建設業の離職率を下げる方法5選|建設業の現状や離職率が高い理由も紹介

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目次

「建設業の離職率は高い」多くの人はそんなイメージを持っているでしょう。

実際に、作業員の高齢化や入ってきても長く続かない、など離職に悩む企業は少なくありません。

育成した人材が辞めてしまうと、教育にかけた時間とコストが無駄になってしまいます。

そこで、この記事では、離職率を下げる方法や建設業の離職率が高い理由について解説します。

会社のさらなる発展のために人材は必要不可欠です。この記事がなにかの気づきになれば幸いです。それでは本題に入っていきましょう。

建設業の離職率は高いのか?他産業と比較してみた

厚生労働省が実施した「令和4年雇用動向調査結果の概況」によると、2022年度における建設業の離職率は「10.5%」でした。

建設業の入職者数・離職者数は、以下のとおりです。

入職者数(人)

離職者数(人)

令和4年(2022)

220,500

287,100

令和3年(2021)

273,300

260,500

前年差

-52,800

26,600

入職者は減っているのに、離職者は増えているというかなり良くない状況です。

なお、他業界の離職率としては

  • 宿泊業・飲食サービス業……26.8%
  • サービス業……19.4%

他産業と比較して、建設業の離職率が特別高いわけではありません。

しかし、宿泊業・飲食サービス業の入職率は34.6%、建設業の入職率は8.1%です。

2022年度の産業別入職超過率を見ると、建設業は-2.4ポイントとなりました。

参考として、2022年度の産業別入職超過率をランキング形式で以下にまとめました。

順位

産業

入職超過率(ポイント)

1

宿泊業、飲食サービス業

7.8

2

不動産業、物品賃貸業

4.6

3

生活関連サービス業、娯楽業

4.5

4

鉱業、採石業、砂利採取業

2.2

5

学術研究、専門・技術サービス業

2.0

6

情報通信業

1.1

7

サービス業(他に分類されないもの)

0.1

8

教育、学習支援業

-0.4

9

製造業

-0.6

10

医療、福祉

-0.9

11

卸売業、小売業

-1.0

12

金融業、保険業

-1.3

13

運輸業、郵便業

-2.1

14

建設業

-2.4

15

電気・ガス・熱供給・水道業

-3.1

16

複合サービス事業

-4.0

このように「入職者数に対して離職者数が多い」点が建設業が抱える課題といえます。

【新規高卒・新規大卒】建設業における3年以内の離職率の推移

建設業の新規高卒における、3年以内の離職率推移(5年間分)を表にまとめました。

平成30年

平成31年

令和2年

令和3年

令和4年

42.7%

42.2%

42.4%

33.3%

18.9%

※令和3年3月卒については就職後2年以内、令和4年3月卒については就職後1年以内の離職率を記載しています

参考URL:新規高卒就職者の産業分類別(大分類※1)就職後3年以内※2の離職率の推移

新規大卒の場合は、以下のような結果になっています。

平成30年

平成31年

令和2年

令和3年

令和4年

28.0%

28.6%

30.1%

22.0%

11.3%

※令和3年3月卒については就職後2年以内、令和4年3月卒については就職後1年以内の離職率を記載しています

参考URL:新規大卒就職者の産業分類別(大分類※1)就職後3年以内※2の離職率の推移

なお、2019年度における3年以内の離職率が高い上位5産業は、以下のとおりです。

【高校】

順位

産業

就職後3年以内の離職率(%)

1

宿泊業・飲食サービス業

60.6

2

生活関連サービス業・娯楽業

57.2

3

教育・学習支援業

53.5

4

小売業

47.6

5

医療、福祉

45.2

【大学】

順位

産業

就職後3年以内の離職率(%)

1

宿泊業・飲食サービス業

49.7

2

生活関連サービス業・娯楽業

47.4

3

教育・学習支援業

45.5

4

医療、福祉

38.6

5

不動産業、物品賃貸業

36.1

参考URL:新規学卒就職者の離職状況(平成31年3月卒業者)を公表します

建設業は上位5産業ではありませんが、新規高卒に関しては平均よりも離職率が高い傾向にあります。

建設業で若手が離職した理由は企業の想定とズレがある?

