土木工事の種類は?取得しておくべき関連資格も紹介
目次
建設業を営むうえで、土木工事に関する理解を深めておくことは非常に重要です。土木工事はいわゆる「建設工事」全般を指しますが、具体的にどのような種類があるのかわからないという方もいるでしょう。
今回は土木工事の種類について、以下3つに分類して紹介します。
- 基礎工事
- 造成工事
- 外構工事
上記に加え、さらに細分化した土木工事の種類や、土木工事に役立つ関連資格も紹介しています。
建設業を営んでいる、今後建設業を営もうと考えている、建設についてあらためて勉強したいという方は、ぜひ参考にしてください。
土木工事の基本的な種類
土木工事は、基礎工事・造成工事・外構工事の3つに分類されます。ここでは、土木工事の基本的な種類について解説します。
基礎工事
土木工事における基礎工事は、建物の土台を構築する重要な工程です。基礎工事は、建物全体の荷重を地盤に適切に伝え、構造物の安定を図る役割を担っています。
基礎工事の質は建物の安全性や耐久性に直結するため、非常に重要な役割を果たすのです。なお基礎工事は、さらに4つの方法に分類されます。
- 杭基礎
- ベタ基礎
- 布基礎
- 独立基礎
杭基礎は、柔らかい地盤に適した施工法で、地面に杭を打ち込み基礎を支えます。
ベタ基礎は、コンクリートで床下全体を覆う方法であり、土を掘る量が少なく施工しやすい特徴があります。
布基礎は、メインの柱や壁の下に基礎を設置する方法で、床下がむき出しになるため湿気対策が必要です。
独立基礎は、メインの柱の下のみに基礎を設置する方法で、地盤がしっかりしている場合に限って使用されます。
造成工事
土木工事における造成工事は、土地の形状を整え有効活用するための工事です。特に、田んぼや農地を宅地へと変える際に行われます。
造成工事には、埋め立て・切土・盛土・地盤改良など、土地の状況に応じた多様な作業が含まれます。
建築の前提となる重要な段階で、高低差のある土地を平坦にすることはもちろん、坂地などでは段差を設けて整地します。
なお造成工事は、不動産業者や専門業者が行い、かつ「宅地造成規制法」に基づく申請が必要とされることも覚えておきましょう。
外構工事
土木工事における外構工事は、建物本体以外の外回り、すなわち舗装や側溝、排水設備などを対象とした工事を指します。外構工事に含まれる施工内容は、主に以下のとおりです。
- 門扉
- フェンス
- 車庫
- カーポート
- 植栽の
- 飛び石
- 砂利敷き
- 土地の水勾配調整
- U字溝
- マンホール
- メーター類
内装工事と比べるとあまり注目されていない側面もありますが、外構工事は建物の外観を美しく保つだけでなく、セキュリティやプライバシーの確保、安全性の向上にも不可欠な役割を担っています。
土木工事の種類をさらに細分化
土木工事は、さらに以下の種類に細分化されます。
- 橋梁工事
- ダム建設工事
- 道路工事
- 鉄道工事
- トンネル工事
- 下水道工事
- 河川工事
- 農業土木工事
- 土地区画整理工事
- 空港建設工事
- 森林土木工事
- 砂防工事
ここでは、より細分化した土木工事の種類について解説します。
橋梁工事
橋梁工事は、川や谷、道路や鉄道などを跨ぐ橋を建設する土木工事の一種です。新たな橋の架設だけではなく、既存の橋梁のメンテナンスや補修も含まれています。
なお橋梁の主な種類は、桁橋・吊り橋・アーチ橋・ラーメン橋などです。
橋梁工事を行う業者は、安全性を最優先に考えながら、人々が海や川、谷などをスムーズに移動できるような橋を建設します。
橋梁工事は地域の交通インフラを支え、社会生活を豊かにするために欠かせない工事なのです。
ダム建設工事
ダム建設工事とは、河川水を貯えるダムを建設する土木工事を指します。洪水調節・渇水対策・発電・灌漑などの目的で利用されるダムを建設する、非常に重要な工事です。
なおダム建設工事は、ダムの型式や建設方法により、さらに細かく分類されます。
型式 | 建設方法 |
・重力式ダム(自重で水圧を支えるダム) | ・コンクリートダム(コンクリートを材料とするダム) |
道路工事
道路工事は、新たに道路を建設することや既存の道路を改修・拡張することを含む、道路インフラ整備に関連する一連の工事です。
土工事である掘削や盛土、トンネルや橋脚、擁壁などのコンクリート構造物の建設、排水設備の設置など、多岐にわたる作業が含まれるのも特徴です。
具体的には、新しい道路を作る際に、まず土木工事によって土を掘り、路床を整え、砕石を敷き詰める作業が行われます。
その後、舗装工事が行われ、不陸の調整、締固め、アスファルトによる舗装が施されます。これらの工程を通じて、安全で快適な交通インフラが整備されるのです。
鉄道工事
鉄道工事は、鉄道が安全に運行できるようにするため、線路やトンネルといった土木建造物の新設、保守・管理を行う重要な作業です。
高架橋や橋梁、トンネルや駅のプラットフォームといった構造物の建設や改良が含まれています。
鉄道工事の作業内容は多岐にわたり、レールや枕木の設置・交換、レールの歪み修正、トンネルや橋のメンテナンス、構造物の補修、災害時の復旧作業などもあります。
特に、レールの下にある枕木の交換や、電車の走行するトンネルや橋に発生したヒビなどの不具合のチェックとその修正、落石防止設備の補修など、電車が安全に走行するための環境を整える作業が行われるのも特徴です。
トンネル工事
トンネル工事は、山岳地帯や都市部などにおいて、道路・鉄道・水道管などのインフラを建設するために必要な土木工事です。現代社会のインフラ整備において、トンネル工事は重要視されています。
例えば、山岳地帯や都市部など、地上での建設が困難な場所において、道路や鉄道などの交通網を整備するために不可欠です。また、洪水や土砂災害などの対策や水道管・電力ケーブル・通信ケーブルなどのインフラを安全に設置・維持するための役割を果たします。
ほかにも、トンネルの建築を通じた経済の発展や地域活性化など、トンネル工事は社会貢献につながる重要な工事なのです。
下水道工事
下水道工事は、生活排水を安全に処理するための下水道管を設置するインフラ整備工事です。
ショベルカーや他の重機を使用して土を掘り、汚水が適切に流れるように勾配を調整しながら下水道管を地中に敷設します。その後、掘削した土砂で埋め戻しを行います。
下水道工事、トイレの水洗化をはじめとする生活環境の向上、雨水の効率的な排除、公共用水域の水質保全など、公衆衛生と環境保護の両面で重要な役割を果たすのです。
河川工事
河川工事は、水害防止を目的とした堤防や床止めの設置などの土木工事です。河川の維持修繕も含まれており、河川の流れや水量を適切にコントロールすることが可能になります。
河川工事を通じて洪水などの自然災害から近隣住民の安全を守ることができ、安心して生活できる環境を提供できます。
河川工事は、地域社会の安全保障において非常に重要な役割を果たす工事と言えるでしょう。
農業土木工事
農業土木工事は、農地の生産性向上を目指し、農業インフラの整備を行う土木工事です。
- 農地の区画整理
- 灌漑や排水施設の改良
- 暗渠排水
- 土層改良
上記のような、農地をより良い状態にするための多岐にわたる土地改良が含まれています。
農業土木工事は、農業生産の効率化だけでなく、防災対策や農村の生活環境、自然環境の整備にも貢献しています。
また、自然災害が発生した際には、専門技術を駆使した農地の災害復旧作業に取り組むため、農業と農村社会の持続可能な発展を支えているのです。
土地区画整理工事
土地区画整理工事は都市計画に基づき、より安全で機能的な街づくりを目的とした土木工事です。
建築物の移転や公共施設の建設、宅地の造成などが主に行われます。なお、地面を平坦化する作業を行ううえで、大地掘削や岩石掘削、表土掘削を行うこともあります。
土地区画整理工事は、密集市街地の解消や中心市街地の活性化、商業地区の形成、災害復興・新住宅地・工業団地の開発など、多岐にわたる目的で実施されるのも特徴です。
土地区画整理工事により、住みやすく経済活動が活発な街を形成できるため、地域社会の発展に貢献する工事と言えるでしょう。
空港建設工事
空港建設工事は、新しい空港の建設や既存の空港の拡張、施設の保守や補強を目的とする土木工事です。
土地の造成や表面の舗装などの基本的な作業から、既存施設の修繕や補強、解体作業まで幅広い工事が含まれています。
空港は交通の要所として、地域の経済活動や人々の移動に欠かせない施設です。
そのため空港建設工事は、安全性と機能性を高めることに焦点を当てて行われ、空港を利用するすべての人々にとって快適で便利な空間を提供することを目的としています。
森林土木工事
森林土木工事は、森林環境の保全と利用を目的とした土木事業で、主に治山工事と林道工事に分かれています。
治山工事は、集中豪雨などによる土砂崩れの防止や、荒廃した森林の再生を図る工事です。これにより、水源地帯の保護や自然災害のリスク軽減に寄与します。
林道工事は、森林内のアクセス改善や木材搬出のための道路を整備することで、森林資源の持続可能な利用の支援につなげる工事です。
これらの工事を通じて、森林の健全な維持と経済的価値の向上が図られるため、環境保全と人々の生活の質の向上に貢献できるのです。
砂防工事
砂防工事は、地すべり・土石流・河川の氾濫など自然災害から生じる土砂の流出を防ぎ、土砂災害の被害を軽減する目的で行われる土木工事です。
土砂災害のリスクを管理し、安全な生活環境を守るために重要な役割を果たしています。
土木工事に役立つ資格の種類
土木工事に勤しむ際は、関連する資格の種類もあわせて把握しておくことが大切です。ここでは、土木工事に役立つ以下の資格について解説します。
- 土木施工管理技士
- 測量士
- 技術士
- 舗装工事管理技術者
- 建設機械施工管理技術検定
- 下水道技術検定
- コンクリート診断士
より専門的な知見をもって土木工事に取り組むべきと考えている方は、ぜひ参考のうえ取得を検討してください。
土木施工管理技士
一般財団法人全国建設研修センターによる土木施工管理技士は、土木工事の計画立案や工事監督・指導を担う国家資格で、公共工事における主任技術者や監理技術者としての役割を果たすために必要な資格です。
1級と2級があり、2級は主任技術者、1級は監理技術者を含むより広範な職域で活躍できます。特に1級資格者は、多岐にわたる職場での活躍が期待される点が特徴です。
測量士
測量士は、土地や建物の大きさや場所を正確に測定し、その情報を解析・提供することで工事や地図作成に貢献する国家資格で、国土地理院により管轄されています。
地理的位置情報と測量技術を駆使して行われる測量業務は、有資格者にしか許されない独占業務であり、さまざまな分野で重要な役割を果たしています。
技術士
公益社団法人日本技術士会による技術士は、科学技術分野で高度な専門能力を要する国家資格です。資格を取得するためには、技術部門ごとに設定された技術士第一次試験と第二次試験に合格する必要があります。
なお、技術士試験に挑むための資格要件には年齢や国籍の制限はありません。
技術士の資格は、専門的な知識や技術を有し、技術の発展や問題解決に貢献する人材を認定するものです。そのため、土木工事をはじめとした多岐にわたる分野での活躍が期待されています。
舗装工事管理技術者
日本道路建設業協会による舗装施工管理技術者は、道路や駐車場などの舗装工事を適切に監督・管理する専門知識と技術を有することを証明する資格です。舗装工事の品質向上や、安全管理に貢献する重要な役割を果たします。
試験は一般社団法人日本道路建設業協会によって実施され、合格後に資格者証が交付されます。
なお、公共工事の入札において、舗装施工管理技術者の資格を持つことが要求されることも少なくありません。そのため、舗装施工管理技術者の資格を取得しておくことは、仕事を得るうえで有利に働くと考えられるでしょう。
建設機械施工管理技術検定
建設機械施工管理技術検定(建設管理センター)は、建設工事における機械化施工の技術力を高めることを目的とした国家試験です。建設業界において機械化施工の専門知識と技術を持つ技術者を育成し、施工の効率化と品質向上に貢献することを目的としています。
資格取得の過程には、1級および2級の建設機械施工技術検定試験があり、これらの試験は「第一次検定」と「第二次検定」の2段階に分かれています。検定試験の両方に合格することで、建設機械施工管理技士としての資格を取得できるのです。
下水道技術検定
日本下水道事業団が提供する下水道技術検定は、下水道の計画や設計、工事の監督管理や維持管理などを担う技術者の技術力を評価するために日本下水道事業団が実施する検定試験です。
技術の内容に応じて第1種・第2種・第3種に区分されており、それぞれ下水道の計画設計、実施設計および工事の監督管理、下水道施設の維持管理を行うために必要な技術力を測定します。
これらの資格を取得することで、下水道に関連する各種の専門知識と技術を証明でき、下水道事業における品質の向上と効率的な管理に貢献すること可能になります。
コンクリート診断士
コンクリート診断士(公益社団法人日本コンクリート工学会)は、コンクリート構造物の劣化度合いを診断し、維持管理に関する提案を行う専門家です。
コンクリートの安全性・使用性・耐久性を評価し、維持向上に必要な措置を講じることが主な役割です。
自然災害が頻発する日本において、建築物の安全と長寿命化を実現するために、コンクリート診断士の役割はきわめて重要視されます。
まとめ
今回は、土木工事の種類についてさまざまな視点から解説しました。
土木工事は、以下の3種類に分類される工事です。
- 基礎工事
- 造成工事
- 外構工事
またさらに、以下の工事に細かく分類できるのも土木工事の特徴です。
- 橋梁工事
- ダム建設工事
- 道路工事
- 鉄道工事
- トンネル工事
- 下水道工事
- 河川工事
- 農業土木工事
- 土地区画整理工事
- 空港建設工事
- 森林土木工事
- 砂防工事
土木工事の種類は多岐に渡り、かつ需要の高い工事であることから、以下の資格取得が推奨されます。
- 土木施工管理技士
- 測量士
- 技術士
- 舗装工事管理技術者
- 建設機械施工管理技術検定
- 下水道技術検定
- コンクリート診断士
土木工事を主とする事業を行いたい、もしくは現在行っている事業者も、今回紹介する内容をぜひ参考にしてください。