大工の収入はどのくらい?上げるための方法や今後の傾向
目次
大工として働くことを決めるうえで重要になるのが、収入面です。しかし、大工の収入目安がわからないという方も多いでしょう。
そこで今回は、大工の収入目安について、収入の決まり方とあわせて解説します。また、大工の収入に関する以下のトピックにも触れています。
- 大工が収入を上げるための方法
- 大工が収入を上げるのにおすすめの資格
- 大工の収入における今後について
大工として従事している、もしくは今後大工として働くことを考えている方は、ぜひ参考にしてください。
大工の収入はどう決まる?
大工の給料について、工務店などで正社員として働く場合を除き、通常は日給制です。1日の給料に働いた日数を掛け合わせた額が、1ヶ月の給料となります。
しかし、悪天候や体調不良で働けない場合は、日給は支払われません。
大工の給料に日給制が採用される理由は、建設業界特有の事情にあります。天候やその時の仕事量によって、事業所の収入が大きく変動するためです。
例えば屋外の建築現場では、大雨や大雪、台風などの悪天候時には大工の安全を確保するために作業が中断されます。しかし、月給制の場合、仕事がない場合でも大工を雇い続けなければなりません。
これにより、大工を雇用する事業所にとってはコストが増えるだけでなく、大工自身も他の仕事を受けにくくなるという問題が生じます。
なお、大工の日給は場合によって異なりますが、見習いであれば、一般的には1万円前後が日給の相場です。経験豊富な大工や、特殊な技術を有している大工であれば、日給は見習いの1.5~2倍になることもあります。
現場責任者である親方(棟梁)ともなると、さらに高い日給が期待できるでしょう。技術を磨き、経験を積むことで評価され、その結果として日給も上がるため、やりがいやモチベーションの維持につながります。
また、コンクリートの基礎部分を作る型枠大工や、神社仏閣などの伝統的建造物の建築・修繕を行う宮大工など、専門的な知識と技術を要する職種は、一般的な大工(町大工)よりも日給が高めになる傾向にあります。
大工の収入目安
大工の基本的な収入形態は日給制が多いと、上述の項目で解説しました。では、給与やボーナスといった収入は、どのようになっているのでしょうか。ここでは、大工の収入目安について、月収や年収、ボーナスの視点から解説します。
月収・年収
厚生労働省による職業情報提供サイト「jobtag」によると、大工の月収・年収は以下のようになっていました。
- 月収:27.3万円
- 年収:406.7万円
情報引用:jobtag|大工(令和4年のデータ)
なお、上記はあくまで目安であり、実務経験や後ほど解説する保有資格によって、月収や年収は前後することを前提にしておきましょう。
ボーナス
大工のボーナスについては、厚生労働省が発表した「令和4年賃金構造基本統計調査」のデータを参考にしましょう。同データでは、大工を含む「建設・採掘従事者」のボーナスについて以下のように記載がありました。
- 企業規模10人以上:616.6千円
- 企業規模10~99人:502.7千円
- 企業規模100~999人:779.0千円
- 企業規模1,000人以上:1286.4千円
情報引用:e-Startデータセット|賃金構造基本統計調査 / 令和4年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種(Excelデータ)
こちらもあくまで目安程度に考え、やはり実務経験や後述する資格の要素も含めて変動する数値だと認識しておきましょう。
大工が収入を上げるための方法
ここでは、大工が収入を上げるための方法として挙げられる以下2つについて解説します。
- 実務経験の積み重ねによる技術の向上
- 一人親方としての独立開業
ここで紹介する方法を、今後大工としての収入を上げるための参考情報としてお役立てください。
実務経験の積み重ねによる技術の向上
冒頭でも述べたように、大工として収入を増やすためには、豊富な実務経験を積み、技術を磨くことが重要です。
大工の収入には、経験や技術に応じて大きな差が生じます。見習い大工とベテランの大工では、日給が倍以上異なることも珍しくありません。すぐに成果を出すのは難しいものの、大工としての経験を積み重ね、着実に技術を向上させていくことで、給料の増加が期待できます。
なお、幅広い技術を身に付けることも大切です。町大工として従事する場合は、木造建築全般の仕事に加え、内装や家具の製作にも対応できるようになるなど、新しいスキルの習得にも積極的に取り組みましょう。型枠大工など、特殊な技術が求められる分野を目指すのも有効です。
さらに、普段の仕事で速く正確に作業を進められるようになることで、評価が上がり、給料のアップにつながります。現場で欠かせない存在になることで、自然に収入も上がるでしょう。
一人親方としての独立開業
大工として十分な経験と技術を身に付けた後、一人親方(個人事業主)として独立することも収入を上げる方法として有効です。これまでの実績や人脈から安定した仕事が見込める場合、工務店を開業することも選択肢のひとつになるでしょう。大工として働くよりも、収入の大幅な向上が期待できるかもしれません。
しかし、独立する際にはすべての責任を自分で負う覚悟が必要です。親方として弟子を取ったり、工務店で従業員を雇用したりする場合、給料の支払いだけでなく、社会保険などの福利厚生についても考慮する必要があります。
大工が収入を上げるには資格取得もおすすめ
大工が収入を上げるのにおすすめの方法として、資格取得が挙げられます。特に、以下の資格取得が推奨されます。
- 建築大工技能士
- 木造建築士
- 二級建築士
- 木造建築物の組立て等作業主任者
ここでは、収入を上げたい大工が取得すべき資格について解説します。
なお、大工は特別な資格がなくても従事できる仕事です。とはいえ、より高い収入を得るためには、資格取得を検討するのがおすすめです。
建築大工技能士
建築大工技能士は、木造建築工事に必要な技能資格として認定されている国家資格です。試験は都道府県の職業能力開発協会によって実施され、受験する級によって必要な実務経験が異なります。
- 1級建築技能士に求められる実務経験:7年以上
- 2級建築技能士に求められる実務経験:2年以上
- 3級建築技能士に求められる実務経験:6ヶ月以上
なお、建築大工技能士の実技試験の内容は、次のとおりです。
<1級建築技能士>
振隅木小屋組の平面図や現寸展開図を作成し、木材の準備と墨付け実施後、加工組立てを行う(制限時間:5時間45分)
<2級建築技能士>
柱差し小屋組の平面図と現寸展開図を作成し、木材の準備と墨付け後に加工組立てを行う(制限時間:5時間45分)
<3級建築技能士>
材料に直接墨付けを行い、桁、はり、つか、むな桁およびたる木の加工組立てをし、切り妻小屋組の一部を製作する(制限時間:3時間)
建築大工技能士の資格を有しておくことの利点は、国家資格であるため発注の機会が増える可能性が高くなることです。
最近では、建築大工技能士の資格が必須となる現場も増えており、取得する価値が非常に高い資格と言えるでしょう。特に、1級建築技能士の資格を持っていると、大工として上級者と認識されます。
木造建築士
木造建築を扱う資格の一つに挙げられるのが、木造建築士です。この資格は、伝統的な木造建築の専門家として活動する際に特に重要になります。
木造部材の組み立てを主な業務とする大工でも、木造建築士の資格を持っていると有利です。なお、一般的な大工からさらにキャリアを進めたい場合は、後述する二級建築士の資格取得を目指すことを推奨します。
二級建築士
二級建築士は、現場作業者というよりも管理や監督を行うための資格です。この資格を有しておくことで、戸建住宅だけでなく、非木造の小規模な建築物も手がけることが可能になります。
木造建築の現場で働く大工であれば、木造建築士の資格は比較的取得しやすいと言えます。ただし、一般的な工務店に勤務する大工であれば、二級建築士の資格取得が求められることも多いでしょう。
建築物のプランニングも行えるため、キャリアの幅を広げる上で非常に有用な資格です。
木造建築物の組立て等作業主任者
木造建築物の組立て等作業主任者は、労働安全衛生法に基づく国家資格です。工事現場で「作業主任者:氏名」と表示されているのを見たことがあるかもしれません。
木造建築物の組立て等作業主任者は、労働災害の防止を目的とした管理が必要な作業において、事業者が法令により配置を義務付けられている人員で、特に木造建築物の組立てにおいて必要とされます。
木造建築物の組立て等作業主任者は、高さ5メートル以上の木造建築物の構造部材の組み立てやこれに伴う屋根の下地、外壁下地の取付け作業の担当が主な役割です。各都道府県で異なりますが、「木造建築物の組立て等作業主任者技能講習」を修了することで、選任される資格が得られます。
ただし、木造建築物の組立て等作業主任者の資格を取得するには、高校、高等専門学校、大学で土木や建築学科を卒業していることが必要です。
大工としてのキャリアを積む際には、木造建築物の組立て等作業主任者の資格を取得することで、より責任のある立場で働くことが可能となり、一般の大工よりも高い給料が期待できるでしょう。
大工の収入は今後どうなる?
大工の収入は、業種としての将来性が高いことに比例し、今後上がる可能性があると考えられます。
大工という仕事は建物が存在している以上必要であり、新築以外にもリフォーム・修理などすべてが大工の仕事となるのです。仕事そのものがなくなる不安が少ないため、安定した収入を得続けられる仕事と言えるでしょう。
加えて、昨今の大工業界は人手不足が進んでいる傾向にあるため、大工一人当たりの希少性も高くなっています。人手不足を要因とし、基本給をはじめとした収入の基準を上げている建設業者もいるでしょう。
さらに、昨今注目されている建設業におけるDX化を、自身の在籍する事業所などで積極的に導入することで、他社との差別化がしやすくなります。DX化を通じた差別化が成功すれば、自身の収入に好影響を与えることも考えられるでしょう。
これらのことから、大工という仕事は今後も収入が上がる可能性があると判断できます。
まとめ
一般的な職種と比べて、大工は日給制であることが多いため、収入が変動しやすい傾向にあります。
より安定的かつ、収入のレベルを上げるための方法には、豊富な実務経験を身につけることや独立開業を視野に入れることが挙げられるでしょう。また、建築大工技能士や木造建築士など、各種資格を取得しておくのもおすすめです。
大工という職種は、今後の将来性が期待できるカテゴリーです。今回紹介した要素を参考に、より高い収入を得られる大工を目指しましょう。