国土交通省の調査によると「企業が考える若年技能労働者が定着しない理由」と「建設業離職者(離職時若年層)が仕事を辞めた一番の理由」にはズレが生じています。

企業と若手それぞれが考える離職の原因について、上位5つをピックアップしました。

【企業が考える若年技能労働者が定着しない理由】

順位

理由

回答率(%)

1

作業がきつい

42.7

2

(若年技能労働者の)職業意識が低い

40.8

3

現場での人間関係が難しい

24.9

4

労働に対して賃金が低い

24.2

5

休みが取りづらい

23.5

【建設業離職者(離職時若年層)が仕事を辞めた一番の理由】

順位

理由

回答率(%)

1

雇用が不安定である

9.6

2

遠方の作業場が多い

9.0

3

休みが取りづらい

8.4

4

労働に対して賃金が低い

7.9

5

作業に危険が伴う

6.7

若手は企業が想定しているよりも「雇用の不安定さ」や「遠方の作業場が多い」という点を問題視していることがわかります。

建設業の離職率が高い理由

建設業の離職率が高い理由としては以下のとおりです。

  • 不安定な雇用状況
  • 遠方の作業場に足を運ばなければいけない
  • 休みが少なく家族・友人との時間を取れない
  • 賃金が業務負担に見合っていない
  • 業務にて怪我・事故のリスクが伴う

建設業の離職率が高い理由について、建設業の現状を踏まえながら、1つずつ解説していきます。

不安定な雇用状況

給与形態は主に2種類に分けられます。

1日当たりの給与額が決まっている「日給制」と、1月当たりの給与額が固定となる「月給制」です。

近年多くの企業が月給制を導入していますが、建設業では63.6%が日給制を採用しています。

建設業で日給制が採用されるのは、現場の仕事量が常に一定ではないからです。

稼働できるタイミングで業務を進めるため、固定額を支払うのが難しいといわれています。

しかし、日給制の場合は、休暇が収入の減少に直結してしまいます。

安定して一定額を稼げない給与形態は、従業員にとって不安となり得るでしょう。

遠方の作業場に足を運ばなければいけない

遠方の作業場に足を運ぶ必要がある点が、建設業の離職率が高い理由のひとつです。

どれだけ距離があったとしても、自分の足で出向かなければいけません。

筆者も普段は東京で働いていますが、仙台での仕事を2か月やったことがあります……。

規模の大きなゼネコンなどは、業務が発生する地域が限定されないため、転勤・単身赴任する確率も高まります。

休みが少なく家族・友人との時間を取れない

建設業は、高齢化と人手不足が深刻化している産業です。

人手が足りていないので、1人あたりの負担が大きくなり休みを取りづらい状況です。

日建連の調査によると、建設業の労働時間は「全産業の平均と比較して年間約320時間も長い」と報告されました。

さらに、建設業の進捗は天候によって大きく左右されます。

雨が続き作業が中断された場合、納期を守るために休日出勤をしたり、残業をしたりする必要があります。

休みが少ないことで家族や友人と過ごす時間が減り、多大なストレスを抱えて離職する……という方は少なくありません。

賃金が業務負担に見合っていない

建設業は肉体労働による心身への負担が大きいにも関わらず、賃金が高くない傾向にあります。

建設作業員が正社員として勤務した場合の、平均年収は423万円です。

日本の平均年収は443万円なので、平均よりも低いことがわかります。

加えて、他の産業では50代で賃金のピークを迎えますが、建設業のピークは45〜49歳です。労働者の体力のピークが、賃金のピークと重なっています。

また、評価制度が厳しすぎると新人は実績を積めません。

従来のような「ベテランの技術を見て覚える」という方式では、若手がスキルを身につけにくいです。

「人手不足で簡単な研修しか受けていない→技術がなく業務で成果を出せない→賃金に反映されない」と悪循環になると、若手のモチベーション維持が難しいでしょう。

参考URL

業務にて怪我・事故のリスクが伴う

建設業は「きつい・汚い・危険」という3Kのイメージがある業種です。

暑さ・寒さに関係なく、納期が迫れば休日を返上して業務を進めなくてはならないので、体力的に厳しい側面があります。

なお、国土交通省は従来の3Kイメージを変えるために、建設業の新3K「給与・休暇・希望」を掲げています。

これからは、国の主導にもとづいて労働環境の改善に取り組む姿勢が求められるでしょう。

建設業における離職率を下げる5つの方法

建設業における離職率を下げる5つの方法を紹介します。

  • デジタルツールを活用して業務効率化を図る
  • 週休二日制を導入する
  • 評価制度を見直す
  • 教育体制を整える
  • 勤務時間を適切に管理する

労働環境の改善方法に悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。

デジタルツールを活用して業務効率化を図る

デジタルツールを活用して業務が効率化すれば、作業員の負担が軽減されます。

結果として、休暇や賃金を増やす余裕が生まれるでしょう。

建設業で利用できるデジタルツールの例は、以下のとおりです。

・AI(人工知能)

・ICT(情報通信技術)

・SaaS(クラウドサービス)

・BIM/CIM(ビム/シム)

・ドローン

たとえば、ICTを活用すると重機・ドローンを遠隔で操作できます。

ドローンは危険な山間部でも測量や点検作業を進められるので、作業員の安全確保に有効です。

もっと身近なところで言えば、紙の業務を減らすことからスタートすると良いでしょう。

弊社クラフトバンクではクラフトバンクオフィスという建設業の方に向けた、事務作業デジタル化ツールを提供しています。

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また、導入から実際に運用するところまで、徹底的にサポートします。興味を持っていただけた方はぜひサービスの説明ページをご覧ください。

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週休二日制を導入する

週休二日制を導入すると作業員の休日を確保できるので、離職率の低下につながるでしょう。

労働時間の短縮は作業員のストレスを減少させ、モチベーションアップに効果的です。

なお、2023年現在において週休二日制の導入は義務ではありませんが、国土交通省や日建連は導入を推進しています。

2017年に日建連が策定した「週休二日実現行動計画」では

  • 土曜日および日曜日の閉所
  • 2024年3月までに全建設現場における週休2日(4週8閉所)の実現

を目指す旨がまとめられています。

参考URL:日建連の取組み | 建設業週休二日

評価制度を見直す

建設業で離職率を下げるには、労働環境の変化や作業員のニーズにもとづき、評価制度を定期的に見直す必要があります。

評価制度の改善で、意識したいポイントは以下の5つです。

  • 評価の仕組みを明確化して提示する
  • 各評価項目の意図を説明する
  • 実績だけでなく意欲・コミュニケーション能力など幅広い面を評価する
  • 評価後はフィードバックや研修を実施する
  • 作業員の満足度を調査して評価制度を改善する

どのようにすれば評価されるのかが具体的になると、作業員の働き方が大きく変化するでしょう。

フィードバックや研修で個々のスキルを伸ばすことは、全体の生産性アップに直結します。

教育体制を整える

若手人材が将来的に企業の中心として活躍するには、教育体制を整えなければいけません。

キャリアプランを立てるサポートを行ったり、資格を取得する支援制度を充実させたりする企業は増えています。

「人手不足で教育に割く時間がない」または「社内のOJTだけでは不安」といった場合は、外部機関に教育を委託するのも方法のひとつです。

勤務時間を適切に管理する

勤務時間を適切に管理すれば、残業時間が減少して作業員のワークライフバランスを改善できます。

しかし「残業を減らしましょう」と呼びかけても、労働環境を変えることは困難です。

社員の能力に任せるのではなく、企業が「業務改善・残業防止の仕組み作り」に取り組むことが重要です。

たとえば、タイムカードや日報から勤怠管理システムへと移行すると、作業員の稼働時間や有給休暇の取得率を正確に把握できるでしょう。

弊社が提供する「クラフトバンクオフィス」という建設業の方に向けた、事務作業デジタル化ツールでも、勤怠管理や日報作成が可能です。

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まとめ:建設業における業務効率化は離職率の低下につながる

今回の記事では、建設業の離職率が高い理由や離職率を下げる方法を解説しました。

作業員が離職する原因としては、不安定な雇用状況や休暇の少なさなどが挙げられます。

建設業の離職率を下げるためには

  • デジタルツールを活用して業務効率化を図る
  • 週休二日制を導入する
  • 評価制度を見直す
  • 教育体制を整える
  • 勤務時間を適切に管理する

上記5つの取り組みを進めましょう。

人材を定着させるには、作業員にとって働きやすい環境を整備することが大切です。


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