
資源を有効に利用し、廃棄物の適切な処理を進めるために、建設リサイクル法では建設資材の分別解体と再資源化が推奨されているのです。
また、コンクリートや木材、アスファルトなどの特定の建材を使用した一定規模以上の工事(新築、増築、改修、解体工事など)において、資材ごとの分別解体と再資源化を義務付けているのも建設リサイクル法の特徴です。
持続可能な社会の実現に向けて、建設リサイクル法は重要な役割を担っており、工事に関わるすべての関係者がその責任を理解し、適切な取り組みを行うことが求められています。
建設リサイクル法の対象となる工事
建設リサイクル法の対象となる工事は、特定の建設資材を使用した一定規模以上の工事が該当します。対象となる資材は、次の4種類です。
- コンクリート
- 鉄筋コンクリート
- 木材
- アスファルトコンクリート
なお、工事の種類によって対象となる規模基準が異なります。
- 建築物の解体工事:床面積合計80㎡以上
- 建築物の新築・増築工事:床面積合計500㎡以上
- 建築物の修繕・模様替工事(リフォームなど):請負金額1億円以上
- 建築物以外の工作物工事(土木工事など):請負金額500万円以上
上記の条件を満たす工事を行う場合には、都道府県知事への届出が義務付けられています。
参照
国土交通省|建設リサイクル法の対象となる建設工事では届出が必要です!
建設リサイクル法と大きく関わる「廃棄物」
ここまで「廃棄物」という表現が何度か出てきましたが、建設工事における廃棄物にはどのようなものがあるのでしょうか。
以下では、建設リサイクル法とも関わりの深い廃棄物について、定義や問題点の観点から紐解きましょう。
建設工事における廃棄物とは
建設現場で発生する廃棄物は、いわゆる「建設副産物」と呼ばれるもので、再利用可能な資源(再生資源)と、再生利用できない廃棄物の両方が含まれます。
具体的な例として挙げられるのは、以下のとおりです。
- 建設発生土
- コンクリート塊
- アスファルト・コンクリート塊
- 建設発生木材
- 建設汚泥
- 建設混合廃棄物
- 金属くず
上記のうち、建設発生土やコンクリート塊、アスファルト・コンクリート塊、建設発生木材は、資源有効利用促進法により再利用を推進するべき指定副産物とされています。
また、建設発生木材やアスファルト・コンクリート塊、コンクリート塊は、建設リサイクル法の下で再資源化が義務付けられた特定建設資材廃棄物に該当します。
建設廃棄物に関する問題点
建設廃棄物は産業廃棄物の中でも特に排出量が多く、最終処分にかかる環境負荷が問題視されています。具体的な課題として挙げられるのは、以下のとおりです。
<最終処分場の不足>
- 建設廃棄物の増加に伴い、最終処分場の残余容量が逼迫している
- 新たな処分場の確保が難しくなっている
<不法投棄の問題>
- 大量の建設廃棄物は不法投棄のリスクが高い
- 景観を損なうだけでなく、土壌や水質の汚染といった深刻な環境問題を引き起こしている
<リサイクル率の目標未達>
- 建設リサイクル法で定められた特定建設資材廃棄物の再資源化率の目標は、建設発生木材や建設混合廃棄物、建設発生土において未達成の状態が続いている
上記課題を解決するため、建設廃棄物の発生抑制や再資源化、適正処理の推進が今後ますます重要となるでしょう。
建設リサイクル法の届出について
本記事内でも触れているように、建設リサイクル法の対象となる工事には、別途届出が必要です。
ここでは建設リサイクル法の届出について、届出書の作成方法や届出が漏れた際に科される罰則の目線から解説します。
届出書の作成方法
建設リサイクル法の届出書は、自治体ごとに形式が異なります。
そのため、まずは該当する自治体の公式サイトでフォーマットをダウンロードし、書き方を確認することが必要です。
通常、届出書には以下の項目を記載します。
- 発注者
- 自主施工主の氏名・住所
- 工事の概要(名称・場所・規模)
- 元請業者の氏名・住所
- 工程の概要
なお、工程の概要については、工事の工程表や案内図などを別途提出することも求められます。
また、届出書の作成を他人に委任する場合には、委任状の提出が必要です。
事前に、記入内容や必要書類について自治体の担当部署へ確認するのが望ましいでしょう。
届出が漏れた場合の罰則
建設リサイクル法では、対象工事を行う際、工事開始の7日前までに発注者が都道府県知事へ届出を行う義務があります。
届出が漏れた場合、最大で20万円の罰金が科される可能性があるため、注意してください。
届出漏れが発覚すると、まず役所から発注者に通知が送られ、その後も届出がない場合には是正勧告が行われます。
勧告にも従わない場合、罰則が適用されることが一般的です。
ただし、発注者が事前に解体業者に届出を委任し、提出状況を確認していたにもかかわらず、業者が虚偽報告をした場合には、発注者は罰則を免れる可能性があります。
参照:東京都都市整備局|建設リサイクル法:建設リサイクル法に違反した場合の罰則
まとめ
建設リサイクル法に適切に対応することは、建設業者として法令を遵守し、社会的信用を守るために欠かせない要素です。
本記事で解説したとおり、対象となる工事や廃棄物について正確に理解し、必要な届出を確実に行うことが求められます。
また、建設廃棄物の適切な処理と再資源化の取り組みは、環境保全にも大きな役割を果たします。
自社の方針を改めて見直し、法令に基づいた確実な対応を実践していきましょう。