建設業の日雇い派遣は原則禁止?禁止されている業務を詳しく解説
目次
建設業では、基本的に日雇い派遣は禁止されています。
ただし、全ての業務で派遣が禁止されているわけではなく、建設業のなかでも派遣が認められている業務も存在します。
派遣が禁止されている背景を知ることで、派遣労働に対する考え方の理解が深まるでしょう。
そこでこの記事では
- 建設業における日雇い派遣が禁止されている理由
- 労働者派遣法を違反した場合の罰則
- 労働者派遣法に違反する業務と違反しない業務
- 建設業の労働者雇用に関してよくある質問
などを詳しく解説します。
建設業において日雇い派遣は原則禁止
建設業において、日雇い派遣は原則禁止されています。
東京労働局が公開している「建設現場で必要な労働者派遣法の知識」には、以下のように記されています。
- 土木、建設の現場で行われる作業に直接従事する業務に労働者派遣を行うこと及び受け入れることは禁止されている
- 業務の具体的な詳細は、労働者派遣法に「土木、建築その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体の作業又はこれらの作業の準備の作業に係る業務」と示されている
労働者派遣法という法律で、建設業への日雇い派遣が禁じられていることがわかるでしょう。
また、派遣・アルバイト・請負を混同する人がいますが、以下のように雇用の仕組みが大きく異なります。
派遣 | アルバイト | 請負 |
・労働者は派遣元事業主と労働契約を結ぶ | ・正社員や契約社員と同じで、企業が直接雇用する | ・労働者は請負事業主と雇用契約を結ぶ |
つまり、労働契約を結ぶ相手が異なり、アルバイトの場合は建設企業と直接契約を結ぶため、派遣や請負とは働き方が異なります。
請負契約は建設業界のなかで問題になることが多く、とくに一人親方の場合は働き方によって偽装請負になるケースがあるので注意が必要です。
建設業における偽装請負や常用契約に関しては、以下の記事も参考にしてみてください。
>>>建設業の常用契約は違法|労働者派遣法違反や2024年問題も解説
建設業で日雇い派遣が禁止されている理由
建設業で日雇い派遣が禁止されている理由は、以下の2つです。
- 労働者の雇用を安定させるため
- 労働者の安全を確保するため
それぞれ詳しく解説します。
労働者の雇用を安定させるため
派遣労働では、派遣先に仕事があることが前提になります。
ただし、仕事の有無は、需要を見越して生産する見込み生産方式と発注を受けてから生産する受注生産方式によって異なります。
建設業の場合は、発注企業からの依頼を受けて工事が始まる受注生産方式です。
そのため、発注が多ければ労働者の仕事は多くなりますし、需要がなくなり発注数が少なくなれば仕事が減少します。
事業主は確実に仕事を獲得できるわけではありませんし、労働者にとっても安定して仕事ができるわけではないのです。
このような不安定な建設業界において、立場が弱くなりやすい派遣労働者は、仕事がない場合に雇用契約を打ち切られる可能性が高いと言えます。
労働者の雇用が安定しておらず、保護されない可能性が高いため、建設業においては労働者派遣が禁止されているのです。
労働者の安全を確保するため
派遣労働では、派遣元企業と雇用関係を結びますが、仕事の指揮命令は派遣先企業にあります。
万が一、仕事中に事故が起こった場合に、責任の所在が雇用主なのか指揮命令を下した派遣先企業なのかが不明確です。
責任の所在が不明確の状態では、労働者は安心して働けませんし、安全確保もままなりません。
また、建設現場には、発注業者・元請業者・下請業者など、複数の企業が出入りするため、派遣労働者はどの事業者の責任下で動くかが曖昧になりやすいのです。
建設会社に所属することで、責任の所在が明確になり指揮命令も統一されるため、労働者は安全に働くことが可能です。
労働者派遣法に違反した場合の罰則
労働者派遣法に違反した場合には、以下のような罰則が課されます。
- 一年以下の懲役または100万円以下の罰金(刑罰)
- 建設業許可の取り消し(行政処分)
参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保および派遣労働者の保護等に関する法律(第五十九条)
これらの罰則を課された場合、刑罰を受けた日や建設業許可の取り消しを受けた日から起算して5年間は、許可の再取得ができません。
不起訴処分となり刑罰を免れた場合でも、営業停止処分や許可取り消し処分が課される可能性はあります。
建設業において日雇い派遣が禁止されている12の業務
建設業では基本的に日雇い派遣が禁止されていますが、違反にあたらない業務もあります。
そこで、まずは具体的に日雇い派遣が禁止されている業務を紹介するので参考にしてください。
- ビル・家屋などの建築現場において、資材の運搬や組み立てを行う
- 道路・河川・橋・鉄道・港湾・空港などの新設や修繕工事において、掘削・埋め立て・資材の運搬・組み立てなどを行う
- 建築・土木工事や工事前の準備において、コンクリートを合成したり、建材を加工したりする
- 建築・土木工事現場内で資材・機材などを配送する
- 壁・天井・床の塗装や補修をする
- 建具類を壁や天井・床に固定したり撤去したりする
- 外壁に電飾版や看板などを設置したり撤去したりする
- 建築・土木工事現場内において、配電・配管工事をしたり機器の設置をしたりする
- 建築・土木工事後の現場の整理・清掃(内装仕上げ)をする
- 大型仮設テントや大型仮設舞台を設置する
- 仮設住宅(プレハブ住宅等)を組み立てる
- 建造物や家屋を解体する
参考:禁止業務に該当する事例|一般社団法人 日本人材派遣協会
これらの業務は労働災害が起きる可能性が高いため、労働者の安全性が確保されない派遣業務は禁止されています。
建設業において派遣が違法にならない業務
建設業において派遣が違法にならない業務には、以下のものが挙げられます。
- 建設会社の事務員
- 現場事務所の事務員
- CADオペレーター
- 施工管理者(工程管理・品質管理・安全管理など)
これらの業務は、「建設・改造・保存・修理・変更・破壊もしくは解体の作業、またはこれらの作業の準備作業」に従事する業務ではないため、労働者派遣が可能とされています。
ただし、施工管理者や事務員として派遣された人が、休憩時間や退勤前に資材置き場の整理や残材片付けなどをするのは違法行為に該当するので注意が必要です。
建設業の労働者雇用に関してよくある質問
建設業の労働者雇用に関して、よくある質問は以下の3つです。
- 繁忙期に他社から1日だけ作業員の応援を頼むことはできるのか
- 臨時で作業員を雇用する場合は雇用契約を締結しておけばいいのか
- すでに他社で雇用されている者を自社で雇用した場合、他社からの派遣に該当するのか
それぞれ詳しく解説するので、参考にしてみてください。
繁忙期に他社から1日だけ作業員の応援を頼むことはできるのか
他社から応援に来てもらう行為は、たとえ短日であっても禁止行為に該当する可能性があります。
作業員の応援は、労務の提供に該当し、労働者派遣法第4条の規定に抵触する恐れがあるのです。
人手が足りなくなる場合は、自社で雇用する必要があります。
臨時で作業員を雇用する場合は雇用契約を締結しておけばいいのか
雇用契約を締結しただけでは、不十分な可能性があります。
具体的には、雇用した作業員に対して賃金が直接支払われていることや社会保険の加入状況、指揮命令が適切に行われているかなどの確認が必要です。
すでに他社で雇用されている者を自社で雇用した場合、他社からの派遣に該当するのか
自社で雇用した作業員が他社でも雇用されている場合は、指揮命令を下す会社によって考え方が異なります。
例えば、自社において指揮命令を下し、作業員を適切に管理している場合は労働者の派遣にあたらないと考えられます。
しかし、他社の指揮命令を受けて作業にあたったり、勤務日や配置などを管理されたりしている場合には労働者派遣に該当する可能性があるのです。
また、自社および他社の就業規則に反しておらず、労働者の自発的な意思で雇用契約を結んでいることが大切です。
まとめ:建設業の日雇い派遣は原則禁止!
建設業における日雇い派遣は、原則禁止されていると解説しました。
ただし、事務職やCADオペレーター、施工管理者のように派遣が禁止されていない業務もあります。
禁止されているのは、主に建設現場で作業に従事するケースです。
建設の現場では労働災害が起きる可能性もあり、万が一の事故の際に責任の所在を明らかにするためにも派遣が禁止されています。
また、受注生産方式である建設業は、需要が少ない時期には雇用者の仕事が減少する可能性があります。
その場合に、立場が弱くなりやすい派遣従業員が派遣切りにあう可能性が高いのです。
建設会社と労働者を守るためにも、派遣労働に関する正しい知識を身につけましょう。