土木工事共通仕様書とは?特記仕様書との違いや必要性について解説
目次
土木工事共通仕様書とは、土木工事全体におけるルールがまとめられた資料です。
土木工事共通仕様書に則することで、工事の品質と安全を確保できます。
この記事では、土木工事共通仕様書の概要や必要性について解説します。
共通仕様書と特記仕様書の違いも説明するので、土木業に携わる方はぜひ最後までご覧ください。
土木工事共通仕様書とは
土木工事共通仕様書とは、土木工事において、守らなければならない要項がまとめられた図書です。
土木工事と一口に言っても工種はさまざまで、現場ごとにルールが異なります。
しかし、企業ごとに別々の基準に基づいて作業を進めると、高品質な施工が行えません。
そこで、どの工事にも通じる内容をまとめた「土木工事共通仕様書」が作成されたのです。
工事を進める上で必要となる知識が網羅されているので、土木業界に携わる方は土木工事共通仕様書を理解しておきましょう。
そもそも仕様書とは
そもそも仕様書とは、工事を進める際に必要となる
- 材料の品質
- 材料の製造メーカー
- 細かな施工手順や施工方法
などを示し、施工者に指示する図書です。
「工事における品質・安全の確保」と「業務の効率化」を目的として作成されます。
施工者が詳しい手順を理解できるように、文章や数値、図などが用いられます。
仕様書と設計図の違い
一般的な定義において、仕様書とは完成結果を明確にする資料であり、設計書は完成までの設計過程を記した資料です。
しかし、土木業や建設業における両者の意味合いは少し異なります。
設計図とは、工事を行う際に必要となる図書です。
平面図や立面図、断面図などがあり、原図や青焼き図も設計図といえます。
対して、仕様書は図面には書かれていないような、具体的な使用材料や施工手順を記載した書類です。
さらに、設計図と仕様書、その他書類をまとめた書類を「設計図書」と呼びます。
設計図書は設計者の意図を伝えるための資料であり、正確な施工を行うには欠かせません。
仕様書の種類
仕様書は
- 共通仕様書
- 特記仕様書
の2種類に分けられます。
土木工事共通仕様書の理解を深めるために、それぞれの仕様書の役割を把握しておきましょう。
共通仕様書
共通仕様書は「標準仕様書」とも呼ばれ、工事内容や契約内容など、工事に関する幅広い注意事項を記した書類です。
どの工事にも適用するような、基本的な内容が記載される点が特徴です。
工事の品質や性能を確保するために作成されます。
工事の種類ごとに公共機関が提示する共通仕様書があり、土木工事共通仕様書以外にも
- 公共建築工事標準仕様書
- 測量業務共通仕様書
- 電気工事共通仕様書
などが存在します。
なお、公共建築工事標準仕様書を略して「標準仕様書」と呼ぶケースもあるので注意しましょう。
参考URL:資料作成業務 「共通仕様書」
特記仕様書
特記仕様書とは、各工事における特有事項をまとめた資料です。
具体的には
- 工事範囲
- 工事の概要
- 施工上の注意点
- 材料の品質
といった内容について記載します。
図面での説明が難しい内容は、特記仕様書にて文章や図、イラストを用いて明記されます。
工事ごとに規定や注意点は異なるため、精度の高い工事を行うには特記仕様書が必要となるのです。
共通仕様書と特記仕様書の違い
共通仕様書にはあらゆる工事に共通する事項が書かれ、特記仕様書には各工事における独自の内容が書かれます。
それぞれの違いを、以下の表にまとめました。
共通仕様書 | 特記仕様書 | |
---|---|---|
特徴 | どの工事にも通ずるような、幅広い注意事項を記す | 各工事における独自の事項を記す |
記載される内容 | ・工事内容 | ・工事範囲 |
共通仕様書と特記仕様書に不整合があった場合、施工者はどちらに基づいて作業すべきか迷ってしまいます。
そのような混乱を防ぐため、各資料には次のような優先順位が設けられています。
【設計図書の優先順位】
質問回答書>特記仕様書>設計図>共通仕様書(標準仕様書)
参考URL:土木工事共通仕様書 附則 - 大阪府
ただし、意図せず資料の不整合が生じないように気を付けてください。
土木工事共通仕様書の項目の例
土木工事共通仕様書にどのような内容が記載されているのかを知るために、いくつかの項目を抜粋して紹介します。
第2編:材料編
第2章:土木工事材料
第2節:石
2-2-1 石材
天然産の石材については、以下の規格に適合するものとする。
JIS A 5003 (石材)
2-2-2 割ぐり石
割ぐり石は、以下の規格に適合するものとする。
JIS A 5006 (割ぐり石)
2-2-3 雑割石
雑割石の形状は、おおむねくさび形とし、うすっぺらなもの及び細長いものであってはならない。 前面はおおむね四辺形であって二稜辺の平均の長さが控長の2/3程度のものとする。
第3編:土木工事共通編
第1章:一般施工
第3節:共通的工種
1-1-3 作業土工(床掘り・埋戻し)
1.埋設物
受注者は、掘削の施工にあたり、掘削中の土質に著しい変化が認められた場合、または埋設物を発見した場合は処置方法について監督員と協議しなければならない。
2.床掘りの施工
受注者は、作業土工における床掘りの施工にあたり、特に指定のない限り、地質の硬軟、地形及び現地の状況により安全な工法をもって設計図書に示した工事目的物の深さまで掘り下げなければならない。
3.異常時の処置
受注者は、床掘りにより崩壊または破損のおそれがある構造物等を発見した場合には、応急措置を講ずるとともに直ちにその対応等について監督員と協議しなければならない。
4.床掘りの仕上げ
受注者は、床掘りの仕上がり面においては、地山を乱さないように、かつ不陸が生じないように施工しなければならない。
このように、工種ごとに細かく基準や注意事項が提示されています。
引用URL:共通仕様書土木工事編 1 (令和5年10月1日版)
参考URL:共通仕様書(土木工事編)
土木工事共通仕様書の必要性
土木工事共通仕様書の必要性を、2つピックアップしました。
- 専門用語や定義について知れる
- 工事ごとに守るべきことが分かる
1つずつ見ていきます。
専門用語や定義について知れる
土木工事共通仕様書には、専門用語の意味や定義が書かれています。
工事の基礎知識を網羅的に学べるため、特に若手技術者にとって参考になるでしょう。
たとえば、土木工事共通仕様書では、それぞれ次のように定めています。
第1編:共通編
第1章:総則
第1節:総則
1-1-2 用語の定義
1.監督員
監督員とは、約款第 9 条に規定する監督員であり、福島県土木部工事監督員執務要綱に基づく職務を行う者をいう。
2.契約図書
契約図書とは、契約書及び設計図書をいう。
3.設計図書
設計図書とは、特記仕様書、図面、共通仕様書、現場説明書及び現場説明に対する質問回答書をいう。
引用URL:共通仕様書土木工事編 1 (令和5年10月1日版)
ベテランの作業員でも認識が間違っているケースがあるので、ぜひ土木工事共通仕様書を確認してみてください。
工事ごとに守るべきことが分かる
工事・工種ごとに守るべきことを把握できる点が、土木工事共通仕様書を確認するメリットのひとつです。
具体的には、盛土に関する勾配や舗装時の表面温度など……。
図や表、数値を用いて詳細に明記されているため、土木工事共通仕様書に沿っていけば質の高い工事を行えます。
どの工事にも通用する知識が養えるので、技術者のレベルアップにもつながるでしょう。
土木工事共通仕様書の注意点
土木工事共通仕様書を見る際は、最新の仕様書を確認するように注意してください。
土木工事共通仕様書は定期的に改訂されるので、定期的に国土交通省や自治体のホームページを確認する必要があります。
ほとんどの場合、新旧対照表や改定概要が発表されているので、変更箇所をチェックしておくと安心です。
まとめ:土木工事共通仕様書の内容を理解した上で工事を進めましょう
今回の記事は、土木工事共通仕様書の概要や必要性、共通仕様書と特記仕様書の違いを解説しました。
土木工事共通仕様書には、どの工事にも適用される事項が記載されています。
土木工事共通仕様書を参考にするメリットは
- 専門用語や定義について知れる
- 工事ごとに守るべきことが分かる
上記2点です。
記載内容が多く理解するまでに時間はかかりますが、土木工事の基礎知識を得るために、土木工事共通仕様書を理解しておきましょう